転職エージェントにはさまざまな転職活動のサポート機能がありますが、転職エージェントを使わずに転職を実現する方もいます。転職エージェントが自身にとって役に立つのかどうか、転職エージェントを使わない方がいい人の特徴、使うメリット・使わないデメリットなどについて、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏がアドバイスします。
転職エージェントを使わない方がいい人の特徴
次のような状況の方は、転職エージェントを使わない、あるいは活用を最小限にとどめた方が、転職活動がスムーズに進む可能性があります。
志望先の企業を絞り込んでいる
「この企業のこの求人に応募する」と決めている方は、転職エージェントを介さず独自で応募してもいいでしょう。特に、同業界・同職種への転職を希望していて、業界事情や給与の相場観を理解している方は、転職エージェントからの情報提供やアドバイスを必要としないかもしれません。
ただし、応募書類の書き方や面接対策などをサポートしてもらいたい場合は、活用してもいいでしょう。また、志望企業への入社が叶わなかった場合、条件が近い求人を紹介してもらえることが期待できます。
担当者とのやりとりが面倒
転職エージェントのキャリアアドバイザーは、求職者とコミュニケーションを図りながら転職支援を行います。転職活動を進めるうちに、考えや希望条件が変わることはよくありますが、その場合は、都度キャリアアドバイザーに伝える必要があります。
やりとりする時間を取れなかったり、やりとりそのものを面倒と感じたりする場合、独自で転職活動を進める方がスムーズなケースもあります。
興味のない企業を紹介されたくない
転職エージェントからは希望条件にマッチする求人が紹介されますが、「何となくピンとこない」といったこともあるでしょう。そのようなとき、断ることに対して「申し訳ない」「面倒」などと感じる方は、そのやりとりがストレスになるかもしれません。
しかしながら、最初はあまり興味を持てない求人でも、試しに企業の人と対話してみた結果、「面白そう」「この人たちと働きたい」と、入社意欲が高まるケースはよくあります。想定外の求人を紹介されることは、新たな可能性を発見するチャンスとも言えるでしょう。
転職エージェントを使うメリット
転職エージェントを使うメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
無料でサービスを受けることができる
転職エージェントには、転職市場の情報提供・キャリア相談・求人紹介・面接対策や応募書類の作成のアドバイス・面接日程の調整など、多様なサービスがありますが、基本的に無料で利用することができます。
転職エージェントは、紹介した求職者が企業へ入社したタイミングで、企業から報酬を受け取る仕組みです。そのため、求職者側は無料で利用することができるのです。
未経験の業界・職種の情報を得られる
特に未知の業界や職種へのキャリアチェンジを検討している場合は、さまざまな業界・職種の採用動向をつかんでいる転職エージェントから情報を得ることで、自分にマッチする業界・職種を選びやすくなるでしょう。
思いがけない業界や企業で、自身の経験・スキルが活かせることに気付けるケースもあります。
転職市場の動向・相場観を知っている
同じ業界・職種・企業であっても、時期によって求人市場の状況は異なります。例えば「今は即戦力採用が中心」「今は未経験者対象の大量採用が活発」など、半年~1年程度スパンでも市況は変わることもあります。
その時々の転職可能性や難易度、給与相場などについて転職エージェントから情報を得て、戦略を立てることができるかもしれません。
キャリアアドバイザーの伴走が心強い
転職活動を進める中には、迷いや不安を抱くこともあります。転職エージェントのキャリアアドバイザーが伴走し、いつでも相談できるのは心強く感じるでしょう。
転職エージェントを使わないデメリット
転職エージェントを使わない場合、次のようなデメリットが生じると考えられます。
転職支援のプロからアドバイスをもらえない
優れた経験・スキルを持っていたとしても、自身の強みを応募書類や面接などでうまくアピールできず、採用を見送られてしまうケースは少なくないようです。
転職エージェントは、さまざまな転職活動ノウハウを持っているほか、企業が求める人物像や選考で重視するポイントなどを把握していることもあります。転職支援のプロのアドバイスを受けることで、選考通過の確率を高められるでしょう。
非公開求人の紹介を受けられない
転職エージェントは、一般に公開されていない非公開求人を数多く取り扱っています。非公開求人には、新規事業開発のポジションなど他社に知られたくない経営戦略に基づく求人、人気が高く応募過多を避けるために一般公開しない求人など、魅力的な求人案件が含まれています。
転職エージェントを利用しない場合、非公開求人の存在に気付けず、応募機会を損失する可能性があります。
応募企業のやりとりにまつわるサポートが受けられない
転職活動では、「応募~面接日程の調整~勤務条件の確認~入社日の交渉」に至るまで、応募企業と確認や交渉をしなければなりません。
仕事と並行して転職活動をしていたり、数多くの企業に応募していたりする場合、一人ですべてを行うのは難しいものです。
転職エージェントはこうした応募企業とのやりとりをサポートしてくれますが、独自で行うとなると時間や手間がかかるほか、心理的負担を感じることもあります。
転職エージェントを使わない場合の転職方法
転職エージェントを使わずに転職活動を行う場合、次のような方法があります。自身の目的や状況に応じて適切な手段を活用しましょう。
転職サイトを活用する
転職サイトに掲載されている求人を閲覧し、応募する候補企業を探します。幅広い業界・職種の求人が揃う「総合型転職サイト」のほか、特定の業界・職種に特化した求人を掲載している「専門型転職サイト」があります。
自身が目指す業界・職種の求人が多いサイトを活用するといいでしょう。自分の都合のよいタイミングで、求人の検索・検討・応募をすることが可能ですが、求人数が多すぎてマッチする求人を選び出すのが難しいこともあります。
転職スカウトサービスに登録する
転職サイトのスカウトサービスに匿名で職務経歴・希望条件を登録しておくと、求人企業や転職エージェントなどから「スカウトメール」が届きます。
自分で求人を探すことなく、自分の経験・スキルが活かせる求人の情報が手に入ります。想定していなかった選択肢に気付けることもあるでしょう。
企業の公式採用サイトに直接応募する
興味がある企業のホームページ内にある公式の採用サイトなどを見て、応募します。閲覧したタイミングで自分にマッチするポジションの求人が出ているとはかぎりませんので、転職実現まで時間がかかる可能性もあります。
ハローワークを利用する
ハローワーク(公共職業安定所)は、国が運営している職業紹介機関です。全国に拠点があり、幅広い職種の求人情報を入手することができます。
友人・知人などから紹介を受ける
興味がある企業に勤務している知人・友人に頼み、採用担当者に紹介してもらう方法もあります。近年は、自社社員が友人・知人に声をかけて応募を促す「リファラル採用」を制度化している企業が増えており、この方法を活用して転職に至る可能性が高まっていると言えるでしょう。
しかしながら、紹介者への気遣いから、「条件交渉をしづらい」「入社後にミスマッチに気付いても退職しづらい」といったデメリットを感じるケースもあるようです。
SNSなどをチェックして応募する
採用活動にSNSを活用する企業が増えています。SNSで採用に関する情報を発信していることもあるため、チェックしてみてもいいでしょう。企業によっては公式の採用サイトよりカジュアルな情報が投稿されていることもあり、風土やカルチャーをつかめる可能性があります。
転職イベントに参加する
「転職フェア」などのイベントには、さまざまな求人企業が出展しています。会場に足を運ぶと、1日で複数の企業の採用担当者・社員と直接話すことができます。キャリアアドバイザーによる無料のキャリア相談コーナーが設けられていることもあります。
「アルムナイ」ネットワークを活用する
近年、自社から「卒業した人(アルムナイ)」のネットワークを構築し、アルムナイを再度迎え入れる採用手法を取り入れる企業が増えています。つまり「出戻り」のチャンスがありますので、過去に勤務していた企業がアルムナイ採用を行っているかどうかを確認してみるのも一つの方法です。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2023年06月29日
記事更新日:2024年08月29日 リクルートエージェント編集部