「今はコンサルティングファームに勤務しているが、事業会社の企画・経営ポジションに転職したい」という皆さんに、現在の求人傾向をお伝えします。「大手企業へ」「ベンチャー企業へ」「起業前に経験を積みたい」「海外で勤務したい」など、志望のタイプ別にご紹介します。
【前回の記事を読む】ポストコンサルの選択肢【1】コンサルティングファームからコンサルティングファームへ
目次
「大手企業の事業企画、経営企画のポジションに就きたい」タイプ
AI、IoTをはじめテクノロジーの進化が進み、ビジネス環境や業界勢力図が変わっていく中、多くの企業がビジネスモデルの変革、新規事業の創出に力を入れています。そこで、事業の開発・創出ができる人材のニーズが高まっています。
その約8割はITがからむプロジェクトですので、AI、IoT、あるいはオープンイノベーションなどの知見や経験を持つコンサル出身者にとっては転職チャンスが豊富です。
また、事業創出にあたっては投資・M&Aという手法も活用されますので、そうしたプロジェクトの経験者も重宝されます。
「有望ベンチャーのCxOになりたい」タイプ
ベンチャーの経営ボードを志望する皆さんにまずお伝えしておきたいのは、これまで大手企業の経営企画や事業変革の案件を中心に手がけてきた方の場合、「アーリーステージのベンチャーはフィットしづらい」という事実です。
アーリーステージほど人材ニーズは「エンジニア」が優位。まだ商品やサービスをつくらなければならないフェーズなので「企画担当」はまだ不要なのです。
その次にニーズが来るのは「CFO」。つまりは資金調達ができる人です。IPOが視野に入ってくると会計の知識も求められます。その次は、「営業」「ビジネスディベロップメント」などセールスを展開する人材。経営企画人材は意外とニーズが発生しないのです。
そこで、ベンチャーのCxOを目指す方にご提案するのは、手前で1つ、別の経験を積むというキャリアステップです。戦略コンサルの経験がある方であれば、PEファンドやベンチャーキャピタルへの転職は可能です。そうした企業で投資や会計の知識を身に付け、ベンチャーの支援を経験するのです。そのキャリアをもってすれば、有望ベンチャーに入社し、成長を支えるミッションを担える可能性が高まるでしょう。PEファンドに勤務し、投資先のCxOに就任する展開もあり得ます。
「いずれは起業したい。そのために経営経験を積みたい」タイプ
コンサルタントの皆さんの中には、もともと「起業」という目標があり、経営の知識を付けるためにコンサルティングファームに入った…という方も多数いらっしゃいます。
近い将来の起業を見据え、「いきなり独立して経営者になるには不安があるから、まずはベンチャー企業で経営ボードを経験しておきたい」というご相談もよくお受けします。しかし、先述のとおり、アーリーステージのベンチャーではなかなか受け入れられません。
そこで転職先の選択肢の一つとしてお勧めするのは、「副業OKの会社」です。昨今、メガベンチャーの多くは副業を認めており、かつコンサル出身者も積極採用しています。メガベンチャーに勤務して安定収入を確保しつつ、副業として自分で起業してみる、あるいはアーリーベンチャーの経営支援をする。そうして副業の方が軌道に乗れば、そちらに一本化すればいいのです。
「海外で勤務したい」
「事業会社に転職して海外に勤務したい」。このご相談もよくいただくのですが、残念ながら非常に難しいのが現実です。昨今のトレンドでは、海外に日本人スタッフを駐在させることはあまりありません。海外現地法人の運営は現地スタッフが担い、日本からはリモートでマネジメントするスタイルが主流となっています。
「海外に住む」ことを望むのであれば、いずれはリモートで働けるような仕事やポジションへの転職を目指す方が現実的でしょう。
あるいは「最先端の知見を吸収したい」という理由で海外を志向するのであれば、事業会社より戦略コンサルティングファームなどに籍を置き、海外がからむプロジェクトに参加して海外出張・視察の機会を持つ方が得策だと思います。
知っておきたい事実――「事業会社に転職後、コンサルに戻る人もいる」
「コンサルは改善提案するだけで、実行するのは事業会社自身。成果まで見届けられない。当事者として取り組みたい」。
多くのコンサルの方が、そんな想いで事業会社に転職していかれます。
ところが、しばらくして「やはりコンサルファームに戻りたい」と、再度転職活動をする方も少なくないのです。その理由は次のとおり。
●コンサルの頃は、第三者の立場だったから提案を素直に聞いてもらえたが、社員になると「現場のことをわかってない」と反発されることも多い。変革したいと思って入ったが、結局進まない
●組織に入ると、何かと「調整」業務に時間とパワーを取られる。コンサルの頃の方がシンプルに「課題解決」に向き合えた
こうして事業会社からコンサルファームに戻っていく方も一定数いらっしゃるのです。
もちろん、上記はすべての事業会社に当てはまるわけではなく、その会社の組織体制や風土にもよるところも大きいのですが…。
こうした可能性も想定した上で、自分が本当に取り組みたいこと、積みたいキャリアを踏まえ、それにふさわしい企業を選ぶことが大切です。