「転職したいけどスキルがない」と感じている場合、「自分の経験・スキルで転職できるのか」「未経験から転職できる仕事はあるのだろうか」などの不安を抱いている人もいるでしょう。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が、未経験・スキルなしで転職できる可能性や転職先がすぐ決まる人によくある特徴、転職活動の際にやっておきたいことなどを解説します。
目次
未経験・スキルなしで、今から転職できる可能性は?
スキルやキャリアに自信がないために、「転職したいけれど、今の自分のキャリアや年齢では厳しいのでは?」と考える人もいるようですが、実態としては、未経験求人の数や異業種・異職種に転職している人は増加しています。ここでは、未経験者でも転職できる可能性について解説していきます。
近年、「未経験求人」は大幅に増加している
リクルートが実施した、転職支援サービス『リクルートエージェント』の求人分析(※1)によれば、2022年度の「未経験でも応募が可能な求人」の数は大幅に増加しており、2018年度と比較すると3.2倍となっています。
前職の業界や職種を問わず採用する企業が増加しており、求職者にとっては新たな業界・職種にチャレンジできる機会が増えていることがわかります。
(※1)出典:未経験求人が2018年度比で3.2倍に増加。2022年度で急増 新たな業界・職種へチャレンシジできる機会が増加(リクルート)
「異業種×異職種への転職」も増加し、全体の約4割を占める
また、リクルートが行った転職支援サービス『リクルートエージェント』の転職者分析(※2)では、異業種・異職種への転職が増加している様子が窺えます。
2022年度の転職決定者の業種・職種におけるパターンを分析したところ、「異業種×異職種」が39.3%で最多となっており、2021年度の37.1%より2.2pt増加し、過去10年間で最も高い割合を占めています。また、「異業種×同職種」への転職も32.0%となっていました。
(※2)出典:「異業種×異職種」転職が全体のおよそ4割、過去最多に 業種や職種を越えた「越境転職」が加速(リクルート)
「異業種×異職種」に転職した人は、20代は半数超え、30代では3割超え、40歳以上は2割超えに
先に紹介した転職者分析(※2)を年齢別で見ると「異業種×異職種」に転職した人の割合は、20代が最も高く、20代前半は53.5%、20代後半は42.8%と、半数前後を占めています。年齢が上がるにつれて同職種への転職割合が高くなるものの、30代前半では35.7%、30代後半では31.4%、40歳以上の場合でも25.8%が、未経験の業種・職種への転職を実現していることがわかります。
未経験・スキルなしで「転職先がすぐ決まる可能性が高い人」と「転職活動に苦戦する可能性がある人」は?
アドバイザーの粟野氏の過去の経験をもとに、未経験・スキルなしで「転職先がすぐに決まる可能性が高い人」「転職活動に苦戦する可能性がある人」の特徴を紹介します。
未経験でも「転職先がすぐに決まる可能性が高い人」とは、どのような人なのか?
企業が経験・スキルのない未経験者を採用する際には、入社後の活躍・貢献性や定着性に加え、入社後の成長性がイメージできるかや入社意欲の高さを重視する傾向があります。応募する業界・業種・職種に必要な経験・スキルがなくても、これまでの経験の中から業務に活かせるようなポータブルスキルをしっかりとアピールできていれば、入社後に活躍貢献する姿をイメージしてもらいやすいでしょう。
また、未経験の仕事にキャリアチェンジする場合は、「キャリアに一貫性がないため、入社後に早期離職するのでは?」と判断されるケースもあります。定着性をアピールするために、未経験の仕事にチャレンジする背景や考え方、志望動機などに説得力があることも大事でしょう。
一方、入社後の成長性を伝えるためには、その仕事に必要な知識を勉強していたり、資格を取得していいたりするなど、「自ら学ぶ姿勢」をアピールすることも重要です。これに加えて、応募企業や応募する仕事に対する熱意をアピールすることで、入社意欲の高さも伝わりやすくなるはずです。
未経験転職でも採用されやすい人は、こうした点をしっかりとアピールできている可能性が高いでしょう。
反対に、「転職活動に苦戦する可能性がある人」とは、どのような人なのか?
現職の会社や仕事に対する不満のみが理由で「とにかく転職したい」「早く会社を辞めて、違う仕事で働きたい」と考えている人は、転職の目的が明確でないため、未経験からキャリアチェンジする背景について「説得力が足りない」と思われてしまいやすいでしょう。そのため、転職活動で苦戦する可能性があります。
また、応募する企業や業界、職種についてきちんと調べず、イメージだけで応募している場合も、「早期離職する可能性がある」と判断されやすいでしょう。業務に必要な知識などを自ら学ぶ努力をしていない場合も、「自ら学んでいく姿勢が見えないため、入社後の成長性に期待できない」と判断される可能性があります。
これらの特徴に当てはまる場合は、今の時点では、未経験から転職するか否かは慎重に考えた方がいいかもしれません。もしも未経験から転職を実現できたとしても、入社後に「ミスマッチな企業や仕事を選択した」「仕事についていけない」と感じて後悔する可能性もあるでしょう。
未経験・スキルなしでも採用されやすい仕事とは?
先に紹介したリクルートエージェントの求人分析(※1)では、「未経験求人の増加をけん引しているのは、IT 通信業界・インターネット業界や、機械・電子・化学エンジニア、営業職、接客・販売・店長・コールセンター」であることがわかっています。
急激なデジタル変革ニーズの拡大やコロナ禍後の需要回復などに人材供給が追い付かない業界・職種においては、未経験・スキルなし・キャリアなしの場合でも、採用の可能性があると言えるでしょう。
未経験人材の採用・育成に注力している企業も増加
「今の自分の年齢でも未経験転職はできる?」「もう手遅れなのでは?」と思ってしまう人もいるでしょう。未経験者を採用する場合は、社会経験が短い人材を育成することを目的としている企業は少なくはありません。
しかし、リクルートの求人分析(※1)によれば、「未経験求人」を加速する企業では、未経験者を採用し、研修や教育を通じ育成する採用「リスキリング採用」の動きも強めていることがわかっています。今までの経験を問わず、未経験人材の採用・育成に注力していく企業も増加していると言えるでしょう。
スキルなしで未経験業界・職種への転職を目指す人がやっておきたいこと
ここでは、未経験・スキルなしで転職を目指す人がやっておきたいことを解説します。
「転職の目的」を明確にする
まずは、転職先で何を実現したいのかを明確にすることが大事です。「今の仕事や会社が不満」「将来が不安」と感じたことがきっかけの場合でも、それによって転職先でどのようなことを実現したいのか、転職先に何を求めているのかをしっかりと考えてみましょう。その上で、未経験の業界・業種・職種になぜチャレンジするのかを明確にしておくことが重要です。
チャレンジしたい仕事について調べる
自分が抱いているイメージや、給与などの条件面だけで応募する仕事を選ぶことは、ミスマッチにつながる可能性が高い上、志望動機に説得力が足りないと判断されるなどで選考通過に苦戦する可能性があります。
チャレンジしたいと思う仕事があり、応募したい企業が決まっている場合は、具体的な業務内容を把握することが重要です。求人に掲載されている情報だけでなく、応募したい企業のホームページなどを調べたり、採用ページなどに掲載されている先輩社員のインタビューなどに目を通したりすることで、仕事のやりがいや進め方などを把握しやすくなるでしょう。
まだ応募したい企業まで見つかっていないという場合は、チャレンジしたい仕事について解説する本や、その仕事で働いている人のインタビュー記事などを読むこともおすすめです。
未経験でも採用の可能性がありそうな求人の情報収集をする
転職サイトなどで「未経験歓迎」「未経験OK」としている求人を探し、未経験でも採用の可能性がありそうな求人について情報収集してみることで、チャレンジできそうな仕事を見つけることができます。また、応募したい仕事について、どのような企業がどういった条件で採用しているのかを把握していくことで、転職市場の相場観もつかみやすくなるでしょう。
キャリアの棚卸しをする
これまでの経験・スキルを振り返り、キャリアの棚卸しをしておきましょう。未経験の業界・業種・職種に、自分の経験・スキルをどう活かせるのか、どのようなことで強みを発揮できるのかを考えることがポイントです。
異業界・異業種・異職種でも活かせるポータブルスキルを中心に、アピールできそうなことを整理しておけば、応募書類や面接などに役立てることができます。
応募する業界・業種・職種に必要な知識を学ぶ
業界・業種・職種について解説する本などを読んだり、業務で使われるツールや必要な専門知識について学んだりしておくことも大事です。仕事に対する理解を深めることができますし、学ぶ意欲の高さをアピールすることもできます。例えば、ITエンジニアへの転職を目指す場合は、業務に必要な言語を学んだり、自らプログラミングしてツールを作成したりすることで、よりアピールにつながりやすいでしょう。
また、業務に役立つ資格の取得を目指すこともおすすめです。応募時点で資格取得できていない場合でも、「○月までに取得を予定している」などと伝えれば、意欲的に取り組んでいる様子をアピールできます。
転職エージェントに相談してみる
転職エージェントでは、転職支援のプロであるキャリアアドバイザーとの面談を通じて、客観的なアドバイスをもらうことができるでしょう。応募したい業界・業種・職種について、どのようなものなのかを教えてもらうことも可能なので、よりイメージしやすくなります。
また、自分の経験・スキルでも採用の可能性がありそうな求人を探してもらうこともできるでしょう。現状の経験・スキルでは厳しいという場合でも、転職実現に必要な経験・スキルを積める求人を教えてもらうことができるかもしれません。転職エージェントへの相談は基本的に無料なので、活用してみるのも一つの方法です。
転職したいけど何がしたいかわからない!そんな場合はどうすればいい?
「転職したいけれど、自分が何をしたいのかわからない」「スキルが何もないから、できる仕事もない」と悩んでしまう人もいるでしょう。そんな場合は、転職エージェントに相談してみることもおすすめです。
キャリアアドバイザーと面談する中で、自分が転職で実現したいことや、アピールできる自分の強みなどを整理しやすくなるでしょう。また、応募書類の作成や面接対策などのサポートをする転職エージェントもあるので、「転職活動で何をすればいいのかわからない」という場合にも役立てることができるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。