転職活動を始めると、必ず伝えることになる「志望動機」。
まずは、仕事の内容や適性を理解してから、自分の経験を振り返って、志望動機を作成することが、転職活動の成功へのポイントです。
経理事務を志望する場合、どのように整理し、作成すればいいのでしょうか。
志望動機の書き方のポイントをリクルートエージェントのキャリアアドバイザー鎌田素子さんにお伺いしました。
経理事務の仕事内容を理解しよう
経理事務は、企業の経理業務の事務をサポートする仕事です。
経理業務には、企業の入金と出金の管理、記帳、現金・預金の管理を行う日次業務、それらを月ごとに取りまとめて、月次試算表を作成する月次業務があります。さらに、月次決算を元に、四半期や半期、年次決算という区切りで、決算報告資料を作成します。
ほとんどの企業が、決算業務は税理士や公認会計士へ報告・相談しながら進めていきますので、外部の専門家との折衝も重要な仕事です。
経理事務は、経理部門において特に日次業務の作業をサポートします。
■入金管理:売掛金の回収(見積書作成、請求書作成)
■出金管理:買掛金の支払(支払伝票作成)、給与支払、経費精算
■記帳:仕訳帳へのデータ入力
■現金・預金管理:入出金に伴う現金・預金の出納管理、残高確認
中でも、見積書作成、請求書作成、支払伝票作成、経費精算、仕訳帳へのデータ入力など、基本的な社内の経理処理のルールを学べば対応できる事務作業を担当することが多いでしょう。
経理の具体的な業務内容や使用するシステムは企業によって異なり、見積書や請求書は営業部門が対応していたり、経費精算はシステムを導入していたりと様々です。また、大企業ほど、担当業務が細分化するため、一人が担当する範囲は狭くなります。一方、中小企業では決算業務を税理士や公認会計士に任せることもあるため、経理業務としては、月次の仕訳帳作成までしか対応しない場合もあります。
このように、経理事務と一言で言っても、企業規模や運営体制によって、経理が担っている業務範囲が異なります。そのため、経理事務に応募する際は、求人票をよく読んで、どんな仕事を任されるか十分に確認をしましょう。
経理事務に求められる適性を理解しよう
経理事務は、各書類の数字を合わせていく仕事なので正確性はもちろんのこと、地道な作業でも着実にコツコツと積み上げられる集中力が求められます。
また、1円でも合わないと経理業務全体に影響を及ぼすため、会社経営につながる業務を担っている責任感や、業務への誠実さを問われます。
ほかにも、ルーティーンになりがちな業務に対しても、効率を上げるために改善しようと工夫ができる人や、業務が円滑に進むように配慮ができる人は、評価が高くなるでしょう。
経理事務の志望動機の書き方
一般的に志望動機を考える際には次の3つのポイントを抑える必要があります。
2.会社について
3.職種について
経理はすべての会社に発生する業務で、業種によって取り扱い科目の違いなどはあるものの、基本的な経理の考え方や業務内容は変わらず、専門職に近い職種とも言えます。そこで、業界や会社の志望動機を考える前に、まずは経理事務という職種への志望理由を整理してみましょう。
経理事務を志望する理由を整理しよう
経理事務の求人では、任せたい業務が明確になっている場合が多く、その業務ができるか否かが採用のカギになります。そこで、志望動機を作成する前に、自分の経験を棚卸しして、どんな経理事務ができるのか、改めて整理してみましょう。5W1Hで整理するとわかりやすくなります。
■いつ(when):2012年4月から
■どこで(where):メーカーの経理部門
■誰と(who):経理部門の主担当者3名とアシスタント2名(うち一人が自分)
■どうして(why):将来、経理担当者として、年次決算資料を作成できるようになりたいため、業務経験を積んでいる。
■何を(what):社員の経費に関わる領収書を回収し、仕訳帳へのデータ入力。支払伝票の確認と仕訳帳へのデータ入力。請求書・納品書の確認と仕訳帳へのデータ入力。対応した会計ソフト:A社
■どのように(how):
・経費について、事業部ごとに社員から回収した領収書を集めて、社員からの経費申請データと照合。仕訳帳へデータ入力。
・製造部が作成した支払伝票の情報を社内システムで確認し、仕訳帳へ入力。
・営業部が作成した請求書と納品書の情報を社内システムで確認し、仕訳帳へ入力。
その上で、経理事務として今後のキャリアにおいて挑戦したいこと、次の職場で身につけたい経験について整理してみましょう。
なお、経理事務を未経験の場合でも、今までの経験の中でExcelを使ったデータ管理やボリュームある数字データの照合・入力など、経理事務の仕事に接点のある業務内容を棚卸して、経験が活かせる点を伝えられるように準備していきましょう。
その企業を志望する理由を整理しよう
今までの経験を活かせて、かつ今後身に着けたいキャリアを積めるポジションが見つかったら、企業ビジョンや事業内容、社風について調べていきましょう。
求人票の基本情報やホームページのIR情報から経営状況を確認できますし、求人票の求める人材像から社風をイメージすることができます。志望している会社が、業界の中でどのような位置にいるかも含めて、企業研究していきましょう。
商品・サービスに関する企業の公式SNSをチェックしたり、新卒採用のページをリサーチすることで、仕事の進め方や社風を感じ取ることもできます。その中から、共感できるポイントを自分の過去の経験と紐づけて企業志望の背景を整理していきましょう。
また、経理事務からもう少し業務範囲を広げるようになると、業種ごとに必要な業務知識が変わってきます。例えば、原価計算の工程は、サービス業にはありませんが、製造業には必須です。将来身に着けたい経理業務の知識にこだわりがある場合は、その業種を志望する理由を整理して、伝えられるようにしておきましょう。
経理事務の志望動機例文
志望動機は、今までの自身の経験をどのように活かし、貢献できるかを伝えることがポイントです。例文を参考に、より自分に合った志望動機へカスタマイズしてみましょう。
経理事務経験者の志望動機例文
私は食品メーカーの経理事務として4年間勤め、領収書整理、経費精算、会計ソフトの
仕訳帳へのデータ入力、請求書の入金確認を担当してまいりました。貴社の経理事務では、会計ソフトを扱って、買掛金、売掛金に関わる業務から決算業務、監査法人への対応までされるとのことですので、今までの経験を活かしながら、仕事の範囲を広げ、経理担当者として成長し、事業に貢献していきたいと考えております。
また、貴社が自立した社員の育成、柔軟な組織運営に力を入れていることから、自発的な取り組みを推奨する風土があると捉えており、この点は、現職で、クラウドツールによる経費精算業務効率化を自ら提案、実装してきた経験と重なる部分があり、大変共感しております。
今後も、より正確に効率的に業務を進める工夫を凝らし、事業を支えていきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
「経理事務経験者」の志望動機ポイント
まず、経理事務として担当してきた業務内容をなるべく具体的に書き出します。次に、募集ポジションの業務内容を捉えた上で、今までの業務経験で活かせる点、経理事務の仕事で目指したい方向性を伝えます。最後に、企業のビジョンや事業内容、組織運営等、共感する点について、自分の経験や志向と接点があることを明確にしながら、志望意欲をまとめていきます。
経理事務未経験者の志望動機例文
私は、営業事務として生命保険会社に4年間勤めてまいりました。所属していた支店において、営業部全体の日々の進捗と売上に関する情報を集約して、本部へレポートしてきました。ExcelのVLOOKUPやピボットテーブルを使った集計が多く、ニーズに合わせて自在にデータを整理できる点は、上司からも評価いただいてきました。現在、その営業事務の経験を通して、企業内の売上管理に興味を持つようになり、今後は経理としてキャリアを積んでいきたいと考え、日商簿記検定2級を取得しました。
貴社では、研究開発に力を入れているとホームページで拝見し、何事も興味を持ったら基礎から着実に学びたいという自分の志向と、共通しているのではないかと考えております。
未経験の仕事ではありますが、データ活用の経験を活かして、経理担当として責任をもって貴社の事業に貢献したいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
「経理事務未経験者」の志望動機ポイント
未経験から経理事務を志望する場合は、業務の特性である、数字を扱う業務の経験や、仕事を正確に着実に進めてきた経験をアピールすることがポイントです。
また、未経験から経理事務に取り組むからには、意欲が高いことを表す必要があります。経理事務として身に着けたい実務経験や、目指す理由、経理としての将来像を具体的にすることで、本気度や覚悟が見えてきます。簿記に関する資格の取得や、目指しているものがあれば、必ず伝えましょう。
経理事務の志望動機NG例
私は、営業事務として生命保険会社に4年間勤めてまいりました。所属していた支店において、営業チームを事務面でサポートし、契約書類のデータや契約金額の確認を担当いたしました。営業担当者が多忙な際は、見込み顧客のアポイント調整を対応することもあり、相手や状況に合わせて柔軟に対応することができます。今後は経理事務としても、各部署とのコミュニケーションを円滑にする役割を担い、長期的に事業運営をサポートして行きたいと考えております。
特に貴社では、各部署のチームワークを重視していると、ホームページで拝見しましたので、
経理部門が一体感を持てるようチームの一員として貢献していきたいと思います。
経理事務志望動機NG例の改善ポイント
未経験から経理を志望する方の中には、経理という仕事を「簡単な事務作業」と捉えている方もいるようです。しかし、経理事務には数字を正確かつ効率的に扱うスキルが必須となります。数字を扱うスキルレベルを具体的に記載することで、経理事務としての適性が伝わるでしょう。今後、専門性を身に着けたいということであれば、簿記に関する資格取得をし、経理としてのキャリアパスを具体的に描いておくと、経理に対する意欲や覚悟が見えてきます。まだ資格取得ができていない場合は、学ぶ姿勢を示しておくとよいでしょう。
また、最近は入金確認もインターネットを通じて行うことが多く、パソコンに向かったルーティーン作業が多くなりがちで、それでもコツコツと正確に取り組めることが必要です。円滑なコミュニケーションを取れることはもちろん大切ですが、担当する日常業務をスピーディかつ正確にできる能力の方が優先順位は高いので、アピールするポイントに注意しましょう。
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