
転職活動を進める中で「思うように転職先が決まらない」「選考が思うように進まなくて辛い」などの焦りや不安を抱えてしまうケースが見られます。また、「早く転職先を決めたい」という焦りから、意に沿わない転職先を選んで後悔するケースもあります。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が、転職先が決まらない理由の例や打開するための方法、辛い時期の乗り越え方などを解説します。
目次
そもそも転職が決まるまでの期間はどのくらい?
「転職先が決まるまではどのくらい?」「どれくらい長引いていたら危機感を持つべきなのか?」と考えている人もいるかもしれません。ここでは、転職活動にかかる期間の考え方を紹介します。
一般的な転職活動の期間は3カ月程度
転職活動にかかる期間は人それぞれですが、求人を探し始めてから面接、内定獲得、引継ぎまで含め、「3カ月程度」が一般的です。特に、在職中に転職活動を行う場合は、面接の日程調整などが難しく、時間がかかってしまいがちです。また、あまり求人が多くない条件・ポジションを希望している場合も、時間がかかる傾向があります。
こうした場合は、転職活動が想定より長引くケースもあるので、焦らず客観的に自分の状況を見つめ直しましょう
離職から再就職が決まるまでの期間は「1カ月未満」が最多
厚生労働省の「令和2年転職者実態調査の概況」によれば、転職者が直前の勤め先を離職してから現在の勤め先に再就職が決まるまでの期間は、「1カ月未満」が最も多く27.6%を占めています。次いで「離職期間なし」が26.1%、「1カ月以上2カ月未満」が13.3%、「2カ月以上4カ月未満」が12.9%となっていました。
応募企業の見直しやアピール要素の改善で決まるケースもある
2〜3カ月間、転職活動をしても選考がうまく進まない人は珍しくないようです。例えば、20社を受けても転職先が決まらなかったケースもあります。
しかし、なかなか転職先が決まらずに苦労した場合でも、応募企業の見直しや、応募書類の内容、面接でアピールするポイントなどを改善した結果、転職先が決まるケースもあります。
焦りや辛さにとらわれるよりも、選考がうまく進まない人の特徴を把握し、改善していくことが大事です。自分を求めてくれる企業は必ずあるものだと考え、以降を参考に改善につなげていきましょう。
転職先が決まらない理由とは?考えられるケースを紹介
「転職先が決まらない理由」で考えられる一例を紹介します。
経験・スキルを適切にアピールできていない
経験・スキルは十分にありながら、適切なアピールができていないため、応募企業に伝わっていないケースがあります。こうした場合は「職務経歴書を上手にまとめられず、書類選考に通過できない」「書類選考は通過できても、面接で適切なアピールができていない」という2つのケースが考えられます。
まずは書類選考の通過率を確認してみましょう。書類選考に全く通過できていないのであれば、応募書類を見直す必要があります。一方、書類選考に通過しているのに内定に至っていない場合は、面接で自分の経験・スキルをアピールできていない可能性があります。
企業の目線を意識していない
「経験・スキルをアピールしなければ」と焦るあまり、面接で自分がアピールしたいことのみを一方的に伝えてしまうケースも見られます。企業の目線を意識せず、求める人物像や能力にマッチしないことをアピールしても、評価にはつながりにくいでしょう。
採用担当者は、経験・スキルを活かしてどのように自社で成果を出すことができるのかを知りたいと考えています。ただ自分の経験・スキル・実績を伝えるのではなく、応募企業の目線を意識したアピールで、入社後にどう活躍・貢献できるのかを採用担当者にイメージしてもらうことが大事です。
応募する企業や職種が自分の経験・スキルにマッチしていない
「仕事内容が面白そう」「有名企業だから」など、自分の興味関心のみをベースに企業選びをしているために、転職先がなかなか決まらないケースもあります。そもそもの自分の経験・スキルが、応募企業が求める人材要件とマッチしていない場合は、選考通過も難しいでしょう。
特に、有名・大手企業や、人気の高い職種、条件の良い求人は、応募者数が多い傾向がある上、ほかの求職者の経験・スキルが高い可能性もあります。興味を持った企業に応募すること自体に問題はありませんが、自分の経験・スキルにマッチしているかを考えた上で応募する企業を選ぶことは、選考通過において非常に重要なポイントとなるでしょう。
「転職先がなかなか決まらない…」と悩んでいる場合は、応募企業を見つめ直すことも大事です。
応募企業を絞り込みすぎている
応募企業を絞り込みすぎていることが理由で、転職がなかなか決まらないケースもあります。例えば、「転職先に対する希望条件が多い」「希望する年収・ポジション・勤務地などに強いこだわりがある」「転職するなら大手企業のみと決めている」などの場合は、応募企業も限られてしまいやすいと言えるでしょう。
転職においては希望条件を叶えることも大事ですが、絞り込みすぎずに幅を広げてみることで、納得できる転職先が見つかる可能性もあります。
「今の仕事を辞めたい」が転職理由になっている
今の仕事や職場に不満があり、「早く辞めたい」という思いだけが転職理由になっているケースです。面接で説得力のある転職理由を伝えることができなければ、評価につながりにくいでしょう。また、現職の不満をそのまま伝えれば、ネガティブな印象を与えてしまう可能性もあります。
「今の仕事を辞めたい」という思いをきっかけに転職活動を始めることに問題はありません。しかし、転職先で何を実現したいのかを明確に伝えることができなければ、採用担当者も入社後に活躍するイメージができないでしょう。また、現職への不満のみが転職理由だった場合は、「入社しても同じことを繰り返すのでは?」と早期離職を懸念される可能性もあります。
「転職が決まらない!」を打開する4つの方法
「なかなか転職先が決まらない…」そのような状況を打開するために役立つ4つの方法を紹介します。
1:事前準備を再度しっかり行う
自分にどのような強みや得意分野があるのかを明確にしていない場合、活躍できそうな仕事も探しにくくなるでしょう。反対に、自分の強みを理解していれば、それを活かせる企業を選びやすくなりますし、選考の通過率も高められるかもしれません。過去の経験を振り返って、自分の強みや得意分野を明らかにしておきましょう。
また、自分の強みや経験・スキルを活かせる職場であれば、入社後の活躍可能性は高まります。求人を探すときは、できるだけ「自分の強みや経験・スキルと共通点がある企業・仕事」を探すことがポイントです。求人に記載されている事業内容や仕事内容、求める人物像などを確認して自分との共通点を探し、自己PRや志望動機でアピールしましょう。
2:応募企業の幅を広げる
幅広い企業を見ていくことで、志望している業界・職種以外でも、自分の経験・スキルや素養にマッチするものが見つかる可能性があります。これまで視野に入れていなかった業界・職種も検討してみましょう。
自分の経験・スキルに紐づくキーワードを抽出してみることもおすすめです。転職サイトの検索に使用したり、転職エージェントにキーワードをもとに企業を探してもらったりすれば、意外な求人が見つかる可能性があります。
また、応募企業を絞り込みすぎず、一定の応募社数を担保することで、よりスピード感を持って転職活動を進められる可能性があるでしょう。複数社の選考に進む中では「1社決まらなかったら、1社追加する」などで応募社数を担保し、今後の可能性を随時広げておけば、より安心できるでしょう。
3:応募書類を見直す
少しでも応募企業が求めている経験があれば、職務経歴書に記載しましょう。例えば、先輩社員のプロジェクトをサポートした場合、「自分がメイン担当ではないから」と書かないケースもありますが、サポート経験もプラスの評価になる可能性はあります。また、応募企業の仕事にマッチしない経験・スキルは、箇条書きでまとめるなど最小限とし、できるだけマッチする経験・スキルをアピールしましょう。
職務経歴書では、応募企業の仕事に活かせる経験を具体的に記載することも重要です。「どのような課題に対して」「どのような戦略・計画を実行し」「どのような成果・実績を挙げ」「どのような学び・気づきを得たのか」まで、しっかりと書き、プロジェクト体制や予算、成果や実績などを数値で記載すると良いでしょう。
4:面接対策をしっかり行う
面接で的確なアピールをするためには、面接対策をしっかり行うことが重要です。面接でよく聞かれる想定質問に対し、どのように答えるのか準備をしておきましょう。
<面接でよく聞かれる想定質問>
- 転職理由を教えてください
- 志望動機をお話しください
- 自己PRをお願いします
- 入社したらどのような仕事をしたいですか?
- この仕事には、何が大切だと思いますか?
- あなたの仕事観を教えてください
- 仕事上の成功談、失敗談を教えてください
また、中途採用の面接は2~3回実施される傾向があり、一般的に、面接段階によって担当者の職位やポジションが違い、面接で確認するポイントも違うケースもあります。企業によって面接担当者の考え方は異なるため、事前に確認することが必要ですが、以下に、その一例を紹介するので、参考にしてみましょう。
<面接担当者の職位の一例と、面接で確認するポイントの傾向>
<1次面接>
人事担当者が担当。「採用基準を満たす人物であるか」「社風にマッチするか」などを見ている傾向がある。
<2次面接>
現場責任者が担当。「入社後の業務を遂行できる経験・スキル・実績があるか」「配属先の職場に馴染めそうか」などを判断される傾向がある。
<最終面接>
経営層が担当。自社の理念・ビジョンに共感して、中長期的に働いてもらえそうかを判断している傾向がある。また、応募者の将来的なキャリアの方向性が自社の方向性とフィットしているかを確認しているケースもある。
転職活動をうまくいかせるコツとは?「スキルに不安」「未経験転職」「再就職」などのケース別に紹介
ここでは、「転職が決まらない」と感じる不安や悩みのケース別に、転職活動をうまくいかせるコツの一例を紹介します。
経験・スキルに自信がない場合
「経験・スキルに自信がない」「アピールできるほどの実績や専門性がない」などの不安を感じている場合は、キャリアの棚卸しをしっかり行うことが大事です。ポータブルスキルなどを洗い出し、応募先の企業・職種においてどのような活躍・貢献ができるかを考えてみることで、アピールできる要素が見つかりやすくなるでしょう。
未経験の業界や職種にチャレンジしたい場合
未経験の業界や職種に興味があっても、「今からでも始められる?」「自分には転職できるほどのスキルがないから無理では?」と悩んでしまう人もいるかもしれません。しかし、未経験者の採用・育成に力を入れている企業もあるため、「未経験者歓迎」「未経験でも可」などの記載がある求人を探してみることがポイントです。
また、現状の経験・スキルのままでは転職が難しい企業・職種の場合は、ステップアップしながら目指す方法もあります。ほかの企業や職種に転職して必要な経験・スキルを積んだ後に、再度、チャレンジすることによって転職を実現できるケースもあります。
離職期間が長引いてから再就職を目指す場合
退職後、転職先が決まらず離職期間が長引いていた場合は、面接で「その間に何をしていたのか」を聞かれることもあるでしょう。資格の取得や専門知識の勉強など、離職期間に注力したことや、転職活動を進める中で改善しようと思ったこと、そのために取り組んだことなどを整理しておきましょう。採用担当者に対し、離職期間の理由について説得力を持って伝えられれば理解を得やすくなりますし、自己改善に取り組む姿勢を伝えることもできます。
また、「離職期間に特に注力したと言えることがない」「今から再就職するのは難しそう…」と感じた場合でも、あきらめることなく転職活動を続けることで転職先が決まるケースもあります。「今から改善に取り組めば、この先に転職を実現することも可能」と考え、モチベーションを高めていきましょう。
これから転職活動を始めるけれど、長引くことが不安な場合
「これから転職活動を始めても、転職先が決まらなかったらどうしよう」「もしも半年、1年など転職活動が長引いたら、お金やメンタル面が不安…」などの不安を感じている場合は、在職中に転職活動を始める方法があります。
在職中に転職活動を行えば、転職先が決まらない場合や、納得のいく転職先が見つからない場合でも、現職の定期収入があることで焦りや不安を感じずに済むでしょう。ただし、長引かせないためには、転職したい時期から逆算して転職活動の計画を立て、それに沿って行動していくことが重要です。
「転職先がなかなか決まらず疲れた…」辛い時期を乗り越えるための方法
転職先が決まらないことに疲れてしまったときのために、辛い時期を乗り越えるときに役立つ方法を紹介します。
転職活動を一時的に休止してみる
転職活動を一時的に休止し、リフレッシュするのも良いでしょう。焦る気持ちを一度クールダウンさせることも大事です。また、時期を置いてから転職活動を再開することで、自分にマッチする求人が出てくる可能性もあります。
「自分の価値を再確認する」と考える
転職活動は、企業と求職者のニーズのマッチングで成立します。「決まらない」のは、応募する企業が求める経験・スキルにマッチしていなかったというだけで、他にマッチする企業があるかもしれません。また、応募条件を絞りすぎて、対象の企業が少なくなっているだけという可能性もあります。転職先が決まらなくても「自分の価値を再確認する」と考え、気持ちを切り替えることが大事です。
これまでの転職活動を振り返ってみる
転職先が決まらず焦っている人は、興味のない企業やマッチしていない企業に次々と応募してしまうこともあります。しかし、転職活動には、時間や労力、気力がかかるものなので、闇雲に応募し続け、ミスマッチによって選考に落ちることが度重なれば、モチベーションはさらに低下してしまうでしょう。まずは、これまでの転職活動を振り返ってみましょう。通過しにくい選考過程はどこか、どの業界の企業から評価されたのかなどを考えることで、改善ポイントが見えてくるでしょう。
転職エージェントに相談する
「転職先が決まらない」「転職活動がうまくいかない」と感じている場合は、自分一人で取り組むより、第三者から客観的な視点のアドバイスをもらうことで打開できるかもしれません。転職エージェントを活用し、転職支援のプロに相談をすることで、適切なアドバイスを受けることができるでしょう。一人で活動を続けていく焦りや不安を解消できる場合もあるでしょうし、、応募書類の作成や面接対策までサポートしてくれることもあるので、改善にも役立つでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年02月16日
記事更新日:2023年08月09日
記事更新日:2025年02月01日 リクルートエージェント編集部