何度も転職を繰り返すと、「次に転職しようとするとハードルが上がるのではないか」と不安を抱くかもしれません。企業は転職回数が多い人をどのように見ているのか、転職回数の多さが選考に影響する不安をどのように払しょくすればよいのか、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
転職を繰り返していても転職できる?
転職を繰り返していても転職はできるのか、昨今の転職市場の状況を踏まえてお伝えします。
転職回数の多さは転職のハードルにならないと考えられる
リクルートワークス研究所のレポート「なぜ転職したいのに転職しないのか」(※)では、過去の転職回数の多寡によって、転職活動者の転職確率が変わるかを調査した結果、男女の正規雇用者ともに転職回数が多い人ほど1年以内に転職する可能性が高いという結果になったと伝えています。「つまり、転職回数が多くても転職の妨げになっていないと言えるだろう。」と、同調査は結論づけています。
労働力人口が減少に向かい、あらゆる企業が人材採用に苦戦している昨今、転職回数だけで不採用の判断を行われることは少ないといえるでしょう。
企業は「自社が求める経験・スキルを持っているかどうか」にフォーカスして選考を行う傾向が強くなっています。企業のニーズに合わせて自身の経験・スキルを適切にアピールすれば、転職回数の多さは転職のハードルにはならないと考えられるでしょう。
(※)出典:リクルートワークス研究所「なぜ転職したいのに転職しないのか」
企業は転職回数の多い人をどう見ている?
応募者の職務経歴を見た企業は、転職回数が多い応募者にどのような印象を抱くのでしょうか。採用担当者からよく聞こえてくるのは「当社に入っても、早期に離職してしまうのではないか」という懸念の声です。
企業としては採用活動に時間やコストを投じているほか、導入研修など入社後のフォローにも労力を費やします。早期離職されると、再度募集からやり直さなければならず、コストも労力も追加でかかるため、不安を抱くようです。
特に直近、短期スパンで転職を繰り返している場合などは、経験・スキルを高く評価したとしても、採用の判断は慎重になるといえるでしょう。
一方、直近の勤務先企業に一定期間以上在籍している場合は、それ以前に短期間での転職を繰り返していたとしても、それほど気にされないこともあるでしょう。例えば、20代の間に複数回転職を繰り返した30代の方が、直近では一つの企業に長く勤務しているなら、定着性への不安は持たれない可能性が高いといえます。
転職理由は丁寧に説明しよう
企業が転職回数の多さに不安を抱いたとしても、転職を繰り返した理由や目的に納得すれば、不安の払しょくにつながるかもしれません。転職理由をしっかりと説明できるように準備しましょう。
「不満があるとすぐに辞めるのではないか」「飽きっぽいのではないか」「忍耐力がないのではないか」と考える採用担当者もいますが、前向きな理由からの転職であれば、マイナス印象をカバーすることができる可能性があります。
転職回数が多い場合のアピール方法は?
転職回数が多く、企業から不安を抱かれる可能性がある場合、払しょくするためには次のようなポイントをアピールするのが有効です。
目的意識や向上心を持って転職したことをアピール
行き当たりばったりで転職を繰り返してきたのではなく、明確な目的や目標を持って転職したのであれば納得を得やすいでしょう。そして転職先で目的を達成し、ステップアップを果たしていれば、むしろプラスに評価されることもあります。
「○○の経験を積みたかった」「○○のスキルアップを目指した」「○○に強い興味を持ち、チャレンジしたいと考えた」など、向上心や成長意欲を持って転職したのであれば、それを明確に、ストーリー立てて伝えましょう。
応募先で活かせる経験・スキルなどをアピール
「求めている経験・スキルがあれば転職回数は気にしない」という企業も多く見られます。まずは求人情報を読み込むなどして企業研究を行い、応募企業が求めている人材像をつかみましょう。
これまで勤務してきた企業での経験や身に付けたスキルを整理し、応募企業のニーズに合うものを抽出し、それを強調してアピールしてください。
複数の企業を経験してきたからこそ身に付いたこと、学べたこともあるはずです。「複数の企業でさまざまな手法やノウハウを学んできたので、それぞれの優れた部分を取り入れて御社の業務改善に貢献したい」などと伝えてもよいでしょう。
今後の目標をアピールする
明確な目的・目標がなく転職を繰り返してしまった場合、無理に取り繕うのではなく、正直に伝えたうえで、「現状の自己分析」「今後の目標」を語るようにしましょう。
これまでの転職を経て気付いたこと、自身の課題とともに、「これからどうしたいか」「応募先企業で何を目指したいのか」を伝えてください。
自分に合う職場を見つける方法
これまで在籍してきた企業が自分に合っておらず転職を繰り返してきた方は、「次こそは自分に合う職場を見つけたい」と考えているのではないでしょうか。自分に合う職場を見極めるための方法をご紹介します。
風土・カルチャーに注目して企業研究をする
経験・スキルはマッチしていても、風土やカルチャーが合っていないと居心地の悪さを感じ、早期離職につながることが多いものです。
風土やカルチャーになじめるかどうかを見極めるためには、次のようなポイントに注目して企業研究を行いましょう。
- 企業が掲げる「理念」「パーパス」「ミッション・ビジョン・バリュー」
- 社員同士のコミュニケーションのスタイル
- 仕事の進め方(個人での活動中心・チームワーク、スピード重視・慎重に計画を練るなど)
- 人事評価の基準
これらの情報を得るには、企業の公式サイトや採用サイトで確認するほか、企業や経営者のSNS、メディアのインタビュー記事などをチェックしてみてください。
選考過程で、「一緒に働くメンバー」と話をさせてもらう
興味を持った企業に応募して選考に進んだら、人事担当者・配属予定先部門の上長・役員クラスなどとの面接だけで終えず、一緒に働くメンバーとも話をさせてもらえるように交渉するのも一つの手です。
最近は「カジュアル面談」を取り入れている企業もあるため、応じてもらえる可能性があります。内定の方向へ話が進んだら、現場で働くメンバーとの面談のセッティングを依頼してみてはいかがでしょうか。働くイメージが具体化し、自分に合う職場であるかどうかの判断がつきやすくなるでしょう。
【参考記事】
転職活動で悩んだら転職エージェントに相談を
面接では必ず「転職理由」を聞かれます。転職回数が多い人であれば、今回の転職だけでなく過去の転職理由に注目される可能性もありますので、面接対策をしっかり行っておくことが重要です。
また、書類選考の段階で転職回数の多さが懸念される可能性もありますので、職務経歴書の作成においても工夫したいものです。
転職エージェントでは、転職理由・目的の伝え方のほか、これまでのキャリアからどのようなポイントをアピールすれば有効なのかなど、アドバイスを受けることが可能です。転職歴を「強み」に転換するためにも、相談してみてはいかがでしょうか。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。