「今の仕事は自分に合わない気がする」「でも、やりたいことがわからない…」
会社を辞めて転職したいと思っても、何がしたいかわからず、動けないまま悩み続けてしまう人もいるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏が、やりたいことがわからない原因と対処法、本当にやりたいことを見つける方法などを解説します。キャリアに自信がない人や、夢中になれることを探したい人へのアドバイスも紹介するので、今後に役立ててみましょう。
目次
やりたいことがわからないのはなぜ?8つの原因と対処法
「やりたいことがわからない」というケースによくある8つの原因と対処法を紹介します。
1:日々の仕事など、やるべきことに追われている
「仕事が忙しく、やるべきことに追われている」「家庭の事情で自分の時間を作ることが難しい」などの場合は、やりたいことを考える時間がなく、体力的にも疲弊しているケースが多いでしょう。こうした場合、やりたいことに対する自分の気持ちを後回しにしているために、何がしたいのかもわからなくなりがちと言えます。
<対処法>
自分の時間を作ったり、しっかりと休む日を取ったりすることが大事です。精神面と体力面にゆとりを持たせることで、何かをやりたい気持ちが湧いたり、やりたいことが見えやすくなったりするでしょう。
2:人生におけるさまざまな可能性をまだ知らない
仕事や趣味などを通じた活動や、多くの人との出会いなどを経験していない場合、世の中にあるさまざまな楽しさや喜びを知らない可能性があります。また、挫折の経験をすることで心の奥にある思いに気づいたり、成功体験などによって心底嬉しく思ったりした経験がない場合は、「自分はどうしたいのか」「何を大切にして生きていきたいのか」を明確に感じにくいと言えます。さまざまな経験をしていない場合は、興味を感じる物事に出会う機会も少ないため、自分にどのような可能性があるのかも知らないままになるケースがあります。
<対処法>
仕事でもプライベートでも、これまで経験したことのないさまざまなことに挑戦してみるのがおすすめです。興味を持てることや、自分に向いていることが見つかりやすくなりますし、反対に、自分にとって興味のないことや向いていないことを知る機会にもなるでしょう。
3:自分には無理だと思い、最初から諦めている
やりたいことや興味を持つことがあった場合でも「自分には無理」と思い、最初から諦めてしまう人もいます。何かに興味を持って「やってみたい」と思っても、準備したり行動に移したりする大変さを避けるために、「どうせ無理」「やるだけ無駄」と考え、行動に移せないまま終わってしまうケースがあります。
<対処法>
「自分にはできない」と思い込まず、まずは実現できる方法を探してみましょう。そこからできることにトライしていくことで、次のステップにつなげることができます。
4:自分に自信がなく、常に他人と比較してしまう
自分に自信がなく、常に他人と比較している場合は、他人の目線が判断基準になっている可能性があります。自分の思いをベースにせず、他人がやっていることを羨ましく感じたり、引け目を感じたりすることで、自分が何をしたいのか、何を大切にしたいのかがわからなくなってしまうケースもあるでしょう。
<対処法>
自分自身の判断基準で「良い」と思えることや魅力を感じるものを探してみることが大事です。まずは、他人に対して良いと思う部分や羨ましいと感じることに対し、「なぜ良いと思うのか」「なぜ羨ましいのか」「自分はどうしたいのか」を考えてみると良いでしょう。
5:失敗を恐れ、チャレンジすることを避けている
失敗することを恐れている場合は、物事に対して消極的になり、自分のやりたいことがあってもチャレンジすることを避けてしまいがちです。また、完璧主義などの場合も「完璧な準備をすること」にとらわれてしまった結果、何も始められなくなってしまうケースがあります。こうしたことを重ねるうちに、自分が何をしたいのかわからなくなってしまう人もいます。
<対処法>
「失敗しても全てが終わるわけではない」と考え、気楽に取り組んでみましょう。自分が思っているよりも、他人は誰かの失敗を気にしていないものです。「そうは言っても、やっぱり失敗はしたくない」という場合は、チャレンジしながら失敗しない方法を考えたり、誰かに相談しながら失敗しないやり方を習得したりすることもできます。
6:失敗や挫折の経験から「できること」しかやらない
何かにチャレンジした結果、失敗や挫折を経験したことで、「できることしかやりたくない」と自分の中に閉じこもってしまうケースがあります。何事においても最初からうまくいかないことは多くあるものですが、繰り返しチャレンジしないために、成功体験を得られず、できることも広がらないまま、自分の可能性を狭めてしまう人もいます。
<対処法>
過去の挫折や失敗を振り返り、「どうすればよかったと思うか」を一度考えてみましょう。自分の気持ちを整理した上で、「あのとき、できなかったことができるようになるにはどうすればいいのか」を考えてみることが大事です。失敗から学び、改善していくことで、できることが増えていき、次第に進みたい方向性も見えやすくなります。
7:やりたいことがない自分に問題があると思っている
熱中できることや夢中になれることがなく、「やりたいことがない自分に問題がある」と考えてしまう人もいます。「自分には才能がないために、やりたいことも見つけらない」と思い込み、悩んでいるケースもあるでしょう。
<対処法>
「最初から何かに夢中になれる人ばかりではない」ということをまず理解することが大事です。物事に取り組む中で次の興味が湧いたり、できることが増えたりすることは多いため、「今の時点で夢中になれるほどのことがない」と考えず、興味を持ったことを気軽に始めてみると良いでしょう。
8:誰かに言われたことをやっている
「仕事で上司の指示通りに動き、自ら目標を持ったり、改善提案をしたりすることがない」「休日などのプライベートでも、友人やパートナーのやりたいことに付き合い、自分から何かを提案することがない」など場合は、誰かに言われるがまま行動している可能性があります。物事に取り組む際に、自分の意志や考えを明確に持っていないために、やりたいことがわからなくなってしまうケースもあるでしょう。
<対処法>
仕事で何かに取り組む際には、自分なりに目的を持つことが大事です。それにより、「自分の意志のもとに物事を進めていく」という意識が高まります。また、プライベートの場合は、「自分は、どのようなことを楽しいと思うのか」を大切にしてみると良いでしょう。
誰かに言われるがまま動くのではなく、さまざまな物事に対し、自分なりの意志や考えを持って経験を重ねていけば、やりたいことや向いていることが見えやすくなるはずです。
自分が本当にしたいことを見つける方法
「やりたいことがわからない」と悩んでいる人のために、自分が本当にしたいことを見つけるための方法を紹介します。
自分の中のハードルを下げ、気になったことはまずやってみる
気になったり、興味を持ったりしたことは、まずやってみることが大事だと考えましょう。自分の中のハードルを下げ、「完全に夢中になれないことでもいい」「完璧に実現しようと思わなくていい」と考えることが大事です。やってみるうちに興味が広がったり、楽しさを感じたりしたら、心のままにさらに活動を続けてみれば、「夢中になれる」「自分に向いている」と思えるようになる可能性があります。
やったことがないことにあえて挑戦してみる
世の中にどのような価値観や選択肢があるのかを知るためには、さまざまな経験をすることも大事です。「やったことがないこと」とは、「経験したことがないこと」であるため、新たな経験をすることで、今まで知らなかった新しい価値観や可能性を見出せる可能性があるでしょう。
「自分がしてみたい」と思うことをとにかく書き出す
自分がしてみたいと思うことについて、小さいことから大きなことまで書き出してみる方法もあります。明日からできるような小さなことでも、実現不可能な大きなことでも構いません。少しでも気になっていることをどんどん書き出してみることで「まずは、これをやってみよう」「これなら実現できるかも」など、やりたいことへのモチベーションを感じることができるでしょう。
仕事で何がしたいのかわからない!適職の探し方を紹介
仕事に対して「何がしたいのかわからない」と感じている人のために、適職の探し方を紹介します。
過去の経験から楽しかったこと、嬉しかったことを考える
幼少期や学生時代などを振り返り、楽しいと感じたことや嬉しいと思ったことを考えてみましょう。紙などに書き出し、「何にワクワクしたのか」「どういったところが楽しかったのか」「なぜ嬉しいと思ったのか」をさらに考えて書き出します。それらに共通することを探してみれば、「どのようなことなら楽しんで取り組めるのか」が見えやすくなります。
自分の強みや活躍できる場所を考えてみる
これまでの仕事で、評価されたことや感謝されたことについて考えてみることも大事です。「やりたい仕事がなく、何がしたいのかわからない」と感じている場合でも、自分が活躍して成果を出したり、誰かのためになったりすることで、仕事にやりがいを見出せる可能性があります。どのような強みを発揮できたのか、どういった場面で評価されたのかを考えることで、活躍できる場所が見つかりやすくなるでしょう。
やりたくないこと・苦手なことから考えてみる
過去の経験や今の仕事などについて、やりたくないこと・苦手なことを書き出してみるのも方法です。その上で、「反対に、どのようなことならやってもいいと思うか」「辛い・苦手と思わずに続けられるのか」を考えてみましょう。「やってみてもいいこと」「続けられそうなこと」から、自分に向いている仕事が見つかる可能性もあります。
自分にとってロールモデルとなる人を探してみる
自分自身に「こうしたい」という思いがない場合は、周囲の人や著名人、歴史上の人物、物語の登場人物などの中から「こんな風になりたい」と思えるロールモデルを探してみることもできます。
周囲の人から見つける場合は、具体的な仕事内容や働き方、キャリアの道筋などが見えやすいでしょう。また、著名人から見つける場合は、本人のこれまでの経緯や考え方などがわかるインタビュー記事などを読んでみることで、どのように現在に至ったのかを知ることができ、自分に重なる部分を探すこともできます。
歴史上の人物や物語の登場人物からは、その生き方や考え方などに対して「どのような部分に共感するのか」「自分が大切にしたいものは何か」「どのような存在になりたいのか」を考えてみると良いでしょう。
ロールモデルを見つけたら、現在の自分とのギャップについて考えた上で、その人物に近づくために何をすればいいのか、どういった仕事をするといいのかを考えることがポイントです。
世の中にどのような仕事があるのか情報収集する
世の中にどのような仕事があるのかを知ることで、やりたい仕事や自分に向いている仕事が見つかる可能性もあります。転職サイトなどで求人情報をチェックしたり、人気の職業ランキングなどを調べたり、周囲の人の仕事について聞いてみたりするなどで、情報収集してみると良いでしょう。また、自分が好きな商品やサービスを手がける企業の採用サイトなどで、どのような職種や仕事があるのかを調べてみる方法もあります。
プライベートで実現したいことから考える
「そもそも仕事に対する熱意を持てない」という場合には、プライベートで実現したいことから考えるのも良いでしょう。将来、実現したいライフスタイルをイメージし、それを叶えるために必要な働き方や給与などを考えてみることで、「仕事を通じてこんな生活がしたい」ということが見えてくるかもしれません。
仕事重視の価値観ばかりが正解ではないため、「プライベートでこうしたいから、この仕事を選んだ」という考え方から適職を探すこともできます。
転職エージェントで客観的なアドバイスをもらう
自己分析やキャリアの棚卸しのサポートをする転職エージェントもあります。活用してみることで、仕事を通じて実現したいことなどが見つかったり、これまでの経験・スキルの中から自分の強みを発見できたりする可能性があります。転職市場のプロに適職について相談することで、客観的なアドバイスを受けることもできるでしょう。また、自分にマッチする仕事の紹介なども受けられます。
適職を探すには、やりたいことと求められることの違いを知るのも大事
「やりたいこと」とは、自分自身が興味のあること、やりがいや楽しさを感じられることを指します。一方、「求められること」は、周囲や社会からニーズがあることなので、人から喜ばれたり感謝されたり、成果を挙げたりすることにつながると言えます。これらに加え、「できること」もあり、自分の経験・知識・スキルなどを活かせること、強みを発揮できることを指します。
やりたいことだけでは仕事は成り立たちませんし、求められることやできることだけをする仕事も自分自身のストレスになる可能性があります。反対に、この3点が重なる仕事なら、活躍・貢献することができ、自分自身も楽しみながら仕事を続けていきやすいため、「適職」と言えるでしょう。
無料の適職診断セミナーや適職診断テストを活用するのもおすすめ
リクルートエージェントの適職診断セミナーは、無料で受講することができます。転職活動のプロのキャリアアドバイザーから自己分析のやり方を教えてもらいながら、自分に向いている仕事や前向きにやってみたいと思える仕事を探すことができます。
また、厚生労働省の「職業適性テスト (Gテスト)」や、やりたいことや得意なこと、強みを理解するツール、「マイジョブ・カード」の自己診断などを使う方法もあります。
【参考サイト】
リクルートエージェント 適職診断セミナー
職業適性テスト (Gテスト)
出典:job tag(厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET))
マイジョブ・カード自己診断一覧
出典:マイジョブ・カード
キャリアがないから不安…。今から目指せる職業はある?
「キャリアがないから自信がない」「転職できるか不安…」という人のために、今から目指せる職業についてのアドバイスを紹介します。
キャリアがなくても適職は見つけられる?
自分自身で「自信を持てるような実績やキャリアがない」と思っていても、きちんとキャリアの棚卸しをしてみることで、強みとなる経験・スキルが見つかるケースも少なくはありません。まずはしっかりと自分のキャリアの棚卸しをしてみることで、意外な強みに気づくことができるでしょう。また、自分の強みを活かせる仕事や、自分に向いている仕事を探すために、これまで目を向けていなかった職種や仕事も視野に入れてみると良いでしょう。
今から目指せる職業・仕事は?
転職活動の際には、自分自身の経験・スキルにマッチする職業・仕事に応募する方が採用の可能性を高めることができます。応募者の経験・スキルや応募職種が影響するために「今すぐに採用してもらえそうな職業・仕事」は人それぞれに違うと言えるでしょう。
もしも今すぐに実現することが難しい場合は、目指す職種や気になる職業を目指すために必要な経験・スキルを積める仕事を探してみる方法もあります。
また、現在の仕事の中で、実績を積んで、アピールできる実績を作ることも大事です。新しいプロジェクトやリーダーポジションなどに挑戦してみるのも良いでしょう。さらに、資格取得の勉強をすることもおすすめです。取得できていない場合でも、意欲的に取り組む姿勢をアピールしやすくなるでしょう。
夢中になれる趣味や興味があることを見つける方法
世間体やお金の損得などにとらわれず、少しでもやってみたいと思ったことは、まずやってみることが大事です。やりたいことを探すときと同様に、何事も夢中になれるまでには時間がかかるものなので、一定期間は続けてみると良いでしょう。友人や周囲の人に趣味の活動などに誘われたら、面倒だと思わずに試しにやってみることもポイントです。意外な面白さや楽しさを発見できる可能性があります。また、周囲の人に趣味を聞いて、どこに楽しさや面白さを感じるのか聞いてみるのも良いでしょう。こうした小さな積み重ねをすることで、やってみたいと思えることが見つかるかもしれません。
休日の過ごし方を変えてみる方法もある
休日に何か一つ、新しいことをやってみるなど、過ごし方を変えることで充実感を得ることもできます。自分一人でもすぐにできることとして、興味のなかったジャンルの映画や本、アニメ、漫画などに触れてみたり、運動や料理・家事などで新しいことにチャレンジしてみたりする方法もあります。
また、自宅の中から外に出てみることなどでも、新しい何かを発見しやすくなるでしょう。書店、映画館、ウィンドウショッピング、近所に新しくできた飲食店などに出かけることで、自分も気づいていなかった新しい価値観に出会ったり、これまでとは違う興味が湧いたりする可能性もあります。
人生に疲れてしまって何もやりたくない。どうすればいい?
心身共に疲弊してしまい、何もやりたくないと思う時は、「何かをしなくてはいけない」と思わず、睡眠や栄養をとってしっかり休息することも大事です。また、ネガティブ思考に陥っている場合は、誰かに話を聞いてもらうことで気分を変える方法もあります。精神的に疲れていたり、ストレスが溜まっていたりする場合は、運動することでリフレッシュすることもできます。
自分がどうしたいかわからずモヤモヤしている場合は、部屋を片付けるなどの行動をしてみるのも良いでしょう。「一つでもやることをやった」という気持ちになれたり、部屋が片付いているために気分がスッキリしたりすることで、次にどうするかを考えるゆとりが生まれる人もいます。
しかし、本当にどうにもならないほど疲れていると感じたら、早めに医師の診断を受けることも大事だと考えましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。