面接で聞かれることが多い「長所」についての質問。改めて考えると、何を話したらいいのか迷う人も多いようです。
この記事では、キャリア形成のプロフェッショナルである組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に、面接で伝える性格の長所の考え方・探し方・上手に伝えるポイントについてお伺いしました。
目次
転職活動の面接や履歴書で長所を聞かれる理由
転職活動の面接では、長所について質問されることが多くあります。「強みは何ですか?」「周囲からどんな人だと言われますか?」なども「自分の長所」を聞くためのものといえるでしょう。企業が長所を聞く理由は2つあります。
客観的に自己分析できているか確認したい
企業は長所についての質問をすることで、自己理解する力があるかどうかを見ています。自分自身の性格や人柄の特徴を客観的に捉えられているか、どんな環境やコミュニケーション方法であれば力を発揮できると理解しているのか、またそれが実際と一致しているのかを見ています。
仕事を進める上では、他者とコミュニケーションを取ることが必要不可欠です。自分の特性を客観的に理解していれば、周囲とも調和しやすく、仕事は円滑に進んでいきます。入社後に活躍できる人材かどうかを判断する際、自己理解の力があることは重要なポイントなのです。
人柄が企業と合っているか確認したい
企業は、応募者の人柄の特徴を捉えて、企業のカルチャーに合うかどうかを見ています。企業ごとに大事にしている価値観、風土、働き方があるため、そこに馴染むことができる人材であるかがポイントです。
例えば、自主性を大事にしている企業の場合、「コツコツと一生懸命に取り組みます」「何事も慎重で丁寧です」などの長所をアピールすると、指示されたことしかできず自律的に動けないかもしれない、慎重に考えすぎて柔軟な発想につながらないかもしれない、などの懸念を持たれることがあります。応募者の性格の長所を確認することで、自社のカルチャーとマッチし、力を発揮してくれるか、同僚になる人たちとの相性が合うかを判断しているのです。
転職活動でアピールしやすい長所一覧
転職の面接で長所をアピールする場合、どんな表現にすればいいのか悩む求職者も多いのではないでしょうか。
日常生活での性格の長所が「笑顔を絶やさず明るいこと」だった場合、仕事に活かす長所は、「周囲とのコミュニケーションを円滑にするため、笑顔で接することを心掛けている点」となります。仕事で役立つ長所をアピールするためには、日常生活での長所をビジネスシーンと一致させて読み替えていくといいでしょう。
日常生活での長所を、ビジネス視点に切り替える言い換え例をまとめました。
日常生活での長所 | 性質 | 仕事で役立つ長所 |
冷静 | 注意深い、用心深い、計画的 | 慎重性、計画性 |
現実的 | 実現可能性にこだわる | 現実思考 |
笑顔で明るい | 温かみがある | 親密性 |
落ち着いている | 慌てずクールに行動できる | 冷静沈着 |
素早い | スピード第一で行動できる | 俊敏性 |
粘り強い | 続けていく力が強い | 継続力 |
心が広い | 広く受け入れられる | 受容力 |
親しみやすい | 多様な人とオープンに交流できる | 社交性 |
余裕がある | 焦らずゆったり構えられる | 悠然 |
意欲的 | 高い目標でも奮起できる | 挑戦心 |
ポジティブ | 信じた道を突き進む | 自己信頼 |
空気を読む | 場の雰囲気を感じ取れる | 感受性 |
ノリがいい | 気分が高まる | 高揚性 |
おおらか | 変化を受け入れ対応できる | 柔軟性 |
自分で考える | 主体的に行動できる | 自律的 |
オリジナリティがある | 自分の考えで物事を作り出す | 独創性 |
仕事における長所は、特に対人関係の構築や他者との働き方でうまくいった行動と紐づけておきましょう。エピソードを伝えることで、その人が会社に合うかどうか、イメージしやすくなります。
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【職種別】長所の伝え方例文
どのような長所が効果的なアピールにつながるかは、企業が求める人物像や職種、募集背景によって変わります。ここでは、職種ごとの例文を紹介しましょう。
ITサービス業/営業
私の長所は社交性です。
現在、営業職として4年目を迎え、自社のクラウドサービスを担当しています。最近は、サービス内容に興味のある方にセミナーへ参加いただき、より深く魅力を感じていただき、成約へつなげるという取り組みをしています。
中には、セミナーへ参加したものの、クラウドサービスを業務改善に活かすイメージがついていない方も多いため、参加者には積極的に話しかけ、業務の課題を共有いただき、一緒に解決の糸口を探しています。営業は、まずは相手の話を聞くことが大切だと考えているため、興味を持ってくださる方皆さんの話を聞き、同じ視点に立って考えていきたいと思っています。結果、セミナー後も定期的に相談いただき、成約へつながった事例が多くあります。おかげで、昨年は社内でMVPを受賞しました。
ポイント
営業の仕事は、商品やサービスの魅力を顧客に伝え、購入につなげることです。その人ならではのコミュニケーションスタイルや企画力、提案力などの総合力が成果に直結します。具体的にどんな実績があるかを交えつつ、コミュニケーション方法からアピールしてみるとよいでしょう。
不動産/一般事務
私の長所は、受容力です。
現在、不動産会社の一般事務として、賃貸契約に関する書類管理・データ入力・資料作成・売上データ作成などを任されています。
一年前に新規事業が立ち上がり、コワーキングスペースの賃貸業務も加わりましたが、業務フローを整理しきれないまま運用がスタートし、チーム全体が手探りでした。
チームは人員が不足しており、事業推進と営業を兼務しているため、新規事業の契約事務は私が一手に引き受けざるを得ない状況でした。そこで、通常業務をしながら、営業担当者が顧客対応に集中できるよう、入退去契約に関わる事務作業を棚卸。営業担当者が作成した重要書類を、ダブルチェックし、データベースに保管していく運用フローを整え、業務効率アップに貢献しました。
現在では、予定より早期に稼働率100%を達成。同じ運用フローを他拠点に展開することになっています。
ポイント
一般事務の役割は、社内業務が滞りなく進むようサポートする点に集約されます。つまり「縁の下の力持ち」タイプの人に最適でしょう。対人関係においても、的確に状況を判断して丁寧なコミュニケーションを取るのが得意な傾向にあります。同時に提案力がある点もアピールするのがおすすめです。
システム開発会社/Webアプリエンジニア
私の長所は、計画性です。
現在、Webアプリケーション開発のチームリーダーとしてクライアントのECサイト開発を担当しています。
自分が担当しているシステムでトラブルが発生した際、障害時に自分で対応すれば、切り分け対応もスムーズなのですが、育成のために、敢えて後輩に対応を依頼しています。
そのために、切り分けポイントと障害解析ツールの使い分けをフローチャートにし、障害対応ステップを可視化してきました。過去においても、問題が起こるたびに状況を可視化し、チームで共有するという工程を意識的に作ってきたことから、障害対応スキルが高い人材が育ち、私のチームからリーダーになる人材を多く輩出しています。
ポイント
アプリケーションエンジニアは、チーム体制で仕事を進めます。したがって社内・社外とのやり取りは必須であり、コミュニケーション能力や折衝力が欠かせません。経験を積むとマネジメント業務に従事する機会もあり、全体を俯瞰しつつ細かい部分を管理する能力が求められます。
企業が求める人物像に合わせた長所の書き方とポイント
企業が「長所」を聞く背景や、仕事における「長所」の特徴を理解したら、実際に自分の長所を整理していきます。
まず押さえておきたいのが「自己PR」「志望動機」「転職理由」と一貫性、整合性があることです。また、企業が求める人物像を事前に求人票やホームページで把握し、自分が求めているカルチャー、働き方と一致しているか確認することも重要です。
その上で、次の4点のポイントに気をつけて、内容を組み立てていきましょう。
- 最初に、「結論=自分の長所」を端的に伝える
- 根拠となる「理由・背景・エピソード」を伝える
- 長所によって「客観的に貢献できたこと」を伝える
- その長所を活かして、「どんな貢献をしていきたいか」を伝える
長所は履歴書に記載することが多く、ほかの項目とのバランス上、150~200文字程度に収めることになります。短い中にも具体的な数字やキーワードを入れておくと、面接担当者が質問しやすく、面接で具体的なエピソードを話すきっかけになります。
業務内容と関連のある長所を選ぶ
長所のなかでも、業務内容に結びつくものを選びましょう。実際に働いている姿が思い浮かぶ内容のほうが、よい評価につながるからです。志望する職種や業界と関連があるものを選んでください。
たとえば事務職志望の場合、仕事の手際の良さをアピールするのが効果的です。事務処理を迅速かつ正確にこなせることを証明するエピソードを添えると、説得力が増すでしょう。
長所が見つからないと悩んでいるなら、家族や友人などに聞いてみてください。第三者の意見は客観的ゆえ、参考になるかもしれません。
どうしても思いつかない場合は、仕事の実績を長所として言い換えるのが有効です。「営業で○件の契約を獲得した」というエピソードがあるなら、「分析力を活かして成約につなげた」といった具合に長所へ変換できます。
面接で長所について回答する際のポイント
長所について回答する場合、1分くらいに収まる分量にしましょう。実際の成果や数字を交え、300字~400字ほどを目安に書き出してください。
コツは事実をベースにして整理することです。以下の4つの順番(STARフレーム)で考えてみましょう。
- Situation(状況)
- Task(課題)
- Action(行動)
- Result(結果)
STARフレームに当てはめてエピソードを言語化すると、相手に伝わりやすくなります。その他の質問事項との整合性に考慮してまとめてみてください。
NGなのは、「明るくて周りに好かれる」など抽象的だったり、「運動神経が良く、走るのが速い」など仕事に直結しなかったりする内容です。言い換えるなどして、長所が実際に仕事に役立ったエピソードを準備するとよいでしょう。仕事にミスマッチな回答も避けてください。素早い意思決定が必要にもかかわらず「じっくり考えてから決断する」と回答してしまうと、求める人材ではないと判断されかねません。
転職エージェントを利用して長所を見つけよう
長所は面接でよく聞かれる定番の質問なので、あらかじめ準備して本番に備えましょう。企業が長所を知りたがる理由を知っておけば、どんな回答をすればいいか自ずとみえてくるのではないでしょうか。
転職活動には悩みがつきものです。自力で解決するのが難しいと思ったら、リクルートエージェントに相談してみてください。転職のプロに協力を仰ぎ、効率的に活動しましょう。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。