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人事部とは
「人事部」とは、ヒト・モノ・カネといわれる経営資源のうち「ヒト」を最大限に活用するための戦略立案、実行を担う部門です。
人事部のミッション・目的
人事部の業務は、自社にマッチする優秀な人材の採用から従業員一人ひとりが高いモチベーションを持って働けるような人員配置、評価制度の策定・運用、労務管理など多岐に渡ります。人事部のミッションとは、従業員の能力を最大化し事業の成長を支えることであり、その目的は、人材によって組織を活性化させ、企業を成長させることだということができます。
総務・労務との違い
企業によっては「総務・人事部」といったように、総務部と人事部を一つの部署にしている場合や、人事部が「労務部」を兼務している場合もあります。部門が分かれていたとしても、総務・労務・人事の業務は密接に関連し、互いにサポートしあいながら業務に取り組んでいるのが一般的です。
総務、労務は以下のような役割を中心に担っています。
総務部の業務
備品の管理、社内外のイベントの企画・運営、代表電話の受付・来客応対、稟議書や契約書など重要書類の作成・管理など、企業運営を支える業務が中心です。
労務部の業務
就業規則の策定・見直し、勤怠管理、給与計算、社会保険の手続き、入社・退社手続き、福利厚生の制度設計・運用、安全・衛生管理など、従業員が安心して働ける環境づくりに取り組んでいます。
労務の仕事に関しては、以下の記事をご参照ください
労務と人事の違いとは?<意味がわかる!>仕事内容や資格を解説
人事部の役割と仕事内容
人事部の役割
では、人事部はどのような役割を担っているのでしょうか。ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授は「人事の機能」を以下のように提唱しています。
- 1. 戦略パートナー(Strategic Partner)
- 2. 管理のエキスパート(Administrative Expert)
- 3. 従業員のチャンピオン(Employee Champion)
- 4. 変革のエージェント(Change Agent)
以下の図は、デイビッド・ウルリッチ教授が提唱したものを参考にリクルートマネジメントソリューションズが定義したものです。
従来の人事は、経営が決定した人事戦略の実行や労務管理などのオペレーション中心でしたが、近年、経営戦略と人事マネジメントが連動した戦略人事へと移行していく傾向があります。
出典:リクルートマネジメントソリューションズ 「人材マネジメント実態調査2010からの考察 「人事の役割」とは」
人事部の仕事内容
人事部がどのような業務を担当するかは、企業によってそれぞれ異なりますが、人材採用と管理・人員配置の企画・人事評価・研修による人材育成・労働環境の整備・労務管理が主な仕事内容となります。
人員配置
企業の経営戦略、事業目標を達成するために、経営戦略に沿って適切な部門構成や人員配置を行います。従業員一人ひとりのスキルや経験、志向を把握し、適材適所に配置することでパフォーマンスを最大化することにつながります。経営の意向と現場の状況を考慮しながら、最適な体制を考えることが求められます。
人材採用
企業の経営戦略・事業計画に沿って年間の採用計画を策定し、採用充足に向けて人材紹介業者との連携や求人媒体への出稿、企業説明会のイベントの企画・運営、採用サイトやパンフレットの制作などあらゆる施策を行っていきます。採用候補者の選考、内定・採用後や入社後フォローなども行い、入社後の定着・活躍までをサポートします。
教育・研修
従業員一人ひとりの成長が、企業の成長につながります。従業員の成長を支援する教育・研修制度の策定も人事の重要な仕事です。今、自社が求めている能力はどのようなものか、経営や現場のニーズ・課題を把握し、新人・中堅職員・管理職など、それぞれの階層に合わせて適切なプランを策定・実行します。メンター制度の導入といったOJT研修の導入のほか、外部の研修サービスを提供する企業との連携を行います。また、研修の手法は対面だけではなくe-learningなどのオンライン形式までさまざまなものがあるため、自社の目的に応じた研修のスタイルをつくっていくのも人事の仕事です。
eラーニングに関しては、以下の記事をご参照ください
LMSとは?eラーニングに必要な学習管理システムのメリットや役割を解説
OJTに関しては、以下の記事をご参照ください
【人事必見】OJTとは?意味やメリット・デメリットと導入するポイントを解説
評価制度の設計・運用
従業員の業績や能力、企業への貢献を適正に評価し、成果を挙げた人が報われる評価制度の設計、運用も人事の大切な仕事です。目標管理制度や評価制度、昇格制度、給与体系づくりなど、従業員が高いモチベーションを維持し、成長し続けられるような、透明性・公平性を持った人事評価制度の構築、運用・改善を行います。
労務管理
長時間労働是正のための残業削減の取り組み、従業員のワークライフバランス充実のためのフレックスタイム制の導入、テレワークといった新しい働き方の検討など、企業の実情や時代に応じた労務管理を行う必要があります。従業員が健全かつ安全に働ける環境づくりも人事の大切な役割です。
給与計算
月ごとの従業員の給与計算、時間外労働を把握し割増賃金の計算、年末調整、源泉徴収票の発行などを担当します。
人事部の年間スケジュール
企業の事業年度や、職務分掌の定義によって違いはありますが、人事部が携わる業務の年間スケジュールとして、以下のような例を挙げることができます。
人事に必要な能力・スキル
人事の仕事内容は多岐に渡りますが、人事に求められる能力・スキルはどのようなものがあるのでしょうか。
コミュニケーション能力
社内外の多くの人と関わるポジションでありコミュニケーション能力は非常に重要です。社内では経営層・マネジメント層・メンバー層などあらゆる従業員とコミュニケーションをとり、現場の声を聞いて、自社の方針や自分の意見を分かりやすく伝えることが求められます。
社外では社会保険労務士や産業医などのプロフェッショナルをはじめ、採用・研修サービス提供業者と協働する機会も多いため、バックグラウンドの異なる人たちとコミュニケーションを深め、異なる意見を調整していく力が求められます。
コミュニケーションに関しては、以下の記事をご参照ください
コミュニケーション能力とは?高い人の特徴や低い原因など高める方法を解説
戦略構築力
企業が成果を出し続けるためには、自社のおかれているビジネス環境や法律の改正などの社会・経済の動きを把握し、時代に即した施策や制度を設計していくことが大切です。経営戦略を理解し、経営と現場の橋渡し役として従業員の想いや職場の課題など、現場の声を反映した施策・制度を構築していく力が求められます。
事務処理能力
人事部の仕事内容は多岐に渡るため、ミスが起こらないよう的確に事務処理を行う能力が必要です。たとえば急な欠員のための採用といった突発的な業務が発生する場合もあります。こうした突発的な事態にも柔軟に対応することが求められます。
コンプライアンスに対する高い意識
企業は法律や条例はもちろん社会的規範や就業規則などの社内規定を含め、あらゆるルールを守る義務があります。コンプライアンス違反は企業に多大なダメージを与えます。企業の社会的信用を守るためにも、まず人事部門としてコンプライアンスを遵守する姿勢が必要です。
これからの時代に求められる人事とは
戦略人事
従来の人事は管理業務が中心でしたが、近年は経営的な視点を持った「戦略人事」が求められています。戦略人事とは、経営目標を達成するために、人材マネジメント・育成・組織開発など人材活用面から支援することです。適切に戦略人事を行なっていくためには、経営目標を理解し、経営者と同じ視点で人事業務を行う必要があります。
「欠員があるから採用する」といった場当たり的な捉え方ではなく、自社の成長のために必要な人材要件や人数、入社後の育成方法、目標とする組織像などを明確にし、戦略的に対応していく必要があります。
また経営幹部の一員として経営視点で人事戦略を立案していくCHRO(Chief Human Resource Officer=最高人事責任者)を置き、改革を推進していく企業もあります。
CHRO/CHOに関しては、以下の記事をご参照ください
CHRO/CHO(最高人事責任者)とは?人事部長との違いや求められる役割を紹介
戦略人事に関しては、以下の記事をご参照ください
従業員に多様な働き方を提供する
2018年に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が施行されました。「働き方改革」は、働く人々が各人の状況に応じて、柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。長時間労働の是正や、正規雇用社員と非正規雇用社員の待遇格差を禁止する同一労働同一賃金の制度など法律に対応するほか、多様な能力・価値観、ライフスタイルを持つ従業員が自ら選択できる働き方を提供し、ライフイベントに左右されず望むキャリアプランを描けるような制度を設計していく必要があります。働きやすい環境を整えることが結果的に従業員のモチベーションを高め、離職防止につながると考えられます。
出典:厚生労働省「働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」
環境の変化に応じた施策・制度のアップデート
コロナ禍のオンライン面接や研修のように、人事部は時代に応じた新しい手法を取り入れて社内の仕組みや制度を常にアップデートすることが求められています。また採用、育成、評価、人員配置などの人事関連業務でも「HR テック(AIやビッグデータなどの最先端のテクノロジーを人事領域に活用することで、業務の効率や質を高めていくサービス全般)」の導入が進んでいます。テクノロジーを活用し、業務の効率化や質を向上させていくことも、これからの人事部には欠かせなくなってくるでしょう。
HRテックに関しては、以下の記事をご参照ください
HRテックとは?活用できる領域・サービスや今後のトレンドを紹介
ここまで見てきた通り、人事部の仕事は、採用、配置異動、人事評価、人材育成、各種制度策定、労務管理など多岐に渡り、重要な経営資源の一つである「ヒト」に関するすべてのことへの関わりが求められます。また制度変更や整備に向けた知識やノウハウの取得や、労働法などの専門知識を習得することも必要です。企業の採用活動が難しくなるなか、従来からある人事管理業務に加え、採用活動における新しい取り組みへの対応も求められています。
企業の経営戦略と人事戦略の結びつきを理解し、経営的視点を持ちながら人材を採用、育成、活性化していくことが、これからの人事部における重要な役割だといえます。本記事が人事部門の役割や業務を見直すきっかけになれば幸いです。