転職活動を始めると、必ず伝えることになる「志望動機」。
まずは、仕事の内容や適性を理解してから、自分の経験を振り返って、志望動機を作成することが、転職活動の成功へのポイントです。
製造業を志望する場合、どのように整理し、作成すればいいのでしょうか。
志望動機の書き方のポイントをリクルートエージェントのキャリアアドバイザーに伺いました。
製造業の仕事内容を理解しよう
製造業とは、材料・部品を加工したり、組み立てたりすることで、製品を作り、販売する企業・業種を指します。
製造業には、自動車や家電を作る企業もあれば、それらを作るための機械のネジを作る企業もあります。また、スーパーに並んでいる加工食品・飲料、店舗に並ぶ化粧品、衣料品など、日常見かける様々な製品を作る企業もありと、「ものづくり」に関わる企業はすべて製造業に当てはまります。
担当パートによって仕事内容が異なる
製造業の仕事は、ものづくりの工程によって、次のように分かれています。
・商品開発:自社製品を販売する市場を分析し、事業性のある製品企画を生み出す仕事です。
・研究開発:まだ世の中にない技術・製品を生み出すために、専門分野を研究し、開発する仕事です。ゼロからイチを生み出す「基礎研究」と、基礎研究の結果をもとに新たな価値を創り出す「応用研究」があります。
・設計・開発:設計は、既存の技術を具現化し、形にする仕事で、コストを考慮して一定の品質を保つことが重視されます。開発は、設計が作った設計図を元に、実際の製品を生み出す仕事です。低コストで高品質な製品を作るための技術改良を担う場合もあります。
・生産技術・製造技術:製品を製造するための生産設備・生産ラインを整える仕事です。高品質な製品を低コスト・短期間で作れるような生産体制を整えるために、企画・プロジェクトコントロールをしていきます。
・製造:製品の生産・製造のために、工場で機械が正しく稼働するよう監視、メンテナンスするほか、材料の機械投入や検品、検査、組立てなどの作業を行う仕事です。
・品質管理:製品の品質の向上や管理のため、全体システムの整備、生産現場の環境づくり、設計への課題共有を担う仕事です。ときには顧客と製造各部門との橋渡しとなり、一定の品質を維持することに力を注ぎます。
・営業、販売:自社製品の魅力をマーケットや顧客へ伝え、購入までのサポートをする仕事です。
製造業に求められる適性を理解しよう
関わる工程により、求められる適性は異なりますが、共通して言えることは、「ものづくり」に興味があることです。また、企業のものづくりは一人ではできないため、ほかのメンバーとのコミュニケーション力も必要です。
職種ごとに求められる適性については、次のようになります。
商品開発
世の中の動きを敏感に把握し、発想力豊かにアイデアをカタチにしていく力が求められます。事業の方向性を理解しながら、社内外を問わず、積極的にコミュニケーションを取り、連携して最後までやり遂げることが必要です。
研究開発
基礎研究は、すぐに成果が出ない中でも、忍耐強く突き詰める力が必要なため、日々の研究への努力が苦にならない人に向いています。応用研究は、すでにある研究結果を他に応用できないかを研究・開発するため、成果を出すまでの期日が決まっていることが多く、スピーディな対応が求められます。研究に加え、社会のニーズを察知して、社会に貢献できるものを開発したいという方に向いています。
設計・開発
一つの製品の設計・開発をするために、プロジェクトチームを作り、担当を分担するため、自分の仕事がプロジェクト全体に関わると理解し、適切な情報共有やコミュニケーションを取ることが求められます。特にBtoB向け製品の場合、設計段階から顧客と共に打合せを行うことも多く、より綿密で正確な対応力が必要です。また、多くの顧客や部門と関わる工程なので、プロジェクト全体を把握したスケジュール管理能力も大切です。
生産技術・製造技術
生産性を上げる方法について、現場の声やデータを集め、生産性を高めていく重要な仕事です。地道でも目標に対してコツコツとやり遂げられる人が向いています。生産性向上を目標に企画・研究・設計・開発などの部門を横断して調整が発生するため、様々な立場の人と柔軟にコミュニケーションを取る力が求められます。
製造
製造過程の製品が、図面に沿っているかのチェックや機械の動作確認など、決められたオペレーションについて、細かい点まで目を通す几帳面さを持ち、地味なことでも集中力を持続させ、真面目にコツコツと続けられる方が向いています。また、冷静に判断できる能力も求められます。
品質管理
製品に不良品が出た場合に、その原因を探り、解決策を見出していく仕事が多いため、物事を突き詰めて考える方に向いています。また、品質データを調査して、改善のために実験を繰り返していく作業においては、数字に強く、コツコツと同じ作業でも積み重ねられる力が求められます。製品の品質を保つために、製造現場を観察し、小さな変化に気づいていくことが大切なため、普段から周囲の変化に気づき、細かい点に気が回る「縁の下の力持ち」タイプの方は力を発揮しやすいでしょう。
営業、販売
顧客にとっては企業・製品の顔です。製品の購入検討をしている顧客のメリットを考えて、その魅力を伝えられることが大切です。やむを得ない事情で失注したり、販売がうまくいかないことも当然あるため、前向きに次のチャンスにつなげていけるタイプの方が向いています。
製造業の志望動機の書き方のコツ
一般的に志望動機を考える際には、次の3つのポイントを抑える必要があります。
1.業界について
2.会社について
3.職種について
どのポイントも、自分の過去の経験との接点を見つけ、「〇〇の経験をしてきたので、△△をしていきたい」と、志望理由につなげていきます。
製造業を志望する理由を整理しよう
まず、製造業を志望している理由を整理し、その中でなぜその業界(食品・自動車・家電等)を志望するのか、過去の経験と紐づけて考えます。次のような視点でみてみるとよいでしょう。
ほかの業界ではなく「製造業」を志望している理由を、業界分析をして明確にしておきましょう。「人の役に立つものを作りたい」など、他業界でも当てはまるものではなく、製造業の中の、この業界だからこそ志望していると整理しておくと「意欲」を伝えられるでしょう。
その企業を志望する理由を整理しよう
企業の志望理由は、先に挙げた「意欲」を、さらに企業レベルで整理していきます。企業の理念や戦略、方針に共感していることを伝えるために、業界や企業に関するニュースを検索したり、企業のホームページを読み込んだりして、共感できる点を探してみてください。
「3C分析」を使って整理してもいいでしょう。「3C」とは、次の3つを指します。
Company:自社
Customer:顧客
Competitor:競合
■Company:自社
求人票にある基本情報のほか、企業理念、戦略、方針、製品の強みについて確認しましょう。
■Customer:顧客
顧客の目線で、その企業、商品、サービスのいいところ、悪いところを自分なりに列挙してみましょう。BtoCの企業であれば、その製品を使ってみるのは必須です。実際に使ってみた印象、感想を交えながら共感ポイントを伝えると、リアリティが増します。BtoBの会社であっても、例えば、製造している部品が車に使われている、食品の容器に使われているなど、身近な商品・サービスにつながっているケースが大半です。「体験」は他にはない、オンリーワンの情報ですから、積極的に取り入れましょう。
■Competitor:競合
志望する業界の1位、2位の企業HPに目を通してみましょう。応募企業とはまた違った理念や戦略、売り上げ構造などがわかり、応募企業の立ち位置や経営戦略・経営課題などが見えてきます。応募企業の理念、大切にしていることが競合他社とどう違うかを見ることで、その会社の社風、目指す方向性もつかめます。
製造業の志望動機例文
志望動機は、今までの自身の経験をどのように活かし、貢献できるかを伝えることがポイントです。例文を参考に、より自分に合った志望動機へカスタマイズしてみましょう。
製造業経験者の志望動機例文
私は自動車部品メーカーの設計部門で5年間働いてまいりました。現在は技術改良時の詳細設計を担当しておりますが、より多くの機械図面の設計に関わり、技術者としての幅を広げたいと考えております。貴社では、輸送機器や生産設備等の設計を構想設計から製図作成まで担っておられると伺い、今までの設計経験を活かしながら、多様な機械設計に携われるのではないかと、強く志望しております。
貴社は業界誌や各種メディアで、海外や大手企業からの信頼が厚く、業界シェアが常に上位であると拝見しました。その理由は独自の技術と技術力が高い社員が多数いること、さらにその社員がチームワークを発揮できるような、社歴や年齢に関係のない風通しの良い自由闊達な組織作りをされていることにあると認識しており、そうした技術力の高さや社風に共感し興味を持っております。図面の読み方など、基本的な知識は習得しておりますが、構想設計から担当した経験がないため、現在同様、今後も積極的に先輩方を見習い、自主的に学んでまいります。何卒よろしくお願いいたします。
「製造業経験者」の志望動機ポイント
まず、設計者として担当してきた業務内容を書き出し、現状を踏まえて転職で何を実現したいのかを伝えます。次に、募集ポジションの業務内容を捉えた上で、設計の仕事で目指したい方向性を伝えます。また、企業のビジョンや事業内容、組織運営等、共感する点について、自分の経験や志向と接点があることを明確にすることもポイントです。設計者として未熟な点について具体的にし、積極的に学ぶ姿勢を示し、志望意欲をまとめていきます。
製造業未経験者の志望動機例文【小売業・販売員から製造業・商品企画へ】
私は、家電量販店にて、白物家電の担当販売員として5年間勤めてまいりました。お客様にあった商品を購入いただくため、各メーカーの傾向、製品特徴や企業ビジョンを学び、ご紹介してきたことで、売り場担当者の中でトップの成績を維持してまいりました。この経験を活かして、今後は貴社の商品企画・マーケティングに携わり、消費者視点の商品開発に携わりたいと考えております。
特に、私がお客様にご紹介する商品の中で、最終的に多くの方が購入されるのが貴社の商品でした。自社で企画した商品を、良質かつ低価格で提供できる事業方針と体制づくりに大変共感しており、私もその一員として、海外まで視野に入れたワンストップのものづくりに貢献していきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
「製造業未経験者」の志望動機ポイント
まず、自分が経験した仕事の中で、製造業の商品企画と接点がある部分を示し、具体的な実績を伝えます。そこでは販売のみにしか携われなかったものの、今後は商品企画として、製造業界で働いていきたいと、この会社で実現したいことを明確にします。さらに、過去の経験と照らし合わせて、商品の価値と事業の独自性への共感を入れることで、志望意欲を伝えています。
製造業の志望動機NG例
私は、5年間にわたり旅行代理店のツアーコンダクターを勤めてまいりました。中学校・高校の修学旅行を中心に、海外団体旅行のコーディネートを担当し、英語で現地とコミュニケーションをとりながら、安心安全のツアーを実施してまいりました。その英語実務経験を活かし、海外拠点を増やしている貴社の新規事業担当として、低コスト・高品質のものづくりに貢献したいと存じます。
特に貴社の製品は海外でも人気が高く、今後の海外事業の展開に興味を持っています。旅行業から家電メーカーへと畑違いではありますが、様々なお客様への対応経験、海外との調整経験を活かしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
製造業志望動機NG例の改善ポイント
今の経験と応募企業の事業の接点が「海外」しか伝わらず、具体的にどんな経験を次の仕事に活かしたいのか、今後何をやっていきたいのかが見えてきません。新規事業企画ポジションへの応募の場合、自らリサーチし、仮説を立てて実行し、検証していくことが必要ですが、実際にそうした取り組みを行ってきたことが伝わっていません。
新しい商品を提案し、実績を出した経験など、具体的な成果が必要です。また、企業の志望動機についても、一般的な評価にしか触れておらず、自分の体験とつながっていないため、誰でも同じことが言えそうです。
BtoCであれば商品を実際に使い(BtoBではその先に生み出される商品を体験する)、競合他社製品と比較しながら、商品の持つ価値について、自分の言葉で伝えられるように整理しましょう。
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