転職の方向性の確認から入社まで、求職者の転職活動を無料で支援する転職エージェント。利用するにあたり、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
そこで組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、転職エージェント利用のメリット・デメリットと向いている人、自分に合った転職エージェントの探し方について解説いただきました。
転職エージェントとは?
「転職エージェント」とは、転職を検討している人と人材採用を考えている企業の間に立ち、両者をマッチングするサービスを指します。紹介した人材が採用されたら企業から報酬を得るビジネスモデルとなっているため、求職者側は原則としてすべてのサービスを無料で受けることができます。
転職エージェントに所属して求職者の転職支援を行うのが、一般的に「キャリアアドバイザー」「キャリアコンサルタント」と呼ばれます。サービスに申し込んだ求職者と面談を行い、マッチする求人の紹介や情報提供、応募書類の添削や面接対策など転職活動全般のサポートを行っています。
転職エージェントを使う7つのメリット
転職エージェントを利用するメリットのうち、代表的な7つをご紹介します。
メリット1:無料で使える
前述の通り、転職エージェントは紹介した人材が転職したら企業から報酬を得るビジネスモデルです。プロのキャリアアドバイザーによるキャリア相談、求人の紹介、応募書類の添削、面接対策といった転職活動に関わるサービスを、求職者は基本的に無料で受けることができます。
メリット2:自身の市場価値や採用動向が分かる
転職市場は、採用を検討する企業の採用ニーズと転職を検討する求職者との需給バランスで成り立っています。採用ニーズが高く求職者が少ない職種は「売り手市場」となるため、選考条件が緩和される傾向があります。企業の採用ニーズが低く求職者が多い職種は、「買い手市場」となるため厳選採用になります。転職市場における自身の市場価値を理解し、採用動向を把握しておくことが適切な判断のために重要です。市場価値が高い場合は選考通過率が高くなる傾向にありますが、逆の場合は内定獲得のために希望条件や応募する求人の調整が必要になります。これらのバランスは、転職エージェントのように採用や人材領域に関わっていないと把握することが難しいでしょう。
また、転職市場は変化します。転職エージェントを利用すると、「転職するなら早めがいい」あと○年ほど経験を積めば、より選択肢が広がる」などの的確なアドバイスを得られるかもしれません。
メリット3:自分の強みや価値観に気づくことができる
転職エージェントの面談では、転職活動の方向性や軸となる経験・スキルなどを確認します。キャリアアドバイザーとの対話を通じて、自分の考えや志向が整理され、これまで意識していなかった自身の強み、仕事やキャリアに対する価値観に気づくこともあります。自分の強みや価値観に従って応募先を選んだ方が納得度やマッチ度が高くなるため、入社後もイキイキと働くことができるでしょう。
メリット4:非公開求人に応募できる
転職エージェントは、企業の採用ページや転職サイトなどに掲載されている求人以外にも、一般公開されていない「非公開求人」を数多く保有しています。非公開求人には、公開すると応募が集中してしまう希少・人気ポジションや、新規事業など経営戦略に関わる重要ポジションなどが含まれます。転職エージェントを利用するまで目にすることのなかった魅力的な求人に出会うことができるでしょう。
メリット5:外部からは分からない企業情報を知ることができる
企業の採用支援を行っている転職エージェントの中には、外部から見えにくい社風や人事制度の利用実態などを把握しているケースもあります。求人などには記載されていない、企業の判断材料となる有用な情報提供を受けられる可能性があります。
メリット6:応募書類や面接などのアドバイスを受けられる
転職エージェントは数多くの転職支援を行っているため、選考通過しやすい応募書類や面接の傾向を知っています。履歴書や職務経歴書の書き方のアドバイスや、作成した書類の添削を受けることができます。
また、キャリアアドバイザーによる面接対策などのサポートも受けられます。アピールにつながる回答内容や、好印象を与える話し方、改善点などの客観的なアドバイスをもらえるうえ、過去の実績から「この企業は選考でこのポイントを重視する傾向がある」といった有用な情報を得られることもあるでしょう。
メリット7:日程調整を任せられる
企業との面接や面談日時などの調整を任せられます。具体的な給与待遇や条件など、自分からは直接質問しにくいことを代わりに確認してもらうこともできます。
内定した企業に入社を決めたら、現職との退職交渉が難航した場合も相談に乗ってくれるので、心強い味方になるでしょう。
転職エージェントを使う4つのデメリット
転職エージェントには、メリットもありますがデメリットもあります。代表的な4つを解説します。
デメリット1:応募できる求人が限定されることがある
転職エージェントでは、担当キャリアアドバイザーが求職者の経験や希望条件に合った求人を厳選して紹介します。また、利用している転職エージェントが希望条件にマッチする求人を保有していない場合は、求人の紹介を受けることができません。
デメリット2:サポート期間が決まっているケースがある
転職エージェントによっては、サービスの提供期間を設定していることがあります。サービス提供期間を超えると、積極的なサポートを受けられない可能性もあるため、長期での転職活動を希望する場合は事前に相談しておきましょう。
デメリット3:担当者と相性が合わないことがある
キャリアアドバイザーには、現年収や希望年収や条件、転職理由など、普段は人に話さないような情報を伝えることになります。また、転職活動は思うように選考に通過せず落ち込んでしまったり、不安になってしまったりすることもあります。そのため、転職活動を伴走するキャリアアドバイザーとは、信頼関係がとても重要です。ただし、転職エージェントは人が間に立つサービスである以上、担当キャリアアドバイザーと相性が合わないこともあります。
転職エージェント利用が向いている人
転職エージェントの利用には、転職活動の状況によって向き・不向きがあります。利用が向いているケースをご紹介します。
転職が初めての人
初めて転職活動をする場合、「何から始めたらいいのか?」「求人が多すぎてどうやって選べばいいのか分からない…」など、迷いながら手探りで進めるケースが多くなります。転職エージェントを利用すれば、転職の方向性の確認や強みの見つけ方、応募企業選びや書類作成、面接対策など、キャリアアドバイザーのアドバイスに従って転職活動を進めることができます。困ったら相談できる相手がいるのはとても心強いものです。
まだ転職するか迷っている人
「自分の市場価値を知りたい」「転職するべきかどうか判断できない」という方も、転職エージェントの利用が向いています。転職エージェントは、申し込んだら必ず転職しなければならないわけではありません。無料で相談できるため、転職市場の相場や業界動向などの情報提供、自身の転職に対する客観的なアドバイスを受けて、転職するかどうかを判断しましょう。転職エージェントは、転職市場の動向や経験・スキル、希望条件などを総合的に判断して、場合によっては「現職に残った方がいい」というアドバイスをするケースもあります。転職するか迷っている場合は、事前にその旨を伝えておきましょう。
仕事を続けながら転職活動する人
仕事を続けながら転職活動の時間を捻出するのは大変です。転職エージェントのキャリアアドバイザーは、求人の選定や企業との日程調整など、転職活動に関する様々なことをサポートしてくれます。自身のやるべき事に専念できて、効率よく転職活動ができるでしょう。
キャリアチェンジを検討している人
志望する業界・職種を絞り込んでおらず、キャリアチェンジを含めて幅広い可能性を探りたい方も、転職エージェントの利用に向いています。過去の転職支援実績から、キャリアチェンジがしやすい業界・職種のアドバイスを受けることができるでしょう。未経験でチャレンジしたい業界・職種が決まっている方も、転職エージェントは転職市場の相場観を知っているため、「経験者が有利なので応募数を増やした方がいい」「○○職種を経験して段階的にキャリアアップする方法もある」など、実践的なアドバイスを受けることができるかもしれません。
選考の通過率を上げたい人
中途採用では、多くの企業で履歴書とともに職務経歴書が必要になります。初めての転職や職務経歴が多い場合、どのように職務経歴書をまとめていいのか悩む方も多いようです。転職エージェントでは、プロによる応募書類の書き方アドバイスや、模擬面接などのサポートを受けることができます。応募企業に合わせた事前準備をしっかりとしておくことで、書類選考や面接の通過率を上げることができるでしょう。
自分に合った転職エージェントの探し方
数多くの転職エージェントの中から、自分に合ったサービスを選ぶポイントを解説します。
複数の転職エージェントに相談する
転職エージェントによって得意な業界・職種があり、見解も異なる可能性があります。また、キャリアアドバイザーとの相性もあるので、複数の転職エージェントに申し込んで相談し、納得できる相手を選ぶことが大切です。複数の観点でアドバイスを受けることにより、転職の選択肢が広がるかもしれません。1社に絞り込む必要はないので、信頼できるキャリアアドバイザーが見つかったら、転職支援を依頼しましょう。ただし、利用する転職エージェントが多すぎると調整ややり取りに手間がかかってしまうため、2~3社程度が利用の目安です。
自分の希望や事実を正直に伝える
「本当は○○が希望だが言いにくい」「ネガティブな情報を伝えたら転職活動が不利になるのでは」などの遠慮や不安を抱えて、希望や事実を正直に伝えないケースがあります。希望を正しく伝えないと、キャリアアドバイザーは適切なアドバイスをすることができず、ミスマッチの求人を紹介してしまうかもしれません。また、「ネガティブな内容」と捉えている情報も包み隠さず相談することで、一緒に対策を考えることもできます。最適な転職支援を受けるためにも、キャリアアドバイザーには正直に話しましょう。
どのようにサポートしてほしいか伝える
「初めての転職なので丁寧に説明してほしい」「自分の市場価値とキャリアの将来性を知りたいので、事実をはっきりと言ってほしい」など、キャリアアドバイザーに求めるサービスのスタイルは人それぞれです。転職支援のプロであるキャリアアドバイザーにもサポートのスタイルがあるため、希望するサポートがある場合は事前に正直に伝えましょう。
●リクルートエージェントの特徴
リクルートエージェントはリクルートが提供している転職支援サービス。代表的な特徴を3つご紹介します。
・豊富な転職支援実績
創業以来、40年以上にわたって蓄積されてきた転職支援ノウハウや転職成功事例をもとに転職希望者のサポートを行っています。
・豊富な求人件数
保有している非公開求人はグローバル、金融・コンサルタント、経営幹部、営業、企画・事務、ITエンジニア、電気・機械系技術職など、豊富な求人をご用意しています。
・転職成功のための独自ノウハウ
リクルートエージェントは、業界事情に詳しく経験豊富なキャリアアドバイザーが多数在籍。面接突破に必要な成功ノウハウを知れる「面接力向上セミナー」も随時開催しています。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年04月13日
記事更新日:2024年1月9日 リクルートエージェント編集部