転職活動を始めるにあたり、「応募数はどれくらいが適切なのだろう」「応募しすぎた場合、弊害はあるだろうか」といった疑問を持つ人も多いようです。そこで、リクルートエージェントを通じて転職した人たちの転職活動のデータに基づき、応募数の実態をご紹介しますので参考にしてみてください。また、複数応募する場合の注意点を、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
転職決定者の応募数は「11~30件」が3割超
転職活動を行う際、何社くらいに応募するのが適切なのでしょうか。これはもちろん、人によって大きく異なります。極端な例をいえば、1社に応募してすぐに転職が決まる人もいれば、50社に応募しても転職に至らない人もいます。
ここでは、2023年7月~12月の間にリクルートエージェントを利用した転職者のデータをご紹介します。リクルートエージェントを通じて応募し、転職先が決まった人が応募した数は「11~30件」が最多で、3割超を占めます(35.4%)。
次いで多いのは、「10件以下」が19.2%で、「31~50件」が18.6%、「91件以上」が11.5%、「51~70件」が9.7%と続きます。
【職種別】転職決定者の応募数分布
応募数の相場は、職種によっても差が見られます。上記と同様、リクルートエージェントを使って転職先が決まった転職者のデータでは、以下の傾向が表れています。
※職種は転職先のもの
- 応募数が10件以下で転職先が決まった人の割合が最も多い職種は、エンジニア(設計・生産技術・品質管理)(13.9%)、次いで営業・販売・カスタマーサービス(13.8%)
- 応募数が11~30件で転職先が決まった人の割合が最も多い職種は、営業・販売・カスタマーサービス(34.7%)、次いでSE・ITエンジニア(33.9%)
- 応募数が31~50件で転職先が決まった人の割合が最も多い職種は、企画・マーケティング・経営(22.7%)、次いで金融専門職(22.3%)
- 応募数が51~70件で転職先が決まった人の割合が最も多い職種は金融専門職で9%、次いで不動産専門職(8.4%)
- 応募数が91件以上で転職先が決まった人の割合が最も多い職種は金融専門職で25.4%、次いで不動産専門職(22.7%)
【業界別】転職決定者の応募数分布
転職先の業界ごとの、応募数の傾向もご紹介します。データでは以下の特徴が見られました。
- 応募数が10件以下で転職先が決まった人の割合が最も多い業界は、機械・電気業界(11.4%)、次いで不動産・建設業界(8.5%)
- 応募数が11~30件で転職先が決まった人の割合が最も多い業界は、機械・電気業界(32.5%)、次いでIT・通信業界(31.6%)
- 応募数が31~50件で転職先が決まった人の割合が最も多い業界は、インフラ・官公庁・その他(23.1%)、次いで商社とコンサルティング業界(同率22.9%)
- 応募数が51~70件で転職先が決まった人の割合が最も多い業界はWeb・インターネット業界とマスコミ・広告業界(同率14.7%)、次いでインフラ・官公庁・その他(14.6%)
- 応募数が71〜90件で転職先が決まった転職者の割合が最も多い業界はWeb・インターネット業界で10.5%、次いで物流・運輸業界で10%
- 応募数が91件以上で転職先が決まった転職者の割合が最も多い業界はWeb・インターネット業界で34.8%、次いで物流・運輸業界で30.8%
出典:リクルートエージェント「転職者の応募数」(株式会社リクルート)
複数応募するときの注意点
上記データからもわかるように、転職実現のためには複数の応募が必要となる人もいるでしょう。また、1社に応募してすぐに内定を獲得できたとしても、複数の企業を比較検討することで、より自身に合う1社を選ぶことができるかもしれませんので、複数応募は納得感を高める手段ともいえるでしょう。
複数応募にあたり、注意しておきたいポイントをご紹介します。
応募先の優先順位を明確にする
転職先に求める要件を明確化し、応募先の優先順位を決めておきましょう。優先順位が曖昧なままだと、本来志望度が高い企業より低い企業に先に応募して内定が出た際に、入社の決断に迫られて迷うケースもあります。
以下の指標も参考に、自身が転職先の条件として何を大切にしたいのかを整理しておくと、優先順位が付けやすくなるでしょう。
スケジュールを立てて実行する
「1社ずつ応募し、不採用になったら次の1社に応募する」といったペースで進めていくと、転職活動が想定より長引く可能性があります。早期に転職したい場合は、一度に複数社に応募した方がいいでしょう。
ただし、企業によって選考スケジュールが異なることを認識しておきましょう。例えばA社は面接が3回行われ、応募から内定まで2カ月を要する一方、B社は面接2回・数週間で決まるといったケースもあります。
この場合、A社・B社に同時期に応募すると、B社で早く内定が出て、A社での採否が決まる前に入社可否の返事を迫られる可能性があります。つまり、A社が第1志望である場合、応募時期を調整する必要があるわけです。
しかし、志望企業が選考スケジュールを公開していなければ、応募前に知ることは難しいでしょう。転職エージェントでは過去の実績から企業のプロセスを把握していることもあるため、応募時期や面接時期のスケジュール調整を依頼し、活動計画をサポートしてもらうのも有効な方法です。
しっかり事前準備ができる応募数にする
応募数を増やせば、その分、内定を獲得できる確率も上がり、比較検討した上で転職先を決めることが可能になるでしょう。
ただし、応募数を増やしたことで、1社あたりの企業研究や面接対策が不十分な状態で選考に臨むことになれば、結果的に選考通過率が下がることにつながりかねません。
自身が転職活動にどれくらいの時間を割けるのかを踏まえ、企業研究・応募書類作成・面接対策などの準備がしっかりとできる応募数にとどめましょう。
転職活動は複数応募で計画的に進めよう
多様な企業を「同時に比較検討できる」という点で、複数の求人への併行応募はメリットがあるでしょう。複数の選択肢を持ち、比較検討した上で選べば、納得感が高い転職につながることが期待できます。
ただし複数企業に応募する場合、スケジュールの調整や企業とのやりとりに時間を取られてしまい、転職活動を進めることが難しくなる可能性もありますので、しっかり計画を立てておきましょう。
転職エージェントでは、求人市場動向の情報や自身にマッチする求人情報を得られるほか、適切な応募数・応募の優先順位付け・応募タイミングの検討や選考スケジュール調整においてサポートが受けられます。効率的に転職活動を進めるためにも、転職エージェントのサービスをうまく活用してはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。