転職活動の際、志望動機と自己PRについて、「書くことの違いがわからない」と悩んでいる人もいるでしょう。
今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、志望動機と自己PRにおける、評価されるポイントや書き方のコツについてお話を聞きました。
「志望動機」と「自己PR」の違いとは?
「志望動機」と「自己PR」は、それぞれに役割が違うものです。志望動機には、「個別の企業を志望した理由」を書き、入社後に貢献できること、実現したいことなどを伝えましょう。一方、自己PRには、「自分の強み」を書き、入社後にどう貢献し、活躍できるのかまで伝えるものだと考えましょう。
企業が「志望動機」を通じて見ているポイント
企業が志望動機を通じて見ていることは、「志望度の高さ」と「企業理解の深さ」です。その企業に対する入社意欲や熱意が高いことは評価のポイントとなります。また、企業や応募職種に対し、間違った捉え方をしている場合、ミスマッチにつながる可能性が高いため、応募者が仕事内容や働き方、社風などをきちんと理解し、納得しているかどうかも重視するでしょう。
企業が「自己PR」を通じて見ているポイント
自己PRについては、応募者がアピールする強みに対し、「それを活かして、入社後に活躍できる人材であるか」という点を見ています。また、企業の求める人物像や、文化・風土にマッチしているかを確認し、「長く働き続け、活躍を続けてくれる人材であるか」を判断している可能性も高いでしょう。
「志望動機」と「自己PR」に同じことを書くのはNG?
ここでは、志望動機と自己PRの書き分けについて、把握しておきたいことを紹介します。
「志望動機」と「自己PR」は、一貫性があることもポイント
中途採用の面接では、自己PRを聞いてから志望動機についての質問をするケースもよくありますが、これについては、「自己PRと志望動機に一貫性があるか」を確認している可能性が高いでしょう。自己PRでは、「これまでの経験・実績・スキルをきちんと棚卸しできているか」を確認できますし、志望動機で、「そうした背景を踏まえた上で、自分なりにこの会社を理解し、接点を見つけているのか」を判断することができます。質問の順序が逆であった場合でも、話す内容に一貫性があることは重要なので、自己PRでは、「自分が“過去”に積み重ねてきたこと」を中心に伝え、志望動機では、「そんな自分が“未来”にやりたいこと、できること」を伝えるというイメージを持つといいでしょう。
志望動機と自己PR、同じことを書いたら評価されない?
志望動機を自己PRと全く同じ内容にした場合、「志望度が低いのでは?」「この会社に対する興味が薄い人物」と捉えられる可能性があります。「この会社を選んだ理由」をしっかりと伝えましょう。もしも、「面接までに企業研究をしている時間がない」という場合には、志望動機を書く欄がない履歴書を使用することもできます。しかし、面接では、必ずと言っていいほど、志望動機を聞かれるものです。掘り下げられていく中、「志望動機と自己PRの内容が矛盾している」と思われてしまわないよう、それぞれ明確にしておく方がいいでしょう。
「志望動機」を履歴書に書く際のコツ
ここでは、志望動機の書き方のコツを紹介します。NGポイントなども含めて把握しておきましょう。
転職理由を振り返る
自分自身の「転職理由」を振り返ることは、志望動機を明確にするスタートラインといえます。まずは、前職の状況や自分の現状を踏まえた上で、転職によって叶えたいことや、改善したいことについて掘り下げましょう。自分自身の過去を棚卸しした上で、応募先企業の仕事内容や働き方、待遇、キャリアステップなどを整理し、「自分のできること、やりたいこと」と、「その会社で求められること、できること」において、どこにつながりがあるのかを洗い出すことが大事です。
例えば、「前職では中小企業向けの営業を担当していたが、もっとスケールの大きな仕事がしたい」という場合、「大手企業を顧客とするこの会社なら、身に付けた営業スキルを活かし、より規模の大きな提案ができる」など、自分とその企業の接点を見つけましょう。
企業に魅力を感じた点を軸に、自分の考えを伝える
企業の魅力としては、以下のようなものが挙げられます。
・携われる業界、商品、サービス
・業績、シェア
・仕事内容、働き方
・社員のカラー、企業風土
・経営理念や目指すビジョン
これらを軸に、魅力を感じた部分を具体的に挙げて、「この会社だから、こんなことができる。こんなことがやりたい」という、自分なりの考えを伝えましょう。例えば、「前職で商品を売る営業を担当する中、コンサルティング提案を心掛けてきた。この会社では、多様なサービスを提供し、コンサルティング営業として提案力を発揮することを求められるため、より顧客に役立つ提案ができると感じた」など、その企業についてきちんと調べていることが伝わる内容を意識しましょう。
志望動機を書く際のボリュームの目安としては、全体の7割程度の文章量でその企業にかかわる内容を書き、残りの3割程度で根拠となる自分の背景や思いを伝えるといいでしょう。
プラスアルファの書き方ポイント
企業の魅力は1点に絞ってもOKですが、複数の視点を伝えれば、しっかりと企業研究していることをアピールできます。また、「業界」「企業」「職種・仕事内容」など、大きなテーマから小さいものへと順に絞っていくようにすると、論理の筋道が立てやすく、企業側にもより理解してもらいやすくなります。「他の業界に比べて、応募企業の属する業界が魅力的」→「多数の競合他社がある中でも、この会社が魅力的」→「今回、応募する仕事にはこういった魅力があり、貢献もできる」というような順序で伝えるといいでしょうでしょう。
こんな志望動機はNG
志望動機におけるNGポイントとして、以下の2点に注意しましょう。
漠然としている志望動機
漠然としていて、どの企業にも当てはまるような内容は、「きちんと調べていない」「志望度が低い」と判断される可能性が高いでしょう。企業側も、「自社に興味を持ち、入社意欲を持っていてほしい」という思いがあると考えましょう。また、自分の経験やスキルとの接点を作っていない志望動機の場合も、「企業理解をしていない」「応募職種と応募者の経験・スキルがマッチしていない」と判断される可能性があるので注意しましょう。「業界トップの企業だから」という志望理由があった場合でも、「業界トップだからこそ、自分に何ができるのか、何をやりたいのか」を明確にすることが大事です。
内容に矛盾があり、一貫性がない
前職の退職理由と矛盾している内容の場合も、「一貫性がない」という評価につながるでしょう。例えば、「前職の体育会系のような雰囲気が合わないと感じた」という退職理由がある一方で、「チームの団結力を大切にする風土に魅力を感じた」という志望動機を伝えれば、そもそもの考え方に矛盾があると判断されかねません。前職に対する不満を退職理由とする人は少なくありませんが、志望動機では、「その会社に魅力を感じた点」「それを通じて自分が実現したいこと」などに言及することが重要です。「ただ不満だから退職し、目的意識を持たずに転職活動をしている」と受け取られないように注意しましょう。
「未経験職種」「転職回数が多い」などの場合に注意したいこと
未経験職種を目指す場合は、「なぜその仕事に興味を持ったのか」を具体的に書くことがポイントです。また、熱意を伝える際には、「その仕事を目指すために自分なりに努力していること」を伝えましょう。ただの憧れではなく、「未経験でも、やり遂げられる」という自分なりの根拠を示すことが大事でしょう。
転職回数が多い場合には、自分なりに一貫性を持って転職してきたことを示しましょう。「目指すキャリアの軸があり、そこに合致する仕事を選んできた」という経緯を伝えるといいでしょう。また、「すぐに退職するかもしれない」と思われる可能性もあるので、長く働き続ける覚悟や決意を伝えることもポイントです。
「自己PR」を履歴書に書く際のコツ
次に、自己PRの書き方について紹介するので、こちらもポイントを押さえておきましょう。
応募先の企業・職種で強みとなる経験・実績・スキルを振り返る
これまでの経験や実績、身に付けたスキルを振り返り、応募先企業の事業や応募する職種において活かせる強みを探しましょう。また、入社後にその強みを活かして、どのように活躍・貢献していきたいのかを伝えることがポイントです。
具体的なエピソードで説得力を持たせる
自分の強みに説得力を持たせるために、それを裏付ける具体的なエピソードを伝えましょう。どんな状況の中、どんな意志や考えを持ち、どう行動したのか、その結果、どんな成果を挙げることができたのかを書くことがポイントになります。また、企業は長く働き続けてくれる人材かを判断するために、自社の文化や働き方とマッチするはどうかも見ています。強みを語るエピソードでは、仕事に取り組む姿勢なども伝えることが大事でしょう。
自己PRを書く際のボリュームの目安としては、全体の8〜9割程度の文章量で自分の強みやその背景となるエピソードについて書き、残りの1〜2割程度で企業に対して貢献できる点や入社後の活躍イメージなどを書くといいでしょう。
※自己PRについて、プラスアルファの書き方ポイントを知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
転職の自己PRで強みをアピールする方法。書くべき要素から添削ポイント、例文まで紹介
こんな自己PRはNG
「コミュニケーション力が強み」「責任感がある」など、よく使われる言葉や抽象的な表現で強みをアピールしても、「自分の経験を基にしていない」と受け取られる可能性があります。自分の言葉で言い換え、具体的なエピソードを伝えることが大事です。また、応募する職種や仕事にマッチしていない強みを伝えても、「求める人物像と重ならない」と判断される可能性があるでしょう。自分が持つ強みをその仕事にどう活かせるのかまで考え、「入社後に活躍する姿をイメージしてもらう内容」を意識しましょう。
志望動機と自己PRの例文を紹介
最後に、志望動機と自己PRの例文を紹介します。営業職のケースを紹介するので、参考にしてみましょう。
志望動機の例文
業界の魅力:◯◯市場は今後も確実に伸びていく市場であり、特に、貴社が注力している△△分野におけるサービスは、日本において必須の領域のため、さらに伸びていくと考えております。
企業の魅力:私は現職で営業職を担当し、すでに業務上で貴社サービスを利用しているため、非常にユーザビリティに優れ、業務の生産性が上がると実感しておりました。また、競合他社と比較して、コスト面のバランスも優れていると考えております。
仕事の魅力:貴社の営業スタイルは、セールス部門と技術部門が密に連携し、一つのプロジェクトチームとして機能されていると伺いました。技術的な領域の最新情報を押さえながら、営業として顧客により良いものを提案する体制や風土ができている点に魅力を感じました。
実現・貢献したいこと:私は、現職でも新しい知識を深く学ぶことで顧客に価値提供できると実感しております。貴社のようにチームで深い知識や情報を共有できる環境の中、さらに高度な付加価値の提案を実現し、自分も成長しながら、組織に貢献していきたいと考えております。
自己PRの例文
自分の強み:新しい技術を自らキャッチアップし、学んでいく力を強みとしております。
具体的なエピソード:私はこれまで、提案に必要な知識を深めるため、プログラミング言語、RPA、AIなどを独自に勉強し続け、関連資格も取得しております。技術面に一歩踏み込んでサービス全体の仕組みを理解したことで、それぞれの顧客特性に応じた提案が行えるようになりました。また、プリセールスやエンジニアとの連携性を高め、スピーディーなサービス提供を実現しました。これにより、年間目標数字120%以上を達成しております。
入社後の活躍イメージ:今後も新しい技術やトレンドについて、ひとつ一つ丁寧に学び続け、深い理解に基づいた顧客提案と社内連携に注力し、着実に成果を挙げていきたいと考えております。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
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