近年のビジネスシーンで、「コミットメント」という言葉を耳にすることが増えています。しかし、この具体的な意味などを理解していないまま、何となく使っているようなことも多いのではないでしょうか。
この記事では「コミットメント」という言葉の意味や使い方を解説します。

コミットメントとは

コミットメント(commitment)とは、「委託」「約束」「公約」「責任」「言質」といった意味を表す言葉です。日本語のニュアンスとしてよく使われるのは、「責任を持って引き受ける」「参加する」などの意味です。
「約束する」という意味でも用いられますが、「責任を持った約束」など、より強い意志を持っているニュアンスとなります。

「コミットする」とは

「コミットする」という言葉は、英語ではコミットメント(commitment)の動詞形となり、委託する、約束するなどの意味となります。
最近のテレビCMなどでよく耳にする言葉ですが、日本語の文脈の中では、コミットメントと同じように名詞的な意味、用法で使われていることが多いでしょう。

ビジネスシーンにおけるコミットメントとは

ビジネスシーンにおいてもコミットメントという言葉はよく使われていますが、その際の意味は以下のようなものになります。

「結果を約束する」

コミットメントには「約束」という意味がありますが、ここでは軽い意味での約束ではなく、「責任を持って結果を約束する」などの強調したニュアンスが含まれることが多いようです。
たとえば「仕事の成果をコミットメントする」などといえば、成果に対する約束が強調され、相手からの期待値も高まって本人の責任度合いは増すので、相応の見通しのもとで使うことが必要でしょう。

「主体的に関与する」

コミットメントには「関与する」という意味もあり、こちらも「主体的な姿勢で真剣に関わる」などの強いニュアンスを持っています。相手からの期待が高まる言葉であり、
安易に使えば相手から信頼を失うことがあり得るので、使い方には注意が必要です。

生産性に関わる組織コミットメントとは

「組織コミットメント」とは、組織に対する帰属意識や関係性を示す概念をいいます。企業における組織コミットメントが高ければ、所属している社員は満足度やモチベーションが高く、コミュニケーションは活発に行われ、生産性向上などビジネスに良い影響をもたらすことが期待できます。
また、会社への愛着や帰属意識が高くなることで、離職率が低く抑えられることにもつながる可能性があります。

組織コミットメントには、「情緒的」「存続的」「規範的」という3つの要素がありますので、それぞれ確認しておきましょう。

情緒的コミットメント

社員が持つ感情や価値観などの情緒的な要素から生まれるコミットメントで、愛社精神やエンゲージメントといった言葉で置き換えることもできます。「この会社が好き」「この会社でずっと働きたい」などの気持ちがあることは、情緒的コミットメントが高いといえる状態です。本人の志向や能力、適性に合致した業務や役職に携わることで、情緒的コミットメントは高まる傾向があります。

※エンゲージメントについては、以下の記事をご参照ください。
エンゲージメントとは?高めるポイント、調査方法、向上させる施策を紹介

存続的コミットメント

功利的コミットメントともいわれ、その組織にいることで得られる評価や報酬などがあることで生まれるコミットメントです。必ずしも高い報酬を得られているということばかりではなく、組織を離れることによって生じるリスクを懸念して、現状を維持して安定していたいという思考も含まれます。ともすれば現状維持に傾きがちになることがあり得ます。

規範的コミットメント

組織に所属するからにはその組織に尽くすべき、といった忠誠心から生まれるコミットメントです。組織に対して従順ですが、受け身の姿勢が強く、自分の意思で行動することや提案などはあまり進んで行おうとしない傾向を持っている場合があります。

組織コミットメントを高める方法

組織コミットメントが高いことによるメリットは多くあります。組織コミットメントを高めるためには、さまざまな方法を組み合わせて、計画的に継続した取り組みを進めることが必要です。
組織コミットメントを高めるための方法として、以下のようなものが考えられます。

企業理念やビジョンの整備・共有

企業では、その存在意義や目指す姿などが、経営理念、ビジョン、ミッションなどの形で示されています。さらに最近では、環境問題や社会貢献といったテーマについても、目標やCSR活動の取り組みを公表している企業は多いです。
組織コミットメントを高めるためには、これら企業理念やビジョンが社内で理解、共有され、それぞれの社員がこの内容に共感していることが必要です。なぜなら、企業理念やビジョンが整備・共有されて、社員に理解・共感されるようになると、「この会社が好き」という情緒的コミットメントが高まる可能性があるからです。
情緒的コミットメントが高まると、理念やビジョンに合致した行動につなげることができるので、企業理念やビジョンを、社員にしっかり伝えて浸透させることが重要になります。

※CSRに関しては、以下の記事をご参照ください
【事例つき】CSRとは?活動の種類や企業のメリット・デメリット、進め方を解説

オープンで働きがいがある職場環境作り

組織コミットメントを高めるには、オープンな雰囲気で働きがいがある職場環境を作ることが必要です。社員にとっての仕事のやりがいや、働きやすい環境がどのようなものかを考え、それらを両立することができれば、生産性の改善や向上、離職率の低減や優秀な人材の採用など、さまざまな効果が期待できます。
働きやすい環境とは単なる福利厚生の充実といったことばかりではなく、社員の意見や提案を組織運営に取り入れることができる仕組みづくりや、気兼ねなく意見交換やコミュニケーションができるオープンな雰囲気づくりなども重要です。

コミュニケーションが活発な組織では、風通しよく意見交換ができることによって多くのアイデアや提案が出され、下記のようにさまざまな問題解決や改善につなげることができます。

  • 経営と現場の距離が縮まって適切な情報共有ができるようになる
  • 相互理解が進み問題解決のスピードが上がる
  • 社員からの不満の発生を事前に防止する

お互いの理解が進めば、職場での人間関係を円滑にすることができ、このことも組織コミットメントの向上につなげることができます。
具体的な業務での改革や改善、福利厚生の充実ほか社内の仕組みづくり、コミュニケーション強化や風土改革の人事施策など、さまざまな面からより良い職場環境作りを進めることが必要です。

社員の適性に合った仕事への配置や役割の付与

組織コミットメントを構成する要素のうち、情緒的コミットメントは社員が持つ感情や価値観から生まれるコミットメントですが、社員のスキルや適性に合った仕事や役割を与えることができれば、仕事や会社に対する満足度が向上して、組織コミットメントも高まる傾向があります。
ひとりひとりの社員の能力や適性を把握して、その人にふさわしい仕事・部署・役割に配置することが重要になります。そのためには日ごろの仕事ぶりを観察し、今の業務状況や将来のキャリアプランに関するコミュニケーションを積み重ね、本人の志向や能力、適性に合った仕事や役割を与えていくことが必要です。

さまざまな分野のコミットメントの意味

コミットメントという言葉は、使われる分野によっても、そのニュアンスは変わってきます。比較的よく使われる代表的な分野でのコミットメントの意味は、以下のとおりです。

金融業界のコミットメントラインとは

金融業界には「コミットメントライン」という言葉があります。これは銀行などの金融機関が、顧客に対して融資枠や金利、貸し出し期間などに一定の枠を設けて、その条件の範囲内であれば、顧客の請求にもとづいて融資できるようにする契約をいいます。
「銀行融資枠」とも呼ばれ、融資のたびに審査などの手続きをすることが不要になることや、必要に応じたタイムリーな資金調達が可能になることから、顧客と金融機関の双方にメリットがあります。
利便性が増す一方で、手数料負担が増すことや、借り入れが実際にスムーズに進められるようになるかといった点は、十分な確認が必要です。

心理学のコミットメントとは

心理学の分野では「コミットメント効果」という言葉として使われています。これは何かに対する目標を掲げたときに、それを対外的にコミットメントすることで、目標達成率が上がるという効果をいいます。
言葉で口に出して宣言することによって、人はその言葉との一貫性を持たせようという心理が働き、さらに公的な場面での宣言は、自分を追い込んだり緊張感を持ったりすることにつながって、目標達成に向けた行動が強化されます。このような心理が目標達成率を高めることにつながるとされます。

経済学のコミットメントとは

経済学でも「コミットメント」が使われることがありますが、一般的な意味とは少し異なっており、ここでは「特定の行動しかとれなくするような実効性のある仕組みを作ること」をいいます。
たとえば「最低価格保証」など、他店と同額まで必ず値引きするとコミットメントすることで、顧客が他店で購入する選択肢をなくして自社の顧客を確保しつつ、他店が値引きすることも無意味になるので、価格競争を避けることができるようになります。

コミットメントがつく言葉

「コミットメント」とつなげて使われる言葉としては、以下のようなものが挙げられます。

コミットメントレター

金融機関から融資の際に提示される書類です。融資の条件や返済期限、そのほかの決定事項が記載されています。

オーバーコミットメント

仕事などで自分の担当範囲を超えて介入したり、他人に余計な指示を出したりする越権行為をいいます。
自分の能力を超える約束をすることや仕事に傾注しすぎた状態を指すこともあります。

トップコミットメント

CEOや社長など、企業トップからの所信表明をいいます。一般的には企業ビジョンや社会貢献活動、環境問題に関連した取り組みなどが含まれているものが多いです。
トップからの表明としては、強い意志を持った重みがある内容として受けとめられます。

パブリックコミットメント

自分以外の第三者がいる場で発言・宣言した、自身の約束や目標をいいます。パブリックという言葉には「公的」という意味がありますが、そこまで大きなニュアンスではなく、友人、家族、上司、同僚、そのほか比較的身近な関係者に向けた発言です。自らの意思で宣言することで「一貫性の原理(法則)」といわれる心理が生まれ、宣言したことがウソにならないように、やらなければならないという気持ちで行動するため、目標達成率が高まるとされています。

ここまで見てきたとおり、コミットメントという言葉は「約束」や「関与」をはじめ、さまざまな意味を持っていますが、いずれの場合でも、それを強調するようなニュアンスが含まれることがあります。この言葉を使うことによって、相手からの信頼感が増して期待値は高まりますが、強調した言葉である分、うまくいかなかったときは、それまでの信頼や期待に対するマイナスの反動が大きくなる可能性があります。特にビジネスシーンにおいて使う際には、十分な注意が必要です。
コミットメントの意味や状況に応じた使い方をよく理解して、よりよいコミュニケーションにつなげることを心がけましょう。

合わせて読みたい/関連記事

経営戦略
経営戦略

ESGとは?SDGsとの違い、取り組み事例、導入ステップをわかりやすく紹介

経営戦略
経営戦略

グローバル人事とは?課題と実現方法をわかりやすく解説

経営戦略
経営戦略

戦略人事とは?必要な条件、実現方法を徹底解説

中途採用
中途採用

人事部とは?役割や仕事内容、年間カレンダー、必要なスキルを紹介