面接の最後に、必ずと言っていいほど聞かれるのが「最後に何か質問はありますか?」という質問。こうした「逆質問」は、あなたの意欲や、興味関心を面接担当者に伝えることができる貴重な機会でもあります。逆質問を上手に使って自身をアピールしたり、好印象を与えたりするためのポイントと質問例、また、なるべく避けたいNGな質問例などについて、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に伺いました。
目次
企業が「最後に質問はありますか?」と聞く意図は
面接の最後に「何か質問はありますか?」と採用担当者が逆質問を促す意図は、いくつかあります。まず、応募者の疑問をクリアにしておきたい、希望(入社日や勤務地、仕事内容など)があれば確認しておきたいなどが挙げられます。応募者の懸念を払拭し、理解を深めてもらうことで、自社への志望度を高めたいという狙いもあるでしょう。
また、応募者の志望度や入社意欲を知りたいという意図もあります。自社にどのくらい興味関心を持ってくれているか、自分なりに考えて理解しているかを、逆質問から判断しようとするでしょう。
さらには、応募者に最後のアピールの場を提供する意図もあります。自発的な質問の中にある自己PRや志望動機を通じて、企業や仕事理解度の高さ、社風とのマッチ度合い、コミュニケーション力、質問力などを判断するケースもあるでしょう。
「最後に質問はありますか」に答える時の考え方
「最後に質問はありますか」と聞かれた時は、基本的に「疑問解消」を優先し、自分の興味関心に基づいて、わからないことや知りたいことを率直に質問すると良いでしょう。面接は、企業が応募者を評価するだけでなく、応募者側も企業理解を深め、自身にマッチしているかどうかを検討する材料を集める場だからです。
ただ、疑問を解消するにしても、相手が回答しやすいように質問の意図や自分なりの仮説を合わせて伝えることが大切です。それによって意欲の高さもアピールすることができれば尚可でしょう。
例えば、組織のチーム構成(人数、年齢層など)を質問する場合に、その理由として「現在も○名のリーダーをしており、将来的に自分もチームマネジメントをしていきたい。どういった要素を求められるかイメージしたいので……」などと伝えれば、成長意欲やマネジメント志向、リーダーシップなどのアピールにつながるでしょう。
「一次」「二次」「最終面接」で逆質問の意味は違う?
一次、二次…と面接が進んでも、基本的に逆質問の意味は変わりません。ただし、面接を担当しているのがどういう人か(人事、現場担当者、管理職、役員クラス)によって、答えられる逆質問も変わることを、応募者は意識した方がいいでしょう。
【例】
- 面接担当者が人事…労働条件や福利厚生、会社全体の事業や人事制度など
- 面接担当が現場の人…仕事内容や現場の組織構成、求められる経験・スキルなど
- 面接担当者が役員…より中長期的・総合的な観点に基づく会社の方針や戦略など
企業側の基本スタンスは「何でも聞いてください」ではあるものの、例えば人事の人に現場の詳細を聞いても十分な回答が得られないだけでなく、「コミュニケーション力不足」という印象を与える可能性もあります。従って、面接担当者により質問内容も使い分けることが大切です。
逆質問がないときはどうする?
逆質問を「特にありません」で終わらせると、「志望度が低い」「自社に興味がない」という判断につながる可能性もあります。ですから、志望動機や自己PRと同様に、逆質問も面接前に準備しておくことをおすすめします。面接中に全て説明されてしまう可能性もあるので、一つだけでなく、複数の質問を考えておいた方が安心でしょう。
ただ、それでも特に疑問点がない場合、無理に質問をひねり出して認識不足を露呈したり、「入社までに勉強することはありますか?」などテンプレート的なことを聞いたりするよりは、その時点では逆質問がないことを伝えた方が良いケースもあります。
その場合は「面接で○○に興味を持ち、志望度がより高まりました」と面接の感想を述べたり「事前に質問したいと思っていた○と△については、先ほど詳しくお聞きできましたので…」と補足したりした上で「今の時点では特にございません」と答えると、印象を損ねることはないでしょう。
内容別・逆質問の答え方例文集
前述のように、逆質問をする際は「その質問をする意図」を合わせて伝えると、相手が回答しやすくなる上、自身の意欲をアピールすることができます。企業に聞きたい内容やアピール別に、逆質問の例をいくつかご紹介しましょう。
志望度の高さが伝わる質問
入社意欲の高さをアピールする時は、企業研究をしてきたことを伝え、例えば「○○で貢献したい。そのためにはどのスキルを伸ばせば良いか」などを質問すると良いでしょう。
【質問例】
「自分なりに御社の情報を集めて研究し、実際に○○のサービスも利用させていただいていますが、勉強不足もあり、恥ずかしながら理解しきれていない部分があります。例えば、事業上の競合であるA社との最も大きな違いについて、皆さまがどのようにお考えなのか、可能な範囲で教えていただけますでしょうか」
「御社の歴史や社長様のインタビューなどを拝見し、御社が大切にされていることは○○○だと感じました。私も仕事をする上で大切にしたいと強く共感を覚え、こういった会社で働けたら、大きなやりがいを感じられると考えております。ちなみに現場では、○○○をどのような形で具現化されていらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか」
自己アピールにもつながる質問
自身の経験・スキルのアピールをしたい場合は、例えば「○○の資格を取得していますが、御社で活かすことはできますか」といった逆質問につなげると良いでしょう。
【質問例】
「現職ではチームリーダーとして〇名のチームを担当し、個々の強みを活かすという考え方で育成指導を〇年間行ってきておりますが、○○さんはどのようなスタンスでチーム運営をされていらっしゃるか、教えていただけますでしょうか」
「現在、中小企業診断士の資格取得の勉強をしており、御社のコンサル業務でも活かせると考えておりますが、御社の○○部門の方々は、例えば中小企業診断士やMBA等、どういった自己研鑽をされていらっしゃるのでしょうか。自分も御社で働かせていただくとしたら、学びを進める参考にしたいと考えております」
労働条件などをうまく聞く質問
給与や昇給制度、残業時間数、休日数、教育制度などの条件面に関する質問「だけ」に終始するのは避けた方がいいでしょう。企業に「この応募者は条件面にしか興味がない」と判断され、ミスマッチを懸念される可能性があるからです。
どうしても条件面を確認したい場合は、他の複数の質問の中に混ぜて聞くのがおすすめです。仕事の内容にも触れた後に質問するか、会社の姿勢やモデルケースから遠回しに質問すると、印象を損ねることなく現状を把握することができるでしょう。
なお、転職エージェントを利用していれば、聞きにくい質問がある場合、質問の仕方などをキャリアアドバイザーからアドバイスしてもらえるでしょう。
【質問例】
「前職では月の残業時間が○時間ほどだったのですが、働き方のイメージを持たせていただくために、御社の○○職の平均的な残業時間を教えていただけないでしょうか」
「私のように異業界異職種からの転職で中途入社された方も複数名いらっしゃると伺っておりますが、そういった方々は入社後にどのような形でキャッチアップされていかれるのでしょうか?もし研修制度やフォロー体制などがあればご教示ください」
ここだけは注意!逆質問NG例文集
ここでは、逆質問で避けた方が良いNG例をいくつかご紹介します。
いずれも、「会社研究が甘く意欲が低い」「準備をしておらず慌てて取り繕っている」という印象を与えてしまう可能性があるので注意しましょう。
調べればわかる質問、一度説明を受けたことへの質問
求人票や企業の採用ページに記載されている情報など、自分で調べればわかることを質問するのは避けましょう。また、面接中に説明されたことを聞くのも、相手の心証を悪くするので注意しましょう。
【質問例】
「御社の従業員数は何名くらいになるのですか」
「主なお客様はどういったところになりますか」
仕事の内容に直結しない興味本位の質問
仕事の内容に全く関係のない質問をすると、「状況が読めていない」「コミュニケーション力に欠ける」と判断される可能性があります。
【質問例】
「(面接担当者の)趣味や休日の過ごし方を教えてください」
「今朝の○○という報道(政治ニュースなど面接に直接関係がないこと)についての見解をお聞かせいただけますか」
相手の心証を悪くするネガティブな質問
その企業に対するネガティブな要素が含まれる質問は、基本的に避けましょう。どうしても気になる場合は「不安を払拭しておきたいので」と、意図を伝えてから質問することをおすすめします。
【質問例】
「ネット掲示板に書かれている○○という情報は事実ですか」(ネットの噂など)
「競合のA社と比較して今御社は○○の部分でまだ伸び代があると思われますが、どのような打開策をお考えですか」(ライバル企業に劣る点など)
テンプレートな質問
テンプレート的な逆質問も、それだけでは「自社に興味がない」「何も考えていない」という印象を与えてしまいます。この場合は、「自分は○○と考えていますが」「これまで○○を経験してきましたが」など、自分なりの意図や具体性を加えて質問すると良いでしょう。
【質問例】
「入社までに身につけたほうが良いスキルはありますか」
「読んだ方が良い書籍等はありますか」
「御社の強みと弱みを教えてください)」
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。