「コミュニケーション能力」は、多くの仕事で求められるベーシックなスキルです。そのため自己PRでアピールしようとする方も多いようです。今回は、コミュニケーション能力の構成要素や自己PR例文、アピールのコツについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
あなたはどのタイプ?コミュニケーション能力の構成要素
仕事でコミュニケーション能力を発揮するシーンは様々です。自分が強みとするコミュニケーション能力のタイプを把握しておくと、自己PRでより具体的に伝えることができます。粟野氏が考える「コミュニケーション能力を構成する要素」を解説していただきました。
聴く力
「コミュニケーション能力が高い」と聞くと、「話術に長けている」というイメージを持つかもしれませんが、相手との円滑なコミュニケーションを図るには、相手に寄り添いながら話を聴いて意図を汲み取る「傾聴」が重要です。相手の発言をよく理解し、考えや気持ちに共感しながら話を聴くことで、心を開いて本音を話してもらいやすくなり、信頼関係の構築につながります。
相手が発する言葉だけでなく、表情・声のトーン・身振り手振りといった「非言語(ノンバーバル)」情報から相手の感情や真意を読み取ることも、コミュニケーション能力のひとつです。
伝える力
伝える手段や伝え方によって、相手の理解度や説得力は変わります。相手の立場や状況に合わせて伝え方を工夫し、「結論を先に述べてから理由を話す」など理解しやいように話の流れを組み立てることが重要です。また、専門用語や難解な言葉ではなく、理解しやすい言葉を選んで、反応を見ながら要件を調整する技術も必要です。
なお、状況や目的に応じて「電話」「メール」「チャット」「直接話す」など、コミュニケーション手段を適切に選ぶことも、コミュニケーション能力のひとつと言えるでしょう。
連携する力
関係者を説得し、関係者と協力し合うことで連携を取る力です。推進力が強ければ、「巻き込む力」とも言えるでしょう。自身の連携力によって協力者が増えれば、ステークホルダーへの働きかけや有効なアドバイスを受けられる可能性が高くなります。コミュニケーション能力を発揮して周囲と連携できれば、パフォーマンスや仕事の進め方が大きく変わるでしょう。
最近では、「相手を尊重しながら自己主張・自己表現し、意見を交換する」という「アサーティブ・コミュニケーション」が注目されています。連携する際は、相手に合わせて適切なコミュニケーションスタイルを取れる力が求められるでしょう。
【職種別】コミュニケーション能力の自己PR例文とアピールのコツ
コミュニケーション能力を自己PRにする場合の、職種別の例文とアピールのコツをご紹介します。
事務の自己PR例文
仕事では常に「傾聴」を意識してコミュニケーションを図っています。
前職は離職率が高く職場に余裕がなかったため、コミュニケーション不足によるトラブルが多く発生していました。そこで、入社した人の困りごとをヒアリングして、問い合わせ一覧の作成、勉強会の開催、マニュアル化などの解決策を上司に提案しました。
結果的に、引き継ぎにかかる時間を短縮でき、研修・総務担当の負荷を減らすことができました。貴社においても、傾聴力を発揮して円滑なコミュニケーションを図っていきたいと考えております。
- アピールポイント
コミュニケーション力を活かして課題解決をした実績は、取り組んだことや成果を交えて伝えましょう。成果は数値であると客観的に判断しやすくなりますが、数値化が難しい場合はどのようなメリットや気づきを得られたのかを具体的に記載します。
経理の自己PR例文
経理部門で経費精算を担当してきましたが、各部署からの申請の遅れが頻発し、時間のロスや残業が発生していました。そこで各部署に遅れの原因や経理部門でサポートしてほしいことなどをヒアリングし、改善策を検討。部署ごとに問題点や要望が異なっていましたが、いずれの部署も納得できる落としどころを探り、新たなシステムの導入を実現しました。結果、各部署に「効率が上がった」と喜ばれ、経理部門においても月○時間の残業削減を達成しました。
- アピールポイント
数値化しにくいコミュニケーション能力は、具体的なエピソードで実績を伝えます。成果として語れることがない場合は、「どのような取り組みをしたのか」「どのようなことに貢献できたのか」を具体的に伝えましょう。
エンジニアの自己PR例文
プロジェクト間のコミュニケーションを強みとしています。
現職では、協力会社3社と連携する1億円規模のプロジェクトを担当しました。顧客の要望と、社内外の各領域のエンジニアの考えをすり合わせるために情報共有ツールを導入。月次定例会では、進捗や方針の確認と着地点を共有し、段階的に合意形成を行うことを意識した結果、当初の予算・納期・仕様で達成できました。
システム開発と運用のどちらも手がけた経験があるため、双方の意図を踏まえ、実現可能な範囲を理解したうえで取捨選択ができる点も強みとしています。貴社のプロジェクトマネジャーも多方面との協業が必要と伺っており、私のプロジェクトマネジメント経験が活かせると考えております。
- アピールポイント
応募企業や応募職種で求められるコミュニケーション力を想定し、マッチする力をアピールするといいでしょう。「あの社員の仕事ぶりに近い」「ここの部署に合うのでは?」「こんな顧客の担当を任せてみたい」など、入社後に活躍する姿をイメージしてもらいやすくなります。
営業の自己PR例文
「顧客との距離を縮めるヒアリング能力」を強みとしています。
これまで飲食店を対象とする○○ツールの営業として、新規顧客開拓を任せられていました。店舗を利用しユーザー目線で感想や意見を伝えながら店舗運営の課題をヒアリングすることで、潜在ニーズを引き出すことを心掛けました。その結果、信頼関係を築いて担当エリアの売上対前年比120%達成に貢献することができました。
○○店舗を対象とするサービスを展開している貴社においても、私の店舗向け営業経験を活かし、マーケット拡大に貢献できると考えています。
- アピールポイント
応募先企業で自分のコミュニケーション能力をどのように活かして貢献できるのか、採用担当者がイメージできるように伝えましょう。
コミュニケーション能力を自己PRにする注意点
コミュニケーション能力は多くの企業で求められますが、自己PRにする場合は伝え方に注意が必要です。面接でたどたどしく話したり、説得力を感じられなかったりすると、「本当にコミュニケーション能力が高いのだろうか?」と不安を抱かれる可能性があるからです。面接が決まったら、自己PRを求められたときの準備をしておきましょう。採用担当者が「確かにコミュニケーション能力が高そうな人材だ」と納得できるように、事前に鏡の前で練習したり動画を撮ったりして、話し方や表情を確認しておくと良いでしょう。
自己PRを伝えるなら転職エージェントに相談を
自己PRは、面接で聞かれることの多い質問です。ただし、「自分の強みが分からない」「何をアピールすればいいか分からない」と悩んでしまう方もいるようです。
自己PRが浮かばない場合は、転職エージェントに相談し、「キャリアの棚卸し」からサポートしてもらう方法があります。客観的な視点でこれまでの経験を見てもらうことにより、自身では気づかなかった強みを発見できることもあります。
アピールしようと考えていた「コミュニケーション能力」以外にも、転職市場で高く評価される強みやスキルが見つかる可能性があるので、転職エージェントに相談してみると良いでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2022年11月29日
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記事更新日:2024年07月17日 リクルートエージェント編集部