「転職エージェント」と「転職サイト」は、多くの人に利用されている転職支援サービスですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
「転職エージェント」と「転職サイト」それぞれの特徴、活用方法、どのようなケースでおすすめできるかについて、組織人事コンサルティング、Seguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説いただきました。
目次
そもそも転職エージェントとは?転職サイトとは?
本章では、転職エージェントと転職サイトの違いを解説します。
転職エージェントとは
転職エージェントとは、転職支援のプロであるキャリアアドバイザーが、企業と求職者の間に立ち、希望や条件、将来的な目標などをもとに、最適な求人を紹介し、選考対策や企業との日程調整などを行うことで転職活動をサポートするサービスです。求職者の利用は無料です。
転職サイトとは
転職サイトとは、インターネットなどで求人を掲載しているサービスです。一般的に、さまざまな業界・職種の求人が数多く掲載されており、求職者自身で人材を募集している企業を検索・選択し、希望や条件に合う企業に直接応募することができます。
下記は、転職エージェントと転職サイトを比較した表です。
以降の章では、比較項目ごとに転職エージェントと転職サイトの特徴や違いを解説しています。
転職エージェントと転職サイトの具体的な使い勝手の違いはどこにあるのでしょうか。リクルートエージェントとリクナビNEXTを例に、項目別に比較してみました。
比較項目 | 転職エージェント | 転職サイト |
マッチする求人との出会いやすさ | キャリアアドバイザーが希望や経験・スキルにマッチした求人を提案してくれる | 自力で探す必要がある |
応募できる求人数 | 公開求人・非公開求人から幅広く応募できる | 多くの求人の中から自由に何社でも応募できる |
スケジュールの立て方・進め方 | 転職エージェント経由で調整しながら進めるのが一般的 | 日程調整や応募などすべて、自分のペースで行う |
転職に関するアドバイス | Webサイト上で気軽に読める便利な転職支援コンテンツや転職セミナー・イベント・フェアを実施。加えて転職活動で不安な点や、キャリアプラン等について、随時キャリアアドバイザーに相談できる | 転職サイトに掲載されているノウハウ記事などを見て参考にする |
書類選考・面接のサポート | キャリアアドバイザーが書類の添削から面接対策のポイントを個別にサポートしてくれる | 転職サイトに掲載されているノウハウ記事などを見て参考にする |
日程調整 | キャリアアドバイザーを通して、企業と求職者の希望をヒアリングして日程調整をサポートしてくれる | 自分で直接企業と行う必要がある |
転職エージェントと転職サイトの違い1: サービス内容
転職エージェントと転職サイトの違いの1つに、マッチする求人との出会いやすさが挙げられます。
転職エージェントでは、キャリアアドバイザーがヒアリングした希望やスキルに沿う求人を選定してくれるため、効率よく転職活動を進めるサポートが期待できるでしょう。リクルートエージェントでもお申し込み後に求人の紹介や転職支援サービスが開始されます。場合によっては、一般に公開していない非公開求人の中からよりマッチ度の高い求人を提案されることもあるでしょう。
転職サイトは、公開中の求人であれば、登録後、件数に制限なく応募が可能です。検索機能を活用すれば、勤務地や職種、年収、企業の特徴など、さまざまな条件で求人を絞り込めるため、ある程度自分の希望に沿う求人に絞り込めるでしょう。
しかし、求職者自身が多くの求人の中から応募企業を精査しなければならないため、本当に自分にマッチするのか、不安に感じる場合もあるかもしれません。また、自力で求人を探さなければならないため、手間に感じたり求人情報を見逃したりすることもあるでしょう。
なお、リクナビNEXTでは、企業の採用担当者からオファーが届くこともあります。転職サイトでもある程度のマッチ度を求める人や自分に合った求人を見逃してしまう不安がある人は、リクナビNEXTのようにオファーが届くサービスを利用するのも良いでしょう。
転職エージェントと転職サイトの違い2:求人の探し方
転職エージェント経由で応募できる求人は、多くの場合キャリアアドバイザーから提案を受けた求人以外にも、自分で探して応募することが可能です。また、転職エージェントは、非公開求人を取り扱っているところもあります。非公開求人は一般には公開されていないため、転職エージェントに登録しないと求人の詳細を聞いたり応募したりすることはできません。
リクルートエージェントに、数多くの非公開求人情報預かりしています。
転職サイトを利用する場合は、掲載期間中の求人であれば何社にでも制限なく応募できます。リクナビNEXTでもWeb上で経歴などを登録すれば、誰でも気になる求人に応募できます。
転職エージェントと転職サイトの違い3:転職実現に向けたサポート
転職エージェントを利用する場合は、キャリアアドバイザーとの面談で転職希望先や転職時期などのゴールを明確にした上で、達成に向けて伴走型の支援を提供するのが一般的です。
面接や選考スケジュールは、面談でヒアリングした目標とする転職時期を踏まえて、キャリアアドバイザーと相談しながら調整することになります。
転職サイトは、すべて自分自身で決めることができるので、自分のペースで納得するまで転職活動を続けることができます。現職との兼ね合いや志向優先で活動のタイミングを自分でコントロールできる、といった利点があります。
このように、転職サイトは転職活動のスケジューリングをすべて自分だけで決定できることから、柔軟にスケジュールを調整したい人や、「良い企業が見つかれば転職したい」と長期的な転職活動を前提にしている人、状況に応じて活動に緩急をつけたい人にとっては、使いやすさを感じられるでしょう。
転職エージェントと転職サイト結局どちらを使う?
ここでは、下記ケース別に向いている利用者の特徴を紹介します。
- 転職エージェントが向いているケース
- 転職サイトが向いているケース
転職エージェントと転職サイト結局どちらを使うべきか迷う人は、ぜひ参考にしてみてください。
転職エージェントが向いているケース
転職エージェントが向いているケース例は、次の通りです。
- 効率的に転職活動をしたい場合
- 転職すべきか悩んでいる、転職活動のやり方が分からない場合
- 未経験の業界・職種にキャリアチェンジしたい場合
「効率的に転職活動をしたい」場合
キャリアアドバイザーが個別に転職活動にまつわるサポートを行ってくれるので、活動全体の効率化が期待できるでしょう。
「今、転職すべきか悩んでいる」「転職活動のやり方が分からない」場合
まずは転職エージェントに相談してみるとよいでしょう。キャリアアドバイザーから、転職市場の相場情報や業界動向などの情報提供、転職に対する客観的なアドバイスを受けることができるでしょう。転職するかどうかも含めて、迷っている理由を遠慮なく相談してみましょう。
また、初めて転職するという人も、転職エージェントで応募書類の書き方や面接の方法、条件交渉へのアドバイスなどを受けることで、安心して転職活動を進められるでしょう。
「未経験の業界・職種にキャリアチェンジしたい」場合
転職エージェントは、これまでの経験・スキルの棚卸しを通じて、今後の方向性を提案することもあります。非公開求人を数多く保有し、未経験者にも可能性のある選択肢の中から、より希望にマッチした求人を提案してもらえるでしょう。また、未経験者としてどのように応募企業に訴求していくかのアドバイスも受けることができるでしょう。
転職サイトが向いているケース
転職サイトが向いているケース例は、次の通りです。
- キャリアアドバイザーからの支援やアドバイスは特に必要としていない場合
- 自分自身のペースのみで活動したい場合
- すでに希望条件が固まっている、譲れない条件がある場合
「自分のペースで活動し、選択も全て自分で行いたい」場合
例えば、中長期的にゆっくり検討して良い企業が見つかれば転職したいという人、自分の選択に他者が関わることがストレスに感じる人などは、自分のペースで情報収集できる転職サイトが向いているでしょう。
「すでに希望条件が固まっている」「譲れない条件がある」場合
キャリアの方向性や希望条件がすでに固まっており、特にアドバイスやサポートは不要な場合で、それに合った求人をピンポイントで検索したいなら、転職サイトに登録して条件を設定しておくといいでしょう。希望に沿った新着の求人情報やスカウトメールが届くので、効率的に求人情報を集めることができます。
転職エージェントと転職サイトどちらかだけを利用する場合の注意点
本章では、転職エージェントと転職サイトのどちらか片方だけを利用する場合の注意点をそれぞれ解説します。
転職エージェントだけを利用する時の注意点
転職エージェントだけを利用する時は、下記注意点に留意しましょう。
- 希望によって求人の紹介を受けられない可能性がある
- キャリアアドバイザーの意見のみに流されない(最終的な意思決定は自分自身で行う)
転職エージェントは、各社、それぞれの特徴があります。業界やエリア、企業規模等、取り扱い求人にも違いがあるため、希望条件によってはマッチする求人がなく、思うような求人の紹介を受けられない可能性があります。紹介求人数に物足りなさを感じる場合には、他の転職エージェントとの併用を検討してみるのもいいでしょう。
また、転職エージェントでは転職支援のプロであるキャリアアドバイザーからサポートやアドバイスを受けられることは大きな利点ですが、転職するのは、自分自身です。最終的な意思決定は、自分自身で判断し、行うことが大切です。
転職サイトだけを利用する時の注意点
転職サイトだけを利用する時は、下記注意点に留意しましょう。
- 転職活動にまつわる対応を全て自分で行わなければならない
- マッチ度の判断が十分にできず、マッチ度が高くない求人にばかり応募する可能性がある
転職サイトだけを利用する場合、企業選びから内定後の条件交渉まで、求職者が全て自分で対応しなければなりません。また、応募書類や面接の対策も自力で行うため、不採用になった場合の振り返りや改善も自分で行うことになります。。
転職エージェントと転職サイトのおすすめ登録法・併用法
本章では、転職エージェントと転職サイトのおすすめ登録法・併用法を解説します。
各転職サービスの特徴を踏まえて複数に登録する
前提として、転職エージェント、転職サイト共に「総合型」と「特化型」の2種類に分類されます。「総合型」は幅広い業界・職種の求人に対応しており、求人数も豊富です。特定の業界に絞らずに転職活動をしたい場合や、キャリアの選択肢・可能性を広げて転職先を検討したい場合におすすめです。
一方、「特化型」の転職サービスは、特定の職種や業界、キャリア、地域の求人について情報提供や支援を行います。特定のカテゴリーで専門性の高い情報提供を強みとしているので、特定業界で転職先を探したいなどの場合に活用できるでしょう。
さらに、企業によっては求人情報を出すのが転職エージェントのみ、あるいは転職サイトのみというケースも多々あります。こうしたことから、少なくとも転職活動を始める時点では、情報収集の方法を限定しすぎない方が、より選択肢が広がる可能性があります。
まずは転職エージェントと転職サイトの両方から、条件に合ったサービスに複数登録し、徐々に自分に合った方に軸足を移していくのも1つの方法でしょう。
転職サイトと転職エージェントのおすすめ併用法
転職エージェント、転職サイトそれぞれの特徴を踏まえて転職活動に活用することもおすすめです。
例えば、転職エージェントで必要なアドバイスやサポートを受けつつ、同時に転職サイトでより幅広い情報収集を続けていく方法もあります。転職サイトの検索で見つけたA社の事業に魅力を感じたものの、自分が希望する職種の募集がなかった場合、転職エージェントに問い合わせればA社の当該案件を保有している可能性もあります。同じ企業が募集職種によって転職サービスを使い分けているケースもあるため、より可能性を広げるためには有効な方法でしょう。
なお、複数の転職サービスを併用していることを、転職エージェントに報告しなければならない、ということはありませんが、他社での進捗についてはキャリアアドバイザーと情報共有しておくと、面接の日程や内定時期の調整など、より細かいサポートを受けられる可能性があります。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事作成日:2022年08月05日
記事更新日:2022年12月20日
記事更新日:2024年7月16日
記事更新日:2024年12月02日 リクルートエージェント編集部