転職活動を始めると、必ず伝えることになる「志望動機」。
まずは、仕事の内容や適性を理解してから、自分の経験を振り返って、志望動機を作成することが、転職活動の成功へのポイントです。
医療事務を志望する場合、どのように整理し、作成すればいいのでしょうか。
志望動機の書き方のポイントをリクルートエージェントのキャリアアドバイザー濵﨑涼花さんにお伺いしました。
医療事務の仕事内容を理解しよう
医療事務の仕事は、医療機関で行う事務業務のことを指します。診察受付、カルテの準備、会計、診療報酬の請求など、患者さんが病院を訪れた際に行う、診察・看護以外の事務業務全般を担う役割です。
医療事務は、大きく「受付業務」と「レセプト業務」の2つの業務に分かれます。
■受付業務
受付業務は病院を訪れた患者さんへの受付窓口の応対業務全般を指します。患者さんの診察券や保険証を預かり、問診票記入の依頼、カルテへの基本情報入力の対応をし、受診科の待合いへ案内します。その後、患者さんの診療が終わったら、会計や次回の診療案内をし、見送ります。
患者さんが受付から診療後まで安心感を持てるよう、細やかな気配りと寄り添った対応を求められます。
■レセプト業務
レセプト業務は、医療事務の中でも専門的なスキルが必要になる、医療費の支払いに関する業務です。レセプトの作成から点検、医師への確認、保険者(「健康保険組合」、「国民健康保険組合」などの公的医療保険の運営者)への請求までを担当します。
レセプトとは、医療機関が保険者に請求する医療費の診療報酬明細書のことです。レセプトには患者さんと医療機関名のほか、診療の対象となった傷病名、その傷病に対して行われた処置や使用された薬に応じた診療報酬点数などが記載されています。医療機関の規模によって取り扱い枚数は異なりますが、月初には前月のレセプトを点検・確認する業務が発生します。レセプトは現在オンライン化されているため、レセプト業務はパソコンでの作業になります。
大きな病院では、ほかにも「クラーク業務」というものがあり、医師・看護師と受付業務の中間でサポートをする業務があります。「外来クラーク」ではカルテやレントゲンの用意、検査結果の準備、紹介状の作成などを担当し、「病棟クラーク」(入院患者がいる場合)では、入退院管理や手術・検査スケジュールの管理などを担当します。
大学病院や総合病院など規模が大きい医療機関は、受付、会計、レセプト、クラークと業務が細分化されますが、地域のクリニックなどではすべてを担当する場合もあります。
どの医療事務の業務も、多忙な医師・看護師と、不安を感じている患者さんの架け橋となる大事な仕事であることに変わりはありません。
医療事務に求められる適性を理解しよう
医療事務で求められる適性は、3つあります。
まず、臨機応変に、ホスピタリティをもって接するコミュニケーション力が重要です。体調不良を訴えている患者さんをフォローしながら、迅速に動いている医療スタッフの事務作業をサポートするので、冷静でいながらも、相手の様子に合わせた柔軟で丁寧な対応が求められます。
次に、的確な業務遂行力がカギとなります。会計やレセプト業務など、お金に関わる数字を扱うため、正確性が求められますし、カルテや検査結果の取り違いが起こらないように、業務フローを順守して着実に作業を進めることが大切です。
3つ目の適性としては、ITツールに抵抗がないことが挙げられます。現在、医療現場は急速にIT・オンライン化が進んでいます。カルテも紙カルテから電子カルテに移っている医療法人が多く、ITツールに対して抵抗なく業務ができることは必須になっています。パソコンを使った業務が多いため、パソコンでの基本動作が問題なくできるか確認しておきましょう。
医療事務の志望動機の書き方
一般的に志望動機を考える際には次の3つのポイントを抑える必要があります。
2.会社について
3.職種について
これらのポイントを一つずつ見ていきましょう。
医療事務を志望する理由を整理しよう
医療事務を志望する場合、医療事務という職種の志望理由以前に、「なぜ医療業界を志しているのか」という点を整理しておくことが大切です。
医療業界に興味を持ったきっかけがあるはずなので、自分の経験と医療業界との接点を具体的に書き出してみましょう。
医療業界での面接では、家族や知人に医療が必要な人がいるのかと確認されることがあります。身近に医療の価値を感じる機会があり、医療の必要性を体感している人の方が、本気度が高く仕事に取り組めると捉えられる場合もあるようです。
その上で、医療事務を志望する際、次の3つのポイントで整理しましょう。
②仕事に対して貢献できる点
③希望職種での経験を通して実現したい将来像
まずは、医療事務の仕事の中で、どこに興味を持っているのかを整理します(①)。次に、これまでの自分の経験から、その業務に取り組む際に活かせることを書き出します(②)。最後に、医療事務の仕事を通して、どのように医療機関に貢献していきたいかをまとめましょう(③)。
その医療機関を志望する理由を整理しよう
一般企業と同様に、志望する医療機関についてホームページを確認し、院長の考えや病院・クリニックのビジョンをよく調べましょう。
地域医療に力を入れている病院、専門治療に特化しているクリニックなど、どんな特性がある医療機関なのかが見えてきます。
そして、志望する医療機関の目指すところと自分の経験との接点を見つけ、共感できるポイントを伝えましょう。
医療事務の志望動機例文
志望動機は、今までの自身の経験をどのように活かし、貢献できるかを伝えることがポイントです。例文を参考に、より自分に合った志望動機へカスタマイズしてみましょう。
医療事務経験者の志望動機例文
私は医療事務として幅広い業務が対応できることを目指し、貴院を志望しております。今までは都内の総合病院で4年間、医療事務として会計とレセプト業務を担当し、たくさんの患者さんをお待たせしないよう、素早さと正確さを両立すべく業務の効率化に取り組んでまいりました。今後は、受付から一貫して患者さんをサポートし、安心して診療を受けていただける環境づくりを目指し、貴院の実績にも貢献できるよう、医療事務として経験の幅を広げていきたいと考えております。
家族に女性特有の疾病を持つものが多く、同じ女性の立場で、患者さんに寄り添えるよう、婦人科を専門にした貴院の業務を支えていきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
「医療事務経験者」の志望動機ポイント
医療事務経験者の場合は、同じ職種へ転職をする理由が明確になるように、今まで経験した業務内容と次の職場で身に着けたい経験・スキルを具体的に書くことが大切です。
総合病院で細分化されていた業務しか担当できなかったので、ほかの業務も対応できるようにしたい。専門分野の診療しか行っていなかったので、より幅広い患者さんをサポートしたいなども、同職種で転職をする理由と言えます。
さらに、次の職場で積み重ねたい経験について書くことで、医療事務の仕事への覚悟が見えてきます。
また、医療機関への志望理由も、自分や家族の経験を踏まえて、その病院にこだわりたい理由があると、病院側も納得感が出てくるでしょう。
医療事務未経験者の志望動機例文
私は人の暮らしを支える仕事に携わりたく、医薬品メーカーの経理事務を4年間勤めてまいりました。しかし実際に医療現場に携わる医師や看護師の支援をし、直接患者さんの役に立ちたいという想いが強くなり、医療事務を志望いたしました。
経理事務としては、経費精算や会計ソフトへのデータ入力を行っており、金額を正確に扱う工夫をしてきました。この経験を貴院での会計やレセプト業務に活かしながら、来院する患者さんを安心してお迎えし、サポートできるような医療事務として成長していきたいと思います。
特に貴院では地域医療の充実を掲げておられ、子どもから高齢の方まで、幅広い年齢層の患者さんが通院されると知りました。私自身、大学で一人暮らしをするまでお世話になった地元の病院は、今も帰省すると立ち寄る、ふるさとのような場所です。貴院を頼りにしている地域の方から、同じように心の拠り所にしてもらえるように、貴院の事業に貢献したく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
「医療事務未経験者」の志望動機ポイント
医療事務が未経験の場合は、異業界からの転職なので、特に医療業界を志望する理由を、自分の経験と紐づけておきましょう。
今までの経験の中で、医療事務として活かせる業務経験を具体的にしておくと、実際にどのような業務で活躍してもらえるか、イメージができます。
経験を活かせそうな仕事に触れつつ、それ以外の業務にも積極的に取り組む姿勢を見せましょう。
志望する病院の特性については、事前にホームページなどでよく調べ、共感できる点について、経験と紐づけて伝えていきましょう。
医療事務の志望動機NG例
私は広告代理店の営業事務として4年間勤めてまいりましたが、今後は安定した環境で長く働きたいため、医療事務を志望しています。広告代理店では、顧客向け資料や見積書を準備するほか、問い合わせの電話対応、メールでのアポイント調整などを行ってきました。相手の身になって丁寧なコミュニケーションを心掛けてきた経験は、来院する患者さんが安心して通院できる環境づくりに活かせると考えております。また、自宅から貴院へのアクセスがよく、環境に左右されず通勤が可能ですので、今後も長く働くことができると考え、強く志望いたします。
医療事務志望動機NG例の改善ポイント
異業界から医療業界への転職を希望する場合は特に、「医療業界を志す理由」を自分の体験と紐づけて伝えましょう。経験に基づいている理由であれば、異業界からの転職でも本気度が伝わります。例えば、営業事務としてサポートする営業の担当顧客が医療法人で、医療業界について興味を持ったというのも一つです。求人票で医療事務に求められている仕事をよく読み取り、経験が活かせる点を伝えると共に、未経験の分野でも学ぶ意欲を見せましょう。
職種の志望動機については、顧客向け資料をwordで作っていたのであれば、紹介状作成などにも活かせますし、見積書作成にExcelを使っていたのであれば、レセプト作成など、パソコンでの数字入力へつながります。新規の問い合わせ対応をしていたのであれば、初めての方にもわかりやすく仕組みを説明してきた経験が、新規患者さんへの対応にも活きてくるでしょう。全く同じ業務ではなくとも、オフィスワークに精通している点や、コミュニケーションにおいて気を付けていることを伝えるとよいでしょう。医療事務に関する資格を取得している場合は明記しておきましょう。
医療法人が自宅に近いことが志望動機の一つであれば、その病院やクリニックの評判を調べ、志望動機とするのも方法です。採用において、長く働くことは前提であるため、志望理由とは言えません。定時で終わりそうだから働きやすいと捉える場合もあるようですが、労働条件による働きやすさの観点ではなく、事業ビジョンへの共感を示すことで、志望動機としましょう。
あわせて読みたい参考記事
* 志望動機が書けない!転職活動で志望動機を伝える3ステップとは?【例文つき】
* 【例文付き】一般事務の志望動機の書き方・NG例
* 【第二新卒】「志望動機」の伝え方と例文
* 【IT業界編】「志望動機」の伝え方・書き方と例文