転職活動を始める場合、「何から始めていいのか分からない」「どのくらい時間がかかるのか」などの不安を抱える方も少なくありません。
そこで、本記事では、転職活動の基本的な流れや具体的な活動内容、退職から入社までの手続きについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説いただきました。
転職活動の流れは4STEP・目安期間は約3カ月
転職活動は、大きく下記4つのSTEPに分けられます。
そして転職活動のスケジュールは、一般的に3カ月程度が目安と言われています。
しかし、既に退職済みの場合や面接の日程を柔軟に調整できる場合は、転職活動期間が短く済むこともあるでしょう。一方で希望に合った仕事が見つからない時や面接の日程調整がスムーズに進まない時は、時間がかかるケースもあります。
各プロセスの目安期間を理解しておけば、自身の転職活動がどのように進んでいるのかを客観的に判断できるでしょう。
続いて、目安よりも時間がかかった例とすぐに転職先が見つかった例に分けて転職活動のケーススタディを紹介します。
【目安よりも時間がかかった例】(転職活動期間:4カ月)
求人選びと応募は1週間で進められたが、仕事を継続しながらの転職では面接の日程調整が難しく、面接から1カ月半かかり希望の企業から内定。有給休暇も多く残っていたため、引き継ぎも含めて退職までに2カ月以上かかった。
【すぐに転職先が見つかった例】(転職活動期間:1カ月)
既に退職していたため、数日で一気に求人選びと応募を進めた。面接の日程調整もスムーズに進み、3週間程度で第一志望の企業から内定を獲得。内定承諾後は日を待たず、すぐに入社して働くことになった。
STEP1:事前準備/応募(約2週間)
転職活動に取り組むにあたって最初のSTEPとなる事前準備や応募に向けては、下記4つの取り組みや準備を進めましょう。
- キャリアの棚卸し
- 業界研究・企業研究
- 応募書類作成
- 求人検索・応募
キャリアの棚卸し
キャリアの棚卸しとは、過去の経験やこれまで培ったスキルを洗い出して整理し、自分の手持ちのスキルや得意分野、経験を明らかにする作業です。頭の中でイメージするだけではなく、実際にメモに書き起こしてみましょう。
友人や知人、家族など、自分をよく知る人や転職エージェントの担当者など転職事情に精通する人と一緒に取り組んでみるのも良いでしょう。思わぬ強みを発見できたり、転職活動でアピールできるスキルや経験を見つけられたりすることもあります。
また、過去の経験を洗い出すことで、強みを活かせる企業や適性に合った企業を見つけやすくなる場合もあるでしょう。
業界研究・企業研究
転職活動では、転職希望先の業界や企業について、研究しておくことも忘れずにいましょう。
採用担当者から見た時、たとえ同業界に転職するにしても自分の思い描くイメージとズレが生じているかもしれません。長く業界に身を置いていたからこそ見えなくなっている観点もあるかもしれないため、改めて業界研究に取り組むことをおすすめします。また異業界に転職する場合は、以前に身を置いていた業界との違いや業界特有の習慣などの理解に努める他、採用動向や傾向についての情報も収集しておきましょう。
企業研究を行う際は、競合との違いを理解すると共に、自分がその企業でどのような貢献ができるのかも調べておくことが大切です。同じ業界に属する企業でも仕事内容や求められるスキルは異なります。「なぜ応募したのか」「入社後どのような活躍ができるのか」という2点について、納得感のある説明ができるようにしておきましょう。
応募書類作成
キャリアの棚卸しや企業・業界研究の次は、応募書類の作成に進みます。転職活動で提出が求められる書類は「履歴書」と「職務経歴書」の2つが一般的ですが、クリエイティブ系の職種に応募する場合は、過去自分が手掛けた作品をまとめた「ポートフォリオ」の提出を求められることがあります。求人詳細を確認して、必要書類を準備しておきましょう。
履歴書も職務経歴書も内容次第で採否が左右されるケースもあります。まずは自分の経験やスキルを効果的にアピールできるフォーマットを選びましょう。その上で業界研究や企業研究で知り得た企業の求める人物像にマッチする人材である旨を訴求できる内容に仕上げていきます。
可能であれば、転職エージェントを利用中の場合は担当のキャリアアドバイザーに応募書類の内容をチェックしてもらいましょう。
求人検索・応募
転職サイトや転職エージェントなどの転職支援サービスを活用し、応募企業を探しましょう。事前に職種や希望勤務地、年収などの条件を明確にし、各条件の中でも優先順位を決めておくと、希望に沿った求人を探しやすくなるでしょう。
気になる求人が見つかれば、条件などを確認し、応募しましょう。応募企業同士を比較しながら選考を進めたい場合や転職活動期間を短縮したい場合は、複数社同時に応募することをおすすめします。
STEP2:面接(約1カ月)
面接のSTEPでは、下記2つの活動を進めましょう。
- 面接対策
- 面接を受ける
面接対策
中途採用の面接は、一般的に1~3回程度行われます。人事、配属先の責任者、役員などが面接を担当し、担当者によって質問は異なりますが、「志望動機」「転職理由」「自己PR」は聞かれることの多い質問なので、事前に練習しておきましょう。
面接対策を行うことで、スムーズに話せるだけでなく、面接当日の緊張を和らぐでしょう。近年はオンラインで面接を行う企業が増えているので、聞き取りやすい話し方や表情の作り方なども練習しておくと安心です。鏡の前で話したり練習風景の動画を録画したりしておくと、客観的に自分の話し方のクセが分かり改善することができるでしょう。
面接を受ける
対面での面接の場合は、約束の時間よりも早めに到着するようにして身だしなみを整えておきましょう。受付を済ませて面接会場に入室し、面接担当者と顔を合わせたら「本日はよろしくお願いします」と一礼し、「お座りください」と言われてから着席します。
オンラインの場合は案内されたオンライン面接のURLをクリックし、入室しておきます。面接担当者が承認したら面接が開始するケースが一般的なので、入室したら面接が開始されるまで待ちましょう。対面での面接と同様に、面接担当者が現れたら挨拶をします。
面接中は姿勢よくハキハキと話し、もしメモを取りたい場合は「メモを取ってよろしいでしょうか?」と一言添えておきましょう。面接が終了したら、面接会場では荷物をまとめて立ち上がり、「本日はありがとうございました」とお礼を伝えます。オンラインでは立ち上がる必要はありません。着席したままお礼を伝えましょう。
STEP3:内定(約1週間)
企業から内定通知を受けるフェーズでは、次の2つの工程が発生します。
- オファー面談
- 内定承諾
オファー面談
オファー面談は、企業からの内定通知と同時期に実施されることがあります。
オファー面談とは、内定者が内定承諾する前に、雇用条件をすり合わせる目的で実施される面談です。また内定者の入社意向を確認したり、不安を払しょくしたりする目的で内定承諾後に実施されるケースもあります。
提示される雇用条件に対し、譲れない条件があればオファー面談の担当者に相談してみることも一案です。ただし必ずしも希望の条件を受け入れてもらえるとは限らないことを心に留めておきましょう。また入社にあたって不安や疑問があれば、オファー面談時に解消しておきましょう。入社前にしっかり不安を解消しておくことで、憂いなく新しいスタートを切れるでしょう。
内定承諾
選考中の企業から内定通知が届いたら、労働条件を確認して内定を承諾するか判断します。他の企業が選考中の場合は、内定の回答期限に間に合うか確認しましょう。他社の選考結果が回答期限以降の場合は、他社に選考結果を早めてもらえないか、または内定が出た企業に回答期限の延長ができないか相談してみましょう。
在職中の場合は、内定承諾の際に現在の職場に残るかどうかも含めて検討します。判断ができず迷っている場合は、内定先企業の先輩社員との面談や職場見学などを相談してみましょう。判断材料を集めて比較検討することで、より納得した意思決定をすることができるでしょう。
STEP4:退職/引き継ぎ(約1カ月)
在職中の場合、退職/引き継ぎについては、次の3つの工程が発生します。
- 引き継ぎ
- 退職
- 入社
内定先企業や退職する企業に迷惑がかからないように、スケジュールを立て計画的に進めましょう。
引き継ぎ
担当する業務を整理し、次の担当者に引き継ぎます。引き継ぎ期間の目安は約1カ月程度ですが、担当案件や業務が多い場合や管理職に就いていた場合は引き継ぎに時間がかかることもあります。引き継ぎ漏れのないよう、担当している業務をリスト化しておきましょう。
後任が決まっている場合は、一緒に業務に取り組み流れや手順を伝えます。また担当クライアントを持つ場合は、後任と一緒に担当クライアントに対し退職する旨と後任の挨拶を行いましょう。後任が決まっていない場合は、マニュアルを作成し、後任が決まった際にスムーズに作業に取り組める状態にしておきます。
退職
退職の意思は直属の上司に伝えましょう。民法627条1項後段では、退職の意思を伝えてから2週間後に退職の法律効果が生じると定められており、退職を申し入れた2週間後に雇用契約を解消できると定められています。
しかし中には、就業規則に「退職する〇ヶ月までに退職届を提出しなければならない」と規定されている企業もあります。
先述の通り民法上では2週間前の申し出が求められていますが、企業によっては2週間よりも前から退職の申し出が求められる場合もあります。事前に就業規則や雇用契約を確認しておきましょう。
参照:e-Gov 法令検索
入社
新しい職場への入社手続きは、転職先企業からの案内に従って進めます。源泉徴収票や雇用保険被保険者証を用意し、マイナンバーや基礎年金番号などを伝えましょう。雇用保険の基本手当を受給している場合は、転職先が決まったことをハローワークに報告する必要があります。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2023年08月31日
記事更新日:2024年04月18日
記事更新日:2024年12月02 リクルートエージェント編集部