新卒で企業に入社し、社会人となって3年目は、転職を考え始める人も少なくないタイミングです。「社会人3年目の転職は難しいか」「社会人3年目で転職するメリットやデメリットは?」「社会人3年目で転職するときのコツは?」など、社会人3年目での転職について、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
社会人3年目の転職は難しい?
社会人3年目での転職は、比較的実現しやすいタイミングといえるでしょう。学校(高校、専門学校、短大、高専、大学、大学院)卒業後、おおむね3年以内の「第二新卒」層を歓迎する求人は多く、実際に多くの「第二新卒」の人たちが転職を実現させています。
社会人3年目以内に離職した人は3割を超える
厚生労働省が令和5年に公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、大卒の新規就職者(令和2年3月卒業者)の就職後3年以内の離職率は32.3%と、3割を超えており、前年数値(31.5%)より0.8ポイント増加しています(※)。
※出典:「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」(厚生労働省)
若年層の転職が増加する背景には、終身雇用の慣行が崩壊して「1社で勤め上げる」というより、どの企業でも通用する汎用的な能力を重視する傾向となっていることなどが考えられます。その結果、早期転職を選択する人が増えているのでしょう。
企業は第二新卒の人材を求めている
社会人3年目の人は第二新卒に当てはまるケースもあります。企業側は、第二新卒の人材を、どのように捉えているのでしょうか。
少子化が進み、労働力不足が危惧されている現在、企業によっては、人材の獲得が企業の長期的な課題となっていることもあります。新卒採用においても、すでに多くの企業が、計画していた採用人数を満たせない状況にあることから、未充足分や退職者分を補充するために第二新卒をターゲットとする中途採用が活発に行われています。株式会社リクルートの調査によると、株式会社リクルートエージェントの求人のうち「第二新卒歓迎と記載がある求人」は、年々増加の一途をたどり、2022年度には2009~2013年度の平均の約60倍にものぼっています。また、その半数以上が「本人の潜在的成長力や伸びしろ」といった「ポテンシャル」を重視していると伝えています。
※出典:「Z 世代(26 歳以下)の就業意識や転職動向(企業側の動向)」(2023年8月)(株式会社リクルート)
異業種・異職種への転職も可能
異業種・異職種へのキャリアチェンジも増加しています。株式会社リクルートエージェントの調査によると、「異業種×異職種」へ転職した人の割合は20歳~24歳で5割超、職種を変えずに「異業種」へ転職した20歳~24歳も約2.5割となっています。経験よりも「ポテンシャル」に期待し、未経験でも自社で育てる方針で採用を行っていることがわかります。
【年代別】転職時の業種・職種の異同状況
出典:「異業種×異職種」転職が全体のおよそ4割、過去最多に 業種や職種を越えた「越境転職」が加速(株式会社リクルート)
Z世代の転職者は増加中
前出の調査によると、18~26歳のいわゆる「Z世代」の転職者は年々、増加しており、2022年度には2009~2013年度の平均に対して約5倍に。若手社会人の早期転職は、今後も増加することが予想されます。
※出典:「Z 世代(26 歳以下)の就業意識や転職動向(転職活動者調査)」(2023年8月)(株式会社リクルート)
社会人3年目で転職するメリット・デメリット
社会人3年目での転職する場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
メリット
社会人3年目での転職には、ポテンシャルに期待が寄せられたり、社会人としてのマナーや実務経験が評価されたりする傾向があることから、社会人3年目ならではのメリットがいくつか挙げられます。
第二新卒として採用されやすい
第二新卒を歓迎する求人が増えており、その半数以上が「本人の潜在的成長力や伸びしろ」といった「ポテンシャル」を重視していることから、キャリア選択の機会が広がっています。
異業種・異職種にチャレンジしやすい
ポテンシャルの高さや将来性に期待してもらえるかもしれない点で異業種・異職種にチャレンジしやすいという点も挙げられます。「今の業種・職種が合っていない」「新しい仕事にチャレンジしたい」なら、社会人3年目は好機といえるでしょう。
実務経験と社会人経験がアピールできる
3年間の実務経験を積んでいることと、社会人としてのマナーやスキルを身につけていることがアピールできるでしょう。
デメリット
給与水準が低い業界や企業に転職すると年収が下がる可能性がありますが、20代前半の転職では、賃金が増加した割合の方が高くなっており、あくまでもケースによるでしょう。
※出典:「令和5年上半期雇用動向調査結果の概要」(厚生労働省)
前述のとおりチャレンジしやすい環境だからこそ、転職の目的や“軸”を明確にして、企業研究などの情報収集を行わないと、入社後にミスマッチやギャップを感じて後悔するかもしれません。
社会人3年目の転職を実現させるポイント
社会人3年目での転職を実現させるためには、次のポイントを意識しながら転職活動に臨みましょう。
今後何をやりたいのか、どんなスキルを身につけたいかを明確にする
転職先の企業で、どのような経験を積み、どのようなスキルを身につけたいのか。より長期的な視点では、どのようなキャリアを築きたいのか。転職先での目標を明確に描き、言語化しておきましょう。
描いた目標について「今の会社では本当に実現できないのか」を考える
社会人3年目では、現職での経験の幅が限られていることが多いため、「今の会社ではやりたいことができない」と思い込んでいる人も少なくありません。別の部署に異動することで解決する可能性もあるかもしれません。今の会社に対して、あらためて広い視野から見直してみるのも一案です。
ネガティブな転職理由は、前向きな理由に転換する
今の会社に不満や不安を抱いて転職活動を始めた場合、「不満の解消」だけを目的にしてしまうと、応募先企業に「現状から逃げたいだけなのではないか」と思われてしまうリスクがあります。たとえ転職を考えたきっかけが不満であったとしても、「転職によって実現したいことは何か」に転換し、前向きな転職理由を打ち出すことが大切です。
以下に、前向きな理由への言い換えの一例を紹介します。
「人間関係に不満」→「価値観が合う仲間と一緒に目標を追いたい」
「やりがいを感じない」→「より社会貢献を実感できる事業に携わりたい」
「残業が多い」→「効率的に働き、時間を有効に活用したい」
「給与が安い」→「成果が正当に評価され、報酬に反映される環境で働きたい」
これまでの経験で身につけた「ポータブルスキル」を整理し、アピールする
社会人3年目だと専門的なスキルのレベルはさほど高くない印象を持たれる可能性もあるため、これまでの経験で身につけた「ポータブルスキル」を整理し、選考でアピールしましょう。
ポータブルスキルとは、あらゆる業種・職種に活かせる、「持ち運び可能な汎用スキル」。例えば、コミュニケーション力、課題発見力、交渉力、調整力、数値分析力などです。
社会人3年目で転職を実現した例・後悔した例
社会人3年目で転職に踏み切った方々の事例を紹介します。
●実現した例1:営業職から人事職へキャリアチェンジ
新卒で人材サービス会社に入社し、企業の採用を支援する営業を務めていたAさん。顧客企業の人事担当者や経営陣と対話する中で、企業の成長には、人材を採用するだけではなく、「人材育成」「労働環境の整備」が重要だと実感。支援する立場ではなく、人事の専門職として取り組みたいと考え、社会人3年目に転職を決意しました。
面接では、人材採用に関わる知見と、営業職として培った「課題分析・解決力」をアピール。その結果、採用担当からスタートし、いずれは人材育成プログラムの企画や人事制度企画も担える企業に入社しました。
【実現のポイント】
異分野への転職を図る場合、これまでの経験を活かせる業務から入り、徐々に目指す業務に携わっていくステップを踏むのも有効です。また、前職で培ったポータブルスキルもアピールしましょう。
●実現した例2:「営業はもう嫌だ」から一転、自分にマッチする営業職を発見
ITサービスの営業を担当していたBさん。目先の目標数字に追われることや、会社から顧客に必要とは思えないオプションサービスを売るように指示されることに抵抗を感じて転職を決意。転職エージェントのキャリアアドバイザーに「もう営業はやりたくない」と訴えました。
しかし、キャリアアドバイザーとの対話を通じてこれまでやりがいや喜びを感じた場面を振り返った結果、「顧客満足を追求する」「チームワークで顧客の課題解決に取り組む」といったスタイルの営業であれば自分の志向に合っていることに気づきます。そこで、顧客に寄り添うスタイルで働くことのできるIT企業に転職しました。
【実現のポイント】
同業種・同職種であっても、理念や方針、風土などは企業ごとに異なります。1社目での経験にとらわれず、視野を広げてさまざまな企業を検討するとよいでしょう。
●後悔した例1:イメージだけで選んだ転職先を早期退職
新卒で入社した金融機関で営業に携わっていたCさん。入社3年目に先輩や同僚がコンサルティングファームに転職していく姿に興味を抱き、転職活動を開始。折よくコンサルティングファームが積極採用しているタイミングで内定を獲得することができました。
ところが入社後、地道な下積みの業務が想像以上に多く、しかもスピードが速すぎてついていけないという現実に直面。早期に退職する結果となりました。
【注意ポイント】
周囲に流されたり、イメージだけで転職先を選んだりすると、入社後にギャップを感じて後悔することにつながりかねません。「転職によって何を実現したいのか」という軸を明確に定めて企業を選びましょう。
●後悔した例2:「やりたいこと」だけに目を奪われ、転職後に後悔
広告代理店でインターネット広告の営業を務めていたDさん。次第に、「子どもに関わる仕事がしたい」「教育に携わりたい」という思いが強くなり、教育サービス企業に転職します。ところが、転職によって年収が大幅ダウン。生活時間も不規則になったことでストレスがかかり、半年後に再び転職することになりました。
【注意ポイント】
「現状の不満を解消できればいい」「やりたい仕事ができればいい」など、視野が狭まった状態で転職すると、入社後、それまで意識していなかった部分で不満を感じる事態も起こり得ます。さまざまな観点から多面的に検討して転職先を選びましょう。
悩んだら転職エージェントを活用しよう
社会人3年目で転職活動に臨むとき、転職エージェントを活用することには、さまざまなメリットがあります。活用法の一例を紹介します。
経験内容の整理と「強み」の発見を手伝ってもらう
キャリアアドバイザーとともに「棚卸し」の作業を行うことで、スムーズに自身の経験・スキルが整理できるでしょう。自身が認識していなかった強みを発見できることも大いに期待できます。
これから目指すキャリアの方向性を相談する
転職するかどうか、まだ決断できていない段階でも、転職エージェントに相談に応じてもらうことは可能です。また、転職先の希望条件が明確になっていない場合も同様。キャリアアドバイザーと対話しながら、「今、抱えているモヤモヤ」や「自分が本当に求めていること」を整理するうちに、自身の仕事に対する価値観や志向に気づき、これから目指すキャリアの方向性が見えてくる可能性があるでしょう。
職務経歴書作成や面接対策へのアドバイスを受ける
自身の強みがしっかり伝わるような職務経歴書作成のポイント、面接での受け答えやアピールの仕方など、選考通過率を高めるためのアドバイスを受けることができます。また、応募先企業が過去に選考でどのようなポイントを重視していたか、面接でどんな質問をしたかといった情報を得られることもあります。
企業とのやりとりをサポートしてもらう
面接日程の調整、入社時期の相談など、企業とのやりとりを転職エージェントがサポートしてくれます。企業に対して面と向かっては聞きにくいことも、転職エージェントを通じて確認することができるでしょう。
転職エージェントに登録すれば、「第二新卒を求めている」「ポテンシャル重視で採用を行っている」といった企業の求人や、自分の強みやキャリアの方向性に合った求人を紹介してもらえるかもしれません。困ったときや迷ったときには転職エージェントに相談しながら、活動を進めてはいかがでしょうか。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年02月17日
記事更新日:2023年07月31日
記事更新日:2024年09月18日 リクルートエージェント編集部