目次
中途採用が難しい4つの理由
中途採用が難しい理由には、さまざまな要因が絡み合っています。有効求人倍率の増加は、求職者に多くの選択肢を与え、企業側には競争を強いる状況を生み出しています。即戦力人材への高い需要は、企業間の採用競争を激化させ、内定辞退の増加は企業リソースを圧迫します。また、中途採用では候補者の適性を見極める難しさや、情報収集に慎重な応募者とのコミュニケーションも課題となります。ここからはこれらの理由を掘り下げて、具体的に解説していきます。
1.有効求人倍率が増加している
2023年10月31日時点での有効求人倍率は1.29倍で、全体としてはここ数か月大きな変化は見られません。有効求人倍率とは求職者1人あたりの求人数のことで、厚生労働省が毎月集計を発表しています。
しかし地域や業種によっては、有効求人倍率が増加傾向にあることが見て取れます。たとえば全国最高は福井県の1.91倍であり、最低の北海道の1.08倍と比べて、福井県ではより魅力的なオファーを用意しなければ、人を採用できない状況にあるといえます。
同様に、職種・業種別の新規求人数の最新データ(2023年9月)からは、「宿泊業、飲食サービス業(5.2%増)」、「教育、学習支援業(2.6%増)」で増えていることがわかります。「製造業(12.7%減)」、「建設業(8.1%減)」、「情報通信業(5.4%減)」などに比べ、企業にとっては人を採用しにくい状況にあるといえるでしょう。
有効求人倍率が高い地域や業界では、求職者をめぐって企業の競争が発生しており、採用コストが上昇することが予測されます。求職者は多くの求人の中から応募先を選べるため、企業は待遇や働き方、キャリアパスなどで差別化を図る必要があります。これらの要因が、中途採用を難しくしている一因となっています。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年9月分)」2023年10月31日
2.即戦力人材は採用の競争率が高い
即戦力とされる人材の採用においては、多くの企業がそのスキルセットと経験を高く評価し、積極的にリクルーティングを行っています。そのため、企業間での競争が激化し、専門的なスキルを持つプロフェッショナルを巡る争奪戦が起きています。特にITエンジニアやデータサイエンティストなど、特定の分野で即戦力とされる人材では、複数のオファーを受けることも珍しくありません。このような状況は企業側にとって、採用コストの増加や、優秀な人材を逃すリスクを高めています。また、求職者側にとっては選択肢が増える一方で、どの企業を選ぶかという選択の難しさも生じています。企業がより魅力的な条件を提示し、候補者に対して企業の魅力をアピールする機会を増やすことが、採用成功へのポイントとなります。
3.中途採用は見極めの難易度も上がる
中途採用における候補者の見極めは、多くの企業で課題となっています。主な理由として、経験豊富な候補者が持つスキルや専門知識を正確に評価し、新しい組織やチームにどれほどフィットするかの判断が難しいことが挙げられます。特に、候補者が以前の職場で培った経験やスキルが、新しい職場の文化や業務フローに適応できるかどうかは、面接や履歴書だけでは判断が難しいのが現実です。また、中途採用の場合、新卒採用とは異なり、即戦力として期待されるケースが多いため、採用後のパフォーマンスに対する期待値も高まります。これにより、採用プロセスにおいて、技術的なスキルだけでなくコミュニケーション能力やチームワークのスキルも重視される傾向にあります。そのため企業には、候補者が持つ多様なスキルを総合的に評価し、組織に対する適合性を見極めることが求められます。この見極めを正確に行うためには、従来の面接や履歴書のチェックだけでなく、実際の業務に近い状況を再現したアセスメントや、チームメンバーとのワークショップを実施し、候補者のスキルや適性を多角的に評価するアプローチが有効とされています。これらのことを実施する環境があれば、候補者が実際の業務環境でどのようにパフォーマンスを発揮するかを把握し、より正確な採用判断を下す手助けとなります。
4.中途採用の場合、情報収集に慎重な人が多い
中途採用を行う際、応募者は企業に対する情報収集を非常に慎重に行います。転職を検討する際には、企業の文化、給与、福利厚生、キャリアパスなど、多岐に渡る情報を比較・検討します。
特に経験豊富な専門職の場合、彼らは自身のスキルと経験を最大限に活かせる企業を選びたいと考えるため、入社前に十分な情報を得ることを重要視します。企業側は、これらの情報を明確かつ魅力的にアピールする必要があり、そのプロセスは採用活動において複雑なステップを必要とします。また、情報提供の場としては、企業説明会や面接だけでなく、オンライン上での情報発信も重要となっており、ウェブサイトやSNSを通じて、自社の魅力ポイントや働く環境を積極的に発信することが求められます。これらにより、情報収集を重視する応募者に対して、企業がどれだけ魅力的であるかを伝えることができれば、応募者を引き寄せることが可能となります。
中途採用でよくある失敗例
中途採用は企業に新しい価値とスキルをもたらしますが、その道のりは必ずしもスムーズではありません。採用プロセスの不備や新規採用者が早期に組織に馴染んで力を発揮できるようにするための企業の取り組み(オンボーディング)不足、企業文化のミスマッチなど、陥りがちな失敗が存在するケースもあります。ここからは、これらの失敗例を探求し、解説していきます。
適切でない採用プロセス
適切でない採用プロセスにおける中途採用の失敗例として、企業が候補者のスキルセットや経験を適切に評価せず、必要な能力を持たない人物を採用してしまうケースが挙げられます。この失敗は、採用プロセスにおいて十分なスキルチェックや経験の検証を行わないこと、または企業のニーズと候補者の能力がマッチしていないことに起因します。結果として、組織にフィットしない人材が採用され、パフォーマンスの低下やチーム内の摩擦、早期退職などの問題が発生する可能性があります。
オンボーディングの不足
新規採用者が早期に組織に馴染んで力を発揮できるようにするための企業の取り組み(オンボーディング)が不足していると、多くの場合、新規採用者が業務に適応できず、早期退職してしまうケースが見られます。オンボーディングの不足は、新規採用者が企業文化やチームにスムーズに組み込まれるチャンスを奪い、彼らが自分の役割や責任に対する不安や混乱を感じる原因となります。これは、従業員のモチベーション低下を招き、生産性の低下やコミュニケーション問題を引き起こすことにつながります。
※オンボーディングに関しては、以下の記事をご参照ください
オンボーディングとは?<意味がわかる!>メリットと企業事例を紹介
企業文化とのミスマッチ
企業文化と新規採用者とのミスマッチは、中途採用において頻繁に見られる失敗例です。新規採用者がチームにスムーズに溶け込めず、組織全体のパフォーマンスやチームワークに悪影響を及ぼす可能性があります。たとえば、新規採用者が企業の価値観やワークスタイルに馴染めず、コミュニケーションの障壁や摩擦が生じることがあります。これは、採用プロセスにおいて企業文化やチームの特性を十分に理解し、それに合った候補者を選定できなかった結果となります。
中途採用で失敗する原因を特定する方法
中途採用は企業の成長に欠かせない要素であり、適切な人材の確保は自社の事業成長に直結します。しかし、多くの企業がこの課題に直面していることも事実です。中途採用を成功させるには、失敗の原因を特定し、その根本的な解決を目指すことが求められます。これらはデータを活用した分析で採用の各ステージを詳細に検証し、フィードバックを通じて実際の声を取り入れることで、より効果的な採用活動が可能となります。そして、採用プロセスを監査することにより、組織内の流れを明確にし、継続的な改善を図ることができます。ここからは、これらの手法について解説していきます。
データに基づいた判断や分析を行う
まず中途採用のプロセス全体で収集可能なデータを把握し、それを基に各ステージでの候補者の動きやフローを詳細に分析します。たとえば、応募者の数、採用までの時間、そして採用後の定着率など、多岐に渡るデータを収集し、それぞれのポイントでどのような傾向が見られるのかを把握します。
次に、収集したデータを基に、どの段階で候補者が減っているのか、また、どのポジションや部門で失敗が多いのかを特定します。これには、具体的な数値だけでなく、候補者が脱落する理由も含めて分析を深め、その背後にある要因を探ります。
そして、データから見えてくるパターンや問題点に対して、具体的な改善策を検討し実施します。これは、採用プロセスの各ステージでのコミュニケーションの方法や、求めるスキルと職務内容のミスマッチ、オファーまでのスピード感など、多くの要素を見直すことが含まれます。
最後に、実施した改善策の効果を再度データで確認し、フィードバックループを作成します。これにより、継続的な改善と、同様の失敗を未来に繰り返さないためのロードマップを描くことができます。この一連のプロセスを通じて、中途採用における失敗の原因を的確に特定し、その解決策を見つけ出すことが可能となります。
フィードバックの収集と分析
中途採用の失敗原因を特定する手法には、面接官や人事候補者からの直接的なフィードバックの収集、そして、オンライン企業評価の分析といった間接的なフィードバックの収集が含まれます。これらのフィードバックを効果的にカテゴリー別にまとめて分析し、どの部分で問題が発生しているのかを特定することが重要です。
たとえば、退職理由、オンボーディングの問題、または給与・福利厚生に関するフィードバックなど、具体的なカテゴリーを設定し、それぞれに対して改善策を考案し実施することで、中途採用の成功率を向上させることが可能となります。また、フィードバックの収集と分析を定期的に行い、改善策の効果をモニタリングすることで、持続可能な中途採用戦略を構築することができるようになります。
採用プロセスの見直し
このアプローチでは、企業が中途採用の各ステップを精密にマッピングし、プロセス内で可能性のあるボトルネックや遅延を引き起こすポイントを特定します。
具体的には、まずプロセスマッピングを通じて、応募からオンボーディングまでの各フェーズを詳細に理解し、それぞれのステップで何が行われ、どのような課題が存在するのかを把握します。
次に、ボトルネックの特定を行い、なぜそれが起きているのかを明らかにします。
そして、各ステップでの最善の方法を調査し、現行のプロセスにどのように適用できるかを検討します。
最後に、改善策を実施し、その効果を定期的に評価します。この評価を基に、プロセスをさらに調整し、継続的な改善を目指します。これらの方法を通じて、企業は採用プロセスの効率化を図り、中途採用の成功確率を高めることができるようになります。
自社の中途採用を改善する方法
自社の中途採用を改善するためには、まず企業の魅力を高め、応募者に対して明確なキャリアパスを提示することが重要です。具体的には、企業文化や働きがいをアピールするコンテンツを積極的に発信し、キャリアアップのビジョンを具体的に描くことで、応募者のモチベーションを高めます。また、採用プロセスをスムーズにし、応募者とのコミュニケーションを大切にすることも不可欠です。具体的なアクションとしては、オンライン面接の導入や、応募者へのフィードバック体制の強化を行います。さらに、成功事例をウェブサイトやSNSで共有し、企業の採用ブランドを強化していくことも効果的です。
中途採用の難しさには多様な要因が絡み合っています。そこには求職者に多くの選択肢を与える有効求人倍率の増加、即戦力人材への高い需要などがあり、企業側には競争を強いる状況まで生み出しています。これらの課題を解決するためには、企業側が候補者のニーズを理解し、魅力的なオファーと働き方を提供することが不可欠となります。また、適性を見極めるための新しいアプローチや、情報収集に慎重な応募者とのコミュニケーションも重要となります。この記事でご紹介した、さまざまなポイントを理解して、最適な採用活動を目指してください。