中途採用の選考過程に筆記試験を実施する企業がありますが、どのような準備をしておいたらよいのでしょうか。また、筆記試験には複数の種類があるため、それぞれの内容や目的を理解しておくことも大切です。
ここでは筆記試験の内容や準備、対策について組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏にお伺いしました。
企業が筆記試験を実施する理由
中途採用での筆記試験は、面接では測りにくい「基礎能力」を判断することが主な目的です。また、職種によっては即戦力としてどの程度の専門知識を持っているかが重要になることもあります。そのため、実務に直結する専門知識を問う筆記試験を行うこともあります。
筆記試験の種類は大きく分けて3つあります。
- 適性を判断する「能力・性格検査」
- 文章力や数的処理能力、時事問題などの基礎学力・知識を問う「一般常識」
- 実務上で必要な経験・実務スキルをみる「論文・専門領域」
それぞれの筆記試験は目的や出題傾向が異なるため、事前に把握しておきましょう。
どんな筆記試験があるの?
代表的な筆記試験や企業独自の試験の内容について紹介します。
適性検査
適性検査とは、選考を行う企業が、応募者の人物像や能力を測ることを目的に実施する検査です。一般的に「性格検査」と「能力検査」があります。
一般常識
一般常識の試験では、基本的な学力を問う問題や時事問題が出題されることが多いです。日ごろから幅広いニュースに関心を寄せておき、試験前は復習しておくとよいでしょう。
専門知識を問う試験
ITエンジニアや金融業界、研究開発職などの採用では、職務遂行力を判断する試験として専門知識を問う試験が実施されることがあります。業界や職種によって内容は異なりますが、研究開発職であれば物理や化学に関する知識、ITエンジニアであればプログラミングスキルなどです。
企業独自の試験
自社の採用活動のために、自社で独自に作成した試験を実施する場合もあります。例えば、「当社の〇〇について説明してください」などを記述式で回答する試験、あるいは入社後に取り組みたい業務や抱負、時事問題や業界で話題になっている情報に関する意見を論文形式で回答する試験です。
特に論文は、業界に関する知識はもちろん、論理的思考力や文章力などを総合的に測ることができると考えられているため、コンサルタント職など実務上文章で説明する力が求められる職種で課されることが多い筆記試験です。
筆記試験の準備方法について
まずは、応募先企業の過去の筆記試験の傾向を調べてみましょう。その後の筆記試験ごとの準備方法は次のとおりです。
能力検査・性格検査
能力検査に関しては、設問数が多い試験の場合、制限時間内に終えられるように市販の問題集などを活用して試験問題の回答に慣れておくとよいでしょう。
一方で性格検査に関しては、良い印象を与えたいという思いから、実際とは異なる回答を選ぼうとしてしまいがちですが、この検査は一般的に「性格の特性を測るもの」といわれています。面接担当者から実際に面接で会った印象と、性格検査の結果が矛盾していると判断されないように、普段の自分に当てはまる回答を正直に選びましょう。性格を取り繕って回答した場合、入社後のミスマッチにつながってしまう可能性もあります。
一般常識
日頃から、テレビやネットのニュース、新聞で取り上げられている出来事はチェックしましょう。特に転職を検討している業界の動きは意見などを問われる可能性もあるため、細かく状況を確認しておくことをおすすめします。
論文
応募先企業の人事担当者や、転職エージェントを利用中であれば担当のキャリアアドバイザーに、過去の傾向について相談し、事前に出題されそうなテーマを想定して文章を書く練習をする方法もあります。最近の話題となったニュースについて自分なりの考えをまとめておくのもおすすめです。
なお、自分の考えをまとめ、論理性を保った文章を制限時間内に書き上げることは難しい場合もあります。そのため、準備を行ったうえで試験に臨むことをおすすめします。
専門知識の試験
専門職としての実務経験がある場合は、これまで身に付けた知識を改めて確認しておくとよいでしょう。また、異業界の専門職にチャレンジする場合は、業界の専門用語などをチェックするなどの準備を行うことがおすすめです。
筆記試験が行われるタイミング
筆記試験が行われるタイミングは企業によって異なります。筆記試験が行われることの多いタイミングと目的を紹介します。
一次選考として
応募者が多い企業では、書類選考の前に一次選考として筆記試験を実施することがあります。この場合、筆記試験の結果が一次選考の合否に影響するため、しっかりと準備をしておくとよいでしょう。
面接と同日
筆記試験が面接と同日に行われるケースもあります。この場合、面接の前後に筆記試験が実施されることが一般的です。面接と同日に筆記試験が行われる場合、応募書類・面接と合わせた総合的な判断材料としてみられます。
具体的には、面接担当者が受けた印象や評価が偏っていないかなどを客観的に判断するために活用されます。
その他のタイミング
まれに最終選考時に筆記試験が行われることがあります。最終選考時に企業が筆記試験を実施する場合の意図は「書類選考と面接を数回重ねて選考を重ねてきた有力候補者数名の中から、より適した人を採用したい」というものです。
この場合、専門的・具体的な課題が出題されることが多いでしょう。例えば、その企業が実際に抱えている事業やサービス、組織などの課題に対する解決案を求職者に考えてもらうようなケースがあります。
筆記試験の内容は、企業ごとに異なる
筆記試験の内容は企業によりさまざまなので、試験の準備も企業によって異なります。転職エージェントを利用している場合、キャリアアドバイザーが応募先企業の問題の傾向や対策を把握していることもあるので、不安がある方は相談してみることをおすすめします。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。