目次
人材確保が上手くいかない理由
多くの企業が悩みを抱えている人材確保の課題。そもそもなぜ人材確保が重要なのか、人材確保の失敗によって企業にどのような影響があるのか、よくある失敗要因についてご説明します。
人材確保が重要な理由
人手不足感は社会全体として年々高まっており、厚生労働省が2019年3月に行った調査では、1990年代初頭のバブル期に次ぐ水準にまで到達しています。
こうした人手不足によって、既に会社経営に影響を及ぼしている企業は全体の7割を超えており、「現在のところ影響はないが、今後3年以内に影響が生じることが懸念される」企業も加えると全体の96%にも及び、ほぼすべての企業が人手不足を課題と捉えていることがわかります。
人手不足が会社経営に及ぼす具体的な影響は、既存事業の運営への支障、新規需要増加への対応不可、技術・ノウハウの伝承の困難化、余力以上の人件費の高騰などと考えられます。
また、一方で職場環境にもマイナスの影響が大きく、残業時間の増加、社員の働きがいや意欲の低下につながっているケースも少なくありません。こうした労働環境の悪化でさらなる退職が続く、離職率の高さが採用にも悪影響を及ぼす、といった負のスパイラルに陥ることのないよう、人材確保に取り組んでいく必要があります。
人材確保に失敗する3つの理由
「人材確保」というと新規の採用をイメージする方もいますが、同時に今いる社員の定着率を高めていく取り組みも重要になります。その両面から、企業が人材確保に失敗する理由について解説していきます。
1.採用活動の全体設計ができていない
「募集を出してもなかなか候補者が集まらない」「面接で通らない」という悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。採用成功のための重要な取り組みは、募集を出す前段階の工程から始まっています。
求める人材の基準は明確になっているのか。採用マーケットと照らし合わせて果たして適切か。ターゲットに対して適切な採用手法が取れているのか。自社や採用ポジションの魅力を言語化し、競合企業と差別化できているか。こうした募集前の準備を徹底することから始まり、採用フローや面接内容の検討まで、採用活動の全体設計を丁寧に行うことが採用成功の鍵となります。
2.離職する本当の理由を把握していない
離職前にあえて波風を立てたくないという理由などから、建前としての離職理由を伝える離職者も多くいます。しかし、離職する社員の「本当の理由」を知らなければ、離職防止の対策をとることはできません。
ネガティブな離職理由としては、「上司・経営者の仕事の仕方が合わない」「労働環境に不満がある」「人間関係が悪い」「給与が低い」などがよくあげられます。こうした離職につながる要因を事前に把握していくためには、日頃からコミュニケーションを取り、本音で語り合える人間関係を構築していくことが何より大切です。
3.組織の課題を改善していない
離職につながる要因を発見できたとしても、適切な打ち手を講じていかなければ意味がありません。例えば「人間関係が悪い」という不満に対しても、あくまで本人と同僚との1対1の問題もあれば、「上司と部下の間で信頼関係が築けていない」「組織内のチームワークが悪い」などの組織課題によるものなど、要因はさまざまです。こうした課題を明確にし、具体的な改善策を打つことで、離職を防げる可能性は高くなります。
【人材採用面】人材確保を成功させる5つのポイント
売り手市場が続く転職マーケット。優秀な人材確保に向けて、採用力強化につながる5つのポイントをお伝えします。
1.求める人材の具体化
採用を行うための骨子となるのが「人材要件」。現場と人事で求める基準が合っていないというのもよくあるケースです。双方ですり合わせながら、スキル・経験における「MUST(必要条件)」「WANT(十分条件)」を明確にすることから始めましょう。さらに長く活躍してもらう上で重要となるのが人物面です。企業理念や社風とのマッチングなどを考慮しながら、人物像を設計していきます。
ただし、これらはあくまで企業としての求める人材要件です。「採用マーケットにほとんど候補者がいない」「自社と候補者で条件面が合わない」といったズレがあれば、候補者が集まらず採用は失敗に終わってしまいます。本当に必要な要件に絞り、候補者の対象を広げていくことも検討しましょう。
2.求める人材に適した募集方法の検討
採用する職種・業界、採用難易度、予算などによって、最適な募集方法を検討しましょう。一例をあげると、プロの介在によって求める候補者に的を絞って募集したい場合は人材紹介サービス(転職エージェント)、多くの会員に募集をかけて適する人材を広く集めたい場合は求人媒体が適しているといわれています。
他にも公共職業安定所(ハローワーク)や自社採用サイト、社員紹介による「リファラル採用」、SNSを活用した「ソーシャルリクルーティング」、企業が直接求職者にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」など、さまざまな採用手法があります。
3.自社の魅力を言語化
自社らしさや魅力とは何か?競合他社と差別化できるポイントはどこか?採用担当者や面接官がしっかり認識できていなければ、候補者に動機づけすることはできません。
事業の成長性・安定性など企業としての魅力、やりがいや喜びなど仕事の魅力、給与・休日休暇・福利厚生など待遇面の魅力、研修制度・評価制度・組織風土など環境の魅力など、多面的に検討してみてください。
もし見つけられないという場合は、社員にヒアリングしてみるという方法もおすすめです。言語化ができたら、求人情報に記載したり、面接で動機づけを行う際の材料にしていきましょう。
4.採用フローの見直し
優秀な候補者ほど忙しいもの。採用スピードが遅かったり、面接回数が多すぎたりすると、先に内定の出た他社へと入社を決めるケースも少なくありません。大切なのは、自社の採用要件に合わせて面接で誰が何を見極める必要があるのかを明確にし、合理的な面接回数と適切な面接官を設定することです。
採用フローに正解はありません。常に結果を振り返り、どこのフローに課題があるのか、歩留まり改善のために何ができるのか、PDCAサイクルを回していくことが重要になります。
5.採用面接を口説きの場にする
そもそも面接とは、何の為にするのでしょうか。「自社に必要な人材かどうか見極めるため」という認識の方も多くいます。けれど、本来の目的は「採用するため」なのです。優秀な候補者ほど数多くの企業から引き合いがあり、面接の時点では転職先候補の1社に過ぎません。候補者と直接会って話ができる面接は、入社動機を高める機会でもあるのです。
採用力の高い企業ほど、面接を口説きの場と位置づけ、自社や募集ポジションの良さをプレゼンテーションして振り向いてもらうという意識で取り組んでいるところが多い傾向にあります。
【人材定着面】人材確保を成功させる5つのポイント
社員の離職は、採用・教育コストの面ではもちろん、知識やノウハウの喪失にもつながるなど、会社にとって大きな損失です。一方で定着率が上がれば、生産性や業績、社員のモチベーション、採用力の向上にもつながるなど、さまざまなメリットがあります。
1.評価制度の改善
離職の原因にもつながるのが、評価制度への不満。もちろん会社が全社員を公平に評価するのは、決して簡単なことではありません。しかし、優秀な人材であるほど、適正な評価・査定を求めています。評価制度が形骸化していないか、社員にとっての納得度の高い評価基準になっているか、昇進・昇格の基準が明確になっているか、評価後の社員へのフィードバックが十分になされているか、などを見直してみてください。正当に評価されている実感が持てれば、目標達成へのモチベーションもあがり、社員の力をより引き出すことにもつながります。
2.研修制度の充実
主に早期離職を防ぐために2つの研修があります。一つは導入研修の充実、もう一つがスキルアップを支援する階層別や職種別研修の充実です。転職者の場合、仕事の進め方の違いや知識面の不足で不安を覚えるケースもあります。研修や OJTといった実務面のフォローのほか、面談などを通したマインド面のサポートも有効です。
今の環境では成長を感じられない場合、キャリアアップやスキルアップを求めて転職に踏み出す求職者も多くいます。社員の成長度合いを見極めながら、職種別研修や階層別研修を実施し、常にステップアップしていける環境を作ることが大切です。社員のスキルや意識の向上につながるだけでなく、人材育成に力を入れているという印象を与えることも、社員定着につながる要素となるでしょう。
3.キャリアパスの提供
キャリアパスとは、自分の目指す業務や職位にたどり着くまでの道筋のことです。目標に向かって、いつまでにどのような経験を積み、どのようなスキルを身につけていけばいいのか、社員に明確に示すことができているでしょうか。年功序列の時代が終わり、いかにスキルや能力を高めていけるかは、働く個人にとって死活問題。キャリアパスの提供により社員の継続的なスキルアップが可能になるほか、「会社は自分の能力をきちんと見てくれている」と感じられることで不満解消にもつながります。
4.福利厚生の充実
福利厚生を充実させることは、社員定着率はもちろん、採用における企業イメージのアップにもつながります。福利厚生には、住宅、健康・医療、慶弔、育児・介護、自己啓発、財産形成、レクリエーションなどさまざまな種類がありますので、ぜひ社員の声を取り入れながら、必要な福利厚生を検討してみてください。また、昨今では社員自らが自分に必要な福利厚生メニューを選択できる「カフェテリアプラン」などを導入する企業も増えています。
5.労働時間の適正管理
働き方改革が話題となり、労働環境の改善が進んでいますが、自社の状況はいかがでしょうか。時間外労働や休日出勤が頻繁に発生していませんか。2019年より法律で義務付けられた有給休暇を正しく取得できる環境になっていますか。サービス残業をさせていませんか(明確な法律違反です)。
すべての企業には、従業員の労働時間を適正に管理することが労働基準法で義務づけられています。コンプライアンスを重視し、従業員の健康を守ることは離職率改善にもつながっていきます。