
「転職して後悔するのが怖い」という理由から、転職するかどうか悩んでいる方も多いようです。そこで、転職して後悔する理由や後悔しないための転職のポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に伺いました。
目次
転職後に満足しているのは約6割
株式会社リクルートが行ったアンケート調査によると、転職経験者の転職後の総合満足度は、「満足」と回答した方が20.6%、「どちらかというと満足」と回答した方が42.9%という結果になっています。合計して63.5%の方が転職後の状況に満足しているようです。
出典:「転職者に聞いた転職後実態調査」(株式会社リクルート)
転職して後悔するよくある理由
では、転職して後悔する可能性が高いのは、どのような理由があるのでしょうか。よくある8つの理由をご紹介します。
職場の人と合わない
上司や同僚など、職場の人間関係がうまくいかずに後悔するケースです。面接や面談では、一緒に仕事をする人全員と会話ができるわけではありません。また、面接や面談では好印象でも、働いてみたら印象が変わる可能性もあります。人との相性は可視化したり数値化したりすることが難しいため、確認がしにくい要素のひとつです。
職場の環境が整っていない
想定していたよりも職場の環境が整っておらず、思うように仕事を進められないということもあります。ビジネスを運営するために必要な経営資源に「ヒト・モノ・カネ」が挙げられます。希望した待遇や仕事内容であっても、「人材不足」や「予算不足」、「設備不足」など、環境が整っていない状況では不満が大きくなるでしょう。
社風が合わない
企業には特有のカルチャー・社風があります。社風は仕事の進め方や社内のコミュニケーションに影響を及ぼすため、社風が合わないと次第に違和感が生じることもあるかもしれません。社風は自分ひとりで変えることができない点も、後悔につながりやすいと言えるでしょう。
仕事内容が希望と異なる
仕事内容が、選考で聞いていた話と違うというケースです。応募企業の説明不足のほかに、自分のイメージと違っていたということもあるでしょう。特に未経験の仕事に転職する場合に、「イメージと違った」というケースが多くなる傾向があります。
スキル不足で仕事についていけない
自分の経験・スキルが足りずに仕事についていけないというケースです。未経験の仕事に転職するケースの他に、選考通過のために自分をアピールした結果、期待値が高まりスキル以上の仕事を任せられたというケースもあります。
残業が多い
面接や面談で聞いていたよりも残業が多かったというケースです。人手が足りていない企業では、入社後に様々な仕事を任せられてしまい、採用担当者が想定した以上に残業が増えてしまったというケースもあるでしょう。
経営が不安定
選考の段階では、経営状況を細かく把握することが難しい場合もあるでしょう。上場企業は経営に関わる重要情報の開示義務があるため、事前に経営状況を調べることができますが、未上場の場合は確認方法に限りがある点に注意が必要です。
待遇が良くない
希望する待遇が得られないケースも後悔が大きくなるかもしれません。「思ったより評価が低くて給与が上がらない」「福利厚生を使いにくい」など、事前に期待していたよりも待遇が低い場合、不満につながりやすいと言えるでしょう。
転職して後悔した事例
転職事例を知ることで、転職活動の具体的なイメージを掴むことができます。転職して後悔した事例を5つご紹介します。
1.話を鵜呑みにしたらイメージとは違う職場だった
「会社を拡大するために新規事業やM&Aなどをリードしてほしい」と強くアプローチされ、金融機関から事業会社の経営企画に転職したAさん。入社したところ、トップダウンの社風で経営者にお伺いを立てないと全く動けないことが判明しました。転職を決める前に、経営者と直接面接することは難しかったかもしれませんが、配属先の上長や役員への面接を通じて経営者の人物タイプなどを聞いておけば良かったと感じているそうです。
2.年収アップしたが残業続きに…
「うちは実績を評価する会社だから頑張りがいがある」と言われ、現職よりも格段に高い年収に魅力を感じて転職を決定したBさん。「実績評価」を前向きに捉えていましたが、新規開拓営業が中心で未経験転職だったため、成果を出すために残業や休日出社も必要であることが分かりました。前職は既存顧客へのルート営業が中心で残業もほぼ無く、給与を時給換算すると実は前職の方が待遇は良かったのではと後悔しきりです。
3.実は前職は良いところも多かった
前職は残業時間が多いことと、広報にキャリアチェンジをしたくて転職活動を開始したCさん。未経験からの転職だったため年収はダウンになりますが、やりたい仕事ができればと待遇には目をつぶって転職先を決めました。入社してみると、年功序列の社風で裁量権がなく、雑用しかさせてもらえません。所属部署は広報ですが、やりたかった仕事が実現したかというと疑問が残ります。総合的に考えてみると、前職の方が自分に合って楽しく働けたのではないかと後悔するように。仕事内容だけでなく、社風や組織構成なども確認しておけば良かったと反省しています。
4. 金銭的な不安から焦って不本意な仕事に…
サービス業で労働時間が長く、土日勤務だったDさん。土日休みや年収アップを実現したいと考え、退職しキャリアチェンジを目指しました。「営業はノルマがありそう」という理由から、年収が高めで残業が少なそうな事務や管理部門の仕事に応募しましたが、デスクワークで条件の良い仕事を希望する人は多く、なかなか選考を通過しません。無職期間が続いて金銭的な焦りが生じ、本来は希望していなかった営業に転職。辞めずに転職活動をするか、辞めるにしても金銭的な計画を立てておけば良かったと後悔しています。
5.スキルが足りず転職先の仕事が辛い
刺激の少ない前職の仕事に不安を感じていたところに、スタートアップ企業のマネジャー候補の求人を見つけ、「ここなら成長できそう」と感じて転職を決意したEさん。確かに転職先は組織作りや業務プロセスの構築、中途入社したメンバーの育成などやることはたくさんありました。ただ、前職は組織も業務も整備されていて安定運用がメインだったため、企業の成長ステージの異なるスタートアップ企業で期待通りの成果を出すことができませんでした。転職に際し、自分の経験・スキルや適性などを把握できていなかったことを悔やんでいます。
転職後に後悔しないための対策
転職後に後悔しないために、転職活動中にできることをご紹介します。
転職理由を明らかにする
転職後に壁にぶつかったり不満が生じたりしても、目的を達成できていれば後悔する可能性は低くなります。事前に自己分析を行って、仕事のやりがい、職場の人間関係、自分に合った社風、ワーク・ライフ・バランス、年収など、自分が転職で実現したい目的を整理しておきましょう。
経験・スキルの市場価値を把握する
転職市場で、自分の経験・スキルがどの程度ニーズがあるのかを把握することによって、転職の方向性や条件などを明らかにすることができます。また、複数の経験・スキルを持っている場合に、何を中心にアピールすれば転職活動をスムーズに進められるかを判断することもできるでしょう。
転職市場における経験・スキルのニーズを把握するためには、転職エージェントに相談する以外に、スカウト機能を持つ転職サービスに登録し、企業や転職エージェントからのオファーを待つという方法もあります。
企業研究・情報収集を十分に行う
入社する企業のことを詳しく調べなかったために、入社後に後悔するケースは少なくありません。求人情報だけでなく、企業の採用ページやSNS、口コミサイトなど、インターネット上で入手できる情報はもちろん、転職イベントや会社説明会などのオフラインの機会も活用し、自分の目で確認することが大切です。なお、転職エージェントに相談するのも有効です。転職エージェントが独自に収集した企業情報を聞き、企業選びの判断材料にしましょう。
希望条件の優先順位をつける
転職先に求める希望条件の優先順位がついていない場合、目先の条件に釣られてしまって転職後に後悔が生じる可能性が高くなります。例えば、「本来はワーク・ライフ・バランスを実現できる職場を探したかったはずが、高額な年収を提示されて転職を決めてしまい、入社後に残業が多くて後悔した」などのケースが挙げられます。全ての条件が希望通りになる求人は滅多にありません。転職活動を始める際は、希望条件に優先順位をつけて判断するようにしましょう。
応募企業を絞りすぎない
求人に記載されている仕事内容や会社概要は、企業情報の一部でしかないため、具体的な働き心地や社風、業務内容は実際に面接などで話を聞いて判断するしかありません。しかし、求人に記載されている情報や条件だけで応募企業を絞り込んでしまうと、転職の可能性が狭くなってしまいます。また、大手企業や有名企業、条件の良い企業のみに限定している場合は、応募者が集中する傾向があるため選考通過が難しくなるでしょう。
社風や職場の雰囲気を確認する
社風や職場の雰囲気は、面接で確認しにくい要素です。職場見学や、一緒に働く人と面談ができないか相談してみましょう。面接や面談だとネガティブな情報を聞けない可能性もあるため、知り合いなどに働いている人がいる場合は、率直な意見を聞いてみるという方法もあります。
内定が出たら労働条件や評価制度などの詳細を確認する
企業は、雇用する際に働く場所や仕事内容、給与や休日などの労働条件を通知する義務があります。内定が出たら労働条件通知書をしっかりと確認しましょう。また、入社後に評価に不満を抱かないように、評価制度や評価基準は具体的に確認しておくことも大切です。
元の企業に戻る方法はある?
転職したことを後悔した場合に、元の企業に戻ることはできるのでしょうか。株式会社リクルートが全国の人事業務関与者に調査したデータによると、「出戻り社員」を受け入れているかという質問に対して、「受け入れている」と答えた企業は半数以上(55.5%)に達しています。「転職で後悔したくない」と強く感じている場合は、転職活動で情報収集や事前確認をするとともに、所属企業が出戻り社員を受け入れているか確認してみましょう。
ただし、出戻り社員を受け入れている企業でも、在籍時の実績や経験・スキルによっては受け入れられない可能性もあることに注意が必要です。
出典:「企業の人材マネジメントに関する調査2023」(株式会社リクルート)
後悔しないために、転職エージェントの活用を
転職エージェントを利用すると、転職市場を把握しているキャリアアドバイザーから客観的なアドバイスをもらえるので、自分にマッチする企業や仕事を見つけやすくなるでしょう。また、豊富な転職支援実績があるため、転職活動を進める上で知っておきたい注意点を聞くこともできます。後悔するのが不安な場合は、転職エージェントが強い味方になるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2023年03月16日
記事更新日:2024年06月27日
記事更新日:2025年02月17日 リクルートエージェント編集部