IT通信業界の2021年の転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通したキャリアアドバイザーがレポートします。
「2021年の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。
IT通信業界の2021年転職市場の展望
・全体としては、採用活動は活発。引き続きDX、5G、セキュリティがキーワード。
・今後のIT人材不足に向けて中長期で人材を採用し育成していくことが求められる。
・在宅勤務による面接のしやすさが浸透している。社内SE志向の求職者の志向にも変化。
・今後学び続けられるかどうかが、キャリア形成においてはより一層重要になるだろう。
業界・企業側の動き
・新型コロナウイルス禍の求人影響は下期に回復基調に。
・2021年も引き合いが強いのは、DX関連職種、5G案件関連、ITセキュリティ・リスク関連。
・業務システムもアジャイル開発に移行し始め、IT領域 でもスクラムマスターが重宝され始めている。
・未経験求人も底堅く募集がある。
・エンジニアの育成は業界全体としても急務であり、中長期で今育成に取り組めているかで将来差がつくだろう。
上半期は新型コロナウイルス禍の影響もありましたが、求人全体としては8月~9月あたりから回復が顕著になっており、採用は活発です。また特徴的だったのは、行政のIT導入や業務改革、またマイナポイントに代表されるような取り組みを進める流れから官公庁案件が増えてきており、求人にも表れている点です。引き続き、DX関連、通信では5G関連、テレワーク・オンラインサービス増加に伴うインフラ系のエンジニア需要が高い傾向にあります。
またITセキュリティ・リスクに関する知見は2021年も引き続き求められるでしょう。セキュリティについては、今までは通信のハッキングに対応するものでしたが、これからはアプリケーション設計の段階から脆弱性がないか、本人認証など強固に守られる設計になっているか、といったことを考えられる人材が求められるようになるでしょう。
未経験求人については、足元では徐々に回復しており、2019年度の水準までは戻っていないものの、構造的な人材不足が解消されない限り需要はなくならないでしょう。
大手のSIer、独立系SIer、通信、ITコンサル、引き続き 幅広く募集はしています。 新型コロナウイルス禍で急速に広まったWeb面接については、対面への揺り戻しはほとんど起きていない状況です。
各社フルリモートでの採用ができるようになってきており、一部求職者の要望に合わせ、対面を取り入れるというスタンスをとる企業が多くなっています。
どちらかというと、入社後に リモートで入社後活躍(オンボーディング)させていくことに課題は移行しています。リモート環境になったことで、PMに求められる能力も少しずつ変化が出るかもしれません。
一部の企業では「オンラインでもしっかりとコミュニケーションを取り、進捗管理ができる」ことを重視しています。
また、新しいビジネスを作っていくためにさまざまなステークホルダーと協働し、場合によってアライアンスを組む動きも求められるようになってきています。
また業界として今後大きな課題になりそうなのは「育成」です。2025年の崖までにどれだけのIT人材を増やせるのかが鍵になるでしょう。
ここから3~5年後を見据えて未経験者の育成に取り組み始めた企業もいます。中途採用では採用が困難なデータサイエンティストを社内育成する企業も数は少ないですが出てきています。
この動き出しができているかできていないかで将来の事業運営に差がつきそうです。
求職者側の動き
本格的に在宅勤務が主流になってきており、引き続き面接に参加しやすくなったという声があります。
この状況だからこそ丁寧に比較した上で転職先を決めたいという意向も引き続き高く、応募社数が増加傾向にあります。今までは腰を落ち着けてゆったりと働いていきたいという意向の求職者に人気だった事業会社の社内SEポジションですが、求められることに変化があり、応募者の志向も変わってきています。具体的には、社内SEに求められることが「社内システムの安定稼働」から「新しい業務効率化案やサービスを提案すること」へ変わってきており、自社内で新しいことに挑戦していきたい方や、どちらかというと変化に前向きな方がフィットするようになってきています。
一方で、40代後半~50代の社内SE経験の方が転職活動を始める動きがあります。
1社でのご経験が長い方が多く、しっかりと資格を取るなど学び続けているか、技術を磨いているかが重要になっており、社外でも通用する力があることをアピールする必要があります。
また、一部大手企業では、優秀な人材は社内でIT人材として育てていくという動きがあり、それだけ優秀な人材を採用するためには魅力的な環境・条件・理念などを今以上に訴求していく必要があり、採用の難易度が上がっていくでしょう。企業側の動きに連動し、2021年に向けてさらに複数の企業を経験している求職者が一定求められていくでしょう。
それに伴い、求職者側も今後、より社歴に関係なく選択肢は広がっていくと考えられます。
背景にはDXを推進していく中で1業種に留まらない知識が求められたり、大手企業とベンチャー企業の知見を両方持っていることで双方を橋渡しするポジションを求められたりするためです。
複数の企業でしっかりと経験を積んでいる方にとってはチャンスと言えます。事業会社もIT分野を内製化していく流れにおいては、全体的にはエンジニアの需要は今後も高いと考えられますが、技術のコモディティ化のスピードは速くなってきており、学び続けられているかどうかが、今後非常に大事になってくるでしょう。
出所:リクルート『リクルートエージェント』転職決定者数の分析
出所:リクルート『リクルートエージェント』転職決定者数の分析
転職活動は情報収集から
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※お申込み時にキャリアアドバイザーの指定はできません。予めご了承ください。
転職市場動向「2021年の展望」|全15業界の新型コロナウイルス禍の動向を解説。
福井 耕造
広告会社を経て、リクルートエージェント(現:リクルート)に入社。製造業系領域を経て、IT・コンサルティング領域の企業側アドバイザーを担当。入社から一貫して企業側アドバイザーを担っており、担当クライアントも製造業界、IT/コンサルティング業界の大手~ベンチャー系企業まで幅広く担当。
丹野 俊彦
銀行系証券会社で営業、人事採用担当を経験後、リクルート(旧:リクルートキャリア)に入社。IT/Web系人材の転職支援、企業の採用支援を中心に、面接力向上セミナーの講師や拠点長など幅広く担当。現在はハイキャリア専門のコンサルタントとして事業会社IT領域の採用支援とITコンサルタントやエンジニアの転職支援を担当。