採用活動にあたり、採用管理システム(ATS)の導入を検討し始めたものの、「どのような機能があり、自社ではどう活用できるのか」「どのような効果が期待できるのか」と悩む採用担当者は多いようです。採用管理システムでできること、導入のメリット、向いている企業、選定のポイント、導入の注意点などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

採用管理システム(ATS)とは?

まず、「採用管理システム(ATS)」についての基本を理解しておきましょう。

採用管理システム(ATS)とは何か

採用管理システムは、通常「ATS」と呼ばれます。ATSは「Applicant(応募者)Tracking System(追跡システム)」の略称です。

採用管理システム(ATS)とは、応募者一人ひとりについて、応募から入社までの状況を一元管理できるシステムです。「応募者の応募書類」「面接日程」「面接での評価」「選考の進捗状況」などのデータを効率的に管理できます。

採用管理システムが注目されている背景

近年、採用手法が多様化しています。人材採用の難易度が高まるなか、多くの企業が複数の手法を併用して採用活動を行っており、採用業務が煩雑化しています。加えて、採用担当者のマンパワーも不足している場合も多いことから、採用業務の効率化を図る手段として採用管理システムが注目されています。

採用管理システムを活用すれば、データの分析により、採用活動の振り返りがしやすくなります。採用計画PDCAを回しながら自社の採用力を高めていく方法としても、期待が寄せられているのです。

採用管理システム(ATS)の導入によってできること

採用管理システム(ATS)の導入により、どのようなことができるようになるのかをご紹介します。

求人の管理

採用活動を行っている求人について、転職サイトへの掲載や転職エージェントへの依頼なども含め、求人情報の一元管理が可能です。具体的には、次のような機能を活用できることがあります。

  • 自社採用ページの作成
  • 転職サイトの求人情報ページの作成
  • 求人情報の登録、更新
  • 求人情報の社内共有
  • 転職エージェントへの求人情報の共有(求人のオープン・クローズの連絡)
  • RPO(採用代行の外部パートナー)との連携

採用活動を進めるなかでは、採用ターゲットや募集要件の変更、新規情報の追加、入力ミスの訂正などの作業が生じるものです。その際、複数の転職サイトや転職エージェントを利用していると、更新を行ったものと更新できていないものが混在し、求職者や転職エージェントなどに間違った情報が伝わることでミスマッチの状態になってしまい、混乱を招くこともあります。

採用管理システムで簡易かつスピーディに「最新の求人情報」を管理していれば、それに基づく求人媒体の修正や転職エージェントへの周知などもタイムラグ少なく実行できるでしょう。

応募者情報の管理

応募者の情報を管理する機能として、次のようなものが挙げられます。

自社の採用ページや他社の媒体など、複数ルートからの応募者情報を一元管理できます。次のような機能があります。

  • 自社サイト
  • 他社媒体からの応募者のシステムへの自動連携
  • 面接担当者への情報共有
  • 応募者情報の閲覧制限
  • 応募経路(チャネル)ごとの応募者情報管理

応募者情報を一括で共有することで、常時募集・多数職種の募集・応募者多数の企業などでは膨大な工数が削減できるでしょう。採用管理システムを活用しない場合、表計算ツールなどで「求人媒体Aからの応募者、転職エージェントAからの応募者」と入力したり、書類選考を行う際に担当者数名に応募書類を毎回添付して共有したりといった作業に手間がかかるかもしれません。

選考状況の管理

選考プロセスにおいて、下記の機能を活用できます。

  • 選考者の進捗状況管理
  • 応募経路(チャネル)別の選考状況管理
  • 選考結果の共有
  • 応募者への連絡
  • 面接調整のサポート
  • Web面接ツールとの自動連携

応募者情報を一括で共有でき、常時募集・多数職種の募集・応募者多数の企業などでは膨大な工数の削減につながります。

また、応募者・選考状況のデータ(数値、定性的な評価コメント、応募者とのやり取り内容など)が残るため、振り返り・分析を行い、次回の募集時の打ち手を見つけやすくなると期待できます。

内定者の管理

内定者に対する手続きにも、採用管理システムの機能を活用できるため、入社までのフォローがしやすくなります。

  • 内定通知書の作成
  • 内定通知書の送信
  • 内定承諾書の受領
  • 入社手続きの進捗管理
  • 内定者とのコミュニケーション(オファー面談、入社前面談の設定など)

内定者に対して必要な対応項目の漏れを防ぐほか、内定後のフォローをスピーディに行うことで、内定辞退率の低減や入社後のミスマッチ低減につながる可能性があります。

採用管理システム(ATS)を導入するメリット

採用管理システム(ATS)を導入すると、企業側にも応募者側にもメリットがもたらされます。一例をご紹介します。

企業側のメリット

採用ルート・採用ツールが多様化すると、応募者の情報があちらこちらに散在したり、採用担当者が各自で情報を専有したりと、情報管理の問題が生じる可能性があります。採用管理システムの導入によって、あらゆる情報の一元管理が可能になり、採用部門や外部パートナーとの情報共有もしやすくなれば、工数の削減につながります。連絡の抜け漏れも防げるでしょう。

採用担当者の業務負荷が軽減されれば、その分、採用候補者とのコミュニケーション、採用活動の振り返り分析、新たな戦略立案などに集中する時間を確保しやすくなる可能性があります。業務効率化により、採用コストや人件費の削減にもつながると期待できます。

採用現場においては、通常業務を行いながら面接・選考も行うのは負荷がかかります。その点、採用管理システムにアクセスすれば、「応募者情報が集約されている」「前回の面接の評価ポイントや懸念ポイントが確認できる」「面接日程の調整で採用担当者と何度もやりとりしなくてよい」「業務で通常使うチャットツールなどで通常業務同様に連絡などを受けられる」など、負荷を軽減できるでしょう。

また、自部門に必要な人材要件や自部門の仕事の魅力・やりがいなどを、人事・採用担当者にクリアかつリアルに伝えられるため、求める人材の採用につながる確率が高まることも期待できます。採用管理システムを通じて採用活動に関与しやすくなり、効果につながれば、エンゲージメントやモチベーションの向上につながることも考えられます。

応募者側のメリット

採用管理システムによって応募者情報や選考の進捗状況が適切に管理されていれば、「面接案内」「選考結果の通知」といった連絡の抜け漏れや遅れがなくスムーズに行われ、応募者は安心感を得られるでしょう。

また、応募者との面接内容や面接後の評価などを社内で共有することにより、応募者は「同じ話を何度もされる(聞かれる)」「前回の面接で話したことが伝わっておらず、自分のことを理解してもらえていない」「面接担当者によって話に食い違いがある」などといった不安やストレスを抱くことも少なくなると考えられます。

採用管理システム(ATS)の導入に向いている企業

採用管理システム(ATS)を利用する効果やメリットは、企業によっても異なります。一例として、以下に該当する企業であれば、採用管理システムの導入によって効果を得られる可能性があるでしょう。

毎年定期的に一定数以上の採用を行う企業

採用活動を定期的に行い、一定数以上の人数を採用している企業であれば、多くの応募者・内定者情報や採用活動スケジュールの管理がしやすくなるでしょう。高いコストパフォーマンスも期待できます。

複数の人材紹介サービスや求人媒体を利用している企業

「採用職種やポジションが多岐にわたる」「採用難易度が高い人材を求めている」「大量人数を採用する」といった場合、複数の転職エージェントに依頼したり、複数の求人媒体に出稿していたりするケースが多いかと思います。そうした企業の場合、応募経路ごとの応募者情報の管理、求人のオープン・クローズ、募集内容の変更の連絡などの工数軽減につながるでしょう。

事業部や事業所・店舗が複数ある企業

事業部や事業所・店舗などが複数あると、それぞれの募集状況・選考状況の管理が煩雑になるかもしません。特に、離れた場所にある事業所や店舗の採用も本社一括で行う場合、採用現場とのコミュニケーションを取りづらく、情報共有が難しいことがあります。社内連携に課題がある企業にも、採用管理システムは適しているといえるでしょう。

採用担当者の負担が大きくコア業務に支障が出ている企業

採用担当者がほかのコア業務と採用業務を兼務している場合など、大きな負荷がかかり、コア業務に集中できないこともあるようです。採用管理システムで工数削減を図ることで、担当者のそうした課題を解決できる可能性があります。

採用管理システム(ATS)を選ぶ上でのポイント

採用管理システム(ATS)には多様な種類があります。自社にマッチするものを選ぶためのポイントをお伝えします。

どのような採用対象に活用したいか

「新卒採用」または「中途採用」に特化した採用管理システム、両方に対応している採用管理システムがあります。中途採用でも「正社員・契約社員」「アルバイト・パート」など、特定の雇用形態に特化したものもあります。自社の採用対象に対応している採用管理システムを選びましょう。

自社の効率化したい業務に即した機能があるか

例えば、「応募者情報の管理を効率化したい」「面接担当者とのスケジュール調整を円滑化したい」「依頼している複数のエージェント、求人媒体のすべてを一元管理したい」「採用活動の振り返り分析を簡単に行いたい」など、自社が効率化を図りたい業務について、希望に即した機能があるかどうかを確認しましょう。

自社採用力向上につながるか

「システム上で求人情報を作成しエージェントへ共有する」「検索エンジンや求人媒体(メディア)へ求人情報を掲載する」「自社の採用サイトを作成できる」など、システムによってさまざまな付加価値が提供されています。自社の採用課題にマッチし、採用力の向上につながる機能を備えたものを選ぶといいでしょう。

採用プロセスの可視化・分析ができそうか

採用活動のプロセスを可視化し、どこに課題があるのかを把握できることも、採用管理システムを活用するメリットの一つです。これまでの採用活動の進め方に課題意識を持っている場合、データ分析機能が充実したシステムを選ぶことで、課題解決につながりやすくなるかもしれません。

わかりやすい・操作しやすい管理画面か

採用管理システムは、複数のメンバーで利用することが多いため、初めて使用するメンバーでも容易に操作できるシステムであることが重要です。操作が複雑で使いにくいとミスにつながる恐れもあります。
また、採用部門の担当者のITリテラシーに不安がある場合なども、わかりやすさを重視して選ぶといいでしょう。

導入・運用時のサポート体制は手厚いか

採用管理システム導入後、操作方法に戸惑うこともあるでしょう。運用していくにあたり、どのようなサポートを受けられるのか、無料なのか有料なのか、あらかじめ確認しておきましょう。操作方法を教えるだけでなく、より効果的に活用する方法をアドバイスしてくれる企業であればなお安心です。

自社のセキュリティ水準を満たしているか

セキュリティ対策が充分でないと、応募者の個人情報が流出し、自社への信頼を損ねてしまう恐れもあります。自社が定めるセキュリティ水準を満たしているかどうかもチェックしましょう。不正ログイン時のアカウントロック機能、権限・担当範囲設定による応募者情報へのアクセス制限など、採用管理システムによってさまざまなセキュリティ機能を備えています。

現在利用中のほかのサービスとの連携ができるか

採用管理システムのなかには、ほかのサービスと連携することによって、作業効率の改善が見込めるものもあります。例えば、SNSツール、スケジュール管理ツール、オンライン会議ツールなどとの連携が可能なシステムもあります。すでに利用しているサービスがある場合、連携が可能か、また連携が簡単にできるかどうかも重要なポイントです。

採用管理システム(ATS)を導入する上での注意点

採用管理システム(ATS)を導入する際には、以下のポイントを意識するとよいでしょう。

複数の採用管理システムを比較検討して導入する

「他社の採用担当者が勧めていた」といった理由だけで決めず、「自社に合うかどうか」という観点で、複数の採用管理システムを比較検討しましょう。

これまでご紹介したとおり、採用管理システムは「採用対象」「採用課題」「外部媒体やツールとの連携状況」などにより、企業によってマッチするものが異なります。多くの機能が装備されていて、採用管理システム単体としては高機能・優秀でも、自社の環境や業務に最適かはわかりません。採用予算、費用対効果、サポート体制といった観点も重要です。自社に合わないシステムを導入すると「コストだけかかって活用できない」といった事態にも陥りかねません

システム導入後に全社的な利用フォローをする

導入を決定したら、使用方法の研修など、全社的なフォロー体制も用意しましょう。現場(採用部門)や経営陣などの面接担当者にとっては、他業務や他ツールが複数あり、採用管理システムを新たに使い始めることに負担を感じる場合も考えられます。使うのが面倒で後回しなどになると、応募者対応・転職エージェント対応などが後手になり、採用活動が進まない可能性があります。その担当者にとって必要最低限の機能や作業だけに絞って共有するなど、「面倒だ」と感じさせないような配慮が大切でしょう。

採用部門の担当者の反応が遅いなど、使い方がわかっていない様子が見えたら、導入初期は特に丁寧に個別フォローが必要です。また、導入後の変化や改善を、現場や経営陣などに報告します。例えば、「応募者・母集団が○%増加」「選考辞退率が○%減少」「内定受諾率が○%上昇」など、採用管理システムを導入した価値を感じてもらえれば、積極的な利用継続につながるでしょう。

自社の採用プロセスに必要な機能に絞って活用する

多様な機能がある採用管理システムを導入すると、逆に業務や工数を増やしてしまうこともあります。例えば、採用担当のマンパワーが不足している状況でありながら、「応募者や進捗状況の分析機能があるから、週次で分析しなければ」「タレントプールも作れるからそちらの管理も徹底してやろう」などと考え、その負荷がかかることで、応募者対応などより優先順位が高い業務がおろそかになってしまうかもしれません。

採用管理システムを導入する最大、かつわかりやすい効果は、応募者・選考管理のさまざまな工数削減です。まずはそこに焦点を当て、自社の採用プロセスに必要な機能に絞って活用するといいでしょう。運用に慣れたり、運用体制に余裕ができたりしたら、徐々にほかの機能を活用していくようにしてはいかがでしょうか。

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アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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