「日本にいながら、世界最先端のビジネスモデルやテクノロジーの知見を得たい」。
――そんな思いが実現できるのが、「コンサルティングファーム」です。
今、大手コンサルティングファームでは「ITコンサルタント」を中心とした採用が活況。年間で数百名規模、中には1000人以上を迎え入れる企業もあります。
IT業界からは、プロジェクトマネジャークラスはもちろん、開発現場のエンジニアクラスも含め、コンサルティングファームへの転職事例が増えています。
また、ITの知見がまったくない異業種の若手にも門戸が開かれています。その背景にあるのは、業種・規模問わず活発になっている「グローバル展開」。人口減少によって国内マーケットが縮小に向かう中、各種メーカー・金融・流通など、あらゆる業種の企業が海外マーケットに打って出ようとしています。
そこで立ちはだかるのが、各国の法律や規制、商習慣といった壁です。自社で正確な情報を集め、対処するのは非常に難易度が高い。そこで、世界中に拠点展開するコンサルティングファームの知見を頼る状況となっています。
もちろん、AI(人工知能)/ロボティクス/IoTといったキーワードが存在感を強める中、これまでのビジネスモデルにいかに取り込んでいくかを模索するにあたり、コンサルの力を必要とするケースもあります。
今、コンサルティングファームに転身している人たちが、どんな点にメリットを感じて決断しているのかをご紹介しましょう。
目次
SIerからコンサルへ――「戦略」の段階から支援する力を付ける
SIerからコンサルファームに転職する皆さんからは、こんな声が聴こえてきます。
「海外進出を図る企業はまずコンサルティングファームに依頼し、そこで方向性が決まった後、次の段階でSIerに開発案件が下りてくる構図となっています。自分としては、要件定義が済んだものを作り込むだけでなく、戦略の段階から携わり、顧客の課題を本質の部分から解決したい。そのノウハウを身に付けたい」
コンサルティングファームとしては、戦略策定の経験がなくても、ITの知見がある人材を求めています。もともとITを活用したソリューションを強みとするファームはもちろんのこと、戦略系や監査法人系のファームも、クライアントの課題を解決しようとすると高確率で「IT導入」に行き着きます。そこで、戦略系や監査法人系ファームでもIT人材を積極採用しています。
IT業界出身者にとっては、さまざまなタイプのファームから選択できる環境。
「上流だけを手がけたい」「開発現場と上流、どちらにもスイッチできる方がいい」など、志向や将来のキャリアプランに応じて選ぶことができます。
なお、SIerで年収800万ほどの方であれば、1000万~1100万にアップするケースが多く見られます。
広い業界出身者が「業界経験」を活かしつつ、ITを学ぶ
IT業界以外――メーカー、金融、流通、官公庁など、さまざまな業種出身の20代を「ポテンシャル」を重視して採用する動きも活発です。
コンサルティングファームのクライアントの業種はさまざま。最終的にはIT導入で解決するにしても、そこに至るまでには、「業務改善のコンサルティング」というフェーズがあるため、そこで「業界知識」「業務知識」を活かせるというわけです。
これまでの業界経験を活かしつつ、ITの知見を身に付けることが可能。実際、メーカーで設計を担当していたエンジニア、金融業界の営業職、流通業界の店舗マネジメント経験者など、幅広いバックグラウンドの人が採用されています。
若手の場合、選考で注目されるポイントは「これまでの仕事で、自分なりの工夫をしてきた人物かどうか」。上司の指示に従って業務をこなしてきた人よりも、主体性を持って自分の頭で考えて取り組んできた人が望まれており、そうした姿勢が職務経歴書の中で感じられる人が面接へ進んでいます。
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ファームtoファームへの転職で、理想のスタイルに近づく
もちろん、コンサルティングファーム出身者も歓迎されます。
ファームtoファームの転職では、年収100万程度のアップとなる人が多く、最近ではSAP経験を持つ方が900万円→1200万円にアップしたケースも見られました。
多くのファームでは、パートナーやマネージングディレクターのもとでプロジェクトを遂行するスタイルですが、「自分が目指す方向性や価値観に合う人のもとで働きたい」という動機で別のファームに転職を図る人も見られます。
こうした、ファームtoファームの転職におけるマッチングも、私たち転職エージェントが得意とするところ。
「方針に共感できるパートナー/マネージングディレクター」を見つけ出すことは、いかに人脈が広いコンサルタントといえど、限界があります。
私たちは日々、多くのパートナー、マネージングディレクターの方々と話す機会があります。中には、現在のミッションを遂行しつつ、「実はこんな理想を持っていて、こんなことがやりたい」と、転職エージェントに相談に訪れている方もいらっしゃいますが、そうした情報はもちろん公になっていません。
私たちがお聞きしている、さまざまなパートナー/マネージングディレクターの方々の考え、目指す方向性をお伝えすることで、「自分に合うかどうか」の判断材料にしていただきたいと思います。
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ビジネスの「最先端」を経験することで、その先のキャリアが広がる
あるグローバルコンサルティングファームでは、日本の市場は世界でもトップクラスにあり、1つ上位にある欧州の市場を抜くのも間近、と言われています。日本のコンサルの市場には伸びしろがあるのです。
少し前まで、コンサルティングファームは戦略提案書を数千万円で提供し、「実行するならSIerに依頼してください」というスタンスが多く見られました。
しかし今では手がける領域が広がっています。上流のみにこだわるファームもありますが、開発部隊を自社で抱え、上流から下流まで一貫してサービスを提供するファームもあります。
一方、最先端のテクノロジーへの取り組みとして、クライアントであるメーカーと共同で研究室を設け、共同開発を行う動きも見られます。
ファーム内の体制に目を向けると、これまでセクション内でプロジェクトを完結するスタイルが主流だったのが、横の連携を強化し、「組織横断」スタイルにシフトする動きも見られます。コンサルタントは自身の得意領域を活かして他セクションのプロジェクトにも携わり、より高い価値を発揮できるのです。
今は、産業構造が大きな変革を迎えている時期。これからの未来を形創る世界最先端のビジネスモデル、その実際の成功パターンをもっとも詳細に把握しているのが、コンサルティングファームといえます。
将来的に、「事業会社の経営幹部」というキャリアを描いている方にとっても、最先端の知見と経験を積み上げられるコンサルティングファームは、有効なキャリアパスの一つといえるでしょう。