転職を考え始めたものの「こんな理由で転職していいのだろうか」と悩む人は少なくないようです。そこで、実際に転職した方々に、転職のきっかけ・理由についてアンケート調査を実施。多い理由のランキングを年代ごとにご紹介します。また、転職するかどう迷ったときの判断のポイント、転職活動を始める前にやっておきたいことについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職者に聞いた「転職のきっかけ」ランキング
転職を実現した人たちは、何をきっかけに転職を決意したのでしょうか。リクルートエージェントでは、直近1年以内に転職した20代~50代のビジネスパーソンを対象に、「転職のきっかけ」(※)についてアンケート調査を実施しました。
回答者の割合が最も多かった第1位は「労働時間・環境への不満」、第2位は「給与が低い」と、労働条件面での不満が上位を占めました。
トップ10全体では、「会社の将来性」「会社のビジョンや方向性」など会社に対する不安や疑問、「仕事内容」に対する不満、「同僚・先輩・後輩」との人間関係の不和なども挙がっています。その他にも「年収アップ」「働き方の見直し」などキャリアに関する理由もあります。待遇とともに、「自身の成長」も重要な要因であることが見てとれます。
順位 | 理由 | 割合 |
1位 | 労働時間・環境が不満だった | 26.7% |
2位 | 給与が低かった | 26.1% |
3位 | 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった | 24.0% |
3位 | 年収を上げたかった | 23.1% |
5位 | 会社の将来に不安を感じた | 21.9% |
6位 | 自身の働き方を見直したかった | 18.2% |
7位 | 仕事が合わなかった | 17.9% |
8位 | 仕事内容が面白くなかった | 17.3% |
9位 | 同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった | 16.7% |
10位 | 会社のビジョンや方向性に疑問を感じた | 14.9% |
10位 | 休日が少なかった | 14.9% |
10位 | キャリアアップがしたかった | 14.9% |
出典:リクルートエージェント調査「年代別転職理由の本音」(株式会社リクルート)
転職者が語る「転職したかった」本音を紹介
転職決意の背景には具体的にどのような思いがあったのか、同調査のアンケート(※)に寄せられた声の一部をご紹介します。
「勤務時間も不規則で、上司も合わなかった。仕事内容も時間に追われている感じで自分に合わなかった」(20代 女性)
「自分より経験年数が少なく技術もない新人と自分が同じ給料だった」(20代 女性)
「リモートワークを含めた働き方を変えることで報酬を上げたい」(30代 男性)
「慣れたと思ったら全く違う内容の仕事へ異動させられ、自身の処遇からこれ以上の給与アップが見込まれないため」(40代 男性)
「会社の経営が思わしくないのに、社長が何の策も講じない」(50代 女性)
「会社のビジョンが明確でない」(30代 男性)
年代別の「転職のきっかけ」ランキング
転職のきっかけについて、年代ごとの特徴をより具体的に見てみましょう。20代~50代それぞれで多かった理由のトップ5をご紹介します。
20代の転職のきっかけランキング
20代の転職のきっかけ・1位は、総合ランキングでも1位だった「労働時間・環境が不満だった」(26.6%)。次いで、2位は「仕事が合わなかった」(22.0%)、「キャリアアップしたかった」(22.0%)、4位は「自身の働き方を見直したかった」(21.1%)と、今後のキャリアアップを意識した理由が上位にランクインしています。
順位 | 理由 | 割合 |
1位 | 労働時間・環境が不満だった | 26.6% |
2位 | 仕事が合わなかった | 22.0% |
2位 | キャリアアップしたかった | 22.0% |
4位 | 給与が低かった | 21.1% |
4位 | 自身の働き方を見直したかった | 21.1% |
出典:リクルートエージェント調査「年代別転職理由の本音」(株式会社リクルート)
30代の転職のきっかけランキング
30代の転職のきっかけは、1位「給与が低かった」(29.0%)、3位「労働時間・環境が不満だった」(25.8%)、5位「年収を上げたかった」(24.7%)と、報酬・労働時間・環境などの労働条件に対する不満が多いようです。
また、2位「会社の将来に不安を感じた」、4位(28.0%)「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(25.8%)など、会社の経営や仕事内容などに対する不満も高いのが特徴です。
順位 | 理由 | 割合 |
1位 | 給与が低かった | 29.0% |
2位 | 会社の将来に不安を感じた | 28.0% |
3位 | 労働時間・環境が不満だった | 25.8% |
4位 | 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった | 25.8% |
5位 | 年収を上げたかった | 24.7% |
出典:リクルートエージェント調査「年代別転職理由の本音」(株式会社リクルート)
40代の転職のきっかけランキング
40代の転職のきっかけ1位は「労働時間・環境が不満だった」(36.1%)であり、労働条件に対する不満が他年代と比較してかなり高い傾向が見てとれます。2位「会社の将来に不安を感じた」(30.6%)3位「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(29.2%)など会社や上司・経営者への不満・不安、3位「給与が低かった」(29.2%)、5位「年収を上げたかった」(27.8%)といった報酬に対する不満・不安も多く挙がりました。
順位 | 理由 | 割合 |
1位 | 労働時間・環境が不満だった | 36.1% |
2位 | 会社の将来に不安を感じた | 30.6% |
3位 | 給与が低かった | 29.2% |
3位 | 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった | 29.2% |
5位 | 年収を上げたかった | 27.8% |
出典:リクルートエージェント調査「年代別転職理由の本音」(株式会社リクルート)
50代の転職のきっかけランキング
50代の転職のきっかけ1位は「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(34.5%)が圧倒的に高いのが特徴。2位以下は、「給与が低かった」(27.3%)「年収を上げたかった」(27.3%)「昇進・評価が不満だった」(18.2%)と、労働条件・報酬に対する不満が見られました。
順位 | 理由 | 割合 |
1位 | 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった | 34.5% |
2位 | 給与が低かった | 27.3% |
2位 | 年収を上げたかった | 27.3% |
4位 | 昇進・評価が不満だった | 18.2% |
5位 | 労働時間・環境が不満だった | 16.4% |
5位 | 雇用形態に満足できなかった | 16.4% |
5位 | 仕事内容が面白くなかった | 16.4% |
出典:リクルートエージェント調査「年代別転職理由の本音」(株式会社リクルート)
出典:リクルートエージェント調査「年代別転職理由の本音」(株式会社リクルート)
【調査方法】インターネットによるアンケート調査
【調査対象】20歳~59歳の男女のうち、過去1年以内に転職経験がある正社員
【調査期間】2024年1月30日~2024年2月2日
【有効回答数】329名
転職するかどうか迷ったときの整理方法
実際に転職するべきか、それとも現職にとどまるべきか悩んだら、次のような方法で自身の考えや置かれた状況を整理してみましょう。
不満や不安を書き出してみる
一時の感情で決めるのではなく、客観的に状況を整理してみることが大切です。現在抱えている不満や不安を書き出してみましょう。書き出す過程で自分の思いが整理され、「辞めたい理由」を明確化することができます。
複数の要因がある場合は、その中でも特に解決したいものは何か考え、優先順位を付けておきましょう。
キャリア形成の妨げになるかどうか考える
「辞めたい理由」が、今後のキャリア形成の妨げになりそうかどうか、客観的に判断しましょう。不満に感じる部分を受け入れて現職にとどまった場合、自分が思い描くキャリアプランは実現できるのかどうか、中長期視点で考えてみてください。
自分の努力や工夫で改善できるかどうかを考える
自分の働きかけで現状が改善できるかどうか、検討してみましょう。改善策があるなら、行動に移すことで今の環境が変わり、仕事がしやすくなるかもしれません。努力や工夫をする過程で新たな発見が得られたり、経験値が高まったりするというメリットもあります。
ただし、自分1人では改善できず、協力者もいない、現状が改善しても今の会社では頑張れないと思う場合は、転職を検討してみてもいいでしょう。
転職するメリット・デメリットについて考える
転職によって現在の不満を解消できたり、やりたいことができるようになったりする可能性があります。しかし同時に、現職で満足していたものが転職によって失われるケースもあります。例えば「年収は上がったが、気の合う仲間がいない」「仕事は面白くなったが、プライベートの時間がなくなった」などです。
転職を考えるときはメリットに目を奪われがちですが、デメリットについてもしっかりと考えた上で、総合的に判断しましょう。
転職するタイミングかどうかを考える
転職に最適な時期やタイミングは人によって異なります。例えば大きなプロジェクトに関わっている途中であれば、それを完遂することで、転職活動でプラスの評価を得やすくなるかもしれません。
また、昇進・昇格が近い場合、慣れた仕事で管理職経験を積んでからの方が、転職先の選択肢が広がる可能性もあります。あるいは「結婚・出産を控えている」「住宅ローンの利用を予定している」など、プライベートの事情も踏まえ、動くタイミングとして最適なのかどうかを検討しましょう。
面接で転職理由を聞かれたときの答え方
転職を決意して企業に応募した場合、面接では必ず「転職理由」を聞かれるでしょう。転職理由の伝え方のポイントをご紹介します。
事実ベースで語る
転職理由を聞かれたら、まずは「事実」を伝えることが重要です。好印象を残そうとして建前の転職理由を述べても、採用担当者には見抜かれる可能性があり、かえって疑念を抱かれかねません。転職理由である不満や問題がその企業で解消できるかどうかを確認しづらくなることも考えられます。
ポジティブな退職理由に変換する
事実を正直に伝えるとしても、その転職理由がネガティブであれば、マイナス印象を与えてしまう可能性があります。そこで、同じことを伝えるにしても、ポジティブな表現に変換することをお勧めします。
・給与が安い→成果が報酬に反映される環境で働きたい
・仕事にやりがいがない→責任ある仕事を任せてもらえる環境で働きたい
・残業が多い→生産性が高い働き方がしたい
・人間関係が良くない→風通しの良い職場でチームワークを活かして働きたい
志望動機との一貫性を持たせる
面接では「志望動機」も聞かれます。これに対し、「その企業を選んだ理由」「活かせる経験・スキル」「入社後に実現したいこと」を答えますが、それが「転職理由」と矛盾していると信ぴょう性に欠ける印象を持たれる可能性があります。転職理由と志望動機に一貫性を持たせることで、説得力が高まるでしょう。
転職活動の前にやっておきたいこと
転職を実現させるために、事前に次のことを実践してみてください。
転職の目的を整理する
上記で洗い出した「辞めたい理由」をもとに、転職の目的を整理しましょう。ネガティブな理由であっても、その裏には転職で成し遂げたい前向きな思いが隠れていることもあります。
例えば、「上司の管理や締め付けが厳しく、マネジメント方針に不満」は、「自身のアイディアを活かしながら裁量権を持ってのびのび働きたい」という思いの表れとも言えます。不満の内容を紐解き、自分の仕事観、キャリア観と向き合ってみましょう。
経験・スキルの棚卸しを行う
転職を実現させるために重要なのが「キャリアの棚卸し」。これまでの仕事におけるすべての経験を振り返って整理することで、応募先企業でも活かせる強みやスキルを洗い出していきます。それを応募書類や面接を通して伝えられるようにしましょう。
転職のスケジュールを考える
転職活動にかかる期間は、情報収集~応募・面接~内定・入社までに、おおよそ3カ月が目安と言われています。現職への不満が強く「今すぐ辞めたい」と思っていたとしても、転職活動が長引く可能性も考えて退職時期を冷静に判断しましょう。
携わっているプロジェクトなど、自身の業務のキリがいいタイミングを踏まえ、そこから逆算してスケジュールを立てるといいでしょう。
転職していいか迷ったら転職エージェントに相談してみよう
転職に踏み切ってよいものかどうか迷った場合、転職エージェントに相談してみるのもいいでしょう。転職エージェントのサービスは、転職を決意していなくても利用することができます。キャリアアドバイザーとの対話を通じ、自身の考えが整理でき、目指すキャリアの方向性が見えてくることもあります。
もちろん、転職を決意した場合は希望や経験・スキルに合った求人の紹介が受けられ、豊富な転職サポート実績をベースに幅広いサポートを受けられるので、転職エージェントを最大限に活用してください。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。