採用選考において注目されるポイントの一つが「志望動機」です。一般事務をはじめ、さまざまな専門分野の事務職への転職を目指す場合、志望動機をどのように記載すれば採用担当者の納得・評価につながるのでしょうか。事務職の分野別に志望動機の例文や書き方のポイント、NG例について、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
事務職の志望動機の例文
志望動機を作成する際のポイントは、「これまでの経験をどのように活かして貢献できるか」「なぜこの会社なのか」を伝えることです。
以下の例文を参考に、より自分に合った志望動機へカスタマイズしてください。
一般事務の志望動機例文
一般事務の志望動機の例文について、「経験者の場合」と「未経験者の場合」をご紹介します。
経験者の場合
4年間、法律事務所にて一般事務全般を担当し、進捗管理業務のクラウドツール化や紙資料のデジタル化、業務に合わせたカスタマイズ、運用ルールの工夫を行ってきました。こうした工夫で「業務の効率が上がった」と喜ばれることにやりがいを感じています。
この過程でITツールへの興味が湧き、貴社のユーザビリティが高いクラウドサービスや、それを生み出す柔軟な社風に魅力を感じました。
今後、組織の拡大にあたって効率的な事務オペレーションの構築にも携わり、事業の成長に貢献したいと考えております。
未経験者の場合
アパレル企業の販売員として3年間働く中で、お客様のニーズや気持ちを感じ取りながら先回りをした商品提案を心がけてきました。この経験を活かし、今後は事務職として社員の皆様が働きやすいよう先回りしたサポートをしたいと考えています。
これまでバックヤードを整理整頓してスタッフ全員が動きやすくなるよう工夫したり、MOS資格を取得して他部署の人にもわかりやすい会議用資料を作成したりしてきました。
貴社の「社員一人ひとりが会社を想い、会社が一人ひとりを想う」という理念には、私自身も心がけてきた点と共通する部分があり、貴社の一員として事業成長に貢献したいと考えております。
営業事務の志望動機例文
営業事務の志望動機の例文について、「経験者の場合」と「未経験者の場合」をご紹介します。
経験者の場合
通信会社の営業事務を3年間務める中で、お客様からの問い合わせ対応、資料発送、見積書作成などを担当してまいりました。現在の業務はメンバーのサポートに限られていますが、営業部門全体の運営を支援したいという思いが強くなり、貴社を志望いたしました。
これまでの業務では、アピール効果が高いプレゼン資料作成、営業アポイント数やリードタイムをExcelで管理し、対応スピードを向上させる取り組みに力を入れてきました。
貴社のサービスは以前から使用しており、時代の変化に合わせたサービス展開に成長性を感じております。今後はその一員として事業に貢献したいと考えております。
未経験者の場合
4年間、インターネット広告会社で営業を務めてきました。顧客の問い合わせに対し、仕組みや運用方法を資料で説明し、受注後は顧客と運用チームの調整役を担いました。顧客のニーズをつかみ、運用チームにわかりやすく伝えることで顧客の意図が的確に広告に反映されるなど、顧客・社内両方から感謝されることが多くあります。
そこで、自分は売上を追う営業よりもサポート業務のほうが会社に貢献できるのではないかと考えるようになりました。
貴社の、チームビルディングを重視した組織運営方針に共感しておりますので、営業チームの支援を通して、事業成長に貢献したいと考えております。
秘書の志望動機例文
秘書の志望動機の例文について、「経験者の場合」と「未経験者の場合」をご紹介します。
経験者の場合
これまで大企業の役員秘書として、スケジュール管理、出張手配、議事録作成など秘書業務全般を経験してまいりました。サポート業務にはやりがいを感じていますが、複数名で秘書業務を分担することで対応スピードが遅れたり、役員の活動の全体像を把握できなかったりすることに物足りなさを感じ、転職を決意しました。
貴社では社長秘書業務をすべて一人で対応できる点に魅力を感じております。成長ステージにある貴社において幅広い業務に臨機応変に対応し、会社の成長を支えるとともに自身を成長させたいと考えております。
未経験者の場合
これまでIT企業の営業事務として、5名程度の営業チームをサポートしてまいりました。営業活動がスムーズに運ぶように常に先回りした準備を心がけ、顧客との折衝も経験しております。営業事務として培ったコミュニケーション力・サポート力を活かし、より高度なスキルを要する秘書業務にチャレンジしたいと考え、昨年には秘書検定の準1級を取得しました。
秘書業務は未経験ですが、同じIT業界ですので貴社のビジネスモデルを理解しており、スピード感もつかんでいることから、貢献できると確信して志望いたしました。
貿易事務の志望動機例文
貿易事務の志望動機の例文について、「経験者の場合」と「未経験者の場合」をご紹介します。
経験者の場合
これまで部品メーカー系商社で貿易事務を担当してきました。以前は代理店や船会社を都度調整・利用していたところ、年間スケジュールおよび管理システムを導入し、安定した業務を確立した実績があります。現地法人とも直接コミュニケーションをとっており、英語での折衝力も磨いてきました。
貴社の製品は利便性が高く、世界各国で役立てられると感じ、ぜひその拡販に携わりたく志望いたしました。これまでの経験を活かし、円滑な輸送サポートを行うことで貢献したいと考えております。
未経験者の場合
部品メーカーで営業事務を担当してきましたが、学生時代に海外留学経験があり、やはり英語力を活かせる仕事がしたいという思いが強く、貿易事務へのチャレンジを決意しました。これまで営業活動をサポートする中で、自社製品が市場で評価され、売上が拡大していくことに喜びを感じていました。
貴社の製品は利便性が高く、世界各国で役立てられると感じ、ぜひその拡販に携わりたく志望いたしました。営業事務として培った、先回りをして綿密な準備を行う几帳面さ、スケジュール管理力、調整力、取引先との折衝力が活かせると考えております。
経理事務の志望動機例文
経理事務の志望動機の例文について、「経験者の場合」と「未経験者の場合」をご紹介します。
経験者の場合
食品メーカーで経理事務を4年間務めてまいりました。貴社の経理事務では、買掛金・売掛金に関わる業務から決算業務、監査法人への対応までされるとのことですので、今までの経験を活かしながら仕事の範囲を広げ、経理担当者として成長し、事業に貢献していきたいと考えております。
現職ではクラウドツールによる経費精算業務の効率化を自ら提案・実装した経験もあります。貴社は自発的な取り組みを推奨する風土であるという点でも、業務改善へのアイデアを実現していけるやりがいを感じており、貢献できると考えております。
未経験者の場合
生命保険会社の営業事務として、支店の営業部全体の売上に関する情報を集約し、本部へレポートしてきました。Excelを活用し目的に応じてデータを整理できる点は、上司からも評価を得ております。営業サポート経験を通じて売上管理への興味が強まり、経理としてキャリアを積みたいと考え、日商簿記検定2級を取得しました。
もともと「人々に安心感を提供したい」という志向から保険業界に入りましたが、貴社のサービスはまさに安心感を提供するという点に魅力を感じました。データ活用の経験を活かし、貴社事業の成長に貢献したいと考えております。
総務事務の志望動機例文
総務事務の志望動機の例文について、「経験者の場合」と「未経験者の場合」をご紹介します。
経験者の場合
これまで総務事務を務めてきて、社員が働きやすい環境を整備することにやりがいを感じています。現在の会社は上場も果たし、体制が整ってルーティン業務中心となっているため、新たな組織作りにチャレンジしたいと考え、拡大中の貴社を志望いたしました。
事業の多角化によって組織が細分化していくと、部署間・社員間のコミュニケーションが分断されるという課題を前職で経験しました。部署横断の交流・連携を促す施策にも携わってきましたので、その経験を活かして貴社の社内活性化に貢献したいと考えています。
未経験者の場合
メーカーの生産部門で一般事務を務める中で、部門の運営の仕組みを改善したり、社員同士の交流・連携を促進したりする取り組みにやりがいを感じていました。今後は一部門に限らず、会社全体の組織運営や活性化をサポートできるよう、総務事務に特化したいと考えています。組織を拡大中、かつチームワークを大切にしている貴社において、社員のつながりを強化する施策に携わりたいと考え、志望いたしました。
一般事務として備品管理、契約書管理、イベントの準備・運営も行ってきましたので、その経験が活かせると考えております。
人事事務の志望動機例文
人事事務の志望動機の例文について、「経験者の場合」と「未経験者の場合」をご紹介します。
経験者の場合
これまで管理部門に所属し、人事事務をはじめ総務、法務のサポートも行っていました。中でも強い興味とやりがいを抱いているのが、人材採用・教育に関わる業務です。新たな人材を迎えることで社内の空気が活性化し、育成プログラムの工夫によって社員が成長することに喜びを感じ、人事領域に特化して取り組みたいと考えました。
組織の拡大・整備を進めている貴社であれば、多くの人材採用・教育に携わることができ、また多様な業務に臨機応変に対応してきた経験を活かせると考え、志望いたしました。
未経験者の場合
これまで営業部門でアシスタントを務めてきました。営業職を大量採用し、離職も多い企業でしたので、採用と育成、定着を図る施策の重要性を実感しました。自身でもメンバーのモチベーションを高める方法を学ぶ中で、人事制度や育成プログラムへの興味が強くなり、人事領域でキャリアを積みたいと考えました。
営業部門を強化している貴社であれば、人材採用・育成業務に携わることができ、営業アシスタントとして営業職メンバーに関わってきた経験を活かせると考え、志望いたしました。
医療事務の志望動機例文
医療事務の志望動機の例文について、「経験者の場合」と「未経験者の場合」をご紹介します。
経験者の場合
医療事務としてより幅広い業務に対応できることを目指し、貴院を志望いたしました。これまでは総合病院で会計・レセプト業務を担当し、患者さんをお待たせしないよう素早さと正確さを両立すべく業務効率化に取り組んでまいりました。
今後は、受付から一貫して患者さんをサポートし、安心して診療を受けていただける環境づくりに貢献したいと考えております。家系に女性特有の疾病を持つ者が多く、同じ女性の立場で患者さんに寄り添えるよう、婦人科を専門にした貴院の業務を支えていきたいと存じます。
未経験者の場合
メーカーで経理事務を務めていましたが、家族の長期入院を機に医療機関の重要性を実感しました。医師や看護師を支え、患者さんの役に立ちたいという想いが強くなり、医療事務の資格を取得しました。経理事務として正確性と効率を高める工夫をしてきた経験、社内各部署の人とコミュニケーションをとってきた経験は、医療事務としても活かせると考えております。
貴院では地域医療の充実を理念とし、幅広い年齢層の患者さんに利用されていると知りました。貴院を頼りにしている地域の方から、同じように心の拠り所にしてもらえるように貢献したく存じます。
金融事務の志望動機例文
金融事務の志望動機の例文について、「経験者の場合」と「未経験者の場合」をご紹介します。
経験者の場合
これまで地方銀行の支店にて店頭窓口業務および後方事務を担当してまいりました。「人生100年時代」と言われる近年、将来に不安を抱き、長期的な資産運用を検討するお客様が増えたと感じております。そこで、より豊富な金融商品・サービスを取り扱う貴社において、お客様の満足度向上に取り組みたいと考え、志望いたしました。
これまで培った金融知識、窓口での接客スキル、ミスを防ぐ工夫、RPAの導入経験などを活かし、貴社事業の拡大に貢献したいと考えております。
未経験者の場合
個人的に資産運用に興味を抱き、金融商品について学び、ファイナンシャルプランナーの資格も取得しました。周囲の人から相談を受けることも多く、世の中で金融商品へのニーズが高まっていることを実感し、金融分野でキャリアを積みたいと考えました。豊富な金融商品・サービスを取り扱う貴社であれば、よりお客様の満足度向上を目指せると考え、志望いたしました。
これまで営業事務として、お客様に提出する見積書・契約書などをミスなく作成すること、売上・コストの数値管理を正確に行うことを心がけてきましたので、その経験を活かせると考えております。
事務職の志望動機の書き方ポイント
どの分野の事務職であっても共通する、志望動機の書き方のポイントをお伝えします。
事務職に求められる適性を理解する
事務職はサポート業務が中心であるため、他のメンバーが成果を出すための支援にやりがいを感じるタイプの方は適性があります。また、データ入力やファイリングなど単純作業も多いので、コツコツとした作業の積み重ねが苦にならない人に向いているでしょう。
人から仕事を依頼されることが多く、指示に対して正確に対応できること、複数業務を効率よく進められるように組み立てること、ミスがないよう配慮して対応できることも重要です。また、電話や来客への対応もあるため、丁寧なコミュニケーションを取りながら、臨機応変な対応ができる力も求められます。
仕事に合わせてスキルや資格をアピールしよう
採用においては「実務経験」が重視されますが、資格を取得することで「基本的な専門知識を体系的に身につけている」「向上心がある」といった点でプラス評価につながる可能性があります。
特に、未経験分野を目指す人は資格を取っておくことで転職成功率が高まるでしょう。例えば、経理事務であれば「簿記2級」、秘書であれば「秘書検定」、医療事務は「医療事務」関連資格、金融事務は「ファイナンシャルプランナー」などです。
また、営業事務であれば「コミュニケーション力」「交渉力」、金融事務は「正確な数値処理能力」、貿易事務なら「英語力」といったように、仕事の特性に応じたスキルを磨き、アピールするといいでしょう。
事務職の志望動機のNG例
「大手企業で安定している」「ブランドイメージが良い」「給与が高い」「休日が多い」「残業が少ない」「テレワークができる」などの志望動機は、本音であったとしてもストレートに伝えることは避けてください。待遇・条件面を志望動機とするのは、仕事への意欲が疑われ、印象ダウンにつながるおそれがあります。
また、異職種から事務職を目指す方の場合、「営業はノルマがあってつらい」「立ち仕事なので身体がきつい」「接客でクレームを受けるのがつらい」など、「今の仕事から逃げている」「事務を楽な仕事だと捉えている」と思われるような志望動機もNGです。
仕事面にフォーカスし、「これまでの経験をどう活かしたいか」「どんなことを大切に働きたいか」「これからどんなキャリアを積みたいか」など、前向きな目標や意欲を伝えましょう。
事務職の仕事内容を理解しよう
多くの分野の事務職に共通する業務には、書類作成、ファイリング、データ入力・管理、電話対応、来客対応、郵便物の発送・仕分け、ときには会議やイベントの運営サポートなどがあります。
このほか、専門分野によって業務が異なります。例えば、営業事務であれば「顧客への説明」、金融事務であれば「入出金」「届出の受付・処理」、医療事務であれば「レセプト作成」「予約受付」など。
また、同じ職種でも企業によって任される業務範囲や役割が異なります。求人情報をしっかりと読み、求められる経験・スキルをつかんだ上で、志望動機に自己アピールも盛り込むといいでしょう。
悩んだら転職エージェントを活用しよう
採用担当者が納得する志望動機を伝えるためには、まず自己分析が必要です。これまでの経験を振り返り、自分にとってのやりがい、働く上で大切にしたいこと、自信を持っているスキルや取り組み姿勢、今後目指したいことなどを整理、言語化しましょう。
しかし、一人で自己分析をしていると考えがまとまらず、行き詰ることもあります。そんなときは転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談してはいかがでしょうか。対話を通じて考えが整理できることもありますし、客観的な視点での意見やアドバイスを受け、新たな気付きを得られることもあります。
志望動機以外の職務経歴書の書き方や面接対策、応募企業との交渉など、さまざまなサポートも活用してください。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。