転職活動の面接で「趣味」を聞かれた際、「そのまま正直に答えていいのだろうか」と不安に思う人も少なくはありません。スムーズに回答するためには、質問の意図を理解し、回答する内容を想定しておくことが大事です。そこで今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、面接で趣味を聞かれた際の答え方、考え方について聞きました。
企業はなぜ面接で「趣味」を聞く?
中途採用では即戦力人材を求める傾向が強いため、面接の質問内容も仕事にかかわるものが中心となりますが、趣味について質問されることも少なくはありません。他の質問にはすらすらと回答できていても、趣味を聞かれて対話がストップすれば、面接担当者に違和感を与えてしまう可能性があります。スムーズなコミュニケーションのためにも、まずは企業が趣味について質問する意図や見ているポイントを理解しましょう。
企業が「趣味」を通じて見ていることとは?
企業が趣味について質問するのは、まず、応募者にリラックスしてもらう「アイスブレイクの時間を作るため」という意図が挙げられます。いきなり本題に入るのではなく、応募者が話しやすいテーマから面接をスタートしようと考えているケースは少なくないでしょう。
また、よりパーソナルな部分を知るために趣味を聞くケースもあります。趣味の内容を通じて、「人と交流を楽しむ社交的なタイプ」「コツコツ一人で作業することが好きなタイプ」「礼儀正しさを身につけている」「長くひとつのことを続けていける」など、応募者の人柄を知り、企業の風土や社員のカラーなどとマッチしているかを見ているといえるでしょう。
自己紹介で趣味のアピールは有効?
面接でより自分をアピールしたいなら、自己紹介では、「仕事で発揮できる強みや特性」を語ることに時間を割いた方がいいでしょう。どうしても自己紹介で趣味を語りたい場合は、それをメインとせず、自分の強みや特性を裏付ける材料として話すことをお勧めします。自己紹介で語る内容全体に対し、十分の一程度のボリュームを目安に考えるといいでしょう。
例えば、「ジョギングを何年も続けている」「食べ歩きが趣味で、店の批評をブログ発信している」などの場合、根気強さや行動力があると裏付けることができます。さらに、「目標だったフルマラソンの大会にも出場した」「ブログの内容を改善し続け、一定の読者を得ている」などの広がりや背景を伝えることで、仕事における取り組み姿勢をイメージしてもらうこともできるでしょう。
また、自己紹介で無理に趣味を語ろうとしなくても、履歴書の趣味を記載する欄に特徴的な内容を書いておけば比較的質問されやすいです。趣味を通じて自分を知ってもらいたいと思う場合には、アピールしたい内容をしっかりと書き込むといいでしょう。
自分の趣味を答える際のポイント
趣味について聞かれた際、何を語ればいいのかを紹介します。アイスブレイク的に聞かれた場合でも、これらのポイントを押さえておけば、プラスの印象を与え、よりアピールにつなげていくことができるでしょう。
深く語れる趣味をアピールする
ただ「◯◯が趣味です」と回答するのではなく、いつ始めたのか、どんな活動をしているのか、どういうところに楽しさや意義を感じているかまでアピールできるといいでしょう。「先月から始めた」「半年に一度くらい活動している」などの場合、「趣味といえるほどではないのでは?」「回答を作っている」と思われる可能性があるので、ある程度、継続してきたことを伝えた方がいいでしょう。また、趣味の領域における知識や思いなどを深く質問される可能性もあります。例えば「音楽鑑賞が好き」という場合は、好きなジャンルやアーティスト名、思い入れなども聞かれることを想定し、自分なりに考えをまとめておくといいでしょう。
「強み」につながる内容をアピールする
ただ単純に「好き」と回答するだけでは、アピールにはつながりにくいものです。「読書が好き」という場合、「歴史ものの小説が好きで、時代背景を知ることが楽しい。今後の時代を読み解くヒントにしている」と回答したなら、「物事の背景を理解し、その先を考えることができる人物」というイメージができます。また、「旅行が好き」という場合でも、何となく出かけるだけでなく、「温泉巡りで秘湯の制覇を目指している」「1カ月に一度、知らない土地を旅することで生活にメリハリをつけている」などの具体的な目的意識があった方がプラスの印象につながります。趣味を語る際には、自分の人間性や考え方も伝えることを意識し、強みや長所につながるアピールをしましょう。
趣味となった背景も振り返っておく
面接で話が盛り上がった場合、趣味となった背景などを聞かれる可能性もあります。自分から話す必要はありませんが、「何がきっかけで趣味となったのか」「続けている理由は何か」などを聞かれた際、自然に回答できる程度には振り返っておく方がいいでしょう。そもそも趣味とは、「自分にとってなじみ深いもの」であるはずなので、その背景を答えられない時点で、「面接対策のために自分を作っているのでは?」「想定問答以外のコミュニケーションが円滑にできない人物」と判断される可能性もあると考えましょう。
趣味のアピールではここに注意!
ここでは、趣味をアピールする際の注意ポイントについて紹介します。
夢中になって長く話さないこと
趣味の話は、自分にとって好きなことのために話しやすく、面接の場であることを忘れて夢中で語ってしまう人もいます。また、面接に臨む準備が足りず、心構えができていない人ほど、緊張をほぐそうと長く語ってしまいがちになるでしょう。しかし、面接とは、本来的には仕事に関係する話を聞くものであり、企業も時間配分を考えながら質問をしています。余計なことまで話さず、質問に対して端的に答えることを意識し、1〜2分程度の長さで簡潔に語れるような準備をしておくといいでしょう。
見栄を張らず、嘘をつかないこと
「語れるほどの趣味が特にない」と考え、無理やり趣味を捻出するケースもあります。しかし、「ちょっとやってみた」「友達に誘われて参加した」程度のことを長く続けている趣味のように話した場合、深く聞かれると答えに窮してしまうものです。また、面接担当者も同じ趣味を持っていて、そのジャンルに非常に詳しいケースもあります。
例えば、「クラシック音楽が好き」「キャンプが趣味」などの場合、「どんな曲が好きか。指揮者は誰が好きか」「どこのキャンプ場が好きか。お気に入りのアウトドアグッズは何か」など、より深い内容を質問されるかもしれません。その際、自分なりに回答することができなければ、「浅い知識しかないのでは?」「見栄を張っているように感じる」などのマイナスな印象を与える可能性があります。合否に直接の影響がなくても、相手にそうした印象を持たれたままで面接を続けること自体、プラスには働かないものだと考えましょう。自分なりに「好きで続けてきた」と思えることを前提とし、見栄を張らず、嘘をつかずに回答することが大事です。
マイナスイメージを持たれる趣味は語らないこと
ギャンブルなどにかかわる趣味は、「射倖心(苦労せずに幸運を得たい思い)が強い」など、マイナスイメージを持たれる可能性があります。大好きなことであっても、自分の印象を下げる可能性がある趣味を書く際には、そのリスクも踏まえておく方がいいでしょう。また、アニメやマンガ、ゲームなどを趣味としている場合、「内向的と思われるのでは?」と不安に思ってしまう人もいますが、その趣味に関係する業界や企業などに応募する場合は、「知識を仕事に活かせる」というプラス評価につなげることもできます。応募先の企業や仕事内容に応じて書き分けるといいでしょう。
趣味を語る回答例文を紹介
スポーツの趣味や文化にかかわる趣味、クリエイティブな趣味など、ジャンル別に回答例文を紹介します。強みや長所につなげるアピールを参考にしましょう。
スポーツの趣味を語る回答例
<空手>
「小学生のころから空手の道場に通い続けております。稽古で努力を重ねることの大切さと共に、礼儀の大切さも学ぶことができました」
<フットサル>
「大学時代からフットサルを続けています。メンバーの招集や練習場・練習試合などの手配も行い、複数チームが集まる大会も企画しています。趣味を通じて身につけた調整力は仕事にも活かせると感じております」
<登山>
「日本の百名山を制覇することを目指しています。山を登ることだけでなく、計画性を持ってルートを考えたり、重量を減らすために必要最低限の荷物は何かを考えたりすることも含めて楽しんでおります」
<ジョギング>
「1年前から早朝にジョギングすることが趣味となりました。毎日、根気強く10kmの距離を走り続け、今年は目標だったハーフマラソンの大会に参加する予定です」
文化的な趣味を語る回答例
<映画鑑賞>
「一人で映画館に出かけることが趣味で、毎月4本の新作を観ています。映画のストーリーやセリフを通じて、新たな視点や考えを得ることができると感じております」
<音楽鑑賞>
「ロックのアーティストが好きで、毎月、ライブ鑑賞に出かけています。オン・オフの切り替えにも役立ち、仕事のモチベーションを高めることができております」
<読書>
「文学小説を読むことが趣味で、毎月2冊は読んでいます。最近は、好きな作家のルーツをさかのぼり、体系的に文学史を把握する面白さに目覚めました」
<楽器>
「小学生のころから続けているピアノが趣味です。年に一度、友人と一緒にミニコンサートを開催しているので、そこに向けてコツコツと練習を重ねております」
クリエイティブな趣味を語る回答例
<バンド活動>
「大学時代からバンド活動を続けています。作詞・作曲を自分で行い、メンバーをまとめながらイメージ通りにアレンジしていくことを楽しんでおります」
<カメラ>
「写真が好きで、半年前から一眼レフのカメラで撮影を始めました。カメラ雑誌などで勉強と研究をしながら、ブログやSNSで発表を続けております」
<ダンス>
「高校時代にダンス・チームを結成し、今も同じメンバーで活動を続けています。みんなで振り付けを考え、表現につなげていくことを楽しんでいます」
<プログラミング>
「高校時代にプログラミングに目覚め、独学で知識を学び、自分でツールを作っています。仕事に役立つツールなども作成してみたいと考えております」
そのほかの趣味をアピールするなら?
旅行やドライブ、料理、食べ歩きなどの趣味を語ることももちろんOKです。どんな趣味においても、活動の頻度や内容、目的、自分なりに工夫している点や得たスキルなどを端的に語ることがポイントです。仕事における強みにつなげてアピールすることを意識しましょう。また、「ジャグリングを趣味とし、大道芸の大会で入賞した」「日本酒が好きで、利き酒コンテストに出場した」など、大きな実績がある場合は、履歴書の趣味の欄にそれを記載しておけば、より興味を持ってもらえるでしょう。
「どうしても語れる趣味がない」という場合には、趣味の欄がない履歴書を使用する方法もありますが、やはりアイスブレイクなどで聞かれる可能性は考慮した方がいいでしょう。深く語れる趣味でなくても構わないので、自分なりに好きで続けていることについて整理しておくことをお勧めします。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
あわせて読みたい参考記事
* 転職の自己PRで強みをアピールする方法。書くべき要素から添削ポイント、例文まで紹介
* 印象に残る自己PRの「書き出し」とは?押さえておきたいポイントを紹介<書き出し例文付き>
* 未経験の仕事に応募-職務経歴書の「自己PR」の書き方ポイントは?
* 職務経歴書の「自己PR」の必要性と書き方