転職活動では必ずと言っていいほど自己PRを聞かれます。自己PRは、仕事における自身の強みやこだわりを伝える項目ですが「自己PRがない」と悩んでしまう方もいるようです。そこで、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏に、自己PRが見つからない方向けに、自己PRの作り方や例文について解説いただきました。
自己PRとは
自己PRとは、自分の長所や経験、能力を相手に伝えることを指し、自分の価値を伝える手段として活用されます。自己PRは、これまでの職務経験や特技、過去の成功体験、困難を乗り越えたエピソードなどを用いて表現します。
合わせて自分の長所などを応募先企業でどのように活かせるのかを伝えることも重要です。その結果、採用担当者が入社後のイメージをしやすくなる効果が期待できます。
自己PRがない人は自分だけじゃない
自己PRは多くの人が頭を悩ませる項目です。自己PRが思いつかないことで、焦りや不安を感じることもあるかもしれません。日常の中で自分の成果や役割を意識する機会は少ないため、自分の価値を言葉にするのは難しくなりがちです。
しかし普段の活動や成果には、採用担当者にアピールできる経験やスキルが隠れていることもあります。自分の過去を振り返り、業績や経験を整理することで自己PRを考えてみましょう。
採用担当者は自己PRで何を見ているのか
採用担当者は自己PRから、応募者が企業にとって採用するメリットを見出しています。具体的には「企業の成長に貢献できるのか」「採用コストに見合う人材なのか」を確かめたいのです。
また、面接では話のまとめ方やプレゼンテーションスキルも評価の対象です。企業の特性や求める人材像を研究して、自己PRの内容を磨き上げることが鍵となります。
自己PRがないと感じる理由
「自己PRがない」と考えてしまう理由と、自分の強みの見つけ方をご紹介します。自己PR作成の参考にしてみてください。
大げさに考えている
自己PRを作成する際に「“輝かしい成果”や“表彰実績”のような内容でないと評価されない」と大げさに考えているのかもしれません。しかし自己PRは成果や実績だけを重視しているのではなく、自分なりに工夫したことや努力したことなど、仕事の進め方やプロセスも重要です。
短所しか浮かばない
なかなか自分に自信が持てず「短所しか浮かばない」「自分の長所が分からない」と感じている方もいるようです。しかし強みや長所は、弱み・短所の裏返しです。弱みや短所を言い換えることで、強みや長所を言語化することができます。
強みを言語化できない
なんとなく自分の得意分野などは理解しているものの、強みを言語化して自己PRに落とし込むことができないケースもあるようです。言語化できない場合は、自己分析や強み一覧などを活用してみましょう。
自己PRの見つけ方
なかなか自己PRが思いつかない人のために、自己PRの見つけ方を5つ紹介します。自信を持って伝えられる自己PRを見つけて、採用担当者にアピールしましょう。
経験やキャリアを深掘りして考える
成果にとらわれず範囲を広げてみて、こだわりや信念を持って取り組んだ仕事を振り返ってみましょう。周囲に褒められた経験でも構いません。やりがいを感じた仕事のエピソードがあれば、自己PRに活用することをおすすめします。
弱み・短所を言い換える
「自分に自信が持てない」という弱みは、言い換えると「謙虚である」という強みになります。「せっかち」という短所は「スピード重視」「取り掛かるのが早い」という長所になります。短所しか浮かばないのであれば、長所に変換してみましょう。
自己分析を行う
自己分析を行って、仕事の得意分野やこだわりなどを整理してみます。自己分析でなかなか言語化できない場合は、強み一覧からマッチする強みを選ぶという方法もあります。もし自己分析を行っても強みが見つからない場合は、周囲の人に聞いてみると自分では気づかなかった意外な強みが見つかるかもしれません。
応募する企業の求める人物像から見つける
自己PRを考える際、応募する企業の求める人物像を事前に研究することが有効です。多くの企業は、採用ページやホームページに理念や求める人材像を明示しています。これらの情報から、自分の持つスキルや経験がどの部分で企業の求める人材像にマッチしているかを探し、自己PRを考えましょう。企業との相性を明確にすることで、採用担当者は魅力を感じてくれやすくなります。
家族や友人など身近な人に強みは何か聞いてみる
自分自身では気づかない強みや特性が、身近な人には見えていることがあります。家族や友人に自分の強みや得意分野を聞いてみることで、新たな自己PRの要素を見つけることができるでしょう。また、他者から見た自分のイメージを知ることは、面接時に自分をどう表現するかの参考にもなります。周りの意見を取り入れることで、自分を客観視することができ、より魅力的な自己PRを作成できるでしょう。
自己PRを作成する3ステップ
「自己PRが書けない」と悩んでいる方必見の、自己PR作成の3ステップをご紹介します。
ステップ1:キャリアを棚卸しし、自身の強みを洗い出す
これまでのキャリアを振り返り、経験・スキルの棚卸しを行います。大きな成果が出た取り組みや表彰実績でなくても構いません。周囲から褒められたことや、自身が得意としていること、こだわっていたことなどを洗い出してみましょう。
なお、第二新卒など経験が浅い場合は学生時代やアルバイトで得た経験、スキルアップのために努力していることを強みとしてアピールすることも可能です。成果につながった経験があればさらに有効でしょう。
ステップ2:応募先のニーズ、求める人材像を読み取る
採用担当者が「自社とマッチしている」「入社後に活躍してもらえそうだ」とイメージできる自己PRを作成するには、応募企業の人材ニーズを把握しておくことが重要です。求人や企業の採用ページの募集要項に記載されている「仕事の内容」や「必要な経験・能力」から、どのような人物が求められているのかを確認しましょう。
なお、自己PRで伝える強みは応募企業が求めている人物像との共通点がある方が望ましいのですが、共通点がないからと言って無理に合わせる必要はありません。自身の強みと応募企業が求める人物像との共通点があれば、優先的に自己PRに取り入れましょう。
ステップ3:具体的なエピソードを交えてまとめる
自己PRで伝える強みが決まったら、具体的なエピソードを交えてまとめます。例えば「コミュニケーション力がある」とだけ伝えても、抽象度が高すぎて採用担当者はコミュニケーション力が業務でどのように活かせるのか分かりません。
「メールだけで終わらせず、あえて電話で補足し温度感を伝えるなど、コミュニケーション方法を工夫した結果、関連部署を巻き込んでプロジェクトを進めることができました」など、具体的なエピソードと成果(結果)を交えて自己PRをまとめましょう。
自己PRの伝え方
採用担当者に魅力的に感じてもらえるような自己PRの伝え方を3つ紹介します。
簡潔に伝える
自己PRは簡潔に伝える意識を持ちましょう。多くのことを伝えようと、複数のポイントや事例を伝えてしまうと、最も伝えたいことが薄れてしまいます。簡潔に分かりやすく伝えることで、採用担当者の記憶に残りやすくなるでしょう。
大切なのは結論から伝えることです。「私の強みは継続力です」のように伝えると、採用担当者が理解しやすくなります。
応募先企業で活かせる内容を伝える
自己PRを伝える際に大切なのは「どのようにして応募先の企業で自分の能力を活かすのか」です。応募する求人の業種や職種、さらに企業のビジョンやミッション、求める人材像に合わせて自己PRをカスタマイズすることで、自分の価値を明確に示すことができます。
入社後の具体的な貢献のイメージを持って採用担当者に伝えることで、選考を有利に進めることができるでしょう。
裏付けるエピソードを加える
自己PRを単なる抽象的な言葉で終わらせないために、具体的なエピソードで裏付けることが効果的です。過去の経験や成功体験をもとに、自分の能力やスキルを証明する話を加えることで、より説得力を持った自己PRとなります。
また、具体的なエピソードは聞き手にとって覚えやすく、面接などの場面で印象に残りやすくなるのでぜひ活用しましょう。
自己PR例文
自己PRを伝える例文を5つ紹介します。これらを参考にして、自己PRの作成に役立ててください。
継続力を伝える場合
私の強みは「継続力」です。
食品販売の会社で5年間、商品企画を担当し続け、最終的に売上成長率を3年連続で10%以上伸ばすことに成功しました。この達成の背景には、日々の市場調査や消費者ニーズの分析、そして何度もの試行錯誤を経た商品改善があります。最初は手探りな面もありましたが、日々の積み重ねにより傾向を掴むことができ、効率的な改善活動を実現することができました。
私のこの継続力を活かし、貴社の新商品開発や既存商品の売上拡大に貢献したいと考えております。
協調性を伝える場合
私の強みは「協調性」です。
アパレル業界でのチームリーダーとして、さまざまな性格や専門領域を持ったメンバーと共に新しいコレクションの立ち上げを成功させてきました。プロジェクトを進める際は、各部署の意見や要望を取りまとめ、スムーズなコミュニケーションの橋渡し役としての経験を積んできました。チームの輪を乱さずにプロジェクトを成功させることには自信があります。
この協調性を活かし、貴社での新たなプロジェクトを円滑に進行させることで貢献したいと考えております。
計画性を伝える場合
私の強みは「計画性」です。
現職では、旅行代理店にて海外ツアーの企画・運営を3年以上担当しております。その間、100以上のツアーをゼロから立ち上げました。それぞれのツアーでは顧客のニーズや安全対策、現地の状況を綿密に把握し、適切な計画によって成功へと導いてきました。前例のあることはもちろん、新規のプロジェクトにおいても徹底的な計画によって仕事を遂行してまいります。
この計画性をもって、貴社のプロジェクト管理や新規事業の展開に貢献できると信じております。
学習意欲を伝える場合
私の強みは「学習意欲」です。
税理士資格は取得済みで、現在は会計士資格取得を目指し日々勉強に取り組んでおります。現在は先輩社員や新入社員を含めた7名の部下を管理職として指導・育成に務めております。並行して、会計のスペシャリストとして税制のアップデートや豆知識をチャットツールで周知しております。経営戦略を学ぶ勉強会にも定期的に参加しており、知識・スキルの研鑽を行っております。
これまでに培った知識や経験を、貴社においても存分に活かすべく、決算業務体制を整えて企業運営の大きな力となれるように努めてまいりたいと考えております。
課題発見力を伝える場合
私は数値分析や課題発見を強みとしています。
食品メーカーの営業として、自社ブランドの認知度・流通量の向上を目指し、スーパーマーケットを対象に営業活動を行ってきました。自社商品を案内するだけでなく、顧客店舗の利用者層や売れ筋などを分析し、販売戦略に対しても積極的に提案することに力を注ぎました。担当して1年半で、顧客店舗のうち複数社売上が120~150%程度伸び、信頼を獲得できました。
この経験を通じて数値分析や課題発見が得意であること、経営改善の提案をしてお客様に喜んでいただける仕事にやりがいを感じることを実感しています。食品・流通業界に対するコンサルティングについては、過去の経験が活かせると考えております。
転職エージェントに相談して自己PRを作成しよう
自己分析や自己PRの作成は、一人だとなかなかうまく進まないかもしれません。転職エージェントは、数多くの求職者の転職支援実績があるため、どのように強みを見つければいいのか、そして強みをうまく伝えるための方法を熟知しています。転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談して、効果的な自己PRを作成しましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年03月10日
記事更新日:2023年10月04日 リクルートエージェント編集部