協調性を自己PRの強みとしたい場合、「そもそも企業は協調性を評価するもの?」「協調性がある人に自分は当てはまる?」「どのようにアピールすれば評価につながりやすい?」などの疑問を抱く人もいるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏が、企業が協調性を求める理由や協調性がある人の特徴、協調性をアピールする際のポイントなどを解説します。協調性の自己PR例文や言い換え例なども紹介するので参考にしてみましょう。
目次
協調性とは? 意味や使い方をわかりやすく解説
「協調」とは、互いに協力し合うことや、利害や立場などの異なる者が協力し合うことを意味します。「協調性」とは、自分とは立場や考え方が異なる人々と協力し合い、同じ目標の達成に向かうことができる能力であり、仕事においても必要な力と言えるでしょう。
仕事において協調性がある人とは?
仕事において協調性がある人とは、「職場の人々や仕事における関係者と良好・適切な関係性を構築し、協働する力を発揮し、成果に結びつけられる人」のことを指します。
社内外で関わるさまざまな立場の人と信頼関係や協力関係を築くだけでなく、その力を発揮して、チームワークに貢献して業務をスムーズに進めたり、数字目標の達成やプロジェクトの遂行などの成果につなげたりした経験があれば、「協調性を発揮して、仕事で活躍できる人」と言えるでしょう。
協調性の使い方
協調性という言葉の使い方の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- チームワークで協調性を培った
- 協調性を大切にして仕事に取り組んでいる
- 協調性を高めることで、立場の違う人々の考えに配慮できるようになった
- 協調性を発揮して、関係各所の合意形成に貢献した
- 関係各所とコミュニケーションする中で、協調性を身につけた
企業が協調性を求める理由
どのような仕事においても、関係者との人間関係の構築は必要であり、他者と協力し合うことが求められる場面があるものです。そのため、業界・企業・職種を問わず、「協調性」は仕事に役立つ力と言えます。
しかし、企業の風土や文化、働き方などによって「求めている協調性」の内容は違うものなので、そこにマッチしていることが評価のポイントになるでしょう。「組織一丸となることを目指す」「個人の力を発揮しつつ、他者と協力し合う」など、応募先企業が求めている内容と、自分が強みとする協調性の内容がマッチしているかを確認することが大事です。もしもマッチしていない場合は、「自分の価値観に合わない企業」という可能性もあるので、応募するかどうかの選択基準として活用することもできるでしょう。
企業のホームページや採用ページなどに掲載されている企業理念・人材理念などを事前に調べることもおすすめです。昨今では、企業が掲げる「クレド」(信条・ポリシー)、社員に望む「バリュー」(価値)などと重なるかどうかを面接の評価基準として重く見るケースもあります。応募先企業が人材に求めていることを深く理解し、どういった部分をアピールするとより評価されるのかを考えることがポイントになるでしょう。
協調性がある人に見られる特徴の例
ここでは、協調性がある人に見られる特徴の一例を紹介します。転職活動で協調性をアピールする場合は、自分に当てはまるものがあるか考えてみましょう。
相手の話をよく聴ける「傾聴力」がある
協調性がある人の傾向としては、相手の話をよく聴ける「傾聴力」が挙げられます。具体的には、「相手に共感して寄り添うことができる」「自分とは異なる意見にも耳を傾けることができる」などの特徴があるでしょう。また、相手の潜在的な考えや悩みなどを引き出したり、問題解決に導いたりすることができるため、仕事に役立つ力と言えます。
洞察力・観察力がある
洞察力・観察力があり、周囲の人の考えや状況などを察して行動することができることも、協調性がある人の特徴の一つと言えます。「空気を読み、その場の状況に合わせた対応ができる」「相手に対する細やかな気配り、気遣いなどができる」などの力を発揮し、チームワークを円滑に進めることに貢献できるでしょう。
チームワークに貢献できる
協調性がある人は、人と協力し合うことを大事にする傾向があるため、チーム全体のことを考えた発言・行動ができる点も特徴の一つと言えるでしょう。チームやプロジェクトなどにおいては、協調性を発揮して立場や意見の違う人々の間を取り持ったり、合意を形成したりする場面などで活躍するケースも見られます。
自発的にサポートやフォローができる
利他的な考えを持ち、業務を円滑に進めるために必要なことを行えるのも、協調性がある人の特徴と言えます。上司・先輩などのサポートや、チームのメンバーのフォローなどを自発的に行うことができるでしょう。
ルールを守る
協調性のある人には、全体の和を乱さないことを大事にするため、ルールを守ることを重視する傾向も見られます。組織やチームにおける規律や決まりごとなどに従って行動することができるため、数字の正確性に責任を持つ業務や、社内ルール・法律などの遵守に関連する業務などで活躍するケースもあります。
「協調性がない」と思われてしまいやすいケースとは?
「協調性がない」と思われてしまいやすいケースとしては、以下のような一例が挙げられます。
- 相手の意見を聞かない
- 自己主張や自分のこだわりが強すぎる
- チーム全体より、個人の成果を求める
- ルールを守ることより、自分の判断を重視する
転職の面接などで協調性をアピールしても、話を掘り下げられていく中で、こうした部分が浮き彫りになった場合は、「協調性に欠けている部分があるように見える。自己理解が足りないのでは?」と判断される可能性もあるでしょう。
【企業風土別】求められる協調性の傾向とは?
協調性にはさまざまな側面があり、企業風土によって求められる協調性の傾向も変化すると言えます。転職活動の自己PRを作成する際には、応募企業の風土も意識するとアピールにつながりやすいでしょう。
チームワーク重視のフラットな風土の場合
チームワーク重視のフラットな風土を持つ企業の傾向としては、「日常的にチーム単位で仕事に取り組んでいる」「部署間横断で連携する業務が発生しやすい」「社歴や年齢に関わらずプロジェクトや裁量を任せていく」などが挙げられます。
ただし、企業文化や事業内容によって、チームワークの考え方は違ってくるでしょう。例えば、「互いにフォローし合って仕事を進める」「切磋琢磨しながらチーム一丸となって数字目標などに向かう」「個々が力を発揮しながら、チーム全体の目的を達成していく」などのケースが見られます。いずれのケースにおいても、自己PRでは「協調性を活かしてどうチームに貢献したのか」を伝えることがポイントになるでしょう。
年功序列や上下関係を重視する風土の場合
歴史ある大手企業や、業界の慣例・慣習が事業に根付いている企業、長期的な人材育成を軸にキャリアパスの枠組みがある程度決まっている企業などの場合は、年功序列や上下関係を重視する風土が醸成されているケースもあります。
こうした企業では、入社後、任された役割を果たしながら一定の成果を挙げ、実績を積み重ねて信頼を獲得することが重視され、信頼の蓄積によって次のキャリアにステップアップしていく傾向も見られます。組織の中での自分の立ち位置を踏まえ、自己PRでは「任された役割や立場の中で、チームや組織に貢献したこと」を伝えることを意識してみましょう。
個人の実力や成果を重視する風土の場合
個人の実力や成果を重視する風土がある企業には、「個々が専門性を発揮し、異なる役割を分担して目的を達成する」「個人の裁量・責任が大きく、実力・成果を評価する」などの傾向が見られます。
前者の場合は、「各領域のプロフェッショナルが合理的に協力し合ってゴールを目指す」などの仕事の進め方をしていることが考えられます。自己PRでは、「個として、プロとして、自分の役割と責務をきちんと果たした上で、目的達成のために他者と協力し合ったこと」をアピールするといいでしょう。
一方、後者の場合は、業務においてチームワークを発揮する場面があまり発生しないケースもあります。協調性をアピールしても評価につながらない可能性があるため、再度、自己PRで伝える強みを見直すことが必要かもしれません。また、そもそも企業風土や仕事の進め方が自分の価値観とマッチしていないことも考えられるので、応募するかどうか再度検討してみるのも大事でしょう。
【職種別】協調性をアピールする際のポイント
ここでは、職種別に協調性をアピールする際のポイントを解説します。
営業職の場合
営業職においては、「顧客と信頼関係を築き、ニーズに応えて目標を達成すること」を前提に考えてみた場合に、顧客に寄り添ったエピソードのみを伝えても高い評価につながらないことも考えられます。チームや組織に貢献したことなどを伝えることがポイントになるでしょう。例えば、「個性の強いメンバーをまとめ、半年間連続でチームの数字目標を達成した」「社内連携の仕組みを提案して、書類の承認などの業務を効率化した」など、数字の成果や具体的に貢献したことまで明確にすることが大事だと言えるでしょう。
事務職の場合
事務職の場合は、社内外で関わる人々に対し、相手の立場になって行動し、サポートすることで貢献できたエピソードを伝えるといいでしょう。「立場の違うメンバーが交流するよう積極的に声掛けし、職場の一体感を高めた。上司から『連携がスムーズになった』と評価された」「協力会社と書類のやりとりをする際、困りごとや要望もヒアリングした。周囲に共有したことで、事務処理におけるトラブルが減った」など、周囲の変化や、実際に受けた評価などを伝え、どのような成果を出せたのかをアピールすることがポイントです。
ただし、相手の要望に応えたのみのエピソードでは、「受け身」「自主性がない」と捉えられる可能性があるので、自分が課題意識を持ち、主体的に行動した点をしっかり伝える意識を持つのがよいでしょう。
専門職の場合
特殊なスキルや知識を必要とする専門職では、プロフェッショナルとして自分の意見を持ちつつも、果たすべき役割を理解し、他者の意見を尊重して協働した経験を伝えることがポイントです。例えば、「数千万円規模のITシステムを構築するプロジェクトのリーダーとなり、パートナー会社や社内の関係部署の要望や課題を取りまとめた」「商品開発を手がけた際、関係部署の意見を聞いた上で、コストを下げる方法を提案し、実現することができた」など、どのような場面で協調性を発揮し、目標達成や成果に貢献したのかをアピールしましょう。
また、自ら提案や工夫をしていない場合、「受け身・消極的」と判断される可能性があるので、主体的に取り組んだことまで伝えるようにすることも大事です。
【職種別】自己PRの例文を紹介
営業職・事務職・専門職の自己PR例文を紹介するので、参考にしてみましょう。
営業職の例文
そこで、自分が潤滑油となり、「掛け算」で成果を生み出すチームを目指そうと考え、成功事例を共有する会議や、毎週の行動目標の確認・振り返りを行う定例会などを開催しました。当初はメンバーからの抵抗もありましたが、協力し合う意義を伝え、説得を重ねました。営業手法や行動を共有し、互いに気づきと学びを得ていくうちに、チームとしての団結力が増し、目標数字を3カ月後に達成することができました。
事務職の例文
営業社員に遅れがちになる理由や、こちらにサポートしてほしいことについてヒアリングし、まずは定期的に申請状況を確認する確認のアラートを送ることで遅延率を改善しました。また、多忙な営業社員の負担を減らすため、領収書をスマホで撮影するだけで自動精算できるシステムを探し、会社に導入を提案・実現しました。経理部門と営業部門、双方の業務負荷を軽減した結果、「本来の業務に集中できるようになった」「ストレスも残業も軽減した」など、多くの感謝の声を頂きました。経営層からも「費用対効果の高い提案で、残業代などの人件費も削減できる」と評価されました。
専門職の例文
異なる意見も尊重しながら、目的に沿って形にしていく協調性を発揮することができます。自社コーポレートサイトを刷新するプロジェクトにWebデザイナーとして参加した際、エンジニア、企画部門、各事業部門の意見が対立しました。それぞれの立場から要望があったため、方向性がひとつにまとまらず、プロジェクトが前に進まない状況に陥りました。自分自身も斬新なデザインを提案したいと考えていましたが、あらためてプロジェクトの目的を整理し、各所の要望を集約する必要があると判断しました。
そこで、全関係者が参加する仕切り直しのキックオフミーティングを提案し、企画・運営まで行いました。サイト刷新の意図と目的、コンセプトを再度確認・共有し、ユーザー目線で意見を出し合う機会をつくることで、当初の目的に沿いながら、各領域の知見をバランスよく活かしたサイトを完成させることができました。社内外の評判もよく、メディアにも取り上げられ、ユーザーの流入数も増えています。
協調性の言い換え例
最後に、協調性の言い換え例を紹介します。言い換えをすることで、より自分らしさをアピールしやすくなるでしょう。また、面接で長所などを聞かれた際、自己PRでアピールした協調性を言い換えして一貫性を持たせれば、より説得力を高められるかもしれません。
<協調性の言い換え例>
- 相手のニーズを引き出す傾聴力がある
- 個人よりチームワークを優先する
- 先回りした気配りができる
- チーム全体を考えたサポートができる
- 周囲と円滑なコミュニケーションをとれる
- 意見の違う相手と調整を図ることができる
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。