RPO(採用代行)とは、企業がアウトソースしたい採用業務の一部もしくはすべてを委託できるサービスです。RPOを利用すると、採用担当者の業務や企業の採用活動どのようなメリットがあるのでしょうか。
今回はRPOのサービス概要や活用のポイント、利用の際の懸念点などについて、人事組織コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

RPO(採用代行)とは

RPOとは、「Recruitment Process Outsourcing」の略語で、採用業務の一部もしくはすべてを外部の専門サービスに委託することを言います。「採用代行」「採用アウトソーシング」と呼ばれることもありますが、基本的にはどれも同じサービスを指します。
代表的なRPOの例は、応募者受付~面接日程の調整までの業務を切り出して外部に委託することや、募集ポジションの管理(採用オープン・クローズに伴う関係各所とのやりとり、職務要件・人材要件の管理など)です。専門のスキルやノウハウを持つ外部のパートナーにこれらの業務を任せることで、効率化や質の向上を図れるだけでなく、採用担当者は別の業務に集中できるようになります。

RPO(採用代行)と混同しやすい「人材紹介」「委託募集」「BPO」との違い

ここでは、RPOと混同しやすいと思われる次の3つの言葉について、一般的な定義やRPOとの違いについて解説します。

  • 人材紹介
  • 委託募集
  • BPO

RPOと「人材紹介」の違い

「人材紹介」は、企業の採用ターゲットにマッチする人材を人材紹介会社から紹介してもらうサービスもしくは採用手法です。人材紹介会社は自社のデータベースに登録している求職者の中から企業の採用ターゲットにマッチする人材を選定し紹介します。
RPOは採用活動に関する業務を外部に委託するサービスであるのに対して、人材紹介は人材の選定から紹介までを請け負い、人材の採用にまでつなげるサービスです。

RPOと「委託募集」の違い

「委託募集」とは、外部のサービスに従業員の募集や選考にかかわるプロセスを委託することを指します。委託募集を行う企業は、厚生労働大臣もしくは、募集にかかる事業所の所在地を管轄する都道府県労働局の許可を受けなければなりません。
委託先企業が自社に代わり求人募集をしたり、面接で採否を判断したりする場合のように、人材の雇用に直接かかわる業務を委託先企業が代行した場合、委託募集に該当するでしょう。一方で、採用要件の定義決めや求人広告の原稿作成、応募者対応など、人材の雇用に直接かかわることのない業務は、委託募集に該当しません。
RPOの中には、提供しているサービスによって委託募集に部類されることもあります。

参考: 厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/bosyu/dl/03.pdf)

RPOと「BPO」の違い

「BPO(Buiness Process Outsourcing)」とは、企業の業務プロセスを外部に委託する経営手法もしくは委託を受けるサービスのことを指します。BPOは採用業務に限らず、経理や顧客サポート、ITサポートなど、さまざまなビジネスプロセスに対する支援が対象になります。
RPOは、企業の採用活動にまつわる業務に特化している代行もしくは委託サービスであるのに対して、BPOは企業の事業活動全般の業務を対象にしている点が主な違いと言えるでしょう。

RPO(採用代行)が注目される背景

近年RPOの活用に企業が注目している背景には、専門的なスキルを持つ人材を求めるケースが増えているからと考えられます。一方、中途採用全体の難易度が上がったと捉えている企業が増えているというデータもあります。
株式会社リクルートが実施した調査では、中途採用全体の難易度が上がっていると感じている割合は、「難しくなった」「やや難しくなった」を合わせて43.3%と、半数近くにのぼっています(調査期間:2023年3月)。

2021年度と比較した際の、2022年度の中途採用全体の難易度の変化感(n=840)(単一回答)

グラフ_2021年度と比較した際の、2022年度の中途採用全体の難易度の変化感(n=840)(単一回答)

出典:株式会社リクルート「企業人事の採用に関する調査 第1弾 中途採用の現状、採用は難化傾向が続く」(2023年)

採用難易度が高まる中でも求める人材を採用するために外部の知見を借りる企業もあり、結果的に採用活動に関する知見が豊富なRPOへの注目が高まったと推察されます。

RPO(採用代行)を利用するメリット

企業が採用活動でRPOを利用する場合、次のようなメリットが得られると考えられます。

  • 採用業務の工数を削減できる
  • 外部の専門知識を取り入れられる

メリット1:採用業務の工数を削減できる

RPOを導入することで、自社の採用業務の工数を削減できる場合があります。
RPOを利用すれば採用活動に関する一部の業務を外部に委託できるため、委託した業務分の工数を軽減できるでしょう。

メリット2:外部の専門知識を取り入れられる

外部の専門知識を取り入れられる点もメリットになる可能性があると言えるでしょう。
RPOは、採用業務支援に特化したサービスであることから、採用にまつわるさまざまなノウハウを有していると考えられます。また、多くの企業の採用活動を支援してきたこともあり、これまでの実績を活かした支援も期待できます。
RPOを利用することで自社では思いつかなかった施策や方法を知れることもあり、新たな施策を展開できたり、採用活動を効率化できたりする場合もあるでしょう。

RPO(採用代行)を利用する際の3つの懸念点

RPOを利用する際には、次の3つの懸念点について留意しましょう。

  • 使い方によってはかえって採用コストが高くなる
  • 良くも悪くも契約内容が制約となり、柔軟な対応がしづらい
  • 社内に採用ノウハウがたまりにくい

懸念点1:使い方によってはかえって採用コストが高くなる

RPOを導入する際、使い方によっては、かえって採用コストが高くなる場合もあります。RPOの料金はアウトソースする業務の内容やボリュームによって変動します。また利用するサービスによってもかかる費用は異なります。
RPOを利用したからといって、一概に採用コストを下げられるとも限らないことを理解しておきましょう。

懸念点2:良くも悪くも契約内容が制約となり、柔軟な対応がしづらい

良くも悪くも契約内容が制約となり、柔軟な対応がしづらくなる懸念もあります。外部企業に業務を委託する場合、業務の遂行方法や任せる業務の範囲を細かく定義する必要があります。
委託先企業の対応や委託する業務によっては、自社で対応するよりも臨機応変な対応がしづらいと感じることもあるでしょう。

懸念点3:社内に採用ノウハウがたまりにくい

採用業務をアウトソースすると、採用担当者は委託した業務に関与する機会が減り、該当業務に関するノウハウが蓄積されづらくなるリスクもあります。場合によっては、次回以降の採用活動で自立的な活動が難しくなり、RPOに頼った採用活動になってしまう懸念もあります。
RPOを利用する際は、業務を任せっぱなしにすることは避け、RPOの知見を吸収できるよう場面に応じて積極的に関与していく姿勢も持ち合わせておくようにしましょう。

アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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