転職エージェントを利用したいと考えた時、費用がかかるのか疑問を持つ人も少なくないようです。原則として、転職エージェントでは、求職者は利用料を支払う必要はありません。
本記事では、転職エージェントを利用する際に費用がかからない理由や転職エージェントの費用に関する疑問と回答を、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説いただきました。
目次
なぜ、求職者が転職エージェントを利用するのに費用はかからないのか?
本章では、求職者が転職エージェントを無料で利用できる下記2つの理由について、転職エージェントの仕組みについても触れながら解説します。
- 職業安定法で定められているから
- 転職エージェントの収入は企業からの成功報酬だから
転職エージェントの収入は企業からの成功報酬だから
転職エージェントの主な収入源は「求人企業からの報酬」です。一方、一般的な転職エージェントのビジネスモデルは「成功報酬型」です。求人企業から人材紹介の依頼を受け、要件に合う求職者を紹介し、採用に至った場合、企業側から転職エージェントに成功報酬が支払われる仕組みとなっています。
職業安定法で定められているから
転職エージェントは「職業安定法」に基づき、「有料職業紹介事業」の許可を受けています。有料職業紹介事業者には事業運営にあたってさまざまな規制が課せられていますが、その一つとして、「求職者から手数料を徴収してはならない」とされています
【職業安定法 第三十二条の三】
第三十条第一項の許可を受けた者(以下「有料職業紹介事業者」という。)は、次に掲げる場合を除き、職業紹介に関し、いかなる名義でも、実費その他の手数料又は報酬を受けてはならない。
職業紹介に通常必要となる経費等を勘案して厚生労働省令で定める種類及び額の手数料を徴収する場合
あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表(手数料の種類、額その他手数料に関する事項を定めた表をいう。)に基づき手数料を徴収する場合
費用をかけてでも企業が転職エージェントを利用する3つの理由
費用をかけてでも企業が転職エージェントを利用する理由として、次の3つの理由があるからだと考えられます。
- 採用活動を効率化したい
- 非公開で募集したい
- 初期コストがかからない
理由1:採用活動を効率化したい
採用活動を進める際は、社内の人事担当者だけでは手が回らないこともあります。そこで転職エージェントが企業の要望に沿った採用ターゲットの設定、選考方法の提案などのサポートを行います。
また、転職エージェントに登録した求職者の中から企業が求める人材を探してマッチングすることで、採用ターゲットに合った応募者が集まりやすくなり、ミスマッチや内定辞退の防止につながることが考えられます。
理由2:非公開で募集したい
新規事業に関わる人材や幹部人材など、社内外に知られずに採用活動を進める場合、ホームページや求人サイトなどでの公募を行わず、転職エージェントを通じて非公開で募集することがあります。
理由3:初期コストがかからない
採用できるかどうかわからない状況で、求人サイトへの広告出稿などの初期コストをかけたくないと考える場合、完全成功報酬型である転職エージェントを利用することもあります。
リクルートエージェントが無料で提供している5つのサービス
ここでは、リクルートエージェントが無料で提供している、次の5つのサービスについて解説します。
- キャリアアドバイス
- 求人紹介
- 応募書類についてのアドバイス
- 面接の日程調整
- 面接対策
サービス1:キャリアアドバイス
これまでの経験や身につけたスキルを振り返って整理する「キャリアの棚卸し」をサポートします。求職者自身が認識していない強みやアピールポイントを発見したり、求職者が想定していなかった転職先候補の選択肢を提案したりすることもあります。今回の転職だけでなく、中長期を見据えたキャリアアプランのアドバイスを行うこともあります。
サービス2:求人紹介
転職サイトや企業ホームページには載っていない「非公開求人」を取り扱っていることもあり、求職者の経験・スキルや適性、ニーズに合わせた求人を紹介します。採用背景や求める役割、職場環境や風土など、応募するかどうかを検討するための判断材料を提供することもあります。
サービス3:応募書類についてのアドバイス
履歴書や職務経歴書など応募書類作成時のアドバイスや添削を行います。「この企業には、このポイントをアピールすると良い」「未経験の職種に応募する場合は、この経験をもとにアプローチしたほうが効果的」など、これまでリクルートエージェントが蓄積したノウハウや事例などをもとに、アピール効果が高い応募書類作成をサポートします。
サービス4:面接の日程調整
転職サイトや企業の採用ページから直接応募した場合、書類選考後の面接の日程調整は自分自身で行うことになりますが、リクルートエージェントでは企業と求職者双方の予定を確認し、日程調整をサポートします。
サービス5:面接対策
面接で聞かれる質問の意図を踏まえ、どう回答するかなど面接対策をサポートを行う場合もあります。応募先企業が選考でどのようなポイントを重視しているかなどのアドバイスをもらえることもあるでしょう。応募先企業との面接終了後は、企業からのフィードバックを踏まえ、次の面接の対策を相談することもできるでしょう。
転職活動全体では費用がかかることもある
ここでは、転職活動の費用について、下記2つの観点から解説します。
- 転職活動で自己負担になる必要経費
- 転職活動で注意したいお金について
転職エージェントでは、多くの場合利用費はかかりません。しかし、転職活動全体では、何らかの活動費やコストが発生することもあります。
お金の面で不安を感じている人は、ぜひ参考にしてみてください。
転職活動で自己負担になる必要経費
転職活動で必要になる費用はおよそ数万円程度と言われています。応募社数が多い場合や、スーツの購入費、交通費など出費がかさんだ場合には、数万円以上の費用がかかることもあります。
なお、転職活動にかかる基本的な費用には、以下のような項目があります。
- 履歴書の用紙代:数百円~数千円程度
- 証明写真代:数百円~数万円程度
- 応募書類の郵送費:数百円~数千円程度
- 面接の交通費:数百円~数万円程度
- 携帯電話、インターネットなどの通信費:数千円程度
- 面接用のスーツや靴などの服飾費(購入する場合):数万円程度
- 家賃や生活費(退職してから転職活動する場合):数万円~数十万円程度
資金面の不安が強くなり、焦って意に沿わない企業に転職を決めてしまうこともあるかもしれません。納得できる転職を実現するためにも、活動資金は十分な備えを用意しておきましょう。
転職活動で注意したいお金について
転職活動を始めるにあたっては、次に紹介する3点についてもお金が関係する場合があるため、理解を深めておきましょう。
- 退職日と社会保険料の関係
- 退職日とボーナス支給の関係
- 再就職手当の受給条件や金額
社会保険被保険者が資格を喪失する際は、次の内容が適用されます。
- 退職日の翌日が「資格喪失日」となる。
- 「資格喪失日」を含む月は、それまで払っていた保険料は不要。
- 「資格喪失日」以降、国民年金・国民健康保険等に加入し保険料を払うか、配偶者、親、家族などの被扶養者となる。
月の途中で退職する場合、給与から自動で天引きされていた社会保険料が退職月から天引きされなくなります。翌月1日に新しい会社に入社する場合でも退職月分の保険料は、加入保険の変更手続き(居住地の自治体で手続き)を行って保険料を支払うか、被扶養者になる(扶養者の会社に手続き依頼)ことで対応する必要があります。
一方、月末日を退職日にすれば、資格喪失日は翌月1日となり、退職月分の社会保険料は給与から天引きされます。翌月以降の社会保険料は、転職先の企業から支給される給与天引きで支払われることになります。
このように、退職日が数日異なるだけで、保険者資格の種類を変更した上で、自分で社会保険料を全額納めたり、被扶養者になる手続きが発生したりするため、退職日の設定には注意が必要です。
また、ボーナス受給後に退職をしたいと考える場合は、「就業規則」や「給与規程(賃金規程)」に記載されている内容を確認しましょう。ボーナスの支給規程は企業によって異なりますが、多くの企業では、「ボーナス支給日に在籍していなければ支給しない」などの規定が記載されています。ただし、就業規則には「退職希望日の○カ月前までに退職を申し出なければならない」といった退職日に関する規程も設けられている場合があります。退職日は、双方の規定を考慮しながら調整する必要があるでしょう。
さらに転職の際は、再就職が早期に決まった場合に給付される『再就職手当』と呼ばれる手当を受給できることもあります。離職後、再就職が決まると支給される手当ですが、受給にあたっては条件が定められています。
詳しくは下記記事で解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
転職エージェントの費用に関してよくあるQ&A
本章では、転職エージェントの費用に関して、多くの求職者が抱く疑問と疑問に対する回答を紹介します。
Q1.転職エージェントに登録だけして求人に応募しなくても費用はかからない?
A.転職エージェントに登録をしたものの、何らかの事情で求人応募に至らなくても費用は発生しません。
キャリアアドバイザーとの面談で、自身の市場価値や転職市場の動向、今後のキャリアの可能性などについて情報提供やアドバイスを受けた結果、「今は転職のタイミングではない」「現職に残ってもっと経験を積もう」と判断する場合もあるでしょう。
転職意思が固まっておらず、「転職するかどうか迷っている」「キャリアの方向性に悩んでいる」といった状態であっても、転職エージェントを利用できます。無料で利用できるため、まずは登録から始めてみると良いでしょう。
Q2.転職エージェントとの面談・相談だけして選考を進めなくても費用はかからない?
A.転職エージェントとの面談・相談をした後、選考を進めなくても費用がかかることはありません。転職支援のプロとの面談や相談を通じて心境が変わったり、時には転職エージェントから「今は転職を見送ったほうが良い」とアドバイスされたりすることもあるかもしれません。
無理に選考を進める必要はないため、今のキャリアに不安や悩みを抱えている場合は、ぜひ一度面談や相談を受けてみると良いでしょう。
Q3.複数の転職エージェントを掛け持ちして他で内定しても費用はかからない?
A.他の転職エージェントで内定が決まった場合も、違約金など何らかの費用を支払うことはありません。
ただし、選考中の企業がある場合や転職支援を受けている最中に他の転職エージェントで内定が決まった時は、すぐにその旨を申し出るようにしましょう。
Q4.転職エージェントを利用して内定を獲得した後に、内定を辞退しても費用はかからない?
A.転職エージェントでは「登録」「面談」「相談」「選考」「内定」「入社」のどの段階であっても、求職者が料金を支払うことはありません。転職エージェント経由で応募した企業の内定を辞退する場合も同様です。入社を迷った場合は、転職エージェントに相談すれば、迷っているポイントについて企業に直接確認してくれたり、面談の場を設けるように調整してくれたりすることもあります。
Q5.転職エージェントを利用して転職をした後に、早期退職しても費用はかからない?
A.転職エージェント経由で入社した企業を早期退職したとしても、違約金などの費用が発生することはありません。料金が発生しないとはいえ、ミスマッチによる早期退職はできるだけ未然に防ぐことが望ましいでしょう。
中には、アフターフォローを提供している転職エージェントもあります。転職先企業での様子や困りごとを相談できる場合もあるため、まずはアフターフォローを利用してみるのも1つです。場合によっては、これまでの支援経験をもとにしたアドバイスを受けられたり、転職先企業の担当者に話をしてくれたりすることもあるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2022年11月30日
記事更新日:2023年07月04日
記事更新日:2024年03月21日
記事更新日:2025年01月08日 リクルートエージェント編集部