転職の面接では、長所を聞かれることもある一方で、短所を聞かれることもあります。面接で慌てないように、短所を聞かれた時の回答を事前に短所を聞かれた時のために、回答を準備しておきたいところです。
そこで今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、面接で短所を聞く理由や答え方についてお伺いしました。
短所一覧の言い換え表
短所を言い換えると長所になります。短所の言い換え一覧をご紹介します。
心配性 | 責任感が強い、慎重に物事を進める |
優柔不断 | 周囲に配慮ができる、柔軟性がある |
マイペース | おおらか、人の意見に流されない |
緊張しやすい | 準備を怠らない、何事にも真剣に取り組む |
負けず嫌い | 向上心が強い、努力家 |
せっかち | スピード重視、行動力がある |
協調性が足りない | 信念がある、意志が強い |
頑固 | 粘り強い、意志が固い |
視野が狭い | 探求心が強い、集中力がある |
無計画 | 行動力がある、対応力がある |
内気 | 慎重に物事を進める、思慮深い |
短気 | 決断が早い、スピード重視 |
飽きっぽい | 好奇心旺盛、流行りに敏感 |
マイナス思考 | 慎重派、思慮深い |
おせっかい | 親切、思いやりがある |
短所の例文
面接で短所を聞かれた時の、回答の例文をご紹介します。基本的に、冒頭で端的に短所を伝えて、具体的なエピソードにつなげます。そして、短所を改善していることやそれによる成果まで、一貫性を意識して伝えることが重要です。
「マイペース」を短所とした例文
私の短所はマイペースなところだと認識しています。
自分のペースで進めないと、ミスしたりうまくまとめられていなかったりするため、以前はペースが乱れることが苦手でした。ただ、仕事の範囲が増えるに従って、様々な部署や事情を抱える人とやり取りするようになり、マイペースで進めることが難しいと感じるシーンが増えてきました。そこで、仕事のスケジュールを必ず確認するようにして、「希望スケジュールに合わせて動く仕事」と「マイペースに進めても問題のない仕事」に分類し、前者を優先して進めるようにしています。また、ミスがないかダブルチェックを行い、仕事の品質の向上にも努めています。その結果、以前よりも仕事のスピードが上がり、ミスも減りました。
「心配性」を短所とした例文
私は心配性なところがあります。
仕事ではあらゆる選択肢やリスクを想定し、対策を万全にしておかないと不安になってしまう傾向がありました。ただ、現在の職場に異動して、マーケット変化の速さを実感。ある程度のリスクを想定したら、あとはプロジェクトを進めながら調整していくという柔軟性を意識するようになりました。気になる点はしっかりと発信しつつ、スピードを重視するようになった結果、「考えられるリスクは何ですか?」「懸念点はありますか?」と意見を求められる機会が増えました。心配性という短所が、「注意深さ」という長所として認められていると感じています。
「面倒くさがり」を短所とした例文
短所は面倒くさがりなところです。
以前はなかなか行動に起こすことができず、物事に積極的ではありませんでした。入社して数年が経ち、積極的に行動を起こす同期がとても成長しているのを目の当たりにして、「面倒くさがって行動しないと、何も得るものがなく成長しない」ということに気がつきました。それからは、初めは興味が持てない仕事でも、まず着手してみていいところを発見するようにしています。今では、工夫したり改善したりしているうちに仕事が楽しくなるので、「面倒くさい」と感じる機会が減っています。
「緊張しやすい」を短所とした例文
私は「緊張しやすい」という短所があります。
顧客向けのセミナーや説明会など、大勢の人前で発言をする際は、どうしても緊張してしまいうまく話すことができませんでした。上司や先輩からも、「緊張が伝わってくる」と指摘を受けたこともあります。緊張してしまうのですが、顧客向けセミナーの企画の仕事はとても好きで、顧客の声を生で聞くことができて、売り上げにつながるやりがいもありました。そのため、いつまでも緊張していられないと一念発起し、事前準備を念入りに行い、話し方を工夫することで改善を図りました。資料は事前に読み込んで、同僚の前でプレゼンの練習を行いました。動画も撮影して、話し方や身ぶりなどを工夫することで、落ち着いて話せるようになりました。現在は、以前ほど緊張せずに話すことができるようになっています。
「飽き性」を短所とした例文
短所は「飽き性」なところです。
2年ほど経つと仕事に飽きてしまい、新しい職種やサービスに挑戦したくなる傾向があります。これまでは飽き性をカバーするために、少しずつ担当領域を広げていくことで、飽きずに仕事を続けてきました。ただ、1年前から後輩ができて、質問に答えるようになったことで、自分の経験や知識がまだ浅いことに気がつきました。そこで、短絡的に業務内容を変えようとするのではなく、自分の視点や意識を変えることで、新たな発見や挑戦につなげていこうと考えました。関係部署や社外の人にも話を聞いて知見を広げたり、新しい手法がないか試してみたりすることで、現在では飽き性よりも探求心が強くなっています。
「真面目過ぎる」を短所とした例文
私は真面目過ぎるところがあり、仕事で失敗した経験があります。会議室の利用や備品の管理などの社内ルールを守らない従業員に対して、細かく指摘しルールを守るように強く求めた結果、上司から「言っていることは正しいが、ルール自体も厳しすぎる。厳しく指摘するのではなく、みんなが気持ちよく働けるように適切な運用を考えてほしい」と言われました。そこで、自分がいかにルールに縛られて、狭い視点で行動していたのかに気づき、反省しました。それ以降は、どのようなルール・運用であればみんなが働きやすいのかを第一に考えて、相手の立場を配慮しながら行動するようにしています。
短所を面接で伝える際のポイント
短所を面接で聞かれた場合は、どのように答えればいいのでしょうか。答え方のポイントを3つご紹介します。
客観的に事実を伝える
短所をネガティブに捉えられないように配慮するあまり、回りくどくなってしまったり言い訳のように聞こえてしまったりする可能性があります。また、「短所はありません」という回答も、「自己分析が不十分である」と判断される可能性が高いでしょう。面接で短所を聞く理由は、短所を客観的に捉えて、改善する姿勢や工夫をしているかどうかです。長々と短所について語ってしまうのは逆効果ですが、面接で短所を聞かれたら端的に事実を伝えて、改善する姿勢があることを補足すれば、マイナス印象になることはありません。
改善する姿勢を交える
短所を客観的に伝えたら、その次に短所を改善している姿勢やエピソードを交えます。改善する姿勢は、応募者に困難が訪れた時に、どのように壁を乗り越えるのかを知るためのヒントになります。短所を改善・工夫する姿勢を伝えて、どのような成果や気づきがあったのかまで伝えられれば、好印象を与えることも可能です。短所だけを伝えるのではなく、改善する姿勢をセットで伝えて、アピールにつなげましょう。
ビジネスシーンを意識する
短所だけでなく、長所を聞かれた場合も同様ですが、回答は必ずビジネスシーンを意識しましょう。採用担当者が面接で長所・短所を聞く背景は、自社の社風や仕事の進め方などに、人柄がマッチしているかを判断するためです。学生時代の体験や日常生活でのエピソードは、採用担当者が職場との相性や働く姿勢などをうまくイメージすることができません。必ず、短所で伝えるエピソードはビジネスシーンを意識するようにしましょう。
短所が思い浮かばない場合は?
短所が思い浮かばない場合はどうしたらいいのでしょうか。短所を探す3つの方法をご紹介します。
長所を変換する
短所と長所は表裏一体です。そのため、短所がなかなか思い浮かばないときは長所を変換するという方法があります。例えば、「粘り強さ」を「頑固」、「柔軟性」を「優柔不断」など、長所を変換すると短所になります。自己分析などで明らかになった自身の強みや長所を、短所に言い換えてみましょう。また、長所を変換するメリットとして、「粘り強く仕事に取り組む一方で、頑固で信念を曲げないところが短所です」など、長所を交えながら伝えることができるので、アピールにつなげることができます。
仕事上での失敗経験を振り返る
仕事で失敗した体験を掘り下げると、自分に足りないものが見えてきます。短所が思い浮かばない場合は、これまでの仕事での失敗体験を振り返ってみましょう。例えば、「うっかり締め切りを過ぎてしまい取引先に怒られた」という失敗体験の場合は、なぜ締め切りを過ぎてしまったのか、失敗の原因を探ってみましょう。「マイペースに仕事を進めていたから」「スケジュールを立てていないから」などの原因が明らかになったら、「マイペース」「計画性がない」など、短所として言語化します。失敗を繰り返さないために工夫したことがあれば、短所とともに伝えると良いでしょう。
周囲から指摘された課題を思い出す
上司や先輩、同僚などから指摘された業務上の課題を思い出すという方法もあります。例えば、「考えすぎだよ」「視野を広げてみたら?」など、指摘やアドバイスを受けたことを思い出し、「心配性」「視野が狭い」など、短所として言語化します。もし周囲から指摘されたことをきっかけに改善したエピソードがあれば、それも交えて伝えると良いでしょう。また、短所を改善した結果、仕事で成果を出したことがあればさらに効果的です。
短所を面接で聞かれる理由
採用担当者は、なぜ面接で短所を聞くのでしょうか。面接で短所を聞く狙いについて解説します。
自己理解ができているか
「短所を理解している」ということは、自分自身を客観的に捉えて足りないものを把握する力があるということです。足りないものを補うために、工夫や改善をする姿勢があるとも言えます。また、会社で働くということは、組織やチームで協力しながら成果を出すことが求められます。お互いに足りない部分をフォローしながら、個々の強みを発揮するチームワークが必要です。そのため、自己理解ができていることは、入社後に活躍する人材かどうかを判断する際の重要なポイントになるでしょう。
課題を認識し解決しようとしているか
自分に足りない部分を理解し、短所を課題と捉えて解決する意識があるかどうかを判断しています。課題を解決して成長したいという意識があれば、入社後の活躍可能性を期待できます。また、課題を捉えて解決しようとする課題発見力、課題解決力は、ビジネスシーンでは必ず求められる力です。課題を解決に導く姿勢をアピールできれば、面接の評価はプラスに働くでしょう。
自社にマッチする人物か
短所の質問を通じて、応募企業の社風や働き方、仕事の進め方にマッチしているかどうかを判断しています。例えば、チームワークを重視している企業の場合は、「頑固」「協調性が足りない」などの短所があると、イキイキと働けない可能性があります。一方で、「おせっかい」「優柔不断」などの短所であれば、チームワークに良い影響を与える可能性があるため、評価されるかもしれません。短所が応募企業とマッチしているかどうかは、入社後の活躍可能性を判断するためのポイントの一つになっています。
短所も言い換えることで好印象を与えられる
短所を聞かれると、「正直に言うとマイナス評価になってしまうのでは…」と不安になるかもしれません。でも、採用担当者は欠点を探すために短所を聞いているわけではなく、「自己理解ができているか」「短所にどのように向き合い、克服するためにどのような工夫をしたか」を知りたいと考えています。
短所を伝えたからといって直ちにマイナス評価になるわけではありませんが、言い換えを上手に活用することで、長所として好印象につなげることができます。面接が決まったら、自分の短所を言語化し、長所に言い換えておきましょう。さらに短所を改善する工夫なども回答に交えることで、「自己理解ができていて、成長の余地がありそう」と好印象を与えることができるでしょう。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。