クリエイティブな仕事に興味があっても「どんな職種があるのかよくわかっていない」人や「未経験からの転職は難しいのでは?」と考える人もいるのではないでしょうか。
今回は、リクルートエージェントでクリエイティブ業界への転職支援を手掛けるキャリアアドバイザーに、さまざまな職種とやりがい、転職のために必要な準備や考え方などを伺いました。
目次
クリエイティブな仕事には、どんな種類の職種がある?
クリエイティブな職種には、おおまかに「デザイナー/クリエイター系」「ディレクター系」「出版/文筆系」の3つの領域があります。「出版/文筆系」の編集者やライターなどの職種は、フリーランスや業務委託などの契約形式で仕事をするケースが多いため、今回は「デザイナー/クリエイター系」「ディレクター系」の職種をご紹介します。
デザイナー/クリエイター系
クリエイティブな職種には、おおまかに「デザイナー/クリエイター系」「ディレクター系」「出版/文筆系」の3つの領域があります。それぞれ紹介します。
webデザイナー
webサイトなどのデザインを手掛ける仕事です。ユーザーインターフェイスを手掛けるUIデザイナー、サイトを通じたユーザー体験まで考えて全体を構築するUXデザイナーなどの職種もあります。
グラフィックデザイナー/プロダクトデザイナー
モノとして形になるデザインについては、広告物をはじめとする紙関連のデザインを手掛けるグラフィックデザイナーや、商品のパッケージデザインなどを手掛けるプロダクトデザイナーなどの職種があります。
ゲームクリエイター
オンラインゲームやアプリのゲームなどのキャラクターや背景、画面のデザインや音楽制作、シナリオ制作などに携わります。デザインについては、2D/3Dデザイナーやモーションデザイナー、エフェクトデザイナー、UIデザイナーなど、さらに細かい専門領域に分かれています。
動画クリエイター
動画配信に携わる職種で、動画編集やVRの制作などを手がけます。企業のプロモーション動画などを制作する仕事もあれば、大手動画共有サイトなどで活躍する配信者の動画制作を手掛ける仕事もあります。最近、求人数が急速に増えている領域です。
イラストレーター
雑誌などの紙媒体やwebなど、さまざまな分野で使われるイラストの制作をします。主な仕事内容は、クライアントから依頼のあったイラストを手がけ提供することです。ポスターや商品のパッケージ、webサイトや雑誌の挿絵などがメインとなり、商品の魅力をわかりやすく表現する役割を担っています。
CGデザイナー
コンピュータと専用のソフトを使い、2次元または3次元のグラフィックスを制作します。CGデザイナーの仕事内容は幅広く、デザイン作品のほか、産業用の図面や画像、アニメーション・建築・車・機械設計など幅広い業界での需要が増えており、活躍の場が広がっています。
カメラマン/フォトグラファー
大きく分けて、商品の宣伝などに利用する商業写真と、カメラマンの個性を反映させたアート写真の撮影に分けられます。商業写真は広告代理店やデザイン会社に所属しながら、物や人物を撮影し、アート写真はメッセージ性のある芸術作品ともいえる写真を撮影することです。
ディレクター系
デザイナーやクリエイターのように専門スキルを発揮する仕事ではなく、全体を取りまとめ、プランニングやディレクション、進行管理などを手掛けます。web系の職種を中心に紹介するので、おおまかにどんなことをするのか把握しましょう。
プランナー
webサイトやアプリなどの方針をプランニングし、コンテンツを含む全体の設計やデザインなどのディレクションを手掛けます。制作そのものは、デザイナーやITエンジニアが担当します。
制作(進行管理)
webサイトの制作全体や進行を管理します。デザイナーやITエンジニアをはじめ、制作に携わる社内外の関係者とやりとりし、納期に向けて作業の進捗を管理します。
開発ディレクター
開発におけるディレクションを行います。ITエンジニアに指示を与える立場のため、専門用語や仕組みを理解していることが重要です。そのため、開発ディレクターはエンジニア出身者がほとんどといえるでしょう。
クリエイティブ(アート)ディレクター
デザインなどのクリエイティブ領域のディレクションを行います。クリエイターに向けて指示を出すため、デザイナー出身の人がこの立場になるケースが多いでしょう。
そのほかの領域について
以下のような領域にも、プランナー、ディレクター、制作などの職種があります。
- 書籍や漫画などの出版物
- webメディアなどの記事コンテンツ
- パンフレットやカタログ、CMなどの広告物
- 動画
- ゲーム
- テレビ番組
- ラジオ番組
出版/文筆系
文章にかかわる仕事は、大きく分けて以下のものが代表的です。クライアントの目的に沿った文章を制作する仕事のため、目的ごとに書き方や内容が異なり、高い文章力や国語力が求められるでしょう。
コピーライター
雑誌・ポスター・新聞などに使用されるグラフィック広告や、テレビCM、webサイトやバナー広告などのコピー(広告文)を書きます。そのためデータや情報を集めながら、時代のニーズに合わせたコピーを考える必要があります。
webライター
企業や自治体、メディアなどwebサイト上の記事を書く仕事です。文章力だけではなく、検索エンジンや集客を意識したSEOの知識も必要となるケースが多いでしょう。基本的に文章を書くことができれば未経験でも挑戦できる仕事ですが、世の中の様々なことに興味関心を持つアンテナが欠かせないといえるでしょう。
編集者
書籍や雑誌などの制作作業をし、出版や掲載記事などを企画~掲載までの工程を管理する仕事です。原稿の修正を依頼したり、もしくは自分で修正したりして、原稿やイラストなどが公開されたらクオリティを確認します。web媒体の編集者も、記事が公開されるまでは同じ作業を行います。
小説家
自身の経験や知識、想像力を活かして物語を書きます。ほとんどの小説家は専門のジャンルを持ち、作品づくりを行います。書籍の出版はもちろん、新聞への連載小説やインターネットの発達により、電子書籍やweb小説などでも作品発表の場が広がっています。
脚本家
主に映画・テレビドラマ・舞台・アニメ・ゲーム・ラジオドラマなどの脚本を書き、シナリオライターとも呼ばれています。文章力のほか、物語を構築する力やストーリーを面白く展開する創造力も求められるでしょう。
クリエイティブな仕事の働き方の違い
同じクリエイティブな仕事であっても、「事業会社で働く場合」と「代理店/制作会社で働く場合」では、仕事内容に違いがあります。それぞれ把握しておきましょう。
事業会社で働く場合
事業会社の場合は、自社サービスや自社メディアを運営しているため、そこに携わるケースがほとんどといえるでしょう。
例えば、料理レシピの動画配信を手掛ける事業会社なら、それにかかわる仕事がメインとなります。新規事業などを展開するケースもありますが、基本的には、同じサービス・同じメディアに携わり続け、プロダクトやサービスについて深く追求していくスタイルとなります。
そのため、事業領域が自分の好きなことや強みとマッチしていることが大事といえるでしょう。また、ユーザーの反響分析を基にサービス改善なども行うので、ダイレクトな反響を実感しながら仕事の手応えを味わうこともできます。
代理店/制作会社で働く場合
代理店/制作会社は、さまざまなクライアントの依頼を受け、要望を実現していきます。そのため、幅広い業界・分野の案件に携わりながら、多様な経験を積むことができます。クライアントの要望ありきの仕事であり、納期や予算が厳しいケースも少なくはありません。
しかし提案力や進捗管理の能力を磨くことができ、予算感の把握や交渉力のアップなど、独立に役立つノウハウを身に付けることができます。
また、携わった作品や成果物は、そのままポートフォリオ(実績をアピールするための作品集)とできるため、転職や独立の際にも役立つでしょう。
フリーランス/業務委託で働く場合
フリーランスとは、会社や組織に所属せず個人で案件を受注し、収入を得て働く方法です。自分のスキルや特技を活かし、それを個人や企業に提供して安定的に案件を獲得できれば、生計を立てられるでしょう。自分が得意とする案件を選んで仕事ができるメリットがあるほか、働く時間や場所を選ぶことも可能です。
また業務委託とは働き方を指しているわけでなく、企業が外部に任せる契約方法を指します。企業が他の企業やフリーランスなどに、社内で処理しきれない業務や、委託した方が効果を期待できる場合に発注され、成果物を完成させることで報酬が支払われるスタイルです。自身の裁量で業務を進められる場合もあるほか、契約内容次第で時間や働き方に制約があるケースもあります。
未経験からクリエイティブな仕事に就く方法
ここでは、未経験からクリエイティブな仕事に転職したい人が知っておきたいことを紹介します。
未経験でも転職は可能?
デザイナー/クリエイター系の職種は、専門スキルや知識が求められるため、やはり経験者を採用する傾向があります。しかし、未経験でも美術系の大学や専門学校などで学んだ経験がある人や、作品づくりの実績がある人の場合は、採用される可能性があるでしょう。
全くの未経験者の場合は、ディレクター系の職種の方が転職できる可能性があります。マネジメント能力や調整力を発揮できることが大事なので、金融機関の営業職からディレクター職に転職した事例もあります。
コミュニケーション・スキルに長けている人なら、これまでの実績を上手にアピールすればチャンスをつかむことができるでしょう。
専門スキルの資格は必要?
クリエイティブな仕事では、専門スキルの資格などは重視されない傾向があります。特に、デザイナーやクリエイターなどの職種では、「アウトプットがすべて」とするケースが多いので、資格を取るより、自分の作品を作ることに注力した方がいいでしょう。
未経験から転職するための方法は?
未経験者がクリエイティブな仕事に転職する場合は、その領域について学ぶ努力をしていることが大事です。やりたいことや、なりたい自分に近づこうという努力をしていなければ、「ただ憧れているだけ」と判断されてしまうでしょう。
また、転職活動をする際には、職務経歴書に「努力している事柄」についてしっかりと書くことも重要です。プライベートで頑張っていることを職務経歴書に書かない人もいますが、仕事に活かせる内容はどんどんアピールしましょう。履歴書の志望動機や自己PRでは、なぜその職種を目指したのか、そのためにどんな努力をしているのか、転職後にどんなことがやりたいのかまで書き、自分の本気度を伝えるように意識しましょう。
「何を書けばいいのかわからない」という場合は、転職エージェントに相談することをお勧めします。職務経歴書や履歴書に書く内容はもちろん、面接でよりアピールする方法などのアドバイスをもらうことができるでしょう。
デザイナー/クリエイター系を目指す人がやるべきことは?
フォトショップやイラストレーター、動画編集ソフト、プログラミング言語など、目指す職種に必要なツールや知識を学ぶことから始めましょう。その上で、実際に自分の作品を制作することが大事です。自分の作品を集めたポートフォリオを作れば、現状でどの程度のスキルがあるのかを判断してもらいやすくなりますし、自分のセンスや本気度をアピールすることができます。
働きながら専門学校で学ぶこともお勧め
専門学校では、確かなスキルや知識を効率的に習得できます。また、仕事と勉強を両立した努力をアピールすれば、採用担当者にも大きく評価されるでしょう。
ディレクター系の職種を目指す人がやるべきことは?
目指す職種の仕事内容を理解し、そこに必要な知識を学びましょう。例えば、デザイナーに指示を出す職種の場合は、使用するツールなどの基礎知識は身に付けておくことをおすすめします。
「自分で学ぶ努力をしていること」を事実として提示できれば、本気度を伝えることができます。またデザイナーやクリエイターと違い、作品としての実績を提示できないため、より説得力ある志望動機や自己PRを語ることが非常に重要です。
特にweb系の職種の場合は、ITやデジタル系のツールが身近な「デジタル・ネイティブ世代」がライバルとなる可能性があります。2010年ころから現在までの約10年間に、IT接続環境やスマートフォンが急速に普及し、生活に根付きました。その間に学生時代を過ごした人がこれに当たるでしょう。
趣味でプログラミングや動画配信を行うなどの実績を持っているケースも多いため、彼らに負けないアピールをすることが大事です。
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クリエイティブな仕事に向いている人
「クリエイティブな仕事に向いている人」の要素を紹介します。自分に当てはまるかどうか考えてみましょう。
アンテナ感度が高く、自分を磨ける
新しいものを探し、常にアンテナを張っている人に向いています。クリエイティブな仕事に就いている人の多くは、自分の仕事とは関係のない分野にも興味を持ち、日頃からさまざまなアートや作品、制作物に触れ、多くを吸収しています。新しいものを生み出すためには、自らのセンスを磨き、アップデートし続けていく力が大事です。
相手の考えを汲み取る力がある
クリエイティブな仕事に対し、「自分の発想のままに、自由に仕事ができる」というイメージを持つ人は少なくありません。
しかし、実際の仕事では、企業や顧客がやりたいことを具現化していくことが前提となります。相手の「こうしたい」「こんなものを実現したい」という思いをいかに汲み取るかが大事であり、要求に応えていくためにいろんな選択肢を提案できることが重要です。クリエイティブな仕事では、相手とコミュニケーションできる力も必須といえるでしょう。
調整力やスケジュール管理能力など、ビジネス力がある
クリエイティブな仕事に憧れている人は、「モノづくり」の華やかな側面のみを見ているケースがよくあります。
実際には地道な部分も多く、一緒に案件に取り組む関係者との調整作業も発生しますし、納期を守るためのスケジュール管理も必要です。つまり、一般的なビジネス力は必須となるのです。特に、ディレクターや制作などの職種は、社内外のクリエイターやエンジニアを取りまとめ、作業の進捗管理をすることが主務となります。
また、クライアントや営業などの関係部署と予算や納期の調整をすることもあるので、プロジェクト全体をマネジメントする能力があることが重要といえるでしょう。
アイデアをどんどん形にする行動力がある
クリエイティブな仕事では、アイデアをどんどん形にしていく行動力が大事です。フットワーク軽く、チャレンジを続けていく中で、新たなものを生み出すことができるでしょう。
また、デザイナーやクリエイターは、いいものを作るための努力を続けていける力も重要です。誰かに頼まれなくても、たくさんのデッサンを描いたり、新たな手法を取り入れたり、個人で作品を作ったりすることができる人には向いているといえるでしょう。
クリエイティブな仕事の魅力とキャリアパス
続いてクリエイティブな仕事の魅力とキャリアパスについて紹介します。
クリエイティブな仕事の魅力とは?
自分の作ったものや携わった作品が形となり、多くの人に見てもらうことができます。web系の場合は広く発信されるため、全世界の人が見てくれる可能性もあり、社会に大きなインパクトを与える喜びを味わえるでしょう。
一方、紙や商品などの制作物の場合は、形として残るため、ものづくりに携わる実感を強く味わえます。また、動画やゲーム、CM、番組などを制作する場合は、人の心に残るケースも多く、そこにやりがいを感じられるでしょう。
一言で「クリエイティブな仕事」と言っても、その定義は広く、業界・職種・企業によって、扱う領域も発信する相手も違ってきます。自分が何を作りたいのか、どんなことをしたいのかを見定めた上で、「どの道に進めばそれが実現できるのか」を考えることが大切です。
クリエイティブな仕事のキャリアパスは?
経験を積むうちに「担当する案件や仕事の幅が広がる」「扱う案件の予算や規模が大きくなる」など、ステップアップをすることが多いでしょう。
クリエイティブ・ディレクターやプロデューサーなど、全体を任される立場となるケースや、自分の仕事を手掛けながら若手を育成していくマネージャーとして活躍するケースもあります。また実績を基に、より自分のやりたいことができる企業に転職する場合などがあります。
フリーランスとして独立することも可能です。ただし企業で働くのとは違い、営業が仕事を取ってきてくれるわけではないので、自ら人脈を広げ、営業力を発揮していくことが必要です。また経理や事務処理などの雑務も自分で行うことになります。独立しても続けていくことができないケースは多いため、リスクの高さも踏まえて考えましょう。
クリエイティブな仕事の注意ポイント
クリエイティブな仕事は、特技や好きなことを仕事にできるイメージがありますが、注意しておきたいポイントもあります。
拘束時間が長く体力が要る可能性もある
拘束時間が長くても耐えうる体力を保つことも、注意するポイントといえます。
単純作業ではないため、頭をフル回転させて創作する力が必要となります。成果物の完成までやり遂げる気力はもちろん、納期が迫っているときには残業など、ハードな働き方となるケースもあるでしょう。
スキルアップのための勉強が多い
場合によっては終業後や休日などにも、自らスキルアップのために勉強しようとする意欲も必要となります。クライアントの要望の応えるためには、流行を追いかけ、常にアンテナを張っていることが大事になるでしょう。そのため知識や情報の幅を広げようとすれば、自然と勉強することも増えてきます。
期日に追われる
限られた時間の中で、クライアントに求められた成果物を納品するために、期日に追われることも少なくないでしょう。納期に余裕のないスケジュールの場合、人によっては体力的にもメンタル的にも、しんどいと感じるかもしれません。柔軟に対応し、スケジュール管理ができる能力が必要となるでしょう。
クリエイティブな仕事で適職を探したい方は転職エージェントに相談するのもおすすめ
クリエイティブな仕事は、人によっては辛いと感じる一面もあるかもしれません。しかし自分の想いやアイデアを形にできる、魅力的な仕事でもあります。
未経験からクリエイティブな仕事を目指したいと考えているのであれば、転職エージェントに相談してみるのもおすすめです。これまでの仕事で得てきたスキルの棚卸しから、自分に合ったクリエイティブな職種について、キャリアアドバイザーが一緒に考えてくれるでしょう。
まずは登録して相談してみるだけでも、漠然とした「やってみたい」という気持ちから一歩を踏み出すきっかけになるかもしれません。
リクルート(旧:リクルートキャリア)の転職エージェントサービス「リクルートエージェント」のキャリアアドバイザーとして、主にクリエイティブ領域の支援を担当。
記事更新日:2023年02月24日
記事更新日:2024年08月05日