転職活動の面接では、冒頭で「自己紹介」を求められることがあります。第一印象を左右する可能性があるため、しっかり準備しておきたいものです。企業が自己紹介を求める理由、自己紹介で伝える内容、意識するべきポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。例文もご紹介しますので参考にしてみてください。
目次
面接担当者が自己紹介を求める理由とは?
面接のスタート時に自己紹介を求める理由は、企業によってさまざまですが、主には次のような意図が考えられます。
面接でのアイスブレイク、会話のきっかけを作るため
面接の冒頭は緊張状態にあるため、「アイスブレイク」的に場の空気を和ませ、スムーズに対話に入っていくきっかけとして自己紹介の時間が設けられることもあります。
応募者のコミュニケーション能力を確認するため
自己紹介を通じ、「簡潔にわかりやすく伝える力」をはじめ、表情や話し方なども含めた「コミュニケーション能力」を見ていることもあります。
職務経歴の内容確認をするため
応募者のこれまでの経験は職務経歴書に記載されていますが、その中でも本人が「強み」と捉えている経験・スキルを確認しようとしているケースもあります。
その後の面接質問に活用するため
応募者の経験・スキル・志望動機などを大まかに把握し、これからの面接で掘り下げて聞くポイントを判断しようとしている採用担当者もいるようです。
面接の自己紹介で伝える内容
自己紹介を求められた場合、「氏名」「簡単な経歴」「現職(前職)の仕事内容」「志望理由」「締めの言葉」……という順番で話すと伝わりやすいでしょう。具体的に話す内容をご紹介します。
氏名
まずは「○○○○と申します」と氏名を名乗り、「本日は面接の機会を設けていただき、ありがとうございます」など、謝意を述べます。
簡単な経歴
これまでの経歴を簡潔に伝えます。卒業学校名・卒業年から始まり、新卒入社した企業名・所属部署・担当職務、その後、どのような部署・職種を経験してきたのか、大まかな流れを簡潔に伝えます。
転職経験が複数回ある場合は、「○○大学を◯年に卒業後、3社で計○年間、一貫して○○職を務めてきました」といったようにまとめるといいでしょう。
現職の仕事内容(離職している場合は前職)
現在(直近)の在籍企業・所属部署・担当職務について説明します。成功体験や強みとするスキルなど、アピールポイントにも簡潔に触れるといいでしょう。
志望した理由
応募企業を志望した理由を伝えます。転職によって実現したいこと、これから目指すキャリアなどを伝え、それを叶えられるのがその企業であることを伝えます。
締めの言葉
「本日はどうぞよろしくお願いいたします」と締めくくります。
面接で自己紹介するときのポイント
自己紹介をするとき、意識しておきたいポイントをご紹介します。
1分程度で簡潔に語る
自己紹介は1分程度で簡潔に語ることが重要です。多くの内容を長々と話してしまうと、「伝えたいことを整理できていない」「聞き手への配慮がない」と、マイナス印象を持たれかねません。
逆に、名前・所属企業名・職種のみを伝えて終わると、「アピールすることがないのか」「入社意欲が高くないのか」と捉えられる恐れがあるでしょう。
職務経歴や実績の要点を箇条書きでまとめておく
職務経歴を伝える際には、そのまま所属部署と職種経験を並べるだけでなく、応募企業の採用ポジションの業務と接点がある内容を強調して伝えるといいでしょう。アピールしたい経験・実績の要点を整理し、箇条書きにしてみると、簡潔に話しやすくなります。
話し方や表情など、第一印象にも注意を
第一印象で好感を持ってもらうためには、ハキハキと話し、笑顔などの表情にも注意しましょう。また、自己紹介を丸暗記すると、抑揚のない話し方になることもあり、「伝える能力がない」と判断されかねないため注意が必要です。
面接の本番で頭が真っ白になってしまったら?
準備をしっかりしていても、面接中に頭が真っ白になることもあるでしょう。そのようなときは、例えば次の2つを実践してみてはいかがでしょうか。
1.深呼吸をして平静を保つ
2.聞かれた質問を復唱し、内容を落ち着いて理解する
これらを実践すると心の平静を取り戻し、考えをまとめやすくなるかもしれません。
また、あえて「今、頭が真っ白になってしまいました」と面接担当者に正直に伝えてみるのもよいでしょう。ちょっとした失敗が逆に場を和ませたり、その場を仕切り直せたりするので、気持ちもリセットされる効果も期待できます。
自己紹介で避けたい注意点
自己紹介をするときの注意点をお伝えします。次のような状態に陥ることを避けるように心がけてみてください。
採用ポジションに関係がない話を長々とする
これまでの経歴を話す際、時系列ですべて伝えようとすると、話が長くなりすぎてしまいかねません。応募している職種・ポジションに関連する経験・スキルにフォーカスしてまとめるといいでしょう。
盛り込みすぎて、要点がわかりにくい
「アピールしなければ」という思いから、経験や実績をあれもこれも盛り込んで話してしまうことがあります。それでは面接担当者は要点をつかめず、印象に残りにくくなるかもしれません。
事前に企業研究を行い、その企業が求める人材像をつかんでおきましょう。企業側のニーズを踏まえて優先して伝えることを決め、簡潔に話すよう意識してみましょう。
ネガティブな表現が多い
志望動機を伝える際、そもそも転職を決意した理由から話し始めると、現職(前職)への不満や批判を口にしてしまうこともあり、ネガティブな印象を与えかねません。「○○が不満だった」ではなく「これから○○がしたい」と、ポジティブな表現に転換して伝えるようにしましょう。
【例文】面接でよくある自己紹介の質問例とポイント
面接担当者からの「自己紹介をしてください」という投げかけには、いくつかのバリエーションがあります。パターンごとに、答え方のポイント・例文をご紹介します。
「簡単に自己紹介してください」
「簡単に」と言われた場合、特に手短に要点を押さえて話します。過去の経歴について詳しく説明する必要はなく、基本情報と自分の強みを1分程度にまとめて伝えましょう。
- 回答例
「○○と申します。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。私は○○大学を○年に卒業後、○年間、法人営業を経験してまいりました。直近は○○社において○○業界を対象とした○○サービスの営業を務めており、新規顧客開拓や他部署と連携しての組織営業を強みとしています。御社の○○サービスの拡販に私の経験を活かせると考え、応募いたしました。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
「自己紹介と自己PRをしてください」
簡潔な自己紹介に追加して自己PRを話します。 応募企業が求めているものと自身の経験・スキルがマッチしていること、自身の強みを活かして貢献できることをアピールしましょう。
- 回答例
「○○と申します。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。私は○○大学を○年に卒業後、○○社の営業部門で5年間○○サービスの法人営業を務め、○年に○○社に転職しました。直近は○○業界を対象とした○○サービスの営業を務めています。私が強みとするのは、新規顧客開拓や、他部署と連携しての組織営業です。御社が今後、中堅~大手企業に向けて○○サービスの拡販を進めていかれるにあたり、私の経験が活かせると考えています。また、現職ではチームリーダーとしてチームマネジメントも手がけており、若手メンバーが自走できるようになる育成に注力しています。御社は組織を拡大していく方針とお見受けしますので、メンバー育成やマネジメントにおいても貢献したいと思います」
「自己紹介と志望動機を教えてください」
簡潔な自己紹介に追加して、志望動機を話します。応募企業に対して魅力を感じているポイントに加え、自身のスキルをどのように活かしたいのかを伝えましょう。
- 回答例
「○○と申します。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。私は○○大学を○年に卒業後、○○社の営業部門で5年間○○サービスの法人営業を務め、○年に○○社に転職しました。直近は○○業界を対象とした○○サービスの営業を務めており、新規顧客開拓を得意としています。現職ではお客様の課題をお聞きしたとき、自社のサービスだけでは解決できないことをもどかしく感じています。その点、御社はサービスラインナップが多彩で、他部署と連携しながら顧客課題をトータルサポートできるところに魅力を感じました。また、御社が新たにリリースされた○○サービスは○○業界でもニーズがあると思いますので、私が培った業界の知見とネットワークを活かして拡販に貢献したいと考えました」
【例文】面接で好印象を与える自己紹介例を紹介
営業職・事務職・エンジニア職・転職回数が多い人・未経験者の自己紹介の例文をご紹介します。
営業職の自己紹介例文
○○大学を◯年に卒業後、2社に在籍し、合計約6年間、法人営業のキャリアを歩んできております。1社目の○○社では、従業員500名規模の中堅企業に対するIT商材の営業を行い、営業約200名中、上位10%の成績を出しておりました。現職の○○社では、○○社や◯◯社などの大手企業を中心に、同じくIT商材の営業を行い、昨年は約500名の営業の中で成績上位5%の営業に与えられる社長賞を獲得いたしました。中堅から大手向けの法人営業、特に既存顧客への中長期の深耕営業を得意としており、その経験を御社の法人営業でも活かしていきたいと考えております。
【ポイント】
営業として扱ってきた商材・対象顧客層・営業スタイル・業績・強みを盛り込んで伝えましょう。
事務職の自己紹介例文
◯◯大学を卒業後、新卒で○年に○○社へ入社し、一貫して事務業務の経験を積んできております。企業規模が100名規模と大きくはないため、特定の業務にとどまらず、営業事務、経理事務、総務事務、人事アシスタントと、部署横断での事務業務経験を積んでおります。柔軟な対応力や早期の業務キャッチアップ、ミスのない業務遂行に強みがあると考えております。現職で培った幅広い部門での事務業務経験を活用し、成長段階にある御社の事務部門の組織強化に貢献ができるのではないかと考え、応募いたしました。
【ポイント】
事務職としてどのような分野・業務を手がけてきたかを具体的に話すとともに、組織への貢献意欲を示しましょう。
エンジニア職の自己紹介例文
学生時代からインターンとしてIT企業の○○社でWeb開発業務を1年ほど行い、◯◯大学を○年に卒業後、新卒で○○社へ入社いたしました。現職では、会員500万人規模の自社Webサービスで、サーバサイド開発を主に担当し、必要に応じてフロントエンド業務も担当しております。主に○○、○○などの言語や○○などの領域に携わっておりますが、プライベートを含めて他言語も使っており、新しい技術への適応は比較的得意と考えております。
今回、御社が新たにWebサービスを開発・立ち上げ中と伺い、現職での経験を活かしながら、サービスの立ち上げにも関わることで自身も成長していきたいと考え、応募いたしました。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
【ポイント】
手がけてきたプロダクトやサービス、言語・環境などのテクニカルスキルを伝えます。新しい知識をキャッチアップしていく意欲も伝えるとプラス評価につながりやすいでしょう。
転職回数が多い人の自己紹介例文
◯◯大学を○年に卒業後、新卒で入社した家電量販店と2社目の飲食店で接客・販売職を合計で約○年経験いたしました。3社目となる前職の生命保険会社では営業として○年間勤務しており、3社を通じて一貫して個人のお客様への提案力を磨いてまいりました。前職では保険の新規成約において所属する支店で営業○名中1位の成績を残すことができました。御社の「お客様が笑顔になる提案を」という理念に強く共感し、応募いたしました。これまで培ったお客様に寄り添って提案を行ってきた経験を活かし、貢献したいと考えております。
【ポイント】
一見するとバラバラの職歴であっても、共通するポイント、一貫して大切にしてきたことを伝えましょう。
未経験者の自己紹介例文
◯◯大学を○年に卒業後、新卒で入社した○○社において、中小企業向け○○サービスの法人営業を経験してきました。お客様の課題解決をお手伝いしたいという思いで課題のヒアリングに力を入れていたのですが、どの企業の経営者も人材の獲得・育成に悩んでいることを知り、人材課題を内部で解決できる「人事」の仕事に興味を持ちました。
御社が募集されている採用担当者としての業務経験はありませんが、営業を通じて養ったコミュニケーション力・プレゼンテーション力、現職での学生向けリクルーターとしての経験が活かせると考えております。
【ポイント】
キャリアチェンジを希望するに至った理由、応募企業の採用ポジションでこれまでの経験がどう活かせるかを伝えましょう。
悩んだら転職エージェントに相談しよう
面接の自己紹介では、面接担当者の興味を引くような経験・スキル、強みを伝えることが大切です。しかし、自身の強みを明確に認識しておかなければ、自己紹介で適切なアピールができないかもしれません。
転職エージェントでは、キャリアの棚卸しや強みの分析などのサポートも受けられることもあります。自身では大したことがないと思っていた経験・スキルが、実は転職市場で高く評価されることに気付くケースもあります。
また、転職エージェントは応募企業が求める人材像、選考で重視するポイントを把握していることもあり、それを踏まえた面接対策のアドバイスも受けられる可能性があります。転職エージェントが持つ情報とサポートサービスをフルに活用してみてはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年09月28日
記事更新日:2024年11月05日 リクルートエージェント編集部