「ITアーキテクト」の仕事に「興味がある」「転職を考えている」皆さんに、仕事内容、働き方、仕事の魅力、適性、キャリアパス、転職市場でのニーズなどについて、リクルートエージェントのキャリアアドバイザーがお伝えします。
ITアーキテクトの仕事に興味がある、転職したいという方はぜひご一読ください。
目次
ITアーキテクトとはどんな仕事?
ITアーキテクトは、「企業経営に作用するIT戦略を設計・構築する」職種です。ITアーキテクトの役割について、情報処理推進機構(IPA)では「ビジネスおよびIT上の課題を分析し、ソリューションを構成する情報システム化要件として再構成する。ハードウェア、ソフトウェア関連技術を活用し、ビジネス戦略を実現するために情報システム全体の品質を保ったITアーキテクチャを設計する」と、定義しています。
また、ITアーキテクトの専門分野は以下3つに分類されています。
●アプリケーションアーキテクチャ
アプリケーションコンポネント構造、論理データ構造などを設計
●インテグレーションアーキテクチャ
フレームワーク構造およびインタオペラビリティ(相互運用性)などを設計
●インフラストラクチャアーキテクチャ
システムマネジメント、セキュリティ、ネットワーク、プラットフォームなどを設計
ただし、上記は一般的な定義であり、実際に「ITアーキテクト」と呼ばれる人々が担う役割・業務は企業によってさまざまです。上記3分野についても、いずれかの分野に特化している人もいれば、トータルに手がける人もいます。
いずれにしても、クライアント企業、あるいは自社の「経営戦略」に向き合い、今後の事業の方向性と技術の最新トレンドをキャッチアップしながら、システム設計のあるべき姿を描く役割を担います。
ITアーキテクトは、主にSIerやコンサルティングファームに所属してクライアント企業にソリューションを提供するほか、事業会社のシステム部門に所属して活動しています。
システムアーキテクト・ITコンサルタントとは何が違う?
ITアーキテクトの類似職種として「システムアーキテクト」「ITコンサルタント」などがあります。「経営」「ビジネス」に視点を置いて考えるITアーキテクトに比べ、システムアーキテクトは「システム」に主眼を置いています。要件定義や概要設計、あるいは使用するインフラストラクチャの検討などに重点的に取り組みます。
ITコンサルタントとの違いについては、明確でない部分もありますが、ITコンサルタントのほうがより「業務」にフォーカスしている傾向が見られます。事業戦略をいかに「業務」に落とし込むか、そのためにどんな仕組みが必要かを考え、解決策としてITを導入するという流れで進めるケースが多いようです。
ITアーキテクトのやりがいは?どんな人が向いている?
ITアーキテクトのやりがいは、ITに関する幅広い知識や経験を活かして現場から感謝されることや、ITシステムの導入によりコスト削減や、業務生産性向上での売上アップへの貢献など、「経営」にインパクトを与えていけることが挙げられます。「経営に近い立場で、経営視点を持って働きたい」という志向の人に向いていると言えるでしょう。
また、新しい技術トレンドを常にキャッチアップしなければならないポジションですので、「最先端の技術に触れていたい」「新しい技術を追い続けていたい」という志向の人にもマッチしています。
ITアーキテクトに必要なスキル・資格は?
ITアーキテクトの仕事に必要なスキル
アプリケーション分野・インフラ分野、いずれでも構いませんが、システム開発において上流工程の知識や経験が必要とされます。経営にとってより重要な意義を持つシステム、大規模なシステムに携わった経験があれば望ましいとされます。最近では、「ビッグデータ」「AI」「クラウド」などの知識・経験を持つ人が特に重宝されます。
また、クライアントの視点に立って物事を考える力、クライアントとの折衝スキルも求められます。経営とITをいかに結びつけていくかを考えていくため、「ビジネス」の観点を持つことが重要。常に新しい技術トレンドを取り込んでいく必要がありますので、情報収集力や学習意欲なども欠かせない要素です。
ITアーキテクトに役立つ資格
ITアーキテクトに関連する資格としては、IPAが実施する「システムアーキテクト試験」があります。ITアーキテクトの業務に就くにあたり、必ずしも資格は必要とされません。しかし、取得することで、この役割に必要な要素を体系的に理解しているという証明になり、プラス評価につながるでしょう。
ITアーキテクトには、どんなキャリアパスがある?
前述のとおり、「経営に近い立場で働きたい」という志向を持つ人が、システム開発の上流工程の経験を経てITアーキテクトを目指す傾向が見られます。そして、ITアーキテクトの経験を積んだ上で、より経営に近いポジションを目指し、ベンチャー企業などのCTO(最高技術責任者)に就くというキャリアパスがあります。
また、「より最先端の技術を取り入れたい」「さまざまな企業の経営に関わりたい」という志向の人は、コンサルティングファームに転職して活躍するケースが多く見られます。一方、「腰を据えて、1つの会社の経営にじっくり携わりたい」という志向の人は、事業会社に移る道を選ぶ傾向があります。
事業会社のシステム部門に勤務していた人が、その業種の業務知識を買われ、SIerやコンサルティングファーム、異業界の事業会社に転職するケースもあります。
近年は、BTC(ビジネス×テクノロジー×クリエイティブ)という3要素の結合が重視されるようになってきました。それらをマネジメントできる人材になることで、市場価値をより高めていけるでしょう。
ITアーキテクトの人材ニーズは?未経験での転職チャンスはある?
デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みも加速する中、ITアーキテクトのニーズは非常に高い状況。コンサルティングファームを中心に、SIerや事業会社も採用に意欲的です。
求人企業によって、求める経験や領域はさまざまです。多くは、ITアーキテクトの経験者を求めており、経験者は好条件での転職が叶いやすい状況です。年収アップを実現している事例もあります。あるいは、手がける領域の幅を広げたり、興味がある事業領域に移ったりするチャンスもあります。
一方、ITアーキテクトの経験がなくても、システム開発の上流工程経験と「経営志向」を持つ若手層が、ポテンシャルに期待して採用されるケースもあります。
現在、システム開発を手がけている人は、1つの仕組みの設計、現状の課題解決だけにとどまらず、「今後の拡張性は」「別のシステムが入ってきた場合は」といったように、将来をイメージしながら取り組む習慣を付けることで、ITアーキテクトへのステップアップの可能性が広がると言えるでしょう。
※本記事の内容は、2020年8月 取材時点の情報です。
リクルート(旧:リクルートキャリア)の転職エージェントサービス「リクルートエージェント」のキャリアアドバイザーとして、主にSE・ITエンジニア全般を担当。
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