「今の業界・職種は自分に合っていないような気がする……」「興味がある業界・職種があるが、未経験から目指せるのだろうか?」という皆さんに、未経験からの転職の可能性と成功のポイントについて、リクルートのキャリアアドバイザーが解説します。
「未経験者」を積極採用している企業は多数
中途採用においては、「未経験者」も対象としている求人が多数あります。その理由として、「本当は経験者を採用したいが、なかなか採れないから未経験者も募集対象にしている」という企業もあれば、「あえて未経験者を採用したい」という企業もあります。
未経験者を積極的に採用する理由として、主に次の2点が挙げられます。未経験者を求める企業の採用担当者から聞いた、代表的な理由をご紹介します。
経験が、かえってジャマになることもある
「前職での経験にこだわりすぎて、当社のやり方になじめないと困る。未経験者に一から教える方が、自社に合う人材に育てることができる」
「これまでにない新しい商品やサービスを生み出そうと取り組んでいる。経験者は固定観念にとらわれ、柔軟な発想ができないことがあるので、業界未経験者の新しい視点が欲しい」
「一般ユーザー対象のサービスを行っているので、サービスを受けるユーザー側の視点を持つ人……つまり業界未経験者を歓迎している。サービスを提供する側の立場に慣れた業界経験者では気付かないことも多いから」
未経験者の方が、向上心や吸収力が高いと考えている
「未経験者は、『早く仕事を覚えよう』という気持ちで入社してくるので、学ぶ意欲が高い。一方、経験者は『自分はできる』と思っているので、勉強したがらない傾向がある」
「技術がどんどん進化し続けているIT業界の場合、経験があるからといって役立つとは限らない。最新技術を身に付ける研修体制を整えているので、未経験からスタートしてもすぐに追いつける。いずれにしろ、日々勉強が必要なので、『学ぶ意欲』を最重視する」
「未経験からチャレンジしようとする人は意欲が高い。その姿勢に、既存社員が刺激を受けるので、社内が活性化する」
このように、「未経験者でもいい」ではなく、未経験者だからこそ期待を寄せている企業は少なくありません。上記のポイントも意識して、自己アピールをするといいでしょう。
「未経験OK」の求人が多い業界・職種は?
「職種経験があれば業界未経験でもOK」「業界経験があれば職種未経験でもOK」という求人は、分野を問わずあります。採用すればする分だけ売り上げが伸びる、出店エリアを拡大できる企業、新しい市場で、事業拡大が続いている企業、同業界出身者が少ない企業など、業界・職種ともに未経験でもチャレンジできる求人が多いのは、次の業種・職種です。
住宅・不動産業界の営業職・販売職
未経験者を歓迎しているのは、主に個人顧客を対象とする販売・営業職の募集。一口に住宅・不動産といっても扱う商品は幅広く、「注文住宅」「建売住宅」「分譲マンション」「売買仲介」「賃貸仲介」「リフォーム」「投資用マンション」「土地活用、資産運用」などがあります。
教育業界の教室長・マネジャー候補
学習塾・予備校・専門学校などの「運営スタッフ」「教室長候補」など。生徒や保護者の相談対応、カリキュラム企画、講師のコーディネート、イベント企画など、運営に関する幅広い業務を担う仕事です。
生命保険業界のプランナー
近年は、営業スタイルが多様化。「保険ショップで来店客に対応する」「既存の契約者のフォローを中心に行う」といったポジションの求人も見られます。
広告業界の営業職
広告業界の中でも、ネット広告、求人広告を扱う営業は未経験からの転職者も多数。企業によっては、企画・制作職も未経験者を受け入れています。
IT・Web業界のエンジニア・営業
プログラマ、システムエンジニア(SE)、インフラエンジニアなど、社内教育体制を整え、未経験者を採用している企業が多数あります。法人向けに自社システムやサービスを提案する営業職も。
人材業界の営業・コーディネーター・キャリアアドバイザー
法人向け営業をはじめ、人材紹介会社のキャリアアドバイザー、人材派遣会社のコーディネーターなど。前職の業界・職種経験を活かして、その業界・職種の採用支援・転職支援を手がける人も多く見られます。
フードサービス・小売業界の店長候補・SV候補
外食・宅配・テイクアウトなど、チェーン展開するフードサービス企業、あるいは量販店やドラッグストアといった小売店などでは、「店長候補」「スーパーバイザー候補」を求めています。
このほか、さまざまな業種・職種で未経験者歓迎の求人があります。転職サイトなどで、「未経験歓迎」+「興味があるキーワード」で検索してみてはいかがでしょうか。
ステップ別・未経験からの転職を成功させるポイント
「未経験者歓迎」の求人であっても、やはり「経験者」が有利。未経験でも採用を勝ち取るためのポイントを、転職活動のステップごとにご紹介します。
経験の棚卸し・自己分析
「今の仕事が嫌だから」という理由のみで異分野を志望すると、相手企業に「この人は今の環境から逃げ出したいだけ」と見抜かれてしまいます。転職を考えたきっかけは不満であったとしても、「これから何をやりたいか」を見つめ直しましょう。
これまでの経験を振り返り、成功したこと・うまくいかなかったこと、面白みや喜びを感じたこと・苦手意識やストレスを感じたこと、身に付けた知識・スキルなどを整理してみてください。自分に向いていること、やりたいことが浮かび上がってくるはずです。
例えば、過去にエステサロンの店長から人事職に転身を果たした人がいます。その方は、店長という立場で、「人材育成」や「離職率の改善」に強い課題意識を持ち、独自に労務や職場環境整備などの勉強をしていたのです。「人」にフォーカスし、「働きやすい職場をつくりたい」という想いが高じて「人事」への転職を目指し、実現させました。
このように、「やりたい」軸を明確にすると、膨大な数の「未経験者歓迎求人」の中から、自分に合うものを絞り込むことができます。
求人情報収集・企業選び
自己分析によって見えてきた「やりたいこと」を軸とし、それが叶う業界・職種を探します。思いがけない業界で「やりたいこと」ができる可能性もありますので、視野を広く持つようにしましょう。
また、同じ業界でも企業によって社風や仕事の進め方がまったく異なることもありますので、その点にもしっかり研究してください。
応募書類作成
●これまでの経験を相手に伝わるように記載する
履歴書・職務経歴書を作成します。職務経歴を記すときは、省略せず、すべての経験を記載しましょう。その経験が応募先企業の仕事に関係がない内容であったとしても、企業側は「どれほどの仕事をこなしてきたか」「どれくらい頑張って取り組んできたか」に注目しています。
ただし、異業界の人が理解できないような、業界の専門用語を羅列しないように要注意。仕事内容が伝わらないばかりか、「配慮がない人」という印象を与えてしまうかもしれません。専門用語は、注釈をつける、一般的な言葉に言い換えるなど、異業界の人にも伝わる書き方を心がけてください。
●「自己PR」欄で「ポータブルスキル」を伝える
未経験からのチャレンジにおいては、「ポータブルスキル」をアピールすることが重要です。
ポータブルスキルとは、業種・職種に関わりなく持ち運びが可能な汎用スキルのこと。例えば、課題解決力、交渉力、調整力といったようなものです。これまでの経験を通じて身に付けたポータブルスキルを整理し、相手企業でも活かせそうなものを自己PR欄に記しましょう。
※あなたの強みとなるポータブルスキルを知りたい場合は、「一般社団法人人材サービス産業協議会」が提供している「ポータブルスキル セルフチェック」で確認することができます。
●「志望動機」欄で、業界・相手企業への想いを伝える
企業は、あえて未経験の業界に飛び込もうとする理由に注目しています。
「志望動機」欄を設け、「なぜその業界を目指すのか」を記しましょう。さらに、業界の中でも「なぜその企業なのか」まで記すことが望ましいといえます。
面接
職務経歴書に記した「自己PR」「志望動機」について、より具体的なエピソードを交えて語れるようにしておきます。
なお、自分の経歴を紹介する際には、「○○部門で、△△業務を担当していました」だけでなく、仕事の進め方、どんな課題が発生してどう対処するか、どんな工夫が必要か……といったことも整理して話せるようにしておきましょう。そうすれば、相手は「その経験は自社でも活かせそうだ」とイメージすることができます。
また、未経験ながら、独自に勉強を始めてること、今後どのように業界の知識・スキルをキャッチアップしていこうと考えているかも伝えるとプラス評価につながります。
転職支援サービスの活用方法
●転職サイトを活用する
「リクナビNEXT」などの 転職サイトでは、希望条件を選ぶことで、それに合う求人情報を検索・閲覧できます。「未経験歓迎」の条件を設定した上で、興味があるテーマやジャンルなどをフリーワードで検索することもでき、業界問わず興味や志向に沿った求人に出合うこともできます。
また条件を指定して登録しておけば、条件に合う求人が掲載されたときに通知されるので、新着求人情報をスピーディにキャッチできます。
「スカウトサービス」も利用価値大。匿名で、経歴・希望条件を登録しておけば、あなたに興味を持った求人企業や転職エージェントからオファーが届きます。未経験の業界からオファーが来ることもあり、自分の可能性を知ることができます。
●転職エージェントを活用する
転職エージェントのキャリアアドバイザーに、自分の経験や志向がどんな業界で活かせるかを相談してみましょう。思ってもみなかった異業界で、自分のキャリアが活かせることを発見できるケースもあります。
ほか、転職エージェントには、転職活動をスムーズに進めたり、失敗を防いで採用確率を高めたりするためのさまざまな機能・サービスがあります。以下は、エージェントを活用するメリットの一例です。
目的に応じ、うまく活用してください。
* 求人サイトや企業の採用ページには載っていない「非公開」の求人情報が手に入る
* 「キャリアの棚卸し」や、自分の強み・弱みの分析作業を手伝ってもらえる
* 客観的な視点で、転職市場での「市場価値」を判断してくれる
* チャレンジしたい求人に対し、過去の採用・不採用事例をふまえ、「採用の可能性」を判断してくれることもある
* 応募書類をどうブラッシュアップするか、具体的なアドバイスをくれる
* 「模擬面接」サービスで、面接の練習ができる
* 企業サイトや求人票には書かれていない「ウラ情報」を教えてもらえることもある
(面接で必ず聞かれる質問、面接で重視しているポイント、面接相手のキャラクターなど)
* 面接日程の調整や条件交渉など、企業との面倒なやりとりを代行してくれる
* 転職活動プロセスにおいて、不安や迷いが生じたときに相談に乗ってくれるなど、「サポーター」「パートナー」として伴走してくれる
未経験者でも、「想いの強さ」「成長意欲」などをアピールした結果、経験豊富なライバルを差し置いて採用されたケースは多々あります。興味の強さ、入社後の目標、学ぶ意欲をしっかり伝えることで、成功率が高まるでしょう。
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