採用活動では、思うように人材を採用できない事態に直面することもあります。一方で、なぜ採用がうまくいかないのか、その原因がわからず対策や改善に取り組めないことも少なくありません。
そこで今回は、採用がうまくいかない原因をプロセスごとに紹介するとともに、各原因に対する対策について、人事組織コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

採用がうまくいかない原因一覧【採用活動のプロセス別】

採用がうまくいかない場合は理由があります。主な原因をまとめました。
気になる項目をクリックいただくと、該当の章に遷移します。

採用計画の作成・ 求める人物像が不明瞭
・ 採用活動と事業戦略に不整合が生じている
・ 期間・予算・マンパワーなどが現実的ではない
採用手法の検討時・ 適切な採用手法が選択できていない
・ 他社と差別化できていない
採用募集のスタート時・ 求職者への提示内容が適切ではない
・ 母集団の数が少ない
・ 採用競合企業の分析が十分ではない
・ 待遇などの条件が相場と比較して見劣りする
選考時・ 採用担当者や面接担当者のスキルが足りない
・ 経験・スキル以外の選考基準のすり合わせができていない
内定オファー時・ 内定を出すまでに時間がかかってしまう
・ なぜ内定となったのか、選考結果に対する説明が不足している
内定後フォロー時・ 内定後フォローの内容が決まっていない
・ 同期との交流の場がない
入社後・ 入社前と入社後にギャップがあった

採用活動がうまくいかない原因|採用計画の作成時

採用活動がうまくいかない原因が採用計画の作成時にある場合、下記3つの要因が根底にあると考えられます。

  • 求める人物像が不明瞭
  • 採用活動と事業戦略に不整合が生じている
  • 期間・予算・マンパワーなどが現実的ではない

求める人物像が不明瞭

採用計画の作成時には、求める人物像を明確に定義しておく必要があります。

求める人材を明確に定義せずに採用活動が開始されてしまうと、採用活動に携わるメンバー同士で求める人物像の認識がズレてしまい、採用基準や評価にバラつきが生じてしまうことがあります。その結果、採用したい人材を逃してしまったり、採用ミスマッチを招いてしまったりするかもしれません。また、適した採用手法や媒体を選定できず、期待するほど応募が集まらないケースも起こり得ます。

そのため、採用計画の作成時には、配属先部署の担当者と求める人物像について綿密にすり合わせを行い、求める人物像を明確にしていきましょう。また、スキルや経験に限らず、社風や組織風土に合うかなど、定性的な項目についても、採用活動に携わるメンバー同士で認識の齟齬が生じないよう、言語化するなどして求める人物像をすり合わせておくことが大切です。

採用活動と事業戦略に不整合が生じている

採用活動と事業戦略に不整合が生じると、採用がうまくいかない可能性があります。採用活動と事業戦略を紐づけず、単に人員を補填するような採用の場合、入社後にその社員が事業成長に貢献するモチベーションを持てなかったり、自身の能力を思うように発揮できず、会社に対して不満やミスマッチを感じてしまうかもしれません。

採用活動に取り組む際は、採用担当者だけではなく経営層も巻き込み事業戦略と結び付けながら、計画的に人材を採用していく必要があります。事業戦略との整合性が取れた採用計画を策定できれば、企業の成長に寄与する人材を採用できる可能性が高まるでしょう。結果的に採用後のミスマッチや早期離職が減るかもしれません。

期間・予算・マンパワーなどが現実的ではない

期間・予算・マンパワーなどが現実的ではない場合、採用活動に無理が生じ、計画通りに採用活動が進まなくなる場合があります。

採用予算や期間、採用に割ける人員は、実現可能な範囲内で定めるようにしましょう。もし、採用予算が不足する場合や人材の採用まで期限が限られている場合は、採用手法を変更したり使用する媒体を再検討したりしてみましょう。採用活動に割ける人員が少ない場合は、採用代行(RPO)に業務の一部を代行してもらったり、人員を増やしたりする方法があります。

また、採用計画を定める際は、採用活動が計画的に進まない場合を想定し、採用予算や期間、採用に割ける人員にある程度余裕を持たせておくようにしましょう。

採用活動がうまくいかない原因|採用手法の検討時

採用活動がうまくいかない原因が採用手法の検討時にある場合、下記2つの要因が根底にあると考えられます。

  • 適切な採用手法が選択できていない
  • 他社と差別化できていない

適切な採用手法が選択できていない

適切な採用手法が選択できていない場合、期待するほど応募が集まらず「採用活動がうまくいかない」と感じることもあるでしょう。
各採用手法にはメリットや注意点があり、それぞれ特性も異なります。採用ターゲットや自社の特徴、魅力などに合わせて使い分ける必要があると言えるでしょう。

思うように応募者が集まらない場合は、採用手法を見直してみましょう。また、同じ採用手法でも利用する媒体を変えるだけで成果が大きく変わることもあります。採用手法を見直す際は、利用している媒体も一緒に見直してみましょう。

他社と差別化できていない

他社と差別化できていない場合、求職者の興味を喚起できず、応募を見送られている可能性があります。
たとえ適切な採用手法を用いていたとしても応募動機となる要因がなければ、求職者は応募意欲を喚起されないでしょう。求職者の興味を喚起し応募に繋げるためには、その企業独自の魅力を発信したいものです。

ただし、ただ単に自社の魅力を発信すれば良いというものではありません。採用ターゲットの視点に立ち、自社の強みの中でも採用ターゲットの興味を惹くと思われる項目を自社の魅力としてアピールすることが大切です。

採用活動がうまくいかない原因|採用募集のスタート時

採用活動がうまくいかない原因が採用募集のスタート時にある場合、下記4つの要因が根底にあると考えられます。

  • 求職者への提示内容が適切ではない
  • 母集団の数が少ない
  • 採用競合企業の分析が十分ではない
  • 待遇などの条件が相場と比較して見劣りする

求職者への提示内容が適切ではない

「採用ターゲットとは異なる人材からの応募に偏っている」「応募がない」などの場合は、求職者への提示内容が適切ではない可能性があります。

文体やトーン、言い回しを変えてみるのも1つの方法です。求人情報に記載されている文章の雰囲気が変わり、これまでとは違う層からの応募が増えることもあります。また、訴求ポイントを変えることで興味を喚起できる層が変わり、自社の求める人材からの応募が増えることもあるかもしれません。

母集団の数が少ない

管理職や専門性の高い知識やスキルが必要な職種などは、そもそも母集団の数が限られていたり、採用ターゲットとなる人材が採用市場に現れる機会が少ないため、採用が難航することもあります。

母集団の数が少ない場合は、採用ターゲットの条件を緩和する、転職エージェントやヘッドハンティングなど、母集団の数が少ない人材採用に強みを持つ採用手法の利用を検討するなどの方法があります。

採用競合企業の分析が十分ではない

採用競合企業の分析が甘いと、条件面や企業の魅力などにおいて見劣りしてしまい、最終的に求職者に選ばれないケースも想定されます。

採用活動を始める前には、採用競合企業の分析を徹底するとともに、採用競合企業と比較しながら自社の強みと弱みを明確にし、訴求ポイントを絞り込んでいきましょう。採用競合企業と差別化できるポイントが見つかれば、より効果的なアプローチができるかもしれません。

採用競合企業を分析する際は、下記のように様々な視点から分析してみましょう。

  • 企業の公式サイトや採用サイト
  • 企業理念や社長の方針、社風・風土
  • 雇用条件
  • 企業規模や事業の安定性
  • 商品・サービス
  • アピールしている訴求ポイント
  • 利用している採用手法・媒体
  • 在籍する従業員の口コミや評判 など

待遇などの条件が相場と比較して見劣りする

待遇などの条件が相場と比較して見劣りする場合、求職者は他のより待遇の良い企業への応募や選考を優先することがあります。

応募数が少ない時は、同業界や同エリアの企業の求人情報と自社の求人情報を比較して、見劣りする条件になっていないか調べてみましょう。もし待遇面が水準よりも下回っている場合は、条件の変更を検討したり他で魅力付けできるポイントを探したりしてみましょう。

採用活動がうまくいかない原因|選考時

採用活動がうまくいかない原因が選考時にある場合、下記2つの要因が根底にあると考えられます。

  • 採用担当者や面接担当者のスキルが足りない
  • 経験・スキル以外の選考基準のすり合わせができていない

採用担当者や面接担当者のスキルが足りない

採用がうまくいかないと感じる一因として、採用担当者や面接担当者のスキル不足が原因になっているかもしれません。
採用担当者や面接担当者のスキルが不足している場合、応募者の強みや適性を正確に評価できていない、応募者に対して適切なフォローや魅力付けができないなどの事態が生じていることもあります。その結果、自社の求める人材を採用できずに終わってしまう場合もあるでしょう。

採用担当者のスキル不足が原因となっている場合は、採用代行など採用活動を支援してくれるサービスを活用するのも1つの方法です。また、面接担当者のスキル不足が原因になっている場合は、面接担当者へのトレーニングを実施する、選考時の評価基準を明確にする、質問リストを用意しておくなどの対策を施すことにより改善できることもあります。

経験・スキル以外の選考基準のすり合わせができていない

経験・スキル以外の選考基準のすり合わせが甘く、各面接担当者の選考基準の曖昧になったままの場合、採用担当者ごとに評価がばらついてしまう可能性があります。

面接を実施する前には、スキルや経験以外にも、人柄やビジョンへの共感度など、求める要素を明確に定義し、選考基準に組み込む必要があります。また、採用担当者と関係者の間で選考基準をしっかりすり合わせ、全員が同じ基準で応募者を評価できるようにしておくことも大切です。

採用活動がうまくいかない原因|内定オファー時

採用活動がうまくいかない原因が内定オファー時にある場合、下記2つの要因が根底にあると考えられます。

  • 内定を出すまでに時間がかかってしまう
  • なぜ内定となったのか、選考結果に対する説明が不足している

内定を出すまでに時間がかかってしまう

内定を出すまでに時間がかかってしまうと、応募者は他の企業からの内定を承諾してしまうことがあります。また、他の企業に興味が移ってしまうこともあるでしょう。結果的に、人材を採用できずに採用活動が終わってしまう場合もあります。

また、内定まで時間がかかると、応募者は企業のスピード感や対応に不安を感じるかもしれません。場合によっては、内定を辞退される可能性もあります。

内定を出すまでに時間がかかっている場合は、内定を出す判断基準を明確化し、迅速な意思決定を行う体制を整えることがポイントです。内定を判断するまでの時間短縮が難しい場合は、事前に結果を通知するまでにかかる期間や通知までに時間がかかる理由を応募者に伝えておくようにしましょう。

なぜ内定となったのか、選考結果に対する説明が不足している

内定を受けた際に「なぜ自分が選ばれたのか」という明瞭な説明がないと、応募者は自分のどのような点が評価されたのか、不安に感じることがあります。

内定通知の際は、応募者に対して評価したポイントを具体的に伝えるとともに、入社後に期待している役割も伝えるとよいでしょう。

採用活動がうまくいかない原因|内定後フォロー時

採用活動がうまくいかない原因が内定フォロー時にある場合、下記2つの要因が根底にあると考えられます。

  • 内定後フォローが十分ではない
  • 同期との交流の場がない

内定後フォローが十分ではない

内定後フォローが十分ではない場合、内定辞退や早期退職が生じる可能性があります。内定を通知した後、十分かつ適切なフォローが提供できていないと、入社に向けた不安を払しょくすることができず、企業に対する期待感が薄れたり、不安が募ったりすることがあります。また、内定後フォローが不十分だと、入社意欲が醸成されていない状態や企業理解が深まらないまま入社に至ることもあります。その場合、仕事へのモチベーションが高まらなかったりミスマッチを感じられたりして早期退職を招いてしまう恐れもあります。

内定を通知した後は、内定者と定期的に連絡を取り、疑問や不安を解消する場を意識的に設けましょう。配属予定先の現場担当者に協力してもらうのも良いでしょう。入社前から配属予定先の社員とコミュニケーションを取っておくことで、入社後は現場に馴染みやすくなることもあります。

同期との交流の場がない

同期との交流の場がないと、新入社員は孤立感を抱き不安を感じてしまうことがあります。人によっては組織に馴染めないことが原因となり、早期退職に至ってしまうこともあるかもしれません。同期は、困った時に支え合う存在になることもあり、離職防止につながる場合もあります。

同期がいる場合は、内定者同士が交流できる場の提供に努めましょう。中途採用では同期がいないケースもありますが、入社年次や年齢が近い社員と面談する場を設ける、定期的に採用担当者がフォローするなど、オンボーディングに取り組むのも1つの方法です。
新入社員を孤立させない、不安を抱いたままにさせないことを意識しましょう。

採用活動がうまくいかない原因|入社後

入社したものの、短期間で離職するなど、結果的に「採用がうまくいかなかった」ケースで、その原因が入社後にある場合もあります。

例えば、本人が入社前に抱いていた企業への印象と、入社後の実情にギャップが大きい、入社前に聞いていた内容と異なる業務を担当することになった、などが早期離職の原因となる例は少なくありません。

入社前と入社後のギャップによって早期退職する社員が多い場合、入社前にしっかり業務内容や職場環境、企業文化について正確な情報を提供できているか振り返ってみましょう。正確な情報提供に努めることで、入社前後に生じるギャップを減らせることもあります。

また、オフィスに足を運んでもらい、会社や配属予定の現場を見学してもらうのも良いでしょう。他にも社長や役員から思いやビジョンを直接伝えてもらう場を設けたり、現場社員と面談する機会を提供したりするのも1つの方法です。様々な視点から自社に関する情報を提供することで多様な側面から企業理解を深められるようになり、入社前後のギャップが生じにくくなることもあります。

このように、ポジティブな情報もネガティブな情報も新入社員にありのまま開示し、納得してもらうことで、入社後のミスマッチによる離職を防ぎ、定着率を高めることができるでしょう。さらに定期的に面談の機会を設けておくと、新入社員が入社後に感じるギャップに対して適切なフォローを提供できるでしょう。

アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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