転職活動では、自分の強みを自己PRとして伝えますが「自己PRにできるような強みが見つからない」「長所との違いが分からない」と悩む人もいるようです。そこで自己PRで使える強みに気付くヒント、強みの伝え方などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。自己PRの例文もご紹介しますので、参考にしてみてください。
目次
強みと長所の違いは?
「強み」と「長所」は、同じようで少し意味が異なります。強みと長所の違いを理解した上で自身の強みを分析しましょう。
強みとは
「強み」とは、主に仕事で成果を挙げるために役立つ能力やスキルを指します。例えば「課題発見力」「プレゼンテーション力」「交渉力」といったものです。採用面接の場で、面接担当者が「あなたの強みは何ですか」といった質問をする場合、採用ポジションの業務を遂行し、成果を挙げられるかどうかを判断しようとすると考えられます。
長所とは
「長所」とは、その人が元来持っている「人柄」「性格」「資質」などで優れた部分を指します。例えば、「気配りができる」「粘り強い」といったものが挙げられます。面接担当者が「長所」を質問する場合、採用ポジションの業務に適性があるか、社風にマッチするかどうかなどを見ていると考えられます。
自己PRで使える強み例一覧
自己分析を試みても、自分の強みを言語化するのが難しいと考える方も多いようです。そこで、自己PRで活用できる強みの一例をご紹介します。自分に当てはまるものを探してみてください。
自分に関わる力
「責任感」「行動力」「計画性」「粘り強さ」など、独自で発揮する力です。自分自身ではごく当たり前にできていることなので、「強み」だと認識していないこともあります。成果につながった行動や、人から褒められた経験なども振り返ってみましょう。
決められたことをやり抜く力
自分自身、あるいは所属する組織が設定した目標に対し、最後まであきらめずに達成しようとする力を指します。「目標達成力」「責任感」などとも言い換えられるでしょう。
主体性(自分で考え行動できる力)
与えられた仕事を「受け身」の姿勢でこなすのではなく、課題を「自分事」として捉え、責任を持って積極的に行動する姿勢を指します。
挑戦心・チャレンジ精神
経験や前例がない課題やテーマに対して、果敢に取り組もうとする姿勢です。ときには失敗するかもしれませんが、失敗経験も含め、自己成長につなげていける強みと言えるでしょう。
改善・成長意欲
目の前の課題を解決する、またはより良い方向へ変えていくことを検討し、工夫や改善を繰り返す姿勢を指します。そのプロセスで気付きや新たな知識を得ることにより、成長につなげる力と言えます。
前向き思考
ネガティブな感情に流されず、何事も前向きに捉え、仕事に活かせる力です。困難に直面したときも、周囲の人を元気づけたり鼓舞したりと、好影響を与えることができる強みになります。
学ぶ姿勢
新しい知識やスキルを前向きに身に付けようとする姿勢です。自身の担当業務の範囲に限定せず、業務にプラスになると思われる周辺知識もどん欲に吸収しようとする姿勢も含まれます。
使命感・責任感
自身に与えられた任務・役割に対して、責任を果たそうとする強い気持ち・姿勢です。特に組織やプロジェクトの一員として働く上では欠かせないマインドと言えるでしょう。
目標志向性・達成意欲
目標を強く意識し、達成に向けて努力する力を指します。営業職をはじめ、成果が数字に表れる職種において求められる傾向にある要素です。
探究心
物事の本質を突き詰めようとする気持ち、壁にぶつかっても一つのことに根気よく向き合い続けるマインドを指します。特に、専門職においては重視される傾向があるでしょう。
好奇心
「好奇心」とは、未知のことに興味を持ち、さらに知りたいと思う気持ちを指します。好奇心があれば、どのような仕事に対しても面白みを見つけ、意欲的に取り組めるとも言えるでしょう。
変化対応力・柔軟性
既成概念やルールにとらわれることなく、物事や変化に対して臨機応変に対応することができる力を指します。ビジネス環境の変化のスピードが速くなっている昨今、重視されると考えられるスキルです。
その他の自分に関わる「強み」一覧
- 忍耐力
- 継続力
- 粘り強さ
- 実行力
- 活動意欲
- 集中力
- ストレス耐性
- 度胸・本番に強い
- 感情をコントロールする力
- タフさ(精神力)
- パッション(情熱)
他人に関わる力
同じ職場の上司や同僚、顧客、取引先、プロジェクトメンバーなど、他者と協業したり、他者に商品やサービスを提供したりする際に発揮される力です。
協調性・チームワーク力
協調性とは、立場や役割、考え方、価値観が異なる人とも意思疎通を図り、円滑に業務を遂行できる力を指します。チームワーク力は複数の人の力を組み合わせることで成果を出す力です。
指導・育成力
部下や後輩、新入社員などに対し、目指す方向に導いたり、成長を支援したりする力のことです。リーダー・マネジャー職には欠かせない要素と言えるでしょう。
働きかける力(巻き込み力)
目標を達成するために周囲を動かし、巻き込んで物事を推進する力です。強引に協力させたりするのではなく、それぞれの人に合う働きかけをして、主体的に協力してもらえるようにする力と言えるでしょう。
プレゼンテーション力
説得力や訴求力のある発表や提案、説明を行うことができる力を指します。話し方や振る舞いだけでなく、効果的なプレゼン資料を作成できることも、プレゼンテーション力に含まれます。
調整・交渉力
社内外のキーパーソンやメンバーに対して働きかけを行い、合意形成へ導く力のことです。利害や立場が異なる複数の企業や人が参加するプロジェクトなどで重宝されるスキルでしょう。
気配り・ホスピタリティ
気遣いや配慮ができる力を指します。「おもてなし」とも言い換えられるので、サービス業のイメージを持たれがちですが、人と関わるあらゆる仕事において重視される要素と考えられます。
その他の他人に関わる「強み」一覧
- 親しみやすさ
- チャーム(可愛がられる要素)
- 素直さ
- 誠実さ
- 真面目さ
- 約束を守る
- 分かりやすく伝える力
- 傾聴力
- 理解力
課題に対する力
ビジネス上の課題やテーマに対する取り組みのプロセスで発揮される力です。
論理的思考力
論理的思考力(ロジカルシンキング)は、物事の因果関係が明らかで、筋が通っている思考を指します。あらゆる職種に必要ですが、特にコンサルタント職などで強く求められる力と考えられます。
課題発見力
事業や組織などが目指す姿と、現状とのギャップを洗い出せる力のことです。「理想や目標」と「現状」を正しく把握し、足りないもの、改善できるものを分析するときなどに発揮される力です。
企画力
ニーズに応えたり課題を解決したりするため、アイデアを出し、形にする力です。発想力や創造性などと近い意味で使われることが多く、既存のやり方の踏襲ではなく、新しいやり方を考える際に求められる力と言えるでしょう。
広い視点で捉える力
「視点」とは、視線が注がれる場所のことを指します。課題に対し、さまざまな角度から見てみることで新たな意義や価値を見出す力と考えられます。
提案力
相手の課題を解決する方法やニーズにマッチする選択肢などを提示する力です。相手の立場や理解度などに合わせ、分かりやすく伝えるスキルも含まれます。
分析力
課題や問題点を抽出したり、物事を調査して要素の整理・掘り下げをしたりする力を指します。適切な企画や提案を行うためにも、分析力は重要な要素のひとつと言えるでしょう。
その他の課題に対する「強み」一覧
- 計画力
- 想像力
- 正確性/スピード
- PCスキル
- 文章作成力
- 計算能力
強みをアピールする自己PR例文
強みをアピールする自己PR例文をご紹介します。自己PR作成の参考にしてみてください。
「改善・成長意欲」を強みにした自己PR例文(経理)
私は目的達成や課題解決のために、本質的な問題を捉えて改善することを大切にしています。現職では月次決算対応で月初めは残業が続いており、誰かが休むと終電まで対応する必要があるため、過重労働が問題視されていました。
そこで業務の閑散期にチームの作業を洗い出し、手作業を自動化したり業務の順序を変えたりして、作業時間の短縮化に取り組みました。最終的に月の残業時間を30%削減させることに成功し、急に欠勤者が出た際の対応にも余裕がもて、メンバーからも喜びの声をもらいました。
これからも、目的達成や課題解決のために改善していく気持ちを持って、職場に貢献していきたいと考えております。
「誠実さ」を強みにした自己PR例文(営業)
私は誠実さを強みとしています。お客様への営業活動では大げさに効果をアピールするのではなく、確実に得られる効果に絞って丁寧にご説明し、お客様のためにならない追加オプションは入れないようにしています。
私の誠実な対応が評価され、他部門の担当者や取引先などを紹介されるケースも多く、現在は月に2~3件の受注は紹介からとなっています。今後も誠実な営業活動によって、御社(貴社)の事業に貢献したいと考えております。
※面接で伝える場合は「御社」、履歴書に記載する場合は「貴社」
「課題発見力」を強みにした自己PR例文(営業企画)
私は課題発見力に自信を持っています。現職では営業企画として顧客の取引データを分析するのですが、ここ数年でオンラインのみの顧客が増え、対面よりも受注率や継続率が高くなっていることが分かりました。
そこで、オンラインのみの顧客を担当している営業にヒアリングし、営業内容をまとめました。オンラインであればどのエリアでも営業できるため、効果的な営業トークを共有してオンライン営業部隊を強化しました。その結果、売り上げを昨対165%に伸ばすことができました。
以上の経験から課題を捉える力、その課題を解決するための推進力を活かして御社(貴社)に貢献したいと考えております。
※面接で伝える場合は「御社」、履歴書に記載する場合は「貴社」
「学ぶ姿勢」を強みにした自己PR例文(エンジニア)
私は常に学ぶ姿勢を忘れません。これまでエンジニアとしてPythonやJavaScriptなど、複数の言語を学んできました。言語ごとに特徴やメリットが異なるため、習得している言語が多いほど、プロジェクトに応じて適切な言語や技術を選べるからです。
最近は言語のみならず、クラウドコンピューティングやコンテナ技術、セキュリティ知見なども学んでおります。これからも学び続けることを大切に、課題解決時に最適な提案ができるエンジニアとして、御社(貴社)の事業発展に貢献したいと考えております。
※面接で伝える場合は「御社」、履歴書に記載する場合は「貴社」
「コミュニケーション力」を強みにした自己PR例文(人事)
私の強みはコミュニケーション力です。例えば新卒や中途メンバーが入社したときは、積極的に話しかけ、他のメンバーとのコミュニケーションのきっかけ作りを意識しています。話しやすい雰囲気を作ることで、一人悩んで進行スピードを落としていた業務などが相談・共有しやすくなり、進行がスムーズになるメンバーが増えました。
その結果、入社してから半年以内の退職率が20%から5%まで低下しました。働きやすい雰囲気ができたことで、上司からは「円滑なコミュニケーションによって、従業員満足度が上がっている」と評価されています。御社(貴社)においても、コミュニケーション力を活かして、即戦力として活躍したいと考えております。
※面接で伝える場合は「御社」、履歴書に記載する場合は「貴社」
簡単に自己PRを作るには?自己PRの書き方
自己PRのフォーマットを理解しておくと、作成しやすくなるかもしれません。自己PRのフォーマットをご紹介します。
自己PRのフォーマット
自己PRは「書き出し(強み)」「強みを裏付けるエピソード」「締め」の3部構成で作成すると分かりやすくなるでしょう。書き出しで強みを端的に伝え、その裏付けとなるエピソードや成果を続け、応募企業でも強みを活かせることを締めとしましょう。
- 書き出し(強み)
- 強みを裏付けるエピソード
- 締め
以下のフォーマットを参考に自己PRを作成してみましょう。
フォーマットを使った例文
私の強みは信頼関係の構築力です(書き出し)。
お客様から質問を受けたときは、必ずその日のうちに、遅くとも翌日には調べてお返事することを徹底してきました。また、ただ情報を伝えるだけでなく「私はこう考えます」と意見や提案を伝えることで信頼を獲得することができました(強みを裏付けるエピソード)。
御社(貴社)の営業活動においても、顧客との信頼関係を構築し、サービスを通じた課題解決を図っていきたいと考えております(締め)。
※面接で伝える場合は「御社」、履歴書に記載する場合は「貴社」
自己PRで強みを上手に伝える方法
自己PRにおいて、強みを上手に応募企業へ伝える方法を3つご紹介します。
応募企業に応じて伝える強みを変える
採用担当者により魅力的に感じてもらうためにも、応募企業に応じて伝える強みを変えましょう。例えばチームでの活動や成果を重視する企業であれば「協調性・チームワーク力」を、個人の成果を重視する企業であれば「主体性」や「使命感・責任感」を伝えるといった方法が考えられます。
企業によって魅力に感じるポイントは異なりますので、事前の企業研究によって、どのような強みを伝えるのが魅力的に映るかを考えましょう。
応募企業でどのように活かせるのかを伝える
自分の強みが具体的にどのような業務で活かせるのかを採用担当者に伝えると、より好印象を与えられるでしょう。営業職に応募する人が「分析力に自信があります」と伝えるだけでは、採用担当者は採用後のイメージができないかもしれません。
具体的に「分析力に自信があるため、日々の営業活動から自分の行動を分析し、効率的に売り上げを立てられるように工夫できます」と伝えた方が、採用担当者には魅力的に映るでしょう。入社後の業務をイメージしながら強みをアピールしてみてください。
自己PRと長所に矛盾が生じないようにする
自己PRと長所を伝えたときに、それぞれが矛盾してしまうと採用担当者に違和感を与えかねません。自己PRと長所を伝えるときには、お互いが矛盾していないかを考えることが大切です。
自己PRで「仕事のスピード感には自信があります」と伝えた後に、長所で「物事を丁寧に進めることができる」と伝えてしまうと、採用担当者は応募者がどのような人物なのかがわかりかねるでしょう。
自己PRできる強みが分からない場合の見つけ方
自己PRに活かせる強みが分からない場合の対策を4つご紹介します。
自己分析を行う
強みが分からない場合は、自己分析が有効と考えます。自己分析の方法はいくつかありますが「キャリアを棚卸しして、これまでの経験から自分の得意分野やこだわりを洗い出す」という方法があります。
他にも、自分の感情の波をグラフに表す「モチベーショングラフ」を作成するという方法もあります。自分がしやすい方法を使って、自己分析を行いましょう。
弱み・短所を言い換える
「強み・長所」よりも「弱み・短所」の方が浮かびやすいという方もいるでしょう。強みが分からない場合は、仕事上で改善したい「弱み・短所」を挙げて、ポジティブに言い換えるという方法があります。
例えば「優柔不断」は言い換えれば「慎重さ」であるとも言えます。また「落ち着きがない」も「行動力がある」と言えるでしょう。自分の「弱み・短所」を、ポジティブな強みに変換してみてください。
第三者に聞いてみる
自分の強みが分からないのであれば、周囲の人に聞いてみる「他己分析」という方法もあります。自己分析をする場合は主観が入ってしまうこともありますが、他己分析は客観的に強みを指摘されることが期待できるため、自分では気がつかなかった強みを知るきっかけになるかもしれません。他己分析を行う場合は、仕事で関わった人に聞くことをおすすめします。
転職エージェントに相談して自己PRを作成しよう
転職エージェントは、数多くの求職者の転職支援を行っているため、強みの見つけ方や効果的な自己PRの作り方を理解しているかもしれません。キャリアの棚卸しから始めたい場合も丁寧にサポートしてもらえるので、効率的に転職活動を進めることができるでしょう。自己PRに不安がある場合はまず相談してみてはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年03月09日
記事更新日:2023年10月02日
記事更新日:2024年11月05日 リクルートエージェント編集部