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公務員から民間企業への転職─企業側の評価は?成功のポイントは?

転職エージェントでは、公務員の皆さんから転職相談をお受けすることもよくあります。皆さんが悩むのは、「せっかく公務員になれたのに、転職してもいいのだろうか」「公務員の経験は民間企業で活かせるのか」「転職活動をどう進めればいいのか」など。そんな不安・疑問にリクルートエージェントのキャリアアドバイザーがお答えします。

リクルートエージェント キャリアアドバイザー 指宿 優子

リクルート(旧:リクルートキャリア)の転職エージェントサービス「リクルートエージェント」のキャリアアドバイザーとして、主に国家公務員、市役所・区役所・町役場の公務員、公立校教師などの転職全般を担当。

公務員を辞めたい理由とは?

転職相談に訪れる公務員の皆さんは、なぜ「辞めたい」と考えているのでしょうか。
一口に「公務員」といっても、市役所・区役所・町役場などに勤務する人、国家公務員、公立校の教師などさまざまですが、共通してよくお聞きする声として、次のようなものがあります。

「公的機関ならではの『慣習』『前例』などに縛られているせいで、ムダな作業が大量発生するなど、納得できないことが多い」
「理不尽なクレームに対応したり、愚痴や不満を聞くのに何時間も付き合ったりすることが多く、精神的にキツイ」

また、教師の皆さんからは、「子どもの成長を見るやりがいはあるが、多忙すぎて体力的にも精神的にももう限界」という悩みも聞かれます。

一方、国家公務員の方々からは「ハードワーク」「全国転勤がある」といった事情から、「家族との時間がほしい」という声も寄せられます。

こうした背景から転職を検討し始めるわけですが、皆さん、不安や疑問を多く抱えていらっしゃいます。

例えば、「今の安定性を手放してよいものだろうか」「公務員としてのキャリアは民間企業で通用するのだろうか」「どんな業種・職種に可能性があるのか」「転職活動をどう進めていけばいいのか」など。

ここからは、転職を考える皆さんからご相談や質問を受けることについて、詳しく解説していきます。

公務員から民間企業へ転職するメリット・デメリット

公務員の方が民間企業への転職を考えるにあたっては、メリット・デメリットも踏まえて判断することをお勧めします。もちろん、今の職場・転職先の職場・ご本人の志向やスキルによって、メリット・デメリットはそれぞれ異なりますが、皆さんの声を統括すると、共通性があります。

まず、公務員の最大のメリットは「安定性」であると認識している人が多数。よほどの事態にならないかぎり、リストラや給与の大幅削減などは起こりません。自身の家族、恋人や配偶者、あるいはその親からも「安心感がある」という点で好評です。

それらを失うことが、民間企業に転職するデメリットともいえるため、自身は転職の決意が固くても、家族・親族から大反対を受けてしまうケースも多いため話し合いが必要です。

なお、安定性を維持するために大手企業への転職を志望しますが、大手企業の門戸は狭く、選考では民間企業でのビジネス経験者のほうが有利となるのが現実です。

一方、メリットとしては「個人の成長機会が増える」ことへの期待が大きいようです。
ビジネスの現場では「成果」が求められます。営業であれば売上目標の達成、企画であればヒット商品やサービスの創出、管理部門であれば組織の活性化や業務効率化など。

公務員の場合、公共のための業務に取り組むため、自身の成長や挑戦より、正確性や規則を守ることなどが求められるという背景があります。

その点では、成果にシビアな環境で、新しいことにチャレンジしたり、スキルアップを図ったりする民間企業のほうが、「自己成長」を求める人にとってはチャンスが多いといえるでしょう。

また、年功序列で階級ごとの給与テーブルが定められている公務員と比較し、自分の努力によってスピード昇進・大幅年収アップを実現できるのも、民間企業の魅力といえます。

企業は「公務員」の転職希望者をどう評価する?

では、中途採用を行う民間企業は、公務員経験のみの応募者をどう見ているのでしょうか。懸念されるのは「ビジネスの思考を持っていないのではないか」という点です。

公的機関と民間企業では、そもそも「存在目的」が異なります。民間企業は売上を伸ばし、コストを抑制し、利益を生み出すことを目指します。一方、公的機関は予算を最大限活用しながら使い切るという性質を持ちます。つまり、組織運営にとって重要な「コスト」の意識一つとっても、大きな差があるわけです。

一方、公的機関は、国から下りてきた予算を最大限活用しながら使い切ることが求められます。まり、組織運営にとって重要な「コスト」の意識一つとっても、大きな差があるわけです。

そのため、「効率化」「生産性アップ」といった、民間企業では当たり前の意識が欠けているのではないかと思われがちです。また「スピード感」においても不安視される傾向があります。

ですから、企業に応募する際には、上記のような懸念点を払しょくするアピールが必要です。
もちろん、公務員として働いてきた特性が、高く評価される部分もあります。それは「社会貢献をしたいという思いが強い」「責任感や人としての誠実さ」などが挙げられます。

企業の人事担当者からは、「決められたことを確実に遂行する」「ルールや約束事を守る」「誠実である」といったプラス評価が聞こえてきます。こうした強みは、民間企業の業務においても十分活かせると期待されます。

公務員からの転職。どんな選択肢がある?成功事例は?

ここからは、実際に公務員から民間企業への転職を果たした方々の事例に注目してみましょう。どんな経験を活かして、どんな業種・職種で採用されたのかをご紹介します。

公的機関を対象にビジネスを行っている企業へ

官公庁、市役所、区役所、学校などを対象に商品納入やサービス提供を行っている企業では、その対象となる機関の「決裁の流れ」「稟議の通し方」「しきたり」「慣習」などを知りたいというニーズがあります。そこで、内部事情にくわしい人材を求め、対象期間出身の元公務員を迎え入れるケースがあります。

教師から教育関連企業へ

教師の場合、やはり教育系の会社を選ぶ人が多数。塾講師、コーチ、教室長、教材の企画・営業などへの転職事例が多く見られます。幼児教育・社会人教育・英語教育・IT教育など、ジャンルも多様です。

教師からシステムエンジニア(SE)へ

IT業界は人材ニーズが高いながらも採用難。多くのIT企業が自社でエンジニアを教育する体制を整え、文系出身者を含む未経験者を積極採用しています。

20代~30代半ばを中心に、教師からシステムエンジニア(SE)への転身事例は多数。実は、教育関連企業へ転職する人と同程度の割合でSEの道を選んでいるのです。

これからも成長が見込める業界=安定性がある業界で、「専門性を磨きたい」「手に職をつけたい」という志向にマッチしているようです。

SEには、「論理的思考」「真面目さ」「期日を守る」といった要素が必要であり、教師の皆さんはそれらを備えている方が多いというのも、転身成功のポイントの一つといえそうです。

簿記資格や税務経験を活かし、民間企業の経理・財務部門へ

市役所、区役所などで税務手続きなどに携わっていた人、簿記資格を持つ人は、民間企業の経理・財務部門に転職するケースがあります。会計系の分野でキャリアを築いていきたいなら、転職準備として、より高度な資格取得に挑戦するのもいいでしょう。

「人と関わりたい」志向が強ければ、営業職へ

営業職は、さまざまな業界で求人が豊富。人の役に立つことに喜びややりがいを感じる人、対人コミュニケーションが好きな人は、営業職を選んでいます。人の話をじっくり聴く、クレームに対応する……といった経験・スキルが活かせます。

国家公務員からコンサルティングファームへ

IT系を中心としたコンサルティングファームは、近年、数千名単位の大量採用を行っています。コンサルタントとしての経験がなくても、論理的思考力や課題解決力に長けた人を求めており、国家公務員からの転職事例もあります。

国家公務員は「社会に貢献したい」という思いが強い人が多く、「企業の課題を解決する」「企業の成長を通じ、社会を発展させる」という面でコンサルティングファームはフィットしやすいのです。高年収を維持できるという点でも、希望が叶いやすいといえます。

公務員から民間企業への転職を成功させるポイント

公務員に限ったことではありませんが、20代~30代前半では未経験の業種・職種に転職できるチャンスが多く、年齢を重ねるほど「これまでの経験を活かす」ことで転職成功率が高まります。

例えば、市役所に勤務していたある30代の方は、さまざまな部署を経験しましたが、そのうち3年間経験した「町おこしのイベント企画」の経験を活かし、イベント制作会社に転職されました。

公務員として経験してきたことを「棚卸し」して、その中から「特に成果を挙げ、ノウハウを蓄積したこと」「自分が得意だと思うこと」「取り組んでいて面白みややりがいを感じたこと」などをピックアップしてみてください。

その経験をさらに掘り下げ、「どのように目標・計画を立て」「どんな行動を起こし」「どんな工夫を凝らし」「どんな成果を挙げたか」を整理してみましょう。それを踏まえ、自分がどんなスキルを身に付けてきたのかを言語化します。それを転職活動でアピールすることで、採用選考の突破率が高まります。

なぜそれが大事かというと、先に述べた「ビジネス感覚が不足している」という企業の懸念を払しょくするためです。成果を意識し、そのためにプロセス設計を行い、PDCAをまわして業務遂行するスキルがあることを伝えることも重要です。

※PDCA:Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善の4つの英単語の頭文字で、PDCAサイクルとも呼ばれる

この作業は、自分一人で行うのはなかなか難しいかもしれません。自分自身の強みに気づけない人も多くいらっしゃいます。自分では「当たり前にやっていた」「特別な経験ではない」と思っていても、他者から見れば「価値ある経験・スキル」と評価されることもあります。

自身の経験の「市場価値」をつかむためにも、客観的視点を持った転職エージェントのサポートを受け、「キャリアの棚卸し」をしてみると新たな発見があるかもしれません。

また、公務員の皆さんは慎重な人が多く、転職したいと思っても腰を上げられないまま、長期間考え続けている……というケースが多く見られます。

しかし、「転職する」ことと「転職活動をする」ということは別です。転職活動をしてみた結果、公務員を続けることを選択しても構わないのです。試しに転職活動をしてみれば、思いもよらなかった選択肢や可能性に気づくこともありますので、まずは行動を起こしてみてはいかがでしょうか。

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