
働いていると、「仕事を辞めたい」と思うこともあるかもしれません。仕事を辞めたいと思ったら、どのように向き合い、対処すれば良いのでしょうか。そこで、「仕事を辞めたい」と感じている方に向けて、よくある理由や対処法について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
仕事を辞めたくなった理由ランキング
一般的に、仕事を辞めたくなる、転職のきっかけとなったのはどのような理由からなのでしょうか。株式会社リクルートが過去1年以内に転職経験がある正社員に調査したアンケート結果から、年代別の転職理由の傾向をご紹介します。
出典:「年代別転職理由の本音(2025年1月15日時点)」(株式会社リクルート)
20代の傾向
20代の退職理由1位は「労働時間・環境が不満だった」(26.6%)です。20代では、2位の「仕事が合わなかった」(22.0%)、「キャリアアップしたかった」(22.0%)、4位の「自身の働き方を見直したかった」(21.1%)など、今後のキャリアアップを意識した理由がランクインする傾向があります。
順位 | 理由 | 割合 |
1 | 労働時間・環境が不満だった | 26.6% |
2 | 仕事が合わなかった | 22.0% |
2 | キャリアアップしたかった | 22.0% |
4 | 給与が低かった | 21.1% |
4 | 自身の働き方を見直したかった | 21.1% |
30代の傾向
30代では、「給与が低かった」(29.0%)が転職理由の1位になりました。また、3位「労働時間・環境が不満だった」(25.8%)、5位「年収を上げたかった」(24.7%)など、報酬や労働時間・環境などの労働条件に対する不満が多いようです。20代の結果にはなかった「会社の将来に不安を感じた」(28.0%)「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(25.8%)といった、会社の経営や仕事内容などに対する不満も上位となりました。
順位 | 理由 | 割合 |
1 | 給与が低かった | 29.0% |
2 | 会社の将来に不安を感じた | 28.0% |
3 | 労働時間・環境が不満だった | 25.8% |
4 | 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった | 25.8% |
5 | 年収を上げたかった | 24.7% |
40代の傾向
40代では、「労働時間・環境が不満だった」(36.1%)の回答が他年代と比較して高くなりました。他に、「会社の将来に不安を感じた」(30.6%)「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(29.2%)と、会社や上司・経営者への不満・不安、「給与が低かった」(29.2%)「年収を上げたかった」(27.8%)と報酬に対する不満・不安も多く見られました。
順位 | 理由 | 割合 |
1 | 労働時間・環境が不満だった | 36.1% |
2 | 会社の将来に不安を感じた | 30.6% |
3 | 給与が低かった | 29.2% |
3 | 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった | 29.2% |
5 | 年収を上げたかった | 27.8% |
50代の傾向
50代の転職理由1位は「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(34.5%)が圧倒的に高い結果となりました。他の年代では5位以内に入らなかった「昇進・評価が不満だった」(18.2%)が4位、「雇用形態に満足できなかった」(16.4%)が5位になるなど、役職定年を迎えるケースが増える50代ならではの不満が上位となりました。
順位 | 理由 | 割合 |
1 | 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった | 34.5% |
2 | 給与が低かった | 27.3% |
2 | 年収を上げたかった | 27.3% |
4 | 昇進・評価が不満だった | 18.2% |
5 | 労働時間・環境が不満だった | 16.4% |
5 | 雇用形態に満足できなかった | 16.4% |
5 | 仕事内容が面白くなかった | 16.4% |
仕事を辞めたい理由と対処法
仕事を辞めたい理由別に、対処法をご紹介します。いくつかの理由が重なっているケースもあるので、当てはまる理由を確認してみましょう。
1:職場の人間関係が良くない
仕事を辞めたい理由として、職場の人間関係の問題を挙げる人は少なくありません。仕事では、上司や同僚は自分で選ぶことはできません。苦手な相手と毎日一緒に働く中、ストレスを溜めてしまう傾向があるでしょう。
対処法
人の性格や考え方を変えることは難しいため、自分から歩み寄るのも一つの方法です。相手の考え方を知り、尊重することが関係改善につながるかもしれません。例えば、相手が上司なら、実際に上司に評価されている同僚の接し方や報連相のやり方などを観察してみることで、関係性を良くするためのヒントが見つかるかもしれません。
一方、距離を置ける相手の場合は、割り切って、仕事に必要なやりとり以外は距離を置く方法もあります。また、どうしても相性が悪い場合は、チーム替えや部署異動などで解決できる可能性もあるでしょう。
【参考記事】
2:労働条件が悪い
「残業が多い」「休日出勤が多い」「ノルマが厳しすぎる」など、労働条件の問題が理由の場合は、自分の力で解決することは難しいかもしれません。厳しい環境であっても、報酬や仕事のやりがいで報われれば我慢できる場合もありますが、そうでなければ、辛さばかりを感じてしまうことも多いでしょう。
対処法
「月に何時間の残業をしているか」「どのようなことに時間がかかるのか」「どうすれば合理化できるのか」を整理してみましょう。例えば、提案書の作成に時間がかかっている場合、部内で共有されているフォーマットなどがあれば活用して、業務効率を上げられるケースもあります。また、仕事の早い同僚のやり方を研究するのもおすすめです。
一方、純粋に仕事量が多すぎて、自分のキャパシティを超えているケースもあります。仕事量が明らかに多いと感じたり、自分一人では期日までにこなせないと思ったりした場合は、他の社員に振り分けることを上司に相談してみると良いでしょう。
3:給与が少ない
仕事に対するモチベーションには、報酬も大きく影響するものです。「自分の働きに給与が見合っていない」「この会社にいても、希望する昇給は見込めない」という気持ちが強くなると、やる気がなくなり、仕事を続けるのが難しくなってしまうでしょう。
対処法
社内の給与モデルを確認したり、転職サイトなどで業界の平均給与を調べたりした上で、自分の収入を会社や世の中の水準と照らし合わせてみましょう。社内で水準以下の場合は、会社の評価基準を確認した上で、より評価されることに取り組むことが大事です。また、業界の水準よりも低い場合は、給与体系そのものの水準が低く、今後も収入面には期待できないと判断することもできるでしょう。
4:会社の将来性や安定性に不安がある
近年は、急速なDX化により産業構造が大きく変化しています。そうした時代的な背景もあり「会社の業績が悪く、今後の事業展開が不安」「経営体質が古く、今の時代の流れに置いていかれそう」などの理由で、仕事を辞めたいと考える人は増えているかもしれません。
対処法
会社の業績が悪かったり、DX化などの世の中の流れに対応できていないと感じたりした場合は、課題解決に役立つような新しい施策を提案してみる方法があります。実現できれば、今後の転職活動でアピールできる一つの要素にできますし、実現できなかった場合にも、将来的にも柔軟な対応を期待できない会社であると判断できるでしょう。
5:仕事が面白くない、向いていない
1日の時間の多くを費やす仕事に「興味が持てない」「スキルアップが望めない」「自分の性格や能力に合わない」という思いを抱き、苦痛に感じてしまうケースもあります。特に、経験が短い場合は、思うような成果につなげることができていないために、仕事に向いていないと感じたり、仕事に面白みがないと思ったりする人もいます。
対処法
なぜ仕事が面白くないのか、今の仕事に向いていないと思うのか、自分なりに理由を深掘りしてみましょう。例えば「成果が出せないから面白くない、向いていない」という結論に至ったなら、成果を出すために仕事のやり方を見直す必要があります。仕事で必ず押さえるべきポイントについて、率直に上司に聞いてみるのもおすすめです。
「とにかくやる気が出ない」という場合は、同じ仕事で成果を上げている人や楽しそうに取り組んでいる人に、「何をモチベーションにしているか」を聞いてヒントにしてみましょう。
【参考記事】
6:社風・企業文化が合わない
社風や企業文化がマッチしていない場合は、仕事の進め方や働く職場の環境が合わずに辞めたくなるケースも少なくはないでしょう。また、企業理念に共感できず、仕事に対する意義を感じられなくなるケースもあります。
対処法
社風や企業文化において良いと思える点を探してみましょう。上司や同僚などに「どのような部分を良いと思うのか」を聞いてみるのも方法です。一方、仕事の進め方に疑問を抱いている場合は、その仕事にどのような目的・考え方・背景があるのかを上司に確認してみることも大事です。
それらを理解することで、仕事に意義を見出せる可能性もあります。企業理念が合わない場合は、理念の背景や理由まで調べ、共感できる部分を探してみると良いでしょう。
7:正当に評価してもらえない
きちんとした評価制度がないために、自分の頑張りを正当に評価してもらえないと感じて辞めたくなる人もいます。会社の評価軸や評価基準が自分の考え方と合わないために、理不尽に感じてしまうケースなどもあるでしょう。
対処法
上司にどうすれば評価されるのかを聞いてみることで、自分の頑張りと評価ポイントとのズレを修正しやすくなるでしょう。また、評価されている人が何をしているのか観察し、取り入れてみることもできます。評価ポイントとのズレがないと感じた場合は、評価される部分を上手くアピールできていない可能性もあるため、伝え方を工夫してみると良いでしょう。
8:とにかく働きたくない
そもそも働くことに対するモチベーションが低く、「何もしたくない」「とにかく働きたくない」と思ってしまう人もいます。こうした場合、自分自身が何をしたいのかわからないために、働くモチベーションを持てないケースもあるでしょう。
対処法
仕事に費やす時間を有意義にするためにも、自分なりに働くことの意味・意義を考えてみることが大事です。例えば、自己成長や自己実現、成果に見合った報酬を得ることなどが挙げられます。
プライベートで自分が好きなことや得意なことは何かを考え、今の仕事に当てはまる部分を探してみるのも良いでしょう。また、自分が強みを発揮できることを考え、小さなことでも成果を上げられそうなことに取り組んでみれば、達成感を得ることにつながるでしょう。
仕事を辞めるかどうか判断する方法
会社を辞めたとしても、納得できる転職先を見つけられるとは限りません。仕事を辞めるか迷った場合の、判断方法をご紹介します。
仕事を辞めたい理由を書き出す
前述のように仕事を辞めたい理由は人によってさまざまですが、大きく4つに分類できます。以下の4つの中から当てはまるものを探し、そこからさらに辞めたい理由を掘り下げることが大事です。例えば、「商品力がなく営業に自信が持てない」「上司が成果を見てくれずミスばかり指摘する」など、思いつく限り具体的に書き出してみましょう。
<仕事を辞めたいと思う4つの理由>
1:会社のビジョンや目標への不満
2:事業内容や仕事内容への不満
3:組織や人間関係への不満
4:評価や待遇、労働環境への不満
今の会社や職場の良いところを書き出す
今の会社や職場にも、良い点があるかもしれません。不満だけではなく、良いところがないか探してみることも大事です。「残業は多いけれど給料は悪くない」「人柄の良い社員が多い」など、現職で満足している部分をリストアップしましょう。自分がどのようなことにモチベーションを感じるのか、どのような働き方を良しとするのかが見えやすくなります。
今の会社・職場の良いところが見つからない場合は、他の会社と比較してみる方法もあります。同業他社で同年代の社員がどのような待遇や条件で働いているのか、転職サイトなどで調べてみるのも良いでしょう。
転職で実現したいことを書き出す
転職先でどのようなことを実現したいのかを書き出しましょう。例えば、「上司が仕事の結果しか見てくれないこと」が不満だと感じている場合、どうしたいのかを掘り下げると「結果だけでなく、仕事のプロセスも評価してくれる会社で働きたい」などの希望が出てくるでしょう。今の会社の良いところとして「商品開発力がある」を挙げているのであれば、「扱う商品に力がある会社で仕事がしたい」と考えることができます。
書き出した内容を分類する
書き出したすべての内容について、「現職のままでも良い点」「転職した方が良い点」という二つの軸で分類してみましょう。分類した内容を比較検討し、「今の会社にいるよりも、転職した方が良い」と感じたら辞め時と判断することもできます。
転職活動は働きながらと辞めてからのパターンがある
転職活動を始める場合、仕事と並行して転職活動を行うか、退職してから転職活動を始めるかの2つのパターンがあります。どちらにもメリットとデメリットがあるので、自分に合う方法を考えてみましょう。
働きながら転職活動をする場合のメリットデメリット
働きながら転職活動をするメリットとデメリットとして考えられるのは以下です。
働きながら転職活動をするメリット
- 転職活動をした結果、現職に残るという選択肢を選べる
- 給与を得ながら転職活動ができるので金銭面の不安が少ない
- 職務経歴にブランクができない
働きながら転職活動をするデメリット
- 仕事と並行して行うので時間に余裕がなくなる
- 面接日程の調整がしにくい
- 入社日と退職日の調整が難しい
辞めてから転職活動をする場合のメリットデメリット
辞めてから転職活動するメリットとデメリットとして考えられるは以下です。
辞めてから転職活動をするメリット
- 転職活動に集中できる
- 面接の日程調整がしやすい
- 入社日を決めやすい
- 条件が揃えば雇用保険の給付を受けられる
辞めてから転職活動をするデメリット
- 給与がなくなるため金銭面に不安が生じやすい
- 職務経歴にブランクが生じる
こんな場合は仕事を辞めても良い?よくあるQ&A
仕事を辞めて良いのかのお悩みに回答します。
良い会社だけど辞めたいと思った場合は?
自分にとっての「良い会社」を定義してみることが大事です。年収や会社の業績、規模感などから、一般的に「良い会社」とされている場合でも、「働く上で大事にしたいこととズレている」「目指すキャリアを実現することが難しい」などの場合は、自分にとって「良い会社」とは言えないかもしれません。
自分が働く上で大事にしたいことや、今後に実現したいキャリアビジョンやキャリアプラン、ライフスタイルなどを明確にし、「自分にとって、良い会社」であるかどうかを考えてみましょう。
職場は良い人ばかりなのに辞めたい。どうすれば良い?
「職場の人間関係が何より大事」という場合は、現職のままの方が後悔しない可能性があります。しかし、「現職を失って後悔することが怖いので、現状を維持した方が良い」という潜在意識が働いているケースもあるでしょう。
転職した方が自分にとって「年収が上がる」「スキルが身につく」「仕事のやりがいを感じられる」などのメリットがあるとわかっていても、「新しい職場に馴染めないことが不安」という気持ちがあるために、決断できないのかもしれません。他の要素と比較するためにも、第三者に相談し、客観的な視点でアドバイスを受けてみると良いでしょう。
思うように成果が出せずに悩んでいる場合、転職は難しい?
今の職場で自分の思うように成果が出せず、「仕事ができない」と感じていても、別の職場・環境では力を発揮できる可能性は十分にあります。仕事内容や担当する商品サービス、仕事の進め方、人間関係などによって、仕事で発揮できるスキルやパフォーマンスは変わってくるものだと考えましょう。
「今の職場での結果や評価がすべて」と思わず、自分の力を発揮できる職場を探してみることをお勧めします。また、現職で高い成果を挙げていない場合でも、自分の中で成長したこと、創意工夫した経験などを応募書類や面接でアピールし、転職できたケースもあります。
「仕事辞めたい」と悩んだら転職エージェントに相談してみよう
自分だけで辞めるかどうかの判断が難しいと感じた場合は、転職エージェントに相談してみると良いでしょう。希望条件やこれまでのキャリアや強みを伝えることで、マッチした選択肢を提案してもらえます。また、キャリアの棚卸しや自己分析をサポートしてくれる転職エージェントに相談すれば、自分が転職先に求めることを明確にしやすくなります。
転職エージェントは無料で利用可能です。また、紹介先の選考を受けるかどうか、転職するかどうかの最終的な判断は自身が行うため、情報収集の一環として話を聞いてみるのも良いでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
記事更新日:2023年01月31日
記事更新日:2024年07月03日
記事更新日:2025年02月28日 リクルートエージェント編集部