「仕事が合わない」「向いていない」と感じた時、「自分に合わない以上、できるだけ早く辞めたほうがいいのか?」「すぐに辞めるのは甘えかもしれない…」などと悩む人もいるでしょう。しかし、合わない仕事を続けた結果、後悔するケースもあります。
今回は、仕事が合わないと感じる理由として多く見られるケースや対処法、辞め時を判断するポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
目次
仕事や会社が合わないと感じる理由
仕事や会社が合わないと感じる主な理由としては、以下のようなものが考えられます。
・職場の人間関係や社風が合わない
・労働環境や働き方の制度などに不満がある
・周囲と比べて、正当に評価されていないと感じる
・給与が見合っていない
・思うような成果が出せない
・将来、目指したいキャリアが見えない
・企業理念や事業戦略など、組織のあり方に共感できない
自分に合わない仕事や会社で働き続けた結果、ストレスを溜めて体調不良を引き起こしてしまうケースもあります。また、仕事にモチベーションを感じないことが要因で、成果を出せずに自己肯定感が下がったり、職場の人間関係が悪くなったりしてしまうケースもあれば、自分が望むキャリアの方向性にマッチしない仕事に時間を費やしてしまったことを後悔するケースもあります。
仕事や会社が合わないと感じた時の対処法
仕事や会社が合わないと感じた時の対処法として、「仕事が合わない理由」を分析する方法や、それをもとにとっておきたい行動について紹介します。
なぜ仕事が合わないと感じるのか理由を言語化して整理する
まずは、「仕事が合わない」と感じる理由を紙などに書き出し、言語化していきましょう。最初から整理して書こうとするのではなく、思いつくまま自由に「合わない理由」を挙げていくことで、今の仕事に対して問題を感じている点を整理しやすくなります。また、合わない点だけでなく、合うと感じる点があれば、それについても書き出しておきましょう。
仕事が合わないと感じる理由を分析する
書き出した「仕事が合わないと感じる理由」について、それぞれ、なぜそう思うのかを深掘りしていきましょう。自分の性格や志向に対し、どういった点が合わないのかを具体的に分析することがポイントです。仕事が合わないと感じる理由が、自分のモチベーションや仕事の成果、働きやすさ、将来のビジョンなどにどのような影響を与えるのかを洗い出していくことで、解決すべき根本的な要因が見えやすくなるでしょう。
仕事で大事にしたいことを明確にする
これまでの経験を振り返って整理し、「自分が仕事において大事にしていること」を明確にしてみましょう。給与や待遇、ワーク・ライフ・バランス、仕事へのやりがい、人間関係などの項目から優先順位をつけることがポイントです。
譲れない項目について、今の職場で満足を得られているかどうかによって、転職すべきかとどまるべきかの判断がしやすくなるでしょう。
分析した理由をもとに行動してみる
先に分析した「仕事が合わない」と感じる理由をもとに対処に向かう行動をすることで、ストレスや不満を解消できるかもしれません。ここでは、対処に役立つ行動を紹介するので、実践してみるのもおすすめです。
上司や同僚と対話してみる
上司や同僚と対話してみることで、新たな視点に気づける可能性があります。
例えば、「企業理念や事業戦略に共感できない」という場合は、理念や戦略をどのように捉えているかを聞いてみることで、解釈が変わり、共感できる部分が見つかることもあります。仕事内容が面白くない場合は、楽しそうに仕事をしている同僚に「この仕事のどういうところが面白いか、やりがいを感じるか」と聞いてみる手もあります。また、成果が出ないなら、成果を挙げている人に仕事のやり方を聞いてみるといいでしょう。
一方、評価に納得がいかない場合は、上司が期待しているポイントと自分の行動がズレていることも考えられるので、上司に評価の指標や基準を確認してみることも有効でしょう。また、人間関係が合わないと感じている場合でも、上司や同僚とじっくり対話する機会を設け、自らオープンに話をしてみることで打ち解けられる可能性もあります。
自分で改善できそうなことに取り組んでみる
自ら改善に取り組むことで、合わないと感じる要因を解消できるケースもあります。
例えば、商品やサービスに魅力を感じず、つまらないと感じてしまう場合は、以下のように興味が湧くような工夫をしてみることもできるでしょう。
• 他社商品と比べての優位性を考えてみる
• 改善点を商品企画部門などに提言してみる
• 商品の強みを活かせる販売戦略を考えてみる
• 社内提案制度を活用して新商品企画を立案してみる
仕事内容・人間関係・労働環境・キャリアの方向性などが合わないと感じるなら、他部署への異動やグループ会社への出向・転籍などを願い出る方法もあります。
有給休暇を取って休養とリフレッシュをする
仕事が合わないと感じている時は、心身ともに疲れている可能性があるので、有給休暇を取ってリフレッシュする方法もあります。精神的・肉体的な疲れを癒し、冷静に考えられるようになってから、仕事が合わないと感じる理由に向き合ったほうが、より客観的な判断がしやすくなるでしょう。
積極的に新たなスキルを身につける
今の仕事を続ける中で、積極的に新たなスキルを身につけていくことで、仕事に面白みを感じたり、より高い成果を挙げたりすることができるかもしれません。成果が出れば評価も上がり、給与アップや新たなキャリア形成にもつながっていくと期待できるでしょう。
例えば、「会社が提供している研修プログラムを受講する」「オンラインセミナーやワークショップなどに参加する」「資格の勉強をする」など、新たなスキルを身につけるために学んでみるのもおすすめです。
また、ここで身につけたスキルは、その後に転職活動を始める場合にも役立つかもしれません。
転職エージェントに相談してみる
転職を決意していなくても、転職エージェントに相談することは可能です。先に挙げた対処に向かう行動に取り組んでみても「不満や悩みを解消できない」と感じた場合は、転職エージェントに相談してみる方法もあります。
客観的な視点を持つ第三者と対話する中で、今の仕事が合わないと感じる根本的な要因が明確になったり、自分が仕事に対して潜在的に求めていることに気付けたりする可能性もあります。
また、転職支援のプロに相談することで、自身の経験・スキルが転職市場でどう評価されるのか、転職先の選択肢にどのようなものがあるのかを把握しやすくなります。今後のキャリアについて検討するために役立てることができますし、希望に合う求人の紹介を受けることもできるので、自分の可能性を広げやすくなるでしょう。
仕事の辞め時がわかるサインとは?辞める・辞めないを判断するポイント
仕事を辞めるべきか、辞めないべきかと悩んだ時、「辞め時のサインを知って、後悔しない決断をしたい」と思う人もいるでしょう。
仕事の辞め時のサインを見極めるためには、辞めたいと思った直感に従うより、「明らかに辞めたほうがいいと思える点がある」と実感できるかどうかから判断するほうが後悔につながりにくいと言えます。
ここでは、サインを見逃さないために辞める・辞めないを判断するポイントを紹介します。
「合わない仕事でも辞めないほうがいいか」を判断するポイント
合わない仕事の場合でも辞めないほうがいいケースもあります。以下の判断ポイントを参考にしながら検討してみましょう。
今の仕事や会社に魅力を感じる部分はあるか
今の仕事である自社の商品やサービスに少しでも魅力を感じている場合は、退職を決断する前に、合わないと感じる原因について明らかにしてみましょう。
例えば、転職や異動をしてから間もない場合は、まだ仕事に慣れていないために、思うような成果や評価につながらず、合わないと感じている可能性もあります。こうした場合、時間の経過や自分の成長によって、問題が解決されることも考えられます。
仕事内容に魅力を感じているのに辞めてしまい、後悔しないようにしましょう。
待遇や労働環境に満足しているか
仕事内容が合わないと感じている場合でも、給与や福利厚生などの面では満足しているケースもあります。「残業が少ない」「リモートワークができる」など、労働環境の面でメリットを感じている場合もあるでしょう。
転職先でも同じように満足できる待遇や環境が得られるとは限らないため、現職を辞めて後悔しないよう、慎重に検討することをおすすめします。
自分の行動で改善・解決できる可能性があるか
自分で取り組める改善策があると感じた場合は、試してみてから退職を検討したほうが後悔のない選択ができるでしょう。
例えば、職場の人間関係に不満がある場合は、自分から歩み寄ってみるなどで関係性を改善できる可能性もあります。また、仕事のやりがいや組織の方針、評価基準などに不満がある場合は、先にも紹介した通り、上司や同僚などに相談してみることで、モチベーションを高める視点や納得できるポイントなどを発見できるかもしれません。
自分の視野を広げて行動できそうなことを見つけ、取り組んでみることで解決・改善できる可能性もあるでしょう。
「合わない仕事を辞めて転職したほうがいいか」を判断するポイント
合わない仕事を続けるより、辞めて転職したほうがいいケースもあります。以下の判断ポイントを参考にしながら検討してみましょう。
今の環境では実現できない「やりたいこと」が明確にあるか
自分のやりたいことや目指すキャリアが明確にあり、現職では実現できない場合は転職を検討してみることも大事です。
例えば、今の仕事が自分のやりたいことと違う場合、「扱う商品・サービスに自信や愛着を持てない」「事業方針や会社のビジョンが違うために、思うような提案ができない」などと感じてしまうケースもあります。こうした場合、仕事に対するモチベーションも上がらず、成果も出にくくなってしまうでしょう。
また、「自分の目指したいキャリアに必要な経験・スキルを積めない」「そもそも目指すキャリアを実現できる道がない」という場合は、今の仕事を続けるより、それらを実現できるような環境に転職したほうが時間を有効に使うことができるでしょう。給与やワーク・ライフ・バランスの面で、「自分の目指すライフスタイルを実現できない」という場合にも、同じことが言えます。
いずれの場合も、転職したほうがより自分の実現したいことに近づける可能性があるでしょう。
ストレスによって心身に異常を感じていないか
人間関係が悪かったり、ハラスメントがあったりする職場や、残業・休日出勤などが多く業務過多の労働環境などの場合は、強いストレスや疲労から体調に悪影響を及ぼしてしまうケースがあります。合わない仕事によって心身に異常を感じている場合は、早期に転職を検討することが必要かもしれません。
とはいえ、転職活動は労力を要するものなので、一時休職することや有給休暇の取得などによって、心身の健康を取り戻すことを優先させたほうがいい可能性もあります。まずは仕事から一時的に距離を置き、体調を整えた上で検討してはいかがでしょうか。
また、責任感が強い人の場合は、苦痛を感じながらも「自分のせいかもしれない」「今の仕事から逃げるのは甘えではないか」と感じてしまうケースもあります。自分では判断できないと感じた場合は、信頼できる家族やパートナー、友人などに今の状況を話し、客観的な意見を聞くことで判断しやすくなるでしょう。また、勤務先に産業医や専門の医療機関などに、メンタルヘルスについて相談するのも有効かもしれません。
会社の将来に不安を感じていないか
「会社の業績が落ちている」「人手不足なのに採用活動がストップしている」「退職者が続出している」など、会社の将来に不安を抱くケースもあります。明らかに不安定な経営状態がある場合は、自身のキャリア形成にマイナスの影響が及ぶ可能性もありますので、将来性を感じられる環境に転職することを検討したほうがいいかもしれません。
理想の転職を実現するポイント
理想の転職を実現するために把握しておきたいポイントを紹介します。
転職に踏み切る場合は「合わないこと」を軸に企業選びする方法もある
先に紹介した「辞める・辞めないを判断するポイント」をもとに検討した結果、転職に踏み切った場合でも、ミスマッチな転職先を選んで「やっぱり合わない」と後悔してしまうケースもあります。
やりたいことや目指す将来像が明確になっていない場合は、転職活動を進める際、今の会社や仕事に対して感じている「合わないこと」を軸に企業選びをする方法もあります。
合わないことについて「どこが合わないのか」「なぜ合わないのか」を考えることで、自分が大切にしたいと思うものが見えやすくなります。それを軸にして自分に合う企業を探すことで、マッチする仕事や環境を見極めやすくなります。また、面接で志望動機を伝える際にも、説得力を増すことができるでしょう。
合わない仕事・会社を辞める場合の退職理由の伝え方で注意したいこと
今の会社を辞める際にも、転職活動の面接の際にも、退職理由を聞かれる可能性があります。それぞれの場面において、退職理由の伝え方で注意したい点を紹介します。
今の会社に退職理由を伝える場合
「業務内容が合わない」「職場の雰囲気が合わない」「社風が合わない」など、今の職場に対する不満をそのまま伝えることはおすすめできません。感情的なトラブルにつながったり、不満を解消する条件などを提示されて強い引き止めにあったりする可能性があります。
現職の上司や会社に退職理由を伝える際には、「転職によって実現したいこと」を伝え、これまでお世話になった感謝の気持ちも合わせて伝えることが大事です。
転職の面接で退職理由を伝える場合
企業は退職理由を聞くことで、「定着性があるか」「入社後に活躍・貢献できる可能性があるか」を確認していることもあります。
そのため、面接で退職理由を聞かれた際に、今の仕事や会社が合わないために転職を決意したことをそのまま伝えれば、「入社しても、また合わないと感じて早期離職するのではないか?」と懸念される可能性があります。「合わないと感じたこと」から、「どのような仕事や会社なら自分に合うと思ったのか」「転職によって何を実現したいと考えているのか」を整理してみることが大事です。
例えば、業務内容が合わないことが理由で退職した場合は「やりたい仕事があり、今の仕事では実現できないと考えた」、社風が合わない場合は「今の職場はチームワークを重視しているが、チームワークを大切にしつつも個人の裁量で仕事を進められる環境で自律的に働きたいと考えた」など、転職先で実現したいことに言い換えて伝えることで、意欲的に仕事に取り組む姿勢をアピールできるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年09月14日
記事更新日:2024年03月26日
記事更新日:2024年07月29日 リクルートエージェント編集部