人や組織における思考や考え方の傾向を表す「マインドセット」。マインドセットは社員育成を成功させるためにも注目されている観点です。そこで今回は、マインドセットについて基本的な意味からご紹介します。成長型の思考である「グロースマインドセット」や、従業員のマインドセットを育てる際に失敗しないための方法などを解説していきます。

マインドセットとは

マインドセットの種類

マインドセットとは、ものごとを見て何かを感じたり判断したりするときの、人もしくは組織固有の傾向のことです。「考え方の癖」と言い換えることもでき、特定の状況下で無意識に同じ行動を取ってしまうこともマインドセットが影響しているといわれています。
マインドセットはこれまで置かれてきた環境や受けた教育、一緒に過ごした人物の言動などが影響して形成されるため人それぞれ異なりますが、体系的には2種類に分類することができます。

(筆者作図)

グロースマインドセット

グロースマインドセット(Growth Mindset)は、端的に言えば「人間の基本資質は努力次第で伸ばすことができる」の思考パターンです。人の能力は努力次第で伸ばすことができる、困難な状況も自分次第で乗り越えられるという考え方であり、変化に前向きな成長思考です。

フィックストマインドセット

フィックストマインドセット(Fixed Mindset)とは、グロースマインドセットとは対局的な思考パターンで、変化や挑戦に対して消極的です。リスク回避の意識が強く、「どうせ自分にはできないのだから、手を出さない方が良い」「失敗したのは他人や環境のせいだ」と考えがちな傾向にあります。

マインドセットの具体例

たとえばあなたが営業の仕事をしていて、今月の売上目標を達成できなかったとします。この事実に対して、「上手くいかなかった原因を解明・改善して、来月は巻き返そう」と前向きな気持ちが湧き上がるのは、グロースマインドセットの影響だといえるでしょう。
逆に、「目標数字が高すぎる。上司のせいだ」などと考えてしまうのはフィックストマインドセットが影響しているといえます。

マインドセットが重要な理由

マインドセットは考え方の癖ですから、人や組織が重要な意思決定をする際にも影響を及ぼします。たとえば、マーケットが大きく変動している時期や社内改革が必要な時期に、変化を恐れるマインドセットが強いと変革にブレーキがかかってしまう場合もあります
一方で、ミスが許されない局面では冷静に状況を把握して慎重な行動を取ることも必要でしょう。
無意識の判断基準は、時に誤った決断につながりかねません。マインドセットの存在を認識し、上手くコントロールすることがビジネスシーンにおいても重要です。

個人のマインドセットとは

上述した通り、個人のマインドセットはこれまで経験してきたさまざまな出来事が影響します。育った環境、友人・知人の言動、学校で受けた教育、感銘を受けたものごと、就いた仕事特有の価値観などが積み重なり、固有のマインドセットを形成しているのです。
ただし、人は誰しもグロースマインドセットとフィックストマインドセットの両方を併せ持っています。一見ポジティブに見える人にもネガティブな思考パターンは眠っており、その逆もしかりです。個人のマインドセットはグラデーションのようなもので、経験や教育によってどちらかの傾向が強く出るようになると捉えると良いでしょう。

組織のマインドセットとは

たとえば、同じ出来事に対して企業によって対応が分かれるのは、組織固有の考え方の癖であるマインドセットが少なからず影響しています。組織は個人の集合体ですから、所属する個人のマインドセットに左右されますが、その他にも以下のような事柄が組織のマインドセットを形成するといわれています。

  • 経営者(特に創業者)のマインドセット
  • 創業からの歴史
  • ビジョン・ミッション・バリュー
  • 業界や職種の特性
  • 企業文化
  • マネジメントスタイル

経営者がどのような判断基準で意思決定をしてきたか、その決断の積み重ねである企業の歴史もその企業らしい思考パターンに影響します。また、たとえば人の命や財産に直結するような業種と、多少粗削りでも素早く新しいものを世に出すことが喜ばれる業種では、優先すべきことの基準が異なるでしょう。このように、組織のマインドセットは企業活動の中で自然と形成されていくものです。

成功するためのマインドセットとは

昨今、企業が事業成長のためにグロースマインドセットが注目されています。採用シーンにおいてグロースマインドセットの強さを見極めることや、入社後の教育・研修においてもグロースマインドセットを育むプログラムが注目されています。
グロースマインドセットは、その名の通り成長思考のマインドセットですから、個人が能力を高め続けることで企業全体の能力が向上し、優れた製品・サービスを生み出すことや生産性を高めていくことが期待できます。また、現在はVUCA時代とも呼ばれるように、変化のスピードが早く未来を予測することが困難な時代。変化を恐れず柔軟に進化を模索し続けるグロースマインドセットを持つことが、事業の持続可能性を高める上でも重要になっています。

※VUCAについては、以下の記事を参照ください。

VUCA(ブーカ)とは?予測困難な時代に必要な4つのスキルと、リーダーの資質

マインドセットを変える具体的な方法

自分のマインドセットに気づく

マインドセットは無意識の思考パターンですから、普段からマインドセットの存在を自覚しながら行動している人は多くないでしょう。そのため、まずは自分のマインドセットにどのような傾向があるのかを理解することが第一歩です。

グロースマインドセットの行動パターンを真似してみる

フィックストマインドセットの傾向が強い人・組織でも、グロースマインドセットに変えていくことは可能です。とはいえ、長年の積み重ねによって形成されているものなので、簡単に変えられるものではありません。そこでまずは目に見えない思考パターンではなく、目に見える行動パターンから真似をしてみることからはじめると良いでしょう。

たとえば、「失敗したときは“誰のせいか”よりも“次にどうすれば良いか”に目を向ける」「毎週どんな小さなことでも良いので新しいチャレンジをしてみる」など。マインドセットは人々の経験や教育にもとづいて形成されるものですから、グロースマインドセット的な行動を積み重ね習慣化することで、思考パターンも近づけることができます。

チャレンジを讃えるマネジメント・組織風土をつくる

マインドセットは、個人の行動だけでなく周囲の環境も大きく影響します。そのため、いくら本人がポジティブに考え行動を続けても、上司やチームで評価されなければ「努力したって意味がない」というフィックストマインドセットに陥ってしまいます。
上司が「メンバーの些細なチャレンジにも目を向ける」「失敗したとしても挑戦したことを讃える」といったマネジメントをおこなうことも大切ですし、結果だけでなくプロセスを評価することや、個人の主体性を尊重する組織風土であることもグロースマインドセットを醸成します。

組織のマインドセットを変える教育・研修

組織のマインドセットを変える場合も、基本的には個人のマインドセットを変えていくことが組織全体に影響していくと考えると良いでしょう。組織への影響度や効果を考慮し、特に以下のような属性の人たち向けの研修にマインドセットのコンテンツが取り入れられています。

新人研修

社内で経験を積み重ねる前にグロースマインドセットを身につけることで、成長を最大化させることが狙いです。特に新卒入社の場合は社会人の基礎としてグロースマインドセットを学ぶことができ、マインドを根付かせやすいのもメリットです。

リーダー・マネジャー研修

上述した通り、組織や個人のマインドセットはチームを率いるリーダーやマネジャーのマインドセットに大きく影響を受けます。そのため、昇進・昇格のタイミングでマインドセット研修を取り入れ、自身のマインドセットを変えていくことや、マネジメントの指針にしてもらうことも効果的です。

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