転職が初めてではない場合、「転職回数が多いとイメージが悪く、選考で不利になるのでは?」と不安に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、「転職回数が多い=不利」ではありません。
今回は求人企業は転職回数に対してどのように捉えているのか、転職回数が多い場合の職務経歴書の書き方、面接での伝え方などを、キャリアアドバイザーや採用人事の経験を持ち、現在は組織人事コンサルティングを行っている粟野友樹氏が解説します。
求人企業は「転職回数」を気にしている?
そもそも求人企業は、「転職回数」を気にしているのでしょうか?
結論からいえば「企業による」、あるいは「経験内容による」です。最初から「転職回数が○回以上の人はNG」など、ある程度の基準を決めて選考している企業もありますし、応募者数が多い企業であれば「転職回数が少ない人を優先的に面接に進める」というケースもあります。
では、求人企業側は、応募者の転職回数を何回目くらいから気にするのでしょうか。
企業の人事担当者へのアンケート調査によると、「転職回数1~2回」に対しては10%が「気にする」と回答。「3回」からは40%、「4~5回」からは28%の採用担当者が「気になる」と回答しています。一方、「気にならない」と回答した採用担当者は全体の約15%という結果になりました。
▲出典:リクナビNEXT 採用実態調査 実施期間:2017年5月23日~5月26日 調査機関:楽天リサーチ 調査対象:直近一年間に正社員の中途採用に携わった従業員50名以上の企業の採用担当者300名
「もともと離職率が低い」あるいは「スキル習得に時間がかかる」など、「長く勤務してほしい」と考えている企業は、転職回数が多い人に対して「すぐに辞めてしまうのでは」という懸念を抱き、採用を見送る傾向が見られます。
一方で「転職回数はまったく気にしない」という企業もあります。ITや不動産などのように、もともと人材流動が激しい業界では、転職回数を重視しない企業も増えてきました。むしろ、転職を重ねたことで幅広い経験を積んできた人、着実にスキルアップを果たしてきた人は、1社しか経験していない人よりも高く評価されることもあります。
【参考記事】転職回数が多いと不利?年代別の転職回数と採用実態
転職回数が多い場合の、選考をクリアするための5つのポイント
とはいえ、転職回数が多い人は「飽きっぽいのでは」「忍耐力がないのでは」「人間関係をうまく築けないのでは」といった懸念を抱かれがちです。そうした不安を払しょくし、プラス評価に転換するための方法をご紹介します。
1. 「プラスの側面」をアピールする
転職を繰り返し、複数の企業を経験したことで、身に付いたものもあるのではないでしょうか。例えば、次のようなポイントです。
- 新しい環境に適応し、初めての仕事を早く覚えるように努力した経験。それによって身に付いた柔軟性
- それぞれの会社で異なる事業・職務を担当したので、経験の幅が広がった
- 複数の会社のノウハウを学んできたので、各社の良い部分を転職先へ導入できる
このように、複数の会社を経験したからこそ学べたこと、身に付けたことに注目し、それをアピール材料として活用しましょう。
2. これまでの「転職理由」を明確に伝えられるようにしておく
「なぜ転職を繰り返したのか」は、必ず聞かれる質問です。このとき相手が納得できるような転職理由を語れるようにしておきましょう。
「○○のスキルをもっと磨きたかった」「○○分野に強い興味を持ち、チャレンジしたかった」など、前向きな目的や向上心を持って転職したのであれば、「なぜそう考えたのか」「なぜそれを目指したのか」という経緯とともに伝えてください。
なお、「労働環境が劣悪だった」という理由で転職したことがある場合は、抽象的な表現にとどめず、「事実」の説明を添えましょう。
例えば、以下のように相手に「それは確かにつらかっただろう」と共感を得るような具体的事実を説明できるようにしておくことをお勧めします。
労働環境が劣悪だった場合の説明例
- 「残業が多かったんです」
- 「残業が月に○時間あり、月に○日は休日出勤を強いられた」
- 「上司のパワハラがひどかった」
- 「目標達成できないときなど、『お前は○○だ』などの暴言を浴びせられる」
とはいえ、愚痴や不満だけで終わらないよう注意も必要です。これまでの失敗を踏まえて、今回の転職活動ではしっかりと企業研究をして臨んでいることを伝え、相手企業を志望した理由をしっかりと語れるようにしておきましょう。
3. これまでの転職歴に「一貫した軸」があれば伝える
転職回数が多くても、その都度の企業選びに「一貫した軸」があったのであれば、ぜひ伝えてください。
例えば「人と深く関わり、信頼関係を築く仕事」「困りごとを解決し、喜ばれる仕事」など、たとえ業種がバラバラでも、「大切にしたいこと」を重視して選択してきたのであれば、納得を得やすくなります。
4. 取り繕うのではなく、「正直な自己分析」を素直に伝える
目的意識や向上心を持って転職を繰り返してきたのであれば、それを伝えればOK。しかし、「何となく転職を重ねてしまった」という人は、言い訳をして取り繕おうとせず、「自分の行動を客観的に振り返り、今、どう考えているか」を伝えるほうが効果的です。
転職を繰り返すことになった理由を自分なりに分析し、それを踏まえて今回の転職活動では「やりたいこと」「将来目指す姿」をしっかりと考え、企業研究を行っていることを伝えましょう。
5. 職務経歴書の書き方を工夫する
転職を繰り返した人は、職務経歴書の記載が多くなり、そのせいで「強み」が伝わりづらくなることがあります。そんなときは、職務経歴の記載順を工夫するのも手です。
通常の職務経歴書は、時系列で古いものから、もしくは直近のものから、所属企業・所属部門・担当職務内容を記していくのが一般的。一方、経験内容を「職務分野」別にまとめる書き方もあります。これは「キャリア式」などと呼ばれます。
この方式を用い、応募先企業に関連する業種・職種の経験内容を冒頭で厚めに記載し、それ以外の職務経歴は後半に簡潔にまとめます。この方法であれば、相手企業は自社で活かせそうな経験・スキルに注目しやすくなります。
また、これまで転職回数を繰り返した理由について、職務経歴書の最後に記載しておく手もあります。それにより、一定レベルの納得感を得て、面接に進める確率が高まります。
【参考記事】2社以上の職歴がある場合の職務経歴書の書き方
──次の転職を成功させるために、転職エージェントも活用してはいかがでしょうか。
● 職務経歴書の書き方の工夫をアドバイス
● 転職理由の伝え方、志望理由の伝え方をアドバイス
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こうしたサービスにより、転職活動がよりスムーズに進むことでしょう。
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約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。