第二新卒という言葉を聞いて「社会人になって何年目までのこと?」「既卒と何が違うの?」「そもそも自分は第二新卒に当てはまる?」などの疑問を抱く人もいるでしょう。また、転職活動を進める際に「第二新卒で転職することは難しい?」「大手企業に応募しても門前払いされるのでは?」などの不安を感じてしまう人もいるようです。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、第二新卒の定義・考え方や、転職市場の現実と可能性、求人の探し方などを解説します。
第二新卒とは? 何年目まで?
第二新卒に明確な定義はなく、企業によって定義や解釈が異なるため、「社会人何年目までが当てはまるのか」は一概には言えません。それぞれの企業の中で第二新卒の定義がある場合には、その定義によります。
この記事では、学校(高校、専門学校、短大、高専、大学、大学院)卒業後、おおむね3年以内で、職務経歴がある人を第二新卒として解説いたします。
既卒との違いとは?
「既卒」とは、すでに学校を卒業していることを意味しており、近年では、「既卒3年以内の卒業者を新卒採用の枠で応募を受け付ける」という企業もあります。
この背景としては、雇用対策法に基づく「青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針」の一部改正に伴い、「事業主は、学校等の新卒者の採用枠に学校等の卒業者が学校等の卒業後少なくとも3年間は応募できるようにすべきものとする」などの項目が盛り込まれたことが関係していると考えられます。
第二新卒の転職の現実とは?転職市場における可能性
キャリアがまだ短い第二新卒の場合は、転職活動を進める際に「門前払いされるのでは?」と不安に思う人もいるでしょう。その一方、「ポテンシャル採用のため、比較的甘い目で見てもらえるのでは?」と考えている人もいるようです。
ここでは、第二新卒の転職市場や転職の可能性について解説していきます。
Z世代(26歳以下)の転職者は他の年代と比べて増加している
第二新卒にはZ世代に当てはまる人もいると思いますので、Z世代の転職動向についても紹介いたします。株式会社リクルートの調査「Z世代(26歳以下)の就業意識や転職動向」(※1)によれば、26歳以下の転職は、コロナ禍の影響による一時的な落ち込みを除くと、右肩上がりで増えています。
また、厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概要」(※2)によれば、性・年齢階級別の入職率は、「25〜29歳」の男性は15.9%、女性は17.9%となっています。社会人経験年数が長い30代、40代、50代と比較した場合、いずれにおいても「25~29歳」の入職率の方が高いことがわかります。
(※1)参考資料:「Z世代(26歳以下)の就業意識や転職動向」(リクルート)
(※2)参考資料:「令和3年雇用動向調査結果の概要」(厚生労働省)
第二新卒の転職市場における可能性
株式会社リクルートの調査(※)によれば、転職支援サービス『リクルートエージェント』の求人分析をした結果、2022年度は「未経験求人」数の大幅な増加が明らかになっています。
2018年度の「未経験求人」数と比較すると、2021年度は1.6倍、さらに2022年度は3.2倍にもなっており、前職の業界や職種を問わず採用する企業が急増していると言えるでしょう。
求人の内容を細かく見ると、「職種未経験OK、〇〇業界経験者歓迎」とするケースもあれば、「エンジニア経験は求めるが、〇〇言語による開発は未経験でOK」「職種業界未経験OK、新たなスキル習得経験を歓迎」などのケースがあるようです。
(※)参考資料:「未経験求人が2018年度比で3.2倍に増加。2022年度で急増 新たな業界・職種へチャレンジできる機会が増加」(株式会社リクルート)
企業が第二新卒を採用する理由は?
ここでは、企業が第二新卒を採用するケースについて、考えられる理由を解説していきます。
企業が第二新卒を採用する理由
少子高齢化が進んでいる日本においては、新卒採用における予定人員数を満たすことができない企業も増えており、それを補うために第二新卒を積極採用するケースは少なくないと言えるでしょう。また、社員の平均年齢が上がったために、経営の中核を担う次世代の人材を育成することを目的に第二新卒を求める企業もあります。
一方、新規事業の立ち上げや事業拡大などに伴う大量採用を行う際に、経験・スキルを重視せず、第二新卒を歓迎するケースもあります。
企業が第二新卒を採用する理由としては、他社で長くキャリアを積んでいないことから「自社の企業文化に馴染みやすい」という点が考えられます。企業の風土やカルチャーにマッチした人材として長く定着し、活躍・貢献し続けることを期待されているでしょう。
また、社会人としての経験が短いことから、素直さや吸収力、柔軟性、入社後の成長性なども期待されているケースも多くあります。なおかつ、すでに社会人として企業で働く経験をしていることに期待し、「ビジネスシーンにおける振る舞い方などの教育研修を行う負担を軽減できる」と考えて採用するケースもあるでしょう。
企業が第二新卒に求めていること
第二新卒を採用する場合は、経験・スキルよりポテンシャルが重視される傾向にあるため、「求職者の人柄、特性などが企業文化にマッチしているか」「仕事に対する意欲が高いか」「入社後に成長し、活躍・貢献できるか」が大きな判断基準になると考えられます。
応募企業にカルチャーマッチしていることや、志望度の高さ、自ら学ぶ姿勢などをアピールすることがポイントです。
企業が第二新卒に対して懸念しやすい点
新卒で入社した企業を早期離職している場合は、入社後の定着性について懸念される可能性があります。短期間で転職を繰り返している場合も同様のことが言えるでしょう。
入社後の定着性をアピールするためには、入社後にどう成長していきたいのか、どのようなキャリアを築いていきたいのかを伝えることが大事です。
第二新卒の内定率はケースバイケース
同じ第二新卒を募集する求人でも、企業によって文化が違い、カルチャーにマッチする人物像も違うため、求められることも変わってくるものです。また、ポテンシャル採用の場合は、応募者の人柄や仕事に対する価値観、姿勢などがマッチしているかどうかが採用判断に影響すると考えられるため、内定率はケースバイケースと言えるでしょう。
内定率を高めるためには、こうした点も踏まえた上で、応募企業で発揮できる強みやマッチしていることを応募書類や面接でしっかりとアピールすることが重要になります。
第二新卒の求人の探し方
ここでは、第二新卒でも採用の可能性がある求人の探し方を紹介します。
転職サイトで「第二新卒歓迎」の求人を検索する
転職サイトで「第二新卒歓迎」とする求人を検索すれば、ポテンシャル採用を行う企業が見つかるでしょう。
一方、第二新卒に関する記載がない場合でも、未経験者も歓迎している場合には、経験・スキルが足りなくても採用に至る可能性があります。「社会人未経験歓迎」「職種未経験歓迎」「業界未経験歓迎」などの項目を設定している企業も、ポテンシャル重視の選考をする可能性が高いでしょう。
気になる企業の採用ページを確認する
気になる企業がある場合は、採用ページで中途採用の募集がないか確認することもできます。
転職サイトの求人と同様、第二新卒に関する記載がない場合でも、未経験者の応募をOKとしている場合は採用に至る可能性があります。
転職エージェントを活用する
「自分一人ではマッチする求人を探せない」と感じたら、転職エージェントを活用する方法もあります。
転職エージェントでは、求職者の希望や経験・スキルなどを踏まえた上で、採用の可能性がある企業を紹介してくれます。情報収集ができる上、応募企業の比較検討をする際にも役立つでしょう。
また、キャリアの棚卸しや自己分析、応募書類の作成、面接対策などをサポートしてもらえるケースもありますし、第二新卒としてアピールした方がいい点などについて、客観的なアドバイスを受けることもできます。
「第二新卒の転職は厳しいのでは?」という不安を感じている場合にも、さまざまなサポートを受けることで、より納得感をもって転職活動を進めることができるでしょう。
第二新卒の転職エージェントの選び方
転職エージェントは、大きくは「統合型(大手)」と「特化型(中小)」に分類することができます。それぞれの特徴を知って上手に活用していきましょう。
総合型・大手転職エージェントの特徴
「総合型」と呼ばれる大手の転職エージェントは、扱う求人数が豊富であり、幅広い業界・職種に関する転職ノウハウがあります。また、特定の業界・職種専門のチームをもっているケースもあります。
求人案件の種類も数も豊富で、第二新卒の転職支援実績も多いため、「自分と同年代の求職者がどのような転職活動をしているか」「未経験転職ではどのようなアピールをしたらいいのか」など、第二新卒ならではの疑問にも的確なアドバイスがもらえるでしょう。
特化型・中小エージェントの特徴
中小規模の転職エージェントは、「特化型」として、採用企業、業界、職種、地域、年代など、専門領域に特化していることが少なくありません。
密度の濃い情報提供ができることを特徴としており、特化している業界・職種の出身者がキャリアアドバイザーとして所属しているケースもあります。
第二新卒の転職には「総合型」転職エージェントがおすすめ
「総合型」の転職エージェントの場合は、求人の数も種類も豊富であり、かつ、第二新卒の転職支援実績も多いと言えます。第二新卒で転職した事例について聞くこともできますし、「未経験転職でアピールにつながること」についてのアドバイスも受けられるでしょう。
将来に向けた可能性を探り、キャリアの選択肢を広げるためにも、第二新卒の場合は総合型の転職エージェントを中心に活用してみることをおすすめします。
希望の職種・業界、エリアなどが決まっている場合は、「総合型」を中心に活動を進めながら、「特化型」の転職エージェントも併用する方法があります。それぞれの転職エージェントの特徴を把握し、第二新卒の転職活動に活かしましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。