企業が存続し成長や発展を遂げていくためには、経営者が立案した「経営環境の変化に対応していくための方針や戦略」の担い手となる人材が必要です。
これに関して、企業は、必要な人材を確保することに対する質的・量的な課題を解決するために採用を行います。今回は採用を確実かつ的確に行うための方法のひとつであるRPOについて解説します。

RPOとは?

RPOとは「Recruitment Process Outsourcing」という言葉の略語であり、企業が、自社の採用に関して、業務の一部もしくは全部を、採用に関する専門的なノウハウを有した外部の事業者に委託することです。「採用アウトソーシング」「採用サポート」とも呼ばれています。

RPOが注目される背景

RPOが注目される背景には、採用や人事に関する環境の変化があります。

採用に関する競争の激化

現在、日本の人口は減少の一途をたどっています。それにともない、生産年齢人口(15歳~64歳までの人口)も減少を続け、採用に関する競争を示す指標の一つである有効求人倍率(一人の求職者に対して何件の求人件数が存在するか)が上昇しています。こうした変化を背景に、人材に対する企業間での奪い合いが生じており、採用に関する成果を確実に得ることを目的とした外部のノウハウの活用への需要が高まっていると考えられます。

出典:

内閣府「令和4年版高齢社会白書」

独立行政法人労働政策研究・研修機構「新型コロナウイルス感染症関連情報:新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響 国内統計:有効求人倍率」

採用業務の複雑化と高コスト化

著者の周囲の企業においても、採用に関する競争の激化にともない採用業務が複雑化し、採用担当者の業務負担が増加しているといった声をしばしば耳にするようになりました。
具体的には、採用市場の分析、候補者との接点を増やすためのイベントや説明会の実施、採用チャネルの開拓、応募者をつなぎとめるためのやり取り、採用活動の進捗管理や結果の分析などがあげられます。

確実な採用を行うため、企業にはさまざまな対応が求められるようになっています。こうした対応には、膨大な時間や費用を要します。そのため、採用に関する費用対効果を最適化することを目的として、外部のノウハウを活用することへの需要が高まっているのです。

人事の採用業務以外の業務への集中

企業の人事部は採用業務以外にも、人材の育成や人事評価制度の運用、環境の変化に対応するための組織設計などを担っています。

企業が存続し成長していくためには、こうした人事部の業務を通じて人材の質を向上させながら最適な組織を運営していく必要があります。そのため、人事部が採用業務以外の業務に集中することを目的として、採用業務をアウトソーシングすることへの需要が高まっているといえるでしょう。

※人事部の役割については、こちらもご覧ください。

人事部とは?企業での役割、必要な能力・スキルを詳しく解説

RPOが可能な業務内容

それではRPOを委託する場合に、どのような業務をアウトソーシングできるのか説明していきましょう。アウトソーシング先の企業(以下、アウトソーシング企業)によって詳細は異なりますが、一般的に、採用計画の立案や採用の実施、採用活動終了後の結果分析まで、採用に関する業務全般についてアウトソーシングすることが可能です。

採用計画の立案

依頼する側の企業は準備として、自社の事業計画などに即した必要な人材要件や人数、配置先の部門や採用時期といった項目を明確化しておきましょう。

そのうえで、採用活動のスケジュールや活用する媒体・サービス、人材へのアプローチ方法や予算を含む採用計画の立案をアウトソーシングすることができます。

さらに立案した採用計画について、経営者からの承認を得たり、関連する部門間での調整などについてもアウトソーシングできます。

候補者の確保

採用活動の確実性を高めるためには、一定数以上の候補者を確保することが必要になります。RPOにおいては、候補者数を確保するための施策として、採用ホームページの制作、採用原稿の作成や各種求人媒体への出稿、人材紹介会社への人材紹介依頼、採用に関するイベントや説明会の企画や運営などもアウトソーシングが可能です。

さらに、これらの活動の予算についても、企業が策定した範囲内で実施できるよう管理を委託できる場合があります。

候補者への対応

採用活動では候補者を集めるだけではなく、集まった候補者のなかから、自社の求める人材を選考する必要があります。

RPOではこうしたプロセスに関して、候補者とのやり取り、面接の設定、面接や適性検査、選考などの業務についてアウトソーシングが可能です。

さらに、これらの業務に関するノウハウを企業内に蓄積するため、委託したプロセスに関するマニュアルの作成や採用担当者へのトレーニングなども行ってくれます。

入社までのフォロー

採用を決定した人材の入社の確実性を高めるためには、採用を決定するだけでなく、採用決定後の適切な対応が求められます。

こうした対応に関して、RPOでは、内定の通知、入社に関する承諾の獲得、内定後のフォロー、入社説明会の実施、入社前書類の回収といった業務をアウトソーシングすることができます。前述した「候補者への対応」と同様に、マニュアルの作成や採用担当者へのトレーニングなども行ってくれます。

採用活動の分析とフィードバック

より精度の高い採用活動を行っていくためには、採用実施後に一連の活動を分析し、振り返りを行うことが大切です。その点RPOでは、採用活動の分析、採用に関する課題の特定と解決策の提案、今後の採用に際してアピールすべき企業の強みや差別化要素の提案まで対応してくれるアウトソーシング企業もあります。

RPOのメリット

RPOを活用することで、以下のようなメリットが得られます。

企業の採用力が強化される

RPOによって、外部の専門的なノウハウの活用が可能になり、最適なプロセスや方法を通じた採用活動の実現が期待できます。

こうした採用活動の実現は、企業の採用力の強化につながり、自社の存続や成長に必要な人材の確保の手助けとなります。

採用コストが最適化される

採用活動における企業間での競争激化にともない、候補者の数を増やすための戦略的な対応、候補者との緻密なやり取り、採用したい人材を入社に導くための対応などが必要となっています。こうした対応を適切に行うためには、膨大な時間的・金銭的コストが必要になります。

RPOを行うことで、こうした膨大なコストに関して外部の専門的なノウハウの活用が可能になり、採用活動に関するコストを最適化することができます。

人事部が採用業務以外の業務に専念できる

前述したように、人事部が採用業務以外の業務に集中することを目的としたRPOへの需要が高まっています。

このように採用活動を外部に委託することで、人事部が採用業務以外の業務に労力を振り分けることができるようになることは、RPOを行うメリットといえます。

RPOのデメリット

RPOの活用に関しては、以下のようなデメリットが想定されます。

採用に関する経験や知見が蓄積されにくくなる

採用活動は大変な業務である一方、求人媒体・サービスの効果的な活用や人材紹介会社との交渉、候補者数を増やすための対応や求める人材の入社を確実にするための対応など、必要なプロセスに関する経験が増すことで多くのノウハウが自社に蓄積されます。これらのノウハウの蓄積によって、採用活動の精度が高くなっていくことが期待できます。しかし、採用活動をRPOに任せてしまうことで、採用に関する経験やノウハウが蓄積されにくくなる恐れがあります。

採用活動に関して柔軟な対応をしづらくなる

採用活動では応募や選考の状況に応じて、採用計画や採用体制の見直しを行うなど、柔軟な対応が求められます。

採用業務の一部で RPOを行っている場合、契約内容によっては、委託している側の企業が採用活動に関して柔軟な対応をしづらくなることがあります。

採用のミスマッチが生じてしまうリスクをはらむ

新たな人材を採用する場合、知識やスキル、経験といった能力面についても重要ですが、人材が自社の企業文化や価値観にマッチするかという側面に関しても検討する必要があります。

しかし、採用活動に関して外部に委託した場合、アウトソーシング企業に自社のカルチャーについてしっかり理解し、共有してもらうことは意外と難しいものです。そのため、採用後に人材と自社の間で、カルチャー面のギャップが生じてしまう可能性もあります。

RPOの導入に向いている企業

RPOの導入に関して、導入を検討するとよいと考えられる企業について、著者の経験を基に解説します。

早期に人手不足を解消したい企業

絶対的な人手不足に陥っており、既存の従業員の業務負荷が増大して離職者の数が増えているといった企業は、早期に人手不足を解消するという意味合いで、RPOの導入に向いているといえます。

採用のミスマッチが繰り返されている企業

候補者に自社が必要としている知識やスキル、経験などがあるかについて、人材を適切に見極めることができず、採用のミスマッチを繰り返している場合、採用のプロのノウハウを活用することで採用のミスマッチを減らすことが期待できます。このような場合、RPOの導入によって採用率をアップするなどの効果を得ることができるでしょう。

人事部に人手不足が生じている企業

人事部に人手不足が生じ、人材の育成や人事評価制度の運用、環境の変化に対応するための組織設計といった業務に手が回っていない場合、人事部としての機能を強化するという意味合いで、RPOの導入に向いています。

RPOを依頼する際の流れ

RPOを導入するには、一般的には以下の流れで実施されます。

事前打ち合わせ

契約後、採用活動をスムーズに進めていくため、採用に関する目標やニーズ、過去の採用実績や課題などについてアウトソーシング企業に伝え、今後の採用に関して重要なことに対する共通認識を持ちます。

プラン提案

事前打ち合わせの結果を踏まえて、アウトソーシング企業が採用に関するプロセスや方法、目標、金額などに関するプランを提案します。

委託する側の企業は、自社にとって最適な委託先を選ぶために、複数のアウトソーシング企業からプラン提案を得るとよいでしょう。

契約の締結

アウトソーシング企業からの採用に関するプランに合意したあとは、採用に関する業務の一部もしくは全部を委託するための契約を締結します。

採用活動の開始

契約の締結後、アウトソーシング企業が人員の確保や業務フローの設計など、採用活動を行うための体制を構築し、採用活動が開始されます。

採用に関する進捗管理

採用活動の開始後、採用活動の成果についてアウトソーシング企業から定期的に報告が行われ、今後の採用活動を最適化するための協議が行われます。

RPOを依頼する際のポイント

RPOを活用する際には、以下のポイントに留意して行うことが望ましいです。

業務の分担を明確にする

採用活動は広範囲に及ぶため、アウトソーシング企業への指示が曖昧だと「このような指示はされていない」「このようなサービスは契約に含まれていない」などといわれてしまい、トラブルに発展する場合があります。

こうしたトラブル防止するためにも、アウトソーシングする業務と自社で行う業務との分担を明確にする必要があります。

委託後のコミュニケーション機会を増やす

RPOを委託した後、自社とアウトソーシング企業とのコミュニケーションが不足していると、自社の望まない形で採用活動が行われ、企業文化や価値観に合わない人材が採用されてしまうなどの不具合が生じてしまうことがあります。

こうしたトラブルを防ぐため、アウトソーシング企業とのコミュニケーション機会を増やし、必要な情報の共有や状況の確認、今後の対応の協議などを適宜行うことが望ましいです。

金額だけで委託先を選ばない

発注金額や業務委託料が安いといった理由だけで、アウトソーシング企業を選んでしまうと、自社の望むような成果を得られない可能性があります。自社に適さない企業に依頼すると採用活動はスムーズに進まず、採用のミスマッチが生じる可能性は高くなるでしょう。また、こうした齟齬をリカバリーするための時間的・金銭的コストが発生してしまう恐れもあります。

このような事態を防ぐためにも、アウトソーシング企業を選ぶ際には、金額面だけでなく、実績や顧客満足度、セキュリティに関する対応などについてチェックし、自社にマッチするかをよく検討したうえで選ぶ必要があります。

リクルートエージェントでは採用成功に向けたプロジェクトチームを編成し、戦略立案から実行まで行うRPOのサービスを実施しています。RPOの導入を検討されている方は、一度詳細を確認してみてはいかがでしょうか。

※リクルートエージェントRPOサービスについては、こちらをご覧ください。
リクルートエージェントRPOサービス

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