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ファシリテーターとは?
ファシリテーターとは、会議や研修において、参加する全員を巻き込みながら、目的に向かってスムーズで効率的な会議を実現させるための進行役です。参加者の発言を促し、中立的な立場で意見を集約しながら、会議の目的を達成させる役割を担います。
ファシリテーターと司会の違い
司会とは、会議においてはプログラム通りの進行を実現する、また研修においてはカリキュラム通りの進行を実現する進行役です。そのため参加者に発言を促す場面は非常に限られており、会議の雰囲気や結論も発表者や司会者によって左右されます。会社の方針をトップダウンで落とし込む場面や、月次会議のようにルーティンとして定型内容を共有する場面において、司会の役割は重要です。
一方ファシリテーターは、参加者の当事者意識を高めてアイデアを引き出したり、参加者同士の相乗効果を生み出したりする場面において、その役割が発揮されます。あくまで主役を参加者に設定して、発言を促し、会議の目的達成に導くのがファシリテーターです。
ファシリテーターの目的
会社や上司が求めている会議の結論を探るのではなく、参加者1人1人が自分事として問題解決に向き合えるように働きかけ、結論に至るプロセスに関わることができるように会議全体をコントロールします。
このプロセスを通じて、参加者の意見を引き出すことで相乗効果を生み、会議の目的を達成することがファシリテーターの目的です。ファシリテーターの働きかけによって全員が会議に参加する目的を強く意識するようになり、当事者意識を高めることで、会議に対して動機付けがされている状態、モチベーションが上がっている状態を作ることができます。
ファシリテーターの役割
会議や研修を実施する目的として、参加者への単なる情報共有だけでなく、問題解決や方針達成のために参加者自身の意識や行動の変化を起こすことが挙げられます。
これを、参加者を出発点(A地点)から到着点(B地点)に連れていく構図にたとえて説明しましょう。ファシリテーターは会議のなかで、A地点からB地点に向かうプロセスに大きく関わります。
A地点は参加者それぞれに異なります。所属している部署や担当している業務、役職によって、同じ問題に対する見え方や考え方にギャップが生じるためです。ファシリテーターは各参加者の知識や経験が異なることを把握したうえで、会議をするために必要な共通認識や共通言語を揃えます。
このように、参加者のA地点はバラバラで見ている方向も違いますが、B地点は全員で考え結論を出すことになります。ファシリテーターは会議の目的を達成するために存在しますので、参加者全員が自分事として会議の目的を捉えて、B地点を目指すことが必要です。
A地点からB地点を目指すプロセスにおいて、ファシリテーターがどのように関わるのか、例をあげながら解説します。
たとえばA地点がバラバラだと、ある部署にとっては利益となる取り組みでも、別の部署では負担が増えて重荷になる、ということはよくある現象です。議論がぶつかり合うことを避けるために、B地点を目指す前に、お互いのA地点を理解しておく必要があります。ファシリテーターは会議開始後の早い段階で、参加者が自己紹介をする機会を作り、現在の取り組みや抱える課題を発表、共有してもらうといった方法も有効です。
B地点を目指すプロセスをコントロールすることがファシリテーターの役割ですので、議論が建設的に進行するように、会議前に参加者数名にインタビューをして、議論するうえで障害になりそうなことをピックアップしておくと手を打ちやすくなります。
また話し合いが活発に行われるようになると、議論が脱線する現象が起こります。たとえば、離職率を下げるための会議を行っているはずが、世代間ギャップの話を延々と続けてしまったり、採用基準だけにフォーカスした枝葉の議論で深掘りしてしまったりということが多々起きます。これでは参加者の行動変化に繋がらず、B地点を見失った会議になってしまいます。
このときも、ファシリテーターが会議の軌道修正役として機能することで、発言の内容を尊重しながらもB地点に向かう筋道を作れるようになります。細かい軌道修正を行うことで、結果的にタイムキーピングされた会議が実現され、参加者もB地点を見失うことなく会議の目的を常に意識できるようになります。
ファシリテーターが有効なシーン・場面
会議において、発言する人が限定されポジションパワーが働いてしまっては、参加者が柔軟に思考し持っている能力を発揮することが難しくなります。また発言自体が不足していると会議に活気が出ないばかりか、お互いに空気を読んでしまい、他人事のまま会議が終了して何も決まらない、または決まったとしても参加者の充分な合意形成がされていないという問題が起こります。
ファシリテーターが存在することで、会議に参加する前提条件(共通認識や共通言語)を揃えて、発言しやすい場を演出することができます。
たとえば、発言しやすい話題を切り口に本題に入り、それぞれの発言を尊重することによって、参加者の「発言に自信がない」「自分の発言は重要ではない」「議論に割り込みにくい」といった、参画の機会損失を防ぐことができます。
また在宅ワークの浸透により、オンラインで会議や研修を行う機会が増加しています。たとえ大人数の話し合いであっても、ファシリテーターと参加者との距離感が均等になり、議論中の表情変化やチャットへの書き込みなどもより効果的に拾い上げることができるようになりました。発言者による一方通行のコミュニケーションが続く状態を防ぐことができ、さらなる意見を引き出し、オンライン会議であっても活気を与えることができます。
ファシリテーターによって得られるメリット
ファシリテーターが会議を進行することによって、発言しやすい環境を整え、参加者に発言を促し、全員に当事者意識を持たせることができます。結果的に、参加者による合意形成がされた結論を導きやすくなります。結論に至るプロセスに参画していますので、1人1人の納得度が高く、会議において合意形成されたこと、されなかったことが明確になり、具体的なアクションにスムーズに移行することができます。
発言しやすい雰囲気を維持することで、誰もが発言をして意見交換を行いやすくなるので、参加者同士が発言に耳を傾け、自分の考えと照らし合わせるようになり、一緒に目的を達成するための方法を考えるようになります。会議だけでなく組織としても一体感が生まれ、その後の行動変化に繋がりやすくなります。
ファシリテーターに必要なスキルとは
ファシリテーターに必要なスキルは、以下の4点です。
1.安心感を与えて、発言できる場をデザインするスキル
ファシリテーターが参加者の発言を引き出したり、コミュニケーションを図ったりするうえでもっとも重要なスキルは、発言者の意見を否定しないことです。具体的には、発言者に身体や顔を向けて最後まで話を聞き、アイコンタクトをとったり、相槌や発言を要約してフィードバックしたりすることによって、安心して発言できる雰囲気や環境を作ります。
2.参加者の意見や能力を引き出す対人関係スキル
ファシリテーターは、場の雰囲気を活性化して発言やアイデアを引き出すために、それぞれの発言の背景や裏側まで察して相互理解を促し、参加者の発言が表面的にならないように配慮します。「もう少し具体的に教えてもらえませんか」のように、発言者の発言を尊重しながら深掘りをする、また聞いている側の気持ちを代弁して、より具体的に内容を理解するための働きかけによって、参加者同士のコミュニケーションを多角的に広げるスキルも必要です。
3.議論をわかりやすくまとめ上げる構造化のスキル
ファシリテーターには、議論の構造を見抜き、構造化して、その中身について参加者に周知させるスキルが必要です。参加者の発言が活発になるほど、抽象的な議論から枝分かれした議論に変化していきます。枝葉的な議論を根本的な議論に戻したり、専門的な概念を一般的な言葉にかみ砕いたりするためには、発言内容を言い換える、要約する、数々の発言に関係性を作る、過去の発言をたどるなど、瞬発的な構造化のスキルが求められます。ある程度、思考パターンを訓練して習得しなければなりません。
4.意見を集約させる合意形成のスキル
会議の目的を達成するためには、参加者の意見を集約させて、全体の合意形成を行わなければなりません。ファシリテーターには、議論を俯瞰し、結論に向かって筋道を作るスキルが求められます。各々の意見を引き出し、相互理解を促すだけでなく、結論が曖昧なまま会議が終了したり、意見が衝突したまま解散したりすることがないよう、会議の目的に向けて議論をまとめ、参加者の納得を得る必要があります。
ファシリテーターが注意すべきこと
ファシリテーターとして、スムーズで効果的な会議を行うための土台づくりには注意が必要です。
参加者が主役となるよう発言を促し、会議を活発化させるためには、ファシリテーター自身も明るい表情で発言を肯定的にフィードバックして、コミュニケーションしやすい雰囲気を演出しなければなりません。会議全体のレベルがファシリテーターに大きく依存しますので、会議進行に必要なスキル習得や準備、シミュレーションが重要です。
また参加者が守るべき前提条件として、会議に臨む姿勢や発言に対する共通ルールをしっかり定めて落とし込みます。発言を最後まで聞く、否定せず発言を尊重する、自分の考えを持つ、といった共通ルールを明示し、遵守させる厳しさが必要です。
※コミュニケーションに関しては、以下の記事をご参照ください
コミュニケーション能力とは?高い人の特徴や低い原因など高める方法を解説
また発言に対して、事実と印象を区別して受け止め、ファシリテーター自身の関わり方に偏りが出ないよう公平性や客観性を保ちます。ファシリテーターと参加者の隙間を埋めるために、ファシリテーター自身の想いや経験を伝える場面が効果的になるケースもありますが、あくまで中立的な立場を崩さず、参加者主体の議論になることを最優先しなければなりません。