「できるだけ多くの応募者と面接したいが時間がない」といった悩みを抱える採用担当者のなかには、採用活動でスクリーニングを行うことに関心のある方もいるのではないでしょうか。採用活動におけるスクリーニングは自社に合う人材を効率的に選別することを目的に行われ、さまざまな手法があります。今回は、そのメリットや活用時の注意点などについて解説します。

採用のスクリーニングとは

採用のスクリーニングとは、応募者が自社の採用基準に合致しているかどうかをふるい分けることです。応募者の数が多い場合、すべての応募者と面接するためには、膨大な時間が必要になります。面接の前段階でスクリーニングを行うことで、応募者のなかから自社の採用基準を満たした人材を抽出し、採用活動の効率化を図ることがその目的です。

同様の意味で、従来から行われている履歴書や職務経歴書、エントリーシートなどによる書類選考も、採用活動におけるスクリーニングの一種といえます。

採用活動にスクリーニングを行うメリット

ここでは、採用のスクリーニングを行うメリットについて解説します。

採用にかかる時間やコストを削減することができる

応募者のなかには、スキルや経験などにおいて、自社の採用基準に満たない人材もいます。こうした応募者に対して事前にスクリーニングして選別することで、面接すべき人材を絞り込むことができます。そのため、すべての応募者と面接する場合に比べて採用の工程が効率化され、時間とコストを削減することができます。

面接の精度が高まる

事前のスクリーニングによって、採用基準に満たない応募者がふるい分けられるため、採用基準に合致した応募者に対しては、面接でより多くの時間をかけることが可能になります。結果として面接の精度が高まることが期待できます。

※面接については、こちらもご覧ください。

面接官必見の事前準備、気をつけるポイント、心構えをわかりやすく解説

応募者の納得感が高まる

スクリーニングを行うことで、人材を絞って面接を行うことができるため、面接時間に余裕が生まれます。このように面接時間に余裕があれば、面接時に十分に質疑応答の時間を確保できるようになります。その結果、企業側はもちろん、応募者自身も面接に対する納得感が高まり、採用時のミスマッチを減少させると同時に、不採用者に対しても一定の納得感を醸成する効果が期待できます。

採用活動にスクリーニングを行うデメリット

次に、採用のスクリーニングにおけるデメリットについて解説します。

担当者の主観が影響する可能性がある

前述の通り、採用活動においてスクリーニングを行うことで、基準を満たした応募者に絞り込んで選考ができるようになります。しかし、スクリーニングの基準に関して、担当者の主観や感情が入り込みすぎると、適切なスクリーニングができなくなる可能性があります。そのためスクリーニング基準については、客観的に検討することが必要です。

優秀な応募者もふるいに落としてしまうリスクがある

スクリーニングは採用活動を効率化するうえで有効な方法ですが、履歴書やエントリーシートだけでは応募者のすべての要素をチェックすることはできません。応募者の書類上だけでは見つけることができなかった応募者の適性や能力も、実際に面接することで発見できることも少なくありません。採用の際にスクリーニングを導入するには、優秀な人材を見落としてしまうリスクについても理解しておくとよいでしょう。

代表的なスクリーニング方法

採用に活用されるスクリーニングにはさまざまなものがあります。ここでは代表的なスクリーニング手法について解説します。

履歴書・職務経歴書(エントリーシート)を用いる方法

応募時に履歴書や職務経歴書の提出を応募者に求め、その内容に基づき選別する手法は、従来からある一般的なスクリーニング手法のひとつです。履歴書や職務経歴書に、学歴や職歴などの情報、応募者の人柄などについて記載してもらいます。これらの情報をもとに、自社の採用基準に合致しているかをチェックします。

適性検査を用いる方法

SPIなどの適性検査や筆記試験も、採用におけるスクリーニングの手法として多くの企業で活用されています。適性検査の種類として、性格適性と基礎学力を判定する検査や心理検査などが有名です。これらの検査を活用する際の注意点は、検査内容を自社の採用基準とリンクさせることです。適性検査で高得点だからといって、必ずしも自社の求める人材であるわけではありません。また、応募者がどのような分野に適性があるのかを測ることで、入社後の配置を検討する際にも役立ちます。

※SPIについては、こちらもご覧ください。

SPIのテストセンターとは?利用目的、会場などをわかりやすく紹介

採用活動にスクリーニングを取り入れる際の注意点

採用活動において、スクリーニングは非常に有効な手法ですが、導入の際にはいくつか注意すべき点があります。

スクリーニングの基準と採用基準は異なることを理解する

「当然のこと」と思われる方もいるかもしれませんが、採用活動にスクリーニングを活用する際には、スクリーニングの基準と採用基準は異なることをおさえておきましょう。

スクリーニングは、あくまで多数の応募者をふるいにかけ、面接が可能な人数まで絞り込むことを目的としています。たとえば、中途採用者であれば、SPIなどの適性検査だけではなく、最低限の知識や経験、スキル、資格など、業務に不可欠と思われる基準でスクリーニングする場合もあるでしょう。

これに対して採用基準は、業務に不可欠のスキルや経験を持っていることを前提として、たとえば事業戦略実現に寄与する能力があるかどうか、その企業の文化や価値観にマッチする人物かどうかなど、募集する業務や役割によって設定すべき基準が変わってくるのが一般的でしょう。

スクリーニングで高得点だからといって、必ずしも採用基準に照らしたときに高評価となる人材、すなわち自社の求める人材であるわけではない、という点はよく理解しておきましょう。採用活動においてスクリーニングをうまく活用するには、この2つの基準を混合せず、選考を二段構えで考えるのがポイントの一つといえます。

採用基準を明確にし、客観的な評価も取り入れるようにする

著者が複数の企業の採用プロセスに関わるなかで感じてきたのは、採用活動においてスクリーニングをうまく活用している企業に共通しているのは、スクリーニング後の選考段階で必要となる採用基準が明確であることです。それは、採用基準を明確にすることで、スクリーニングの基準も明らかになるからだと考えられます。

採用基準を明確化するにあたって悩ましいのは、応募者の知識や経験、経歴などの数値化が難しいという点ではないでしょうか。こうした項目については担当者が判断することになり、結果的に主観的なものになりがちです。主観のすべてが悪いわけではありませんが、自社に必要な人材像や採用基準を明確にし、複数方法でのチェックを取り入れて客観的な評価を行う工夫をすることも忘れないようにしましょう。

※採用基準については、こちらもご覧ください。
採用基準とは?求める人材を適切に見極めるための設定方法、見極め方を解説

スクリーニングだけに頼りすぎない

スクリーニングはメリットの多い手法ですが、自社の基準に合致しない人材を選別する手法であることから、いわば「減点評価」と捉えることもできると著者は考えています。明らかに基準に合わない人材を事前に不採用とすることも大切ですが、一方で応募者の「よい部分」を評価することも重要ではないでしょうか。スクリーニングのみに頼りすぎず、複数の評価方法を取り入れたり、面接で工夫をするなど、バランスのよい採用活動を心がけましょう。

今回は、採用活動におけるスクリーニングの特徴やメリット、取り入れる際の注意点について解説しました。スクリーニングは応募者を絞り込むことで、採用活動の効率化を助けるものです。またコストや時間の削減についても効果が期待できます。しかし、担当者の主観が影響しやすいなど注意すべき点もあります。こうしたメリット・デメリットについて検討しながら、さまざまな手法をバランスよく活用し、採用活動をよりよいものにしていきましょう。

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